私のお気に入り

Ludwig van Beethoven ベートーヴェン

Piano Sonata No.32 op.111   ピアノソナタ 第32番 ハ短調 作品111 (第2楽章)

★★★★★★★★★ (Page1)

気軽に聴き比べなどしてみようと思いましたが、実際、やってみると非常に難しいです。 良さも多種多様ですし、第一印象で良くなかった演奏が、聴きこむと良さが感じられてきたりします。

(私は繊細さと柔軟さを併せ持つ表情豊かな演奏が好き”です。あくまで素人の私の独断と偏見の言いっ放しです。なにとぞご容赦ください。)感想は主に第2楽章について。

( time は第2楽章の演奏時間。 録音年。 age は録音時のピアニストの年齢。) まだ時々聴き直しては、順番を入れ替えたり文を書き直したりしています。

 

★★★★★

 

 

◎ ピアノ : ジャン・ベルナルド・ポミエ

(time:18.20 recording:1995-97 age:51-53)

 

柔らかく、かつ多彩にコントロールされたタッチから

生み出される色彩感豊かな音に、まず耳を奪われる。

さらに、響きだけでなく、抑揚のあるテンポ運びや

アクセントなどのニュアンスが絶妙な素晴しい演奏。

魅力が強いのに自然で何度も繰り返し聴きたくなる。

Pommier

 

 

◎ ピアノ : ルドルフ・ゼルキン

(time:17.56 recording:1967 age:63)

 

独特な透明な響きと、わずかに引きずるような

テンポ運びが、美しくもどこかメランコリックで

ナイーブな曲調を作りだしている。この演奏の

ピアニシモの表情は、心に不思議と響いてくる。

録音もこの年代のものにしてはとても良い。

Serkin

 

 

◎ ピアノ : アンドラーシュ・シフ

(time:18.03 Live recording:2007 age:54)

 

粒だった丸みを帯びた音色、ベーゼンドルファーの

深みのあるダイレクトな響きの美しさもさることながら

独特の美学と解釈を感じられる個性的演奏。

ピアニシモの、ふわりと柔らかいニュアンスや、

細部の豊かな表情など、シフならではの魅力満載。

Schiff

※Live録音だと、コンサートのプログラムで初めて知る。

 

◎ ピアノ : クラウディオ・アラウ

(time:19.40 recording:1965 age:62)

 

絶妙な“ため”などのニュアンスのある、繊細で表情

豊か演奏が紡がれる。1960年代は、早めのテンポで

演奏するピアニストが多い中で、異質かもしれないが、

現代ではむしろ演奏の規範になっている気がする。

音の間合いも深い表現に生かされた、魅力的な音楽。

Arrau

 

 

◎ ピアノ : ヴァレリー・アファナシエフ

(time:21.37 Live recording:2003 age:56)

 

この曲の持つ全ての音符の響きの美しさを最大限に

引きだした個性的な演奏。繊細だが神経質ではない。

こんなにもゆっくり弾いているのに退屈に感じず、

ピアノの響きの色彩豊かで温かな音の心地よいことに

驚く。また、ライブ録音とは思えない完成度も見事。

Afanassief

※サントリーホール

 

 ピアノ :シモーネ・ディナースタイン

(time:18.48 Live recording:2007 age:35)

 

繊細で美しい音色と表情豊かな音楽が魅力的。

コントラストを積極的に表現に生かしつつ、

しっとりと柔らかく歌い耳に心地よい。

細部の表情に独特の輝きがあって何度も聴く。

ライブ録音とは思えない完成度。

Dinnerstein

※ベルリン・フィルハーモニーホール HP

 

◎ ピアノ : クロード・フランク

(time:18.01 recording:1971 age:46)

 

柔らかく、潤いのある音色に美しさを感じる丁寧で、

タメやの柔らかいニュアンスや、変奏のつなぎ目などの

間のとり方が絶妙で、どこか寂しげな雰囲気すら漂う。

また速いパッセージも破綻なく弾きメリハリを利かせ、

音楽全体を濃く、味わい深い歌として聴かせてくれる。

ClordFrank

※録音は悪くないのに、このジャケットは誤解を与える。

 

◎ ピアノ : ヴラジーミル・フェルツマン

(time:17.43 recording:1992 age:40)

 

明瞭でキビキビとしながら、繊細で柔らかい表情を

両立した演奏。粒だった音色も美しい。音楽の

隅々まで神経が行き届き、特にピアニシモでの

微妙なニュアンスの描き方は神経質の一歩手前だが、

独特の魅力を醸す。その分、線が細い傾向ではある。

Feltsman

 

