らくらくISO9001講座



口語訳 ISO9001:2008
サービス業用

8章 仕事の評価と改善(2)
8.3 不良品の取扱い/失敗の後始末
8.4 データの分析
8.5 改善活動

青字 は2000年版から変更された部分です    
緑字 はこの口語訳で独自に追加した補足説明です
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改訂 2009.05.24

8章 仕事の評価と改善



8.3 不良品の取扱い/失敗の後始末

 ◆本項のサービス業への適用について
本項は、本来は、不良品(の現物)をどのようにして処分するかを決めた条項で
す。製品がないサービス業の不良(失敗)にも適用することになっていますが、か
なり無理があります。サービス業では、頭を柔軟にして、うまく自社の業務に合う
ように工夫することが必要です。


 ここでは、業務の性格によって、同じ条項を3通りに書き分けました。
  一連の仕事の中に、この中の2つまたは3つのケースを含むこともあります。



(1)製品・商品・備品などの不良
加工請負、飲食業、販売業、倉庫業、印刷業、レンタル、修理業など

  不良品の誤使用の防止
会社は、不良品【不適合製品】が誤って顧客に渡されたり、(社内で)使用すること
がないように、ちゃんと管理をしてください。そのために、まず表示や置き場によっ
て良品と区別し【識別】、その後は確実に処分をしてください。

  責任と権限
不良品の処理のルールを、文書に定めてください。その中で、次のことを決めてくだ
さい。
1)不良品が誤って使用されないように管理をする責任者
2)その処理の方法を決める権限を持つ人、その決定に責任を持つ人
3)その処理の実行に責任を持つ人
(この項には2008年版で文章の変更がありますが、意味は変わりません)

  不良品の処分方法
不良品の処分の方法には、次の4種類があります(いくつかの方法をあわせて実施す
る場合もあります)。
(この項には2008年版で言葉の追加がありますが、意味は変わりません)
  a)合格品に変える
ISO9000によると、これに該当するのは手直し再格付けです。
手直し(何らかの手を加えて合格品に作り変える)
これには、再加工、部品の交換、悪い部分を取り除くなどの方法があります。
再格付け(下級品の合格品として取り扱う)
  b)特別採用
不良品のまま顧客に引取ってもらう、不合格品のままで使用する(原材料、資材、備
品の場合)、あるいはそのまま判定を合格に変える。この場合は、あらかじめ、この
件の責任者を決めておき、その人が承認をしてください
その不合格となった項目について顧客との約束がある場合や、迷惑がかかる可能性が
ある場合は、顧客の了解をもらって下さい。
  c)使えないように処分する
これには、廃棄、つぶしてリサイクルする、返品(購入品の場合)などがありま
す。
  d)出荷済みの不良品の回収などを行う
既に顧客に引き渡した製品に不良が見つかった場合は、その不良による(予想され
る)被害の重大さに見合う、適切な対策を取ってください。
これに該当するのは、クレーム情報や、社内での問題発覚などから、出荷した製品が
不良である(あるいは、出荷済みのロットに不良品が含まれている)ことが分かった
場合です。対策方法としては、使用中止の申し入れ、修理、回収などがあります。

  手直し後の再検査(この項には2008年版で段落の順番の変更があります)
不良品を手直し【修正】した場合は、合格品になったことを確かめるために、再検査
をしてください。

  不良品の記録(この項には2008年版で段落の順番の変更があります)
不良品の記録を残して下さい。その中には次の内容を記録してください。
・不良品の状態
・不良品に対して行った処置(特別採用の記録を含む)
  (記録を保管する方法については4.2.4に決めます)



(2)業務の実行/顧客への提出の前に、内容の確認ができる仕事
分析、調査、税理士、行政書士(書類を提出する業種)
銀行、金融取引、マスコミ、商社で直接品物を触らない場合
清掃業、発送サービス

  問題が放置されたまま、サービスが行われないように管理する
実施した(実施しようとしている)業務の内容に、問題があることが分かった場合
は、不完全な状態でサービスが実施されたり、顧客に提出したり、あるいは次の作業
を開始することがないように、ちゃんと管理をしてください。
可能な場合には、表示や注意書きでなどで間違えないように目印をつけ【識別】、そ
の後は確実に処理をしてください。

