わたしにとって、野蛮とか未開とかは、
裸で槍や山刀を持って、今でも山野を
歩きまわっているということではない。
(略)
日常の事物に新鮮な驚きを感じることなく、
自分が一方的に従っている狭い世界を
この世のすべてと信じて疑わない態度、
自分の価値観をこの世界唯一のものとして
他者を強制的に服従させることにしか
思いいたらない態度、
そうした人間のもつ一面を、
わたしは野蛮とか未開とか呼んでいるのだ。
西江 雅之( 文化人類学者)著
「旅人からの便り」 (福武文庫) より