 

◎ ピアノ : ペーター・レーゼル

(time:17.53 recording:2011 age:66)

 

しっとりとした情感や、音色の美しさなど、様々な

魅力的なニュアンスを盛り込みつつ非常にバランスの

高い演奏。特に何かが際立つわけではないが、決して

バランスが良いだけの演奏ではなく、例えば後半の

抑制を効かせつつ安定し持続するトリルなど非凡かと。

Peter Rosel

※観客ノイズは全くなく、おそらくコンサート前日の録音。

 

◎ ピアノ : 杉谷 昭子

(time:21.11 recording:2005 age:62)

 

音楽は“歌”だという杉谷さんの、微妙なアクセントや

一寸したニュアンスが、私にはとてもしっくりとくる。

細部を丁寧に描きだすためのゆっくりとした演奏も、

説得力があり心地よく聴ける。音色は残響多めだが

音幅が深く美しい。ドライブ感を求めない人にお薦め。

杉谷 昭子

Blog

 

◎ ピアノ : フリードリヒ・グルダ

(time:19.04 recording:1984 age:54)

 

良い意味で音楽を一度消化し、再構築した表現の

魅力・説得がある。音符同士が対位法的な関係を

組み上げながら、流れるように曲が展開していく

のが心地よい。この演奏では、そうした音の動きの

魅力に、若い頃になかった深みが加わわっている。

Gulda

 

 

◎ ピアノ :三木 裕子

(time:18.05 Live recording:1996 age:46)

 

曲のなりたちへの深い解釈と思いを背景に

磨かれた漆の黒のような艶と重みを兼ね備えた音で

豊かに表情を描き分けていく。独特の説得力と

(静かな)迫力、彫りの深さある。深刻な表情の

中に美しさが見え隠れする演奏。完成度も高い。

三木裕子

 

 

◎ ピアノ : ゲルハルト・オピッツ

(time:18.51 recording:2006 age:53)

 

曲全体を深く理解し、自然で無理なく歌い、全ての

小節が必要不可欠だと感じられる。曲を自分の得意な

土俵へ引き込むのではなく、演奏家が曲に限りなく

近づく姿勢を基本に、そこから一歩演奏家の意向へ

高められている。残響多め、厚みや広がりのある音。

Oppitz

※演奏会では足の踏み込みが強かった。

 

◎ ピアノ : パヴェル・ネルセシアン

(time:17.08 recording:1996 age:32)

 

メランコリックな抒情性を生み出そうとすることに

かなり積極的に気を配っている演奏だと思う。 

しっとりとした旋律の歌わせ方(タメのつけ方)や

響かせ方からそう感じる。私の好みの方向性だが、

人によっては、色をつけすぎていると感じるかも。

Nersessian

 

 

◎ ピアノ : ハンス・レイグラフ

(time:18.41 recording:1980 age:60)

 

寂寥感を感じさせる音楽の響きに独特の美しさを

感じる。落ち着きと味わいに満ち、各フレーズに

豊かな性格を与え、ドラマティックでもある。

録音は、高域が強めのバランスで最良とは

言えないが、この曲の魅力を改めて再確認できた。

Hans Leygraf

 

 

◎ ピアノ : エル・パシャ

(time:15.23 recording:1993 age:35)

 

速めの軽快なテンポでありつつ、柔らかで繊細、

かつ豊かな表情で曲を奏でてゆく魅力的な演奏。

第一印象は、音色や表現に大胆さがあまりなく、

少し平板な演奏に聞こえたが、繰り返し聴くと、

細部への繊細な心使いが、魅力に感じられてくる。

El Bacha

 

 

◎ ピアノ : トール・エスペン・アスポース

(time:18.45 recording:2007 age:36)

 

透明感のある高域と深く沈みこむ低音の響き

美しい。演奏の特徴と録音技術が非常に良い関係。

聴きやす抑揚のあるテンポだが、浅く感じない。

トリルが少し浮いているように感じる所もあるが、

クールで美しい現代的演奏の一部として許容範囲。

Aspaas

※SACD Hybrid 5.1surroundだが、SACD 2chでの感想

 

◎ ピアノ : ボリス・ザランキン

(time:18.51 recording:2006 age: unknown)

 

豊かな音色で比較的明瞭に旋律を描きながら

上質でダイナミックな演奏を生み出している。

リズムが心地よく、聴きやすい演奏だが、独特の

ため”があり、しっとりと歌うし、響きは複雑で

深みがある。曖昧な雰囲気に逃げない独特の魅力。

Zarankin

 