  責任と権限
実施した(実施しようとしている)業務に問題がある場合のルールを、文書に定めて
ください。その中で、次のことを決めてください。
1)不完全な状態で、業務を実施したり、提出したりしないように管理をする責任
  
2)その処理の方法を決める権限を持つ人、その決定に責任を持つ人
3)その処理の実行に責任を持つ人
(この項には2008年版で文章の変更がありますが、意味は変わりません)

  問題の処理方法
問題を処理する方法には、次の4種類があります(いくつかの方法をあわせて実施す
る場合もあります)。
  a)顧客に渡す前に、やり直しまたは修正する
すぐにやり直しや修正をして、問題のない状態でサービスを実施(あるいは顧客に提出)する。
  b)特別採用
不完全なまま、業務を実施する(あるいは顧客に提出する)。この場合は、あらかじ
め、この件の責任者を決めておき、その人が承認をしてください
その不合格となった項目について顧客との約束がある場合や、迷惑がかかる可能性が
ある場合は、顧客の了解をもらって下さい。
  c)その仕事を中止する
その仕事をキャンセルとする(業種の性格やその場の状況から、それが妥当な場合)
  d)完了している仕事の不良をフォローする
既に完了している仕事に問題があることが分かった場合は、その内容による(予想さ
れる)被害の重大さに見合う、適切な対策を取ってください。
これに該当するのは、クレームや、社内での問題発覚などから、実施済みの業務に不
良があることが分かった場合です。対策方法としては、状況の報告や公表、業務のや
り直し、末端の顧客に対する報告や謝罪 などがあります

  手直し後の再検査(この項には2008年版で段落の順番の変更があります)
業務のやり直し【修正】をした場合は、もう一度確認や検査をしてください。

  不良品の記録(この項には2008年版で段落の順番の変更があります)
問題があった仕事について記録を残して下さい。その中には次の内容を記録してくだ
さい。
・どのような問題があったか
・どのように処置したか(特別採用の記録を含む)
  (記録を保管する方法については4.2.4に決めます)



(3)失敗や不良が、直ちに顧客への被害につながる仕事
接客業務、介護、医療など(直接、顧客に働きかける仕事)
運輸・通信・コンピューターシステムの管理(システムの不良が、直ちに被害につな
がる)

  問題が放置されたまま、サービスが行われないように管理する
該当しない

  責任と権限
業務の内容に問題があった場合のルールを、文書に定めてください。その中で、次の
ことを決めてください。
1)問題が発生した現場で、対応を指揮する責任者
2)その処理の方法を承認する権限を持つ人、その決定に責任を持つ人
3)事後処理の実施に責任を持つ人
(この項には2008年版で文章の変更がありますが、意味は変わりません)

  問題の処理方法
問題を処理するには、次の方法があります(いくつかの方法をあわせて実施する場合
もあります)。
  a)顧客に渡す前に、やり直しまたは修正する
該当しない
  b)特別採用
仕事を失敗した場合に、そのままで、あるいは適当な処置を行うことで、あるいはも
う1度やり直すことで、顧客に認めてもらう。この場合は、この件の責任者を決めて
おき、その人が承認をしてください(ということになっていますが、業種によって
は、事後承認もやむを得ないでしょう)。
  c)その仕事の取消し
その仕事をキャンセルとする(業種の性格やその場の状況から、それが妥当な場合)
  d)失敗した仕事のフォローをする
仕事の失敗によって発生した問題に対して、適切に処置をして下さい。
例えば、介護で事故が発生した時に速やかに治療をする。
    運送で配達し忘れた荷物を急いで届ける。
    中止になったイベントのチケットを払い戻す。
    運輸や通信が不通になった場合に、代替手段を手配する
以前に行った仕事に問題があることが分かった場合は、その内容による(予想され
る)被害の重大さに見合う、適切な対策を取ってください。
これに該当するのは、クレームや、社内での問題発覚などから、実施済みの業務に不
良があることが分かった場合です。対策方法としては、状況の報告や公表、業務のや
り直し、末端の顧客に対する報告や謝罪 などがあります

