らくらくISO9001講座


口語訳 ISO13485:2003

4.基本的な仕組み
 4.1 ISO13485の基本的な考え方
 4.2 文書に関すること

改訂 2005.01.10

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宇野 通 編  

本記事のタイトルは口語訳ですが、内容は翻訳ではなく解釈の1例です
規格への適合性は原文や対訳版で判断して下さい



4章 基本的な仕組み


4.1 ISO13485の基本的な考え方

◆ISO13485全体に共通する決まり
  各々の事柄について、次のことを行うこと。
   ・ISO13485の内容と合った"仕事の仕組み"を決めること【品質マネジメントシステムの確立】
   ・その仕組みを文書で定めること【文書化】(必要な文書は4.2.1)
   ・決めたことを実行すること【実施】
   ・仕組みが動いている状態を保つこと。そのために必要な場合には仕組みを変更(改善)すること
    【維持】
   常に良い結果を出すこと。そのために必要な場合には、仕組みを変更(改善)すること【品質マ
    ネジメントシステムの有効性の維持】

◆プロセスに基づく整理
  プロセスアプローチの考え方に基づいてISO13485の内容をまとめると次の通りとなる。
  a)自社の仕事をどのような単位(区分)【プロセス】に分けて考えているかを示すこと(ISO13485で求
    めている項目を除外や不適用とする場合は、そのことを記すこと。1.2参照)。
  b)仕事の繋がり方【プロセスの相互関係】を、適当な形(図や表など)で示すこと。
  c)各々のプロセスについて、仕事が正しく行われていることを判断する方法と、判断の基準を決める
    こと。
  d)各々のプロセスを実施する際に、必要な人や設備など【資源】を用意すること。また、必要な連絡
    やデータ【情報】が得られるようにすること。
  e)各々のプロセスについて、正しく行われているかを確かめるために、監視、測定、検査、分析など
    を行うこと。
  f)各々のプロセスが予定通りに行われ、常に良い結果がでるように、問題があれば解決すること。
    【有効性の維持】
  ・これらの仕事【プロセス】をISO13485に合うように行うこと。

◆外注委託について
  製品の品質に影響する仕事【プロセス】を外注委託【アウトソース】する場合は、確実に管理すること。
  管理の方法は、それぞれの重要性に応じて決めること。また、どの仕事を外注し、どのように管理し
  ているかを示せること。(8.5.1の規定も関係する = 顧客クレームがアウトソース先に原因する場合
  は、適切に情報交換を行うこと)。

参考 プロセスの範囲
  ここで言う仕事【プロセス】には、製造(7章)や検査(8章)だけでなく、組織の管理(5章)や、設備
  や要員の管理(6章)などを含む。



4.2 文書に関すること

4.2.1 必要な文書
◆文書の種類
  次のものを文書にすること(原文の配列は分かりにくいため、記載順を変更している)
  1)品質方針と品質目標(5.3、5.4.1)                       ・・・・・原文はa)
  2)品質マニュアル(4.2.2)                             ・・・・・原文はb)
  3)ISO13485が、管理方法を文書として決めること【文書化された手順】
    を求めている23項目(他に.4.2.3管理を求めるものが4項目ある)     ・・・・・原文はc)
  4)法令で作ることが決められた文書                       ・・・・・原文はf)
  5)製品の仕様を決めた文書【ファイル】                      ・・・・原文は別に記載
  6)その他、仕事を正しく行うために、会社として必要な文書          ・・・・原文はd)
  7)ISO13485が求める記録                             ・・・・・原文はe)

◆文書化の意味
  ISO13485が、仕事のやり方や決まりを文書で定めるように言っている場合(文書化された要求事
  項、文書化された手順、作業指示書など様々な言い方がある)
  は、次の全てのことを含めて言っている。
   ・ルールや決まりを決めて文書を用意する【文書化】
   ・決めた通りに仕事を行う【実施】
   ・状況の変化に合わせて文書を変更する【維持】

◆製品の仕様を決めた文書                                  <文書>
  ・会社は、製品の仕様、規格、その他の品質管理上の決まりを記した文書【ファイル】を用意するこ
   と。この文書は、医療機器の型式ごとに作成するか、あるいは型式ごとに決められた内容が分か
   るように作ること(この文書は4.2.3に従って、管理すること)。 
  ・その中で、製造工程(全工程)についても記すこと。
  ・必要ならば【適用できるならば(1.2参照)】、設置や納品後のサービスについても決めること。

参考1 文書のくわしさ
  文書の中身のくわしさは、会社の実情に合わせて決める。この際、以下の点を考えると良い。
  a)会社(組織)の大きさと、仕事の種類
  b)仕事の複雑さ、仕事のつながりの複雑さ
  c)仕事をする人々の能力

参考2 文書の形
  ここでいう文書は、どんな媒体を使っていても良い。紙に文字で書いたものだけでなく、図や写真に
  よるもの、ビデオ、コンピューターで記憶されたもの、現物の標準サンプルなども含む。

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4.2.2 品質マニュアル
◆品質マニュアルを作ること。品質マニュアルは、状況の変化に応じて内容を見直すこと。   <文書>