 

◎ ピアノ : ダニエル・バレンボイム

(time:20.27 recording:1984 age:42)

 

ゆっくりとしたテンポと、深みのある美しい響き

繊細さとダイナミックさ両立させた音楽を奏でる。

独特の音作りで“聴かせる音楽”を高いレベルで

組み立てるのが上手く、好みは分かれると思うが、

この演奏ならではの味がある。展開に少し不満あり。

Daniel Barenboim

 

 

◎ ピアノ : ユーラ・ギュラー

(time:18.36 recording:1973 age:78)

 

演奏家の美意識によって、曲が魅力的に再構築

された演奏。独自の抑揚やテンポのとりかたに

よって表情の豊かな音楽が築かれている。

特に前半と中後半のゆったりとしたパートの

しっとりと歌っているニュアンスがとてもいい。

guller

 

 

◎ ピアノ : 野平 一郎

(time:17.43 recording:2003 age:50)

 

一貫して変奏の魅力を展開していく姿勢が心地良い。

響きの幅をむやみに広げないことで、曲に一本の

太い軸が感じられ、明確な解釈と意思をもって

フレーズに性格を与えようとしているようである。

全体から柔軟さと温かみが感じられるのも魅力。

Nodaira

HP

 

◎ ピアノ : アルフレッド・ブレンデル

(time:18.18 recording:1995 age:64)

 

柔らかい音色を保ちながら、曲の最初から最後まで

神経が行き届き、一つ一つの音の響きが有機的に

連鎖してゆく。快い緊張感に包まれた、深みのある

質の高い魅力的な音楽。やや硬質な印象。1970年

39歳の時の録音とは、解釈の深さが格段に違う。

Alfred Brendel

 

 

◎ ピアノ : 澤 千鶴子

(time:18.25 recording:2011 age: unknown)

 

「何も足さない、何も引かない」の言葉がピッタリ。

シンプルで特別なものはないが、私がこの曲に

求めるニュアンスは欠かさず詰まっている演奏。

バランスが良く、完成度が高い。音色が豊かとは

言えないが、曲のつなぎ目の間合いが何とも良い。

澤 千鶴子

 

 

 ピアノ : アイナル・ステーン・ノックレベルグ

(time:16.40 recording:2006 age:62)

 

柔軟さ、透明感・深みのある美しい響きの音色、

力強さも失わない。比較的速めのテンポキメの

細かさを両立した独特のテンポや響きにより、

少し個性側にずらした世界観を生みだしている。

繊細ながらスケール感をも伴った魅力的な演奏

Einar Steen-Nokleberg

※E,グリーグのスペシャリスト。

 

★★★★☆

 

 

○ ピアノ : クラウディオ・アラウ

(time:18.29 Live recording:1963 MONO age:60)

 

アラウの音楽に共通した魅力が健在。一音一音に

味があり、旋律に歌を感じ、右手と左手が有機的に

対話する。音が言葉のように語りかけてくる魅力。

テンポや間のとり方絶妙で、聴き手を惹きつける。

録音年代と、ライブゆえの観客のノイズが多少入る。

arrau

※アラウ・バックハウス・スコダによる32番の聴き比べCD

 

○ ピアノ : ミヒャエル・レヴィナス

(time:17.54 recording:1984〜91? age:35〜42)

 

粒だったタッチの生み出す音の美しさ、繊細で

柔らかい響き、哀愁を帯びた旋律の描き方

がとても魅力的。始終高域が主体となり、

低域は伴奏に徹している印象の強い演奏。

もう少し低域が主張すべきと感じるところはある

Levinas

 

 

○ ピアノ : セドリク・ペシャ

(time:17.14 recording:2009 age:35)

 

丸みを帯び、多彩美しい音色、しっとりと、かつ

歯切れのいいタッチ、抒情性を醸し出す間の取り方、

録音の良さなど、私が32番でおさえてほしいツボが

押さえてある。前半はやや速めにまとめ、後半を

しっとりじっくりと歌わせていて魅力的。

Pescia

※第一印象は良いが繰り返し聴くと若さが気になりだした。

 

○ ピアノ : ウィルヘルム・ケンプ

(time:15.24 recording:1965 age:70)

 

曲をよく消化してひとつひとつのフレーズに

しっとりとした情感を込めてゆく独特の演奏。少し

にじむような音色と、緩急・強弱を巧みに使い

ドラマティックで魅力的な音楽が奏でられる。

ロマン派的演奏の良い部分を聴くことができる。

Kempff

※古い録音でも、音色の美しさを感じられる。

 