  手直し後の再検査(この項には2008年版で段落の順番の変更があります)
サービスのやり直し【修正】をした場合は、もう一度検査や確認をしてください。

  不良品の記録(この項には2008年版で段落の順番の変更があります)
問題があった仕事について記録を残して下さい。その中には次の内容を記録してくだ
さい。
・どのような問題があったか
・どのように処置したか(特別採用の記録を含む)
  (記録を保管する方法については4.2.4に決めます)

  


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8.4 データ分析

 データ分析の目的
会社は、データを集め、分析をしてください。
このデータ分析は、次の目的のために行います
1)会社の仕組みがうまく機能し、良い結果に結びついていること【品質マネジ
  メントシステムの適切性及び有効性】を確かめる
2)さらに良い結果が出るように仕事の仕組みを改良できる部分を見つける
  【品質マネジメントシステムの有効性の継続的改善】

このデータ分析には、仕事の実施情況を確認した結果(8.2項)を使ってください。
また、それ以外に有効な情報があれば使ってください。

 データ分析する項目
データ分析をする項目に、次のものを含めてください
a)顧客の期待に答えているかどうかの情報(8.2.1項で得た市場調査データ)
b)仕事(サービス)の良し悪し/製品や商品の品質8.2.4項で得た検査・確認の
  データなど)
c)業務【プロセス】の傾向やばらつき/製品や商品の傾向やばらつき
  これらのデータを基に、予防処置を開始することがあります
  (8.2.3や8.2.4項で、仕事の良し悪しを確認したデータなど)
d)納入業者・外注業者の実力7.4項で得た、業者の評価や受入検査のデータ)





8.5 改善活動

8.5.1 仕事のやり方を改良すること

会社は、仕事がうまく行くように【品質マネジメントシステムの有効性】、常に仕
組みを見直して改良してください。【継続的改善】

そのために活用する活動は、次のものです。
・品質方針
・品質目標
・外部監査と内部監査
・データの分析
・是正処置
・予防処置
・マネジメントレビュー


8.5.2 是正処置(再発防止)

 再発防止は原因の除去
会社は、発生した問題(不良品、業務の不良、クレーム、ルール違反、仕組みの不
整合など)に対して、是正処置(再発防止対策)を行ってください。
是正処置(再発防止対策)とは、問題が発生した原因を突き止め、原因を取り除く
ことをいいます。

 是正処置の程度
是正処置として実施する内容は、発生した問題の重大さとのバランスを考えて、適
切な程度にしてください。

 是正処置の進め方
是正処置のルールを文書に定めてください。このルールには、以下の内容を含めて
ください。
a)発生した問題の内容を確かめる
  顧客のクレームは、是正処置の対象に含めてください
b)原因を突き止める
c)原因を除き、再発防止をするために、どのような対策が必要かを判断する
d)対策の内容を決める
  対策を行う
e)行った対策の内容と結果を記録する(記録を保管する方法については4.2.4に決
  めます)
f)対策が行われ、問題が解決したこと【是正処置の有効性】を確かめる


8.5.3 予防処置(未然防止)

 予防処置は未然防止
会社は、今のままでは、発生が予想される問題(不良品、業務の不良、クレーム、
ルール違反、仕組みの不整合など)に対して、予防処置(未然防止対策)を行って
ください。

 予防処置の程度
予防処置として実施する内容は、予想される問題の重大さとのバランスを考えて、
適切な程度にしてください。

 予防処置の進め方
予防処置のルールを文書に定めてください。このルールには、以下の内容を含めて
ください。
a)予想される問題の内容を確定し、その発生原因を推定する
b)原因を除き、発生防止をするために、どのような対策が必要かを判断する
c)対策の内容を決める
  対策を行う
d)行った対策の内容と結果を記録する(記録を保管する方法については4.2.4に決
  めます)
e)対策が行われ、問題が解決したこと【予防処置の有効性】を確かめる



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