マリア・ジョアン・ピリス(Piano)とアントニオ・メネセス(Cello)のコンサートに行ってきました。
いつもながら、ベートーヴェンのピアノソナタ32番が含まれたプログラムだったからです。
マリア・ジョアン・ピリスさんは私がクラシックを聴き始めた20歳頃すでに大手グラモフォンのピアニストで有名でしたので名前は知っていましたが、
演奏を聴いたことはありませんでした。
今回、何の前知識も先入観もありませんでしたが、お歳が71歳なので、身体的な衰えが演奏に影響しなければいいな、とは思っていました。
結論から先に書きますが、32番の演奏は非常に素晴らしいもので、感動しました。多く聴いてきた中でも1・2を争うでしょう。聴けて良かったです。
〜演奏後のメモ〜
「凄く良かった。静謐で品の良い、あんな魅力的なアリエッタの主題が聴けたのは初めてかもしれない。
アリエッタはたぶん19分くらいのゆったりした演奏。(うまく言葉で説明できないが)とても丁寧に各パートを弾いてくれ、
ニュアンスの与え方が素晴らしく、演奏しているというよりも音楽を創っているような演奏だった。
アリエッタの変奏部の繰り返しは全く飽きさせず、愁いを湛えた旋律として聴かせてくれた。
各パートの接合部の扱いがまた素晴らしく創作的で、異質なパートが滑らかで自然な流れとなって耳に届けられる。
もう何度も聴いてきたこの曲が、未だにこんなに新鮮に魅力を放っているのを聴くことができて良かった。
ピリスが磨き上げてきた彼女の美意識の込められた演奏に感謝したい。」
※“音楽を創っているような演奏”と強く感じたのは、特にミスタッチの処理の時で、アリエッタでも3〜4か所ミスをしていたのですが、
少し音符を飛ばしながらも、違和感ないように音をつないで自然と次のパートに流していけるのには脱帽しました。専門的なことはよくわかりませんが。
一方、チェロのメネセスとのベートーヴェンの初期チェロとピアノのソナタ演奏は、メネセスの優しい音色のためもあってか
ややピアノの音色が勝っているように聴こえ、曲つくりも互いに配慮しすぎておとなしくなっている印象でなんだかイマイチでした。
(ベートヴェンがこの曲を作曲した時は、まだ未発達のフォルテピアノしかなかったので、チェロと合わせるのはフォルテピアノの方がいいのでは?とか)
アンコールのバッハのパストラーレBWV590(チェロとピアノ用に編曲されたもの)は、私の好きな曲でもあり、とても良かったです。