○ ピアノ : イアン・ホブソン

(time:18.11 recording:1996 age:44 )

 

しっとりとした情感を湛えた旋律と音色が印象的

前半の変奏部でややテンポのタレを感じるところが

少しだけあるが、中盤のタメから、後半に向かって

テンポを速めつつドラマティックに盛り上げていく

演奏に独特の高揚感を感じられる醍醐味を高く買う。

Ian Hobson

HP

 

 ピアノ : リチャード・グード

(time:17.49 recording:1986 age:43)

 

特別なことは何もないが、とてもバランスのいい

演奏で、なにより“歌”がある。やさしくて清々しい歌。

移り変わる変奏曲の旋律を一本の流れにして、

旋律と伴奏の関係に近くしている感じを受ける。

普段クラッシックを聴かない人にも馴染み易そう。

Goode

※音質は悪くはないが、深みのある音には何か足りない。

 

○ ピアノ : ポール・ルイス

(time:18.05 recording:2006 age:34 )

 

古典的な解釈を基本に、非常に抑制の効いた

独特な展開をみせる。音色もよくコントロールされ

余韻を生かし、静寂に浮かび上がる音が印象的。

内向的な方向性の好みは分かれるかもしれない。

私は、高域の音を少し抑制しすぎのように感じる。

Paul Lewis

HP

 

○ ピアノ : アルフレッド・パール

(time:18.54 recording:1995-96 age:30-31 )

 

音の混ぜ具合をコントロールする、水彩画のような

独特の響きが印象的。歌い回しにも独自の美学が

感じられ、特にパート毎の表情の描き分けが見事。

滲んだ低域を背景に、柔らかいタッチから生まれる

高域が美しい。少しだけ空間性の弱い録音が惜しい

perl

※魅力的な全集だが、32番2楽章には少し不満がある。

 

○ ピアノ : フリードリヒ・グルダ

(time:15.28 recording:1967 age:37)

 

エネルギーに満ち溢れ、表現の幅も豊かな演奏。

17年後の録音より3分半速い演奏で、この曲と

してはやや生命感溢れ過ぎると感じなくもないが、

なぜかどちらもこの速度が適切と感じられる名演。

この年代の録音とは思えない音質の良さも驚き。

Gulda

 

 

○ ピアノ : ロッテ・イェケリ

(time:17.53 recording 1982? age: unknown)

 

独特の味わいのある演奏。聴きなれた一つ一つの

フレーズが何故か新鮮に聞こえる。聞かせどころで

一呼吸分だけ音を遅らせているようだ。それとともに

音の減衰を効果的に使って抒情感をだしている。

録音は普通レベルだが、何度も聴きたくなる。

Jekeli

 

 

○ ピアノ : ジョン・リル

(time:22.36 recording / age: unknown)

 

情感豊かでドラマティック。ゆったりとした

テンポを生かして徐々に盛り上げてゆく。

どこかボレロを思い起こす。録音の質は

最良ではないが、細部の表情にも繊細さや

詩情があり、この演奏ならではのものがある

John lLill

※2012年来日時の私のコンサート評はこちら

 

 ピアノ : エリザベート・レオンスカヤ

(time:17.44 recording:2009 age:64 )

 

積極的にタメを用いて、

旋律を印象的に聴かせる。

1901年製D・スタインウェイの

やや古色をおびた独特な響きも相まって、

メランコリックな抒情性豊か。バランスの良い演奏

Elisabeth Leonskaja

 

 

○ ピアノ : エリック・ハイドシェック

(time:15.59 recording:1965? age:29?)

 

音の表情が豊かで、独特の美しさが感じられる。

ニュアンスにも富み、やや古い録音である印象

避けられないが魅力が勝る。 この録音では、

30年後に見られる独特なアクセントはなく素直。

真摯に飾ることなくバランスの良い演奏

Heidsieck

 

 

○ ピアノ : マーク・スワーツェントルーバー

(time:17.01 recording:2000 age: unknown)

 

この曲が、こんなに滑らかで流れるような聴き易い

音楽でいいのかと思ってしまうほど程よく引き締まった

演奏でありながら、しっとり聴かせるニュアンスもあり

内容も過不足なく充実していて、淡泊には感じない。

あまりに上手に曲がまとまっているのが贅沢な不満。

Mark Swartzentruber

HP

 

○ ピアノ : エリック・ハイドシェック

(time:16.05 recording:2000 age:64)

 