◆次の事項は必ず品質マニュアルのどこかに記すこと。

  1)この品質マニュアルを使う仕事の範囲【適用範囲】。適用範囲とは、具体的には次のものだ。
    ・対象とする会社、事業所や部門
    ・対象とする製品
    ・対象とするISO13485の項目【プロセス】
   ISO13485の中で除外あるいは不適用とする項目【プロセス】がある場合は、そのことを明記し、自
   社に当てはまらない理由を書くこと(1.2参照)。

  2)ISO13485が管理方法を文書として決めること【文書化された手順】を求めている23項目。品質マニ
    ュアルの中に書くか、そうでない場合はどこに書いてあるかを記すこと。

  3)自社には、どのような仕事の単位(区分)【プロセス】があって、そのプロセス同士がどのように繋
    がっているかを、適当な形で示すこと。[4.1a)b)と同じ]

  4)品質に関わる文書にどのようなもの(種類、区分、階層など)があるか、その構成を整理して示す
    こと。



4.2.3 文書の管理
◆仕事に使う文書(4.2.1で指定したもの)は、ここで求めている内容を守って管理すること。ただし、
 文書のうち「記録」の管理は次の4.2.4で決めるので、ここでは除く。
                                               <文書化された手順>
◆「文書の管理のルール」を決めて、そのルールを文書で定めること。ルールは必要に応じて見直す
 こと。【文書化された手順】

◆文書の管理のルールの中には、次の内容を含めること。

 a)承認
   ・文書を作ったら、文書ごとに決めた責任者が、その内容を点検【レビュー】して、承認すること。

 b)文書の点検と変更
   ・文書はルールを決めて時々内容を点検【レビュー】すること。
   ・文書は必要に応じて変更や改訂をすること

 c)変更が分かるようにする
   ・文書を変更したときは、使う人が、文書のどこが変更されたのかが分かるようにすること。
   ・改訂番号や改訂日付をつけること。
   ・現在の最新版が第何版か(あるいはいつ発行のものか)が確認できる仕組みを作ること

 d)適切な文書の使用(最新版管理を含む)
   ・文書は、使う人が、見たい時に見られるようにすること。適当な場所に配置するか、コンピュータ
    ーの端末で見られるようにする。
   ・文書は、最新版を使うこと(同時に、旧版を誤って使わないようにすること)。そのため、文書の置
    場には、常に最新版を置くこと。ただし、顧客から指定されて旧版の文書を使うようなケースで
    は、指定の版が使えるようにすること。

 e)文書を見やすい状態に保つ
   ・文書は汚れたり、ボロボロになって読めなくなることがないように取扱うこと。
   ・文書にはタイトルをつけて、それを見やすい形で表示すること。

 f)外部文書                                              <文書>
   ・外部から入手する文書でも、仕事の方法を決めるものについては、文書として管理すること(契
    約書、仕様書、図面、操作マニュアル、関係する法令やJIS規格など)。どれが管理する外部文
    書であるのかを決めること。
   ・これらを社内に配布する時は、上のd)に記したように、配付の管理をすること。

 g)廃止文書
   ・廃止した文書(改訂した文書の古い版)は、誤って使うことがないように、使用場所から撤去する
    こと。
   ・廃止した文書を保管する場合は、「旧版」「廃止」「使用禁止」など、誤って使わないような表示を
    行うこと。

◆文書の改訂の担当部署
  文書の改訂の点検/承認をする部署は、その文書の背景となった情報を入手できなければいけな
  い。そのために、文書の改訂は、最初に制定した部署が担当するか、あるいは情報を入手できる
  立場にある部署を指定すること。

◆廃止した文書の保管
  廃止した文書は、保管期間を決め、少なくとも1冊を残しておくこと。
  ・医療機器の製造と検査に関わる(廃止)文書は、その使用期限や寿命(=会社が決めた期間)よ
   り長く保管すること。
  ・法令で保管期間が決められている廃止文書は、それより長く保管すること。
  ・記録の保管期間が決められている場合、その記録の元になった文書は(廃止された後も)記録の
   保管期間が切れるまで、残しておくこと。


4.2.4 記録の管理
◆記録はルールを決めて作成し、保管すること。ルールは必要に応じて見直すこと。

◆目的
  以下の目的のために、記録を作って保管する。
   ・顧客との約束、法令などの決まりを守っていることを示す証拠
   ・自社で決めた仕事の仕組みが、予定通りの結果を出していることを示す証拠

◆読みやすさ/識別/検索
  ・記録は読みやすく作ること。
  ・記録は、何の記録か(内容、日時など)がすぐに見分けられるように作ること。
  ・保管している記録が、すぐに探し出せること。

◆記録の管理のルール                             <文書化された手順>
  記録の管理のルールを決めて、そのルールを書いた文書を作ること。
  その中で、次の点を決めること。
   ・識別   何の記録か(内容、日時など)がすぐに見分けられるように作る
   ・保管   保管場所とその管理方法
   ・保護   保管している記録の紛失や損傷を防ぐ方法。室内環境、施錠、電子データのバックアッ
          プなど。
   ・検索   保管している記録を、すぐに探し出すための整理方法
   ・保管期間 記録の種類ごとに決める
   ・処分   保管期間を過ぎた記録をどのような方法で処分するか。

◆保管期間
  記録の保管期間は、次のように決めること
   ・該当する医療機器の使用期限や寿命(=会社が決めた期間)より長く保管すること
   ・法令で保管期間が決められている記録は、それより長く保管すること
   ・少なくとも、出荷から2年間は保管すること

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