7年前の録音ほど癖は強くないが、型を気にしない

自由な解釈のおおらかさ、伸びやかさは健在。

彼の演奏の醍醐味は即興的な曲への味付けかも。

今回彼をそういうピアニストだと思って聴いたためか

彼の美意識に基づく味付けを非常に魅力的に感じた。

Heidsieck

 

 

○ ピアノ : ジョン・オグドン

(time:16.53 recording:1963 MONO age:26)

 

柔らかいタッチと、「ホントに26歳の時の演奏?」

疑いたくなる、しっとりと深みのある歌い口は

たいへん魅力的で、何度も繰り返して聴ける。

この年代としては音も悪くないが、さすがに録音が

良いとはいえないのが、唯一の惜しいところ

Ogdon

※ブラームスの協奏曲のほうは、かなり音が悪い。

 

○ ピアノ : ジェイコブ・ラテイナー

(time:19.25 Live recording:1977 age:49)

 

一音一音に気持ちがこもっているように感じられる

演奏。音の強弱を巧みに用いて、非常にしっとりと

印象深く旋律を歌わせている。比較的ゆったりとした

テンポだが、一か所もタレることなく最後まで

それぞれのフレーズに生命を与え、惹き込まれる

Jacob Lateiner

※音質はイマイチ、咳などの観客ノイズも多いのが残念。

 

○ ピアノ : 内田 光子

(time:18.35 recording:2005 age:57)

 

曲の隅々まで神経が行き届き、特にこの曲の持つ

内省的な表情が繊細に描かれた美しい演奏。

第一印象では、表現を抑えて無難にまとめた

に思え不満も残ったが、極端な表現を加えかった

ことが、内的な表情を深めている、と感じ直した。

Uchida

 

 

○ ピアノ : ディーター・ツェヒリン

(time:16.14 recording:1968 age:42)

 

音離れのいいタッチによるリズムの刻みが印象

深い。同時に、柔らかさを両立しており独特

前半にぎこちなさの気になるテンポがあるが、

それが帳消しになるくらい、中盤から

後半にかけての、音楽の盛り上がりは魅力的。

Zechlin

 

 

○ ピアノ :  ピオトル・サワイチク

(time:18.16 recording:2011 age:29)

 

しっとりとした旋律の描き方、メランコリックな風情を

醸す間合いのニュアンス、適切なテンポなど、私が

この曲に求める要素を十分に満たす演奏。しかし、

中盤の扱いが消極的すぎ、音楽が弱くなってしまう

のが残念。後半も素晴らしく、将来の再録音に期待。

Salajczyk

HP

 

○ ピアノ : 横山 幸雄

(time:16.11 recording:1998-99 age:27-28)

 

非常に流れの美しい演奏。曲全体のイメージが

しっかりとあった上で、それぞれのパートが絶妙に

性格付けされた魅力。響かせる音と締める音が

とてもバランスが良く、キビキビと展開されていく。

細部も魅力的だが、全体の構想力で聴かせる演奏。

横山 幸雄

 

 

○ ピアノ : イーゴリ・レベデフ

(time:19.17 recording:1992 age:42)

 

いかにも握力の強そうな男性的なタッチに、一瞬

「ハズレ?」と思うが、繊細さや柔らかさを併せ持ち

意外性からくる魅力がある。後半のドラマティックで

個性的な展開では、決して力技だけに頼ることなく、

むしろ一瞬の“間”をうまく挟み込んでしっとり歌う。

Lebedev

※31番はなぜかZAGOROVSKAYAのピアノ演奏

 

○ ピアノ : ヨゼフ・パーレニチェク

(time:18.39 recording:1985 age:71 )

 

曖昧さを完全に排除し、明確で力強いタッチを駆使し、

しかしながら硬くなることなく、微妙なニュアンスさえも

意思的に打鍵していく独特で魅力的な演奏。個性的。

曖昧なニュアンスを多用しやすい32番において、全く

対照的な演奏。とはいえもう2段はピアニシモがほしい。

Palenicek

※こんな風に32番を弾く人がいるんだ、と驚いた。

 

○ ピアノ : ジャン=フランソワ・エッセール

(time:15.34 recording:1999 age:49)

 

演奏時間が15分半と速めのテンポにもかかわらず

曲の要点を的確に掴み、時に十分に間をとり、

時に余韻を響かせながらしっり歌い、魅力的。

ただ中盤がやや淡白なのと、後半、内容は良いが

あと一歩ゆったりとダイナミックに響かせてほしい

Heisser

 

 

○ ピアノ : ロナルド・スミス

(time:17.14 recording:1997 age:75)

 

独特の全体感を持つ個性的な演奏。独特な

タメを含ませた、味のある旋律の歌い回しは、

不思議と耳に印象を残す。ただ音色

淡白ではないもののやや軽めでまた

高域の音が単調に感じられるところもある

Ronald Smith

 

 

○ ピアノ : ギオマール・ノヴァエス

(time:14.55 recording:1967? age:72?)

 

古い録音と思われるが、深みと重みのある美しい音。

曲が良く消化され、独特なバランス(意外なところでの

緩急など)独得なテンポやニュアンスにより

少し個性的で、しかし魅力的ある音楽が奏でられる。

後半がやや早めで薄味なのがわずかな不満点。

Guiomar Novaes

 

 

○ ピアノ : ロベルト・リーフリンク

(time:17.10 recording:1988 age:77)

 

柔らかさと繊細さをあわせ持つタッチとニュアンス、

温かさと誠実な人柄が伝わってくる演奏に好印象。

ただ、真面目さが裏目にでて、曲の展開ではやや

一本調子の単調さと紙一重、と感じるところもある。

最晩年の録音だが、年齢を感じさせるところはない。

Riefling

 

 

○ ピアノ : イリーナ・メジューエワ

(time:17.25 Live recording:2011 age:36)

 

スタジオ録音より約1分短い演奏で、メリハリが効いて

重々しさと軽快さのバランスが良く、変奏部の

繰り返しを魅力的に聴かせる。曲のつなぎ目に

入る間が効果的。後半はやや疲れが見えて丁寧さ

ではスタジオ録音に譲るが、全体のバランスも良い。

Mejoueva

※全集のボーナストラックで拍手部分を含めると18:14.

 

○ ピアノ : アレクセイ・リュビモフ

(time:17.01 recording:2009 age:65)

 

フォルテピアノ独特の響きを積極的に生かした演奏で、

独特の余韻を生かしたしっとりした音楽を奏でる。

ニュアンスの与え方が落ち着いた味わいに満ち、

中盤では、この曲がリュートのような暖かい響きを、

狙って作曲されたのかもしれないと感じる所もあった。

Lubimov

※フォルテピアノ (アロイス・グラーフ 1828)

 

○ ピアノ : ルドルフ・ブッフビンダー

(time:19.42 recording:2011 age:65)

 

音響的なダイナミズムを追究していると思われる演奏。

現代の録音技術も相まって、深く美しい音を聴くことが

できる。細部の表情も非常に豊かで聴きごたえがある。

ただ、曲を意図的に構築しようとするためか、各部の

差異を強調する傾向で、全体のバランスが少し悪い。

Bushbinder

 

 

○ ピアノ : 迫 昭嘉

(time:18.09 recording:2001 age:44)

 

粒だった音色で、楽譜が求めていることを表現力

豊かに出しきった正攻法の魅力がある。また、

高い技術を誇示せず柔軟さや温かさも感じる。

個性的な何かではなく、ピアノソナタそれぞれの

魅力を、いかに表現しているかに注目したい演奏。

AkiyoshiS

※同アルバム内の1・10・24番も魅力的。

 

○ ピアノ : ヴァシリー・プリマコフ

(time:16.22 recording:2006 age:28)

 

張りのある、瑞々しい響き。豊かに表情を描き分け、

静かな情熱と、客観的に自分の音を聞きながら

弾いている感じのクールさとのバランスがいい。

沈思するような深みこそないが、若い彼なりに

曲がよく消化されたうえでの演奏として心地よい

Primakov

 

 

○ ピアノ : アルトゥーロ・ベネディティ・ミケランジェリ

(time:17.22 recording:1965 age:45)

 

粒だった透明感のある音によって聴ける、軽快ながら

深みのあるミケランジェリ独特(この曲の)演奏の

最良の録音(私の所持する中では)ではないかと思う。

メランコリックさを醸し出すテンポとタメのある前半、

速いパッセージも無理なくこなす中盤など、表情豊か。

Michelangeli

※音色の美しさを誇るだけに、現代の音質で聴きたかった。

 

○ ピアノ : パーヴェル・エゴロフ

(time:17.38 recording:1992-07 age:unknown)

 

粒だった美しい音色、メランコリックな

世界観を醸し出す音楽性に独特の味わい

がある。どこかマイペースでいろいろと

詰めがいため総合点五ッ星はつけられ

ないが、この演奏ならではの魅力がある。

Pavel Egorov

 

 

○ ピアノ : アンドレ・ド・フロート

(time:19.08 recording:1998 age:58)

 

余韻を生かした豊かな音色でゆったりと奏でつつ

一音一音に無駄なく役割が付与された説得力のある

魅力的な演奏。ただ、全体に均質に気を配っている

ためか、大胆な対比や主従表現はあまり見られず、

印象の強さ、独自世界観による求心力はやや弱い。

de Groote

※ファーストチョイスとしても薦められる魅力的な全集。(HP)

 

○ ピアノ : イディル・ビレット

(time:16.29 recording:2005 age:64)

 

低域の効いた重みと、柔らかさのある音色が印象的。

語りかけるような個性的な旋律の歌いまわしがあり、

生き生きとした音楽の魅力が伝わってきて良い。

帯に「私にも弾けそうな演奏」とあり、技術的に未熟な

ところもあるのかもしれないが、独特な味がある。

Idil Biret

※トルコ出身

 

○ ピアノ : ピーター・タカーチ

(time:17.48 recording:2002 age:46)

 

SACDの音の魅力を最大限に生かし、他と一線を

画す重みと深みのあるピアノの音色が素晴らしい。

演奏もしっとりとした情感を大事にしたもので過不足

なく魅力的なのだが、ここぞ、とこだわりを持って

演奏している部分がもう一つ足りない感じがある。

PeterTakocs

HP ※資料価値の高い分厚いブックレットがついている。

 

○ ピアノ : ダニエラ・ヴァリンシカ

(time:16.30 recording:1993〜6 age:unknown)

 

生気あふれる、少し中期ソナタ的なアプローチ。

鮮やかさのある音色、快活なリズム。

私はもう少し枯れた演奏のほうが好きなのだ

ただ元気なだけではなく、ツボを心得た抑揚があり

しっとりと聴かせるところもあり、これはこれでいい。 

Varinska

 

 

○ ピアノ : ケイス・ウィーリンガ

(time:16.50 Live recording:1994 age:36)

 

繊細な表情に富んだ味わいのある演奏。

間の取り方やニュアンスの与え方がとてもいい。

こなれたタッチ、曲のつなぎ目も滑らか。ライブゆえ

小さなミスが多いが、演奏に一つの美学が貫かれ

独自の世界を弾き切った魅力が勝り気にならない

KeesWieringa

 

 

○ ピアノ : イリーナ・メジューエワ

(time:18.11 recording:2009 age:34)

 

明瞭さと柔らかさを両立し、丁寧で繊細、

一音一音の響きが豊かで美しい。(録音も良い)

第一印象では、ため・揺れなどのアクセントや

ニュアンスが少なく、クールすぎかと感じたが、

大げさな表現を嫌っているだけで、十分ドラマチック。

Mejoueva

 

 

○ ピアノ : ユーリ・キム

(time:18.01 recording:1997 age:unknown)

 

繊細かつ低域の厚みもある音色で、時に柔軟で

しっとりとし、時にキビキビと表情豊かにタッチを

使い分け、深みある音楽を奏でる。録音も良く、

ピアノの音がクリアなのもいい。中盤には解釈の

やや曖昧なところもあるが、独特の美意識が光る。

Yuri Kim

 

 

 ピアノ : チャールズ・ローゼン

(time:19.27 recording:1969-70 age:42-43)

 

フランス文学の博士号を持つインテリピアニスト。

派手さを求めることなく、しっとり、じっくりと細部まで

丁寧かつ表情豊かに描く演奏。展開や構成をしっかり

抑えながら、表現に硬さがなく自然体。技術の確かさと

気負いのなさの両立が、独特の魅力を生んでいる。

CharlsRosen

 

 

○ ピアノ :ミエチスラフ・ホルショフスキ

(time:18.10 recording:1950? MONO age:60?)

 

古い録音なので期待してなかったが、あれれ、

しっとりと歌っていてとても良い。

柔らかく語りかけてくるような温かみのある音楽

中盤に少し退屈なところもあるが、鮮やかさと

落ち着きを両立した演奏は、繰り返し視聴に耐える。

Horszowski

※1950年の録音としては、聴きやすい音質。

 

○ ピアノ : スビャトスラフ・リヒテル

(time:14.53 Live recording:1975 age:60)

 

ピアノの表現力を最大に生かすダイナミズムと、

独特の音色と、柔軟かつ緊張感を失わないテンポの

絶妙な組み合わせによって、幾度かハッとする

美しさを見せてくれる。荒いなぁと感じるところも

あるが、リヒテルの演奏ならではの魅力がある。

S Richter

※音質は悪くはないが観客の咳などのノイズ多い。

 

○ ピアノ : エドウィン・フィッシャー

(time:15.21 recording:1954 MONO age:68)

 

曲の見事な再構築(無駄な音や響きが感じられない)

によって生まれる厳粛さや品位と、しっとりとした

抒情性を両立させた魅力的な演奏。

古い録音のため、音質はそれなりだが、時代性に

左右されない解釈ゆえに、古くならない演奏と思う。

Fischer

※1954年の録音としては、聴きやすい音質といえる。

 

○ ピアノ : 岡田 佳子

(time:19:48 recording:2011 age:unknown)

 

しっとりとしたタメなどの微妙なニュアンスに

情感が込められているのに好感を持つ。

“洗練された音”と紹介することはできないが、独特の

味わいがあり、ゆっくりとしたテンポを飽きさせずに

聴かせる(この演奏ならではの)魅力がある。

岡田佳子

 

 

○ ピアノ : ルイ・ロルティ

(time:19.41 recording:2010 age:51)

 

ゆっくりと弾き、ワァァンと空間に減衰する音の響きを

積極的に生かす演奏。その暖かい音色に美学を感じ、

繊細さと丁寧さに好感を持つ。ただ、テンポの流れを

妨げてまで響きを重視するところがあり、私は、もう少し

シメる所はシメて表現にメリハリを与えてほしいと思う。

LousLortie

※音色へのこだわりか、後期ソナタのみファツィオリを使用。

 

○ ピアノ : フレディ ・ ケンプ

(time:16.10 recording:2000 age:23)

 

優美さ(上品さ)と素直さが印象的な演奏。

丁寧で繊細。淀みなく最後まで滑らかに流れていく。

淡白すぎず、優しい歌の印象がほのかに残る。

ダイナミックさがないわけではないが、響きの厚みや

迫力を求める向きには、不満が残るかもしれない。

F-kempf

※YAMAHAピアノを愛用している

 

○ ピアノ : ウィルヘルム・ケンプ

(time:14.33 recording:1951 MONO age:56)

 

比較的速いテンポの演奏ながら、肝心のフレーズでは

しっとりとタメ、情感のこめられた歌を聴くことができる。

しかし、いくつかの箇所では速く弾きすぎてせわしない

様相を見せるところがあり残念。リマスターしきれず

低域がモコモコしているのが印象を悪くしているかも。

Kempff

※モノラルながら1950年代とは思えない音質。

 

○ ピアノ : ミヒャエル・コルスティック

(time:19.01 recording:1997 age:42)

 

柔らかな音色と積極的にタメを用いてしっとりと歌う。

独特な間合いの取り方で、中・後半はこの演奏ならではの

雰囲気を醸し出していてとても素晴らしい。ただ、唯一

前半変奏部の緩急の切り替えが極端で、この部分が

もう少し落ち着いていたら最高なのに、と残念に思う。

Korstick

※30番・31番は非常に素晴らしい。

 

○ ピアノ : マリア・ユーディナ

(time:13.43 recording:Unknown age:Unknown)

 

個性的!!強烈に緩急を生かした解釈に驚く。

中間部などは超速で駆け抜けるが、曲全体として

聴かせるべきところは、時に端正で力強く、時に

しっとりと歌わせ、独特の魅力が感じられる演奏。

古い音源を、華やかで生き生きとした音に回復。

Maria Yudina

※Restoration:Vista Vera 2005 音質回復技術は見事。

 

○ ピアノ : ビクター・ローゼンバウム

(time:20.41 recording:2004 age: 52)

 

独特のゆったりとしたリズムの取り方で細部のもつ

表情を一つ一つ丁寧かつ豊かに描きだしてもいる。

柔らかく誠実、温かみのある響きの美しい演奏

中盤にやや退屈なところもあるが、完成度は高い。

一つの世界を描ききった演奏には説得力がある。

Rosenbaum

 

 

○ ピアノ : パウル・パドゥラ=スコダ

(time:16.07 recording:1980 age:53)

 

全てのピアノソナタをベートーヴェンの作曲当時の

ピアノで演奏し、しかもそれぞれの楽器の魅力を

存分に生かした演奏になっている画期的試み。

フォルテピアノの魅力はリュビモフに劣ると感じるが、

作曲者が想定していた曲の具体的な姿が浮かぶ秀作。

skoda

※フォルテピアノ (コンラート・グラーフ 1824年製)

 

 ピアノ : アナトリー・ヴェルニコフ

(time:19.25 recording:1974 age:54)

 

音像が広く、上質で深く美しい演奏。繊細な美しさと

構築性を両立している。巧みなタッチとテンポの

コントロールで微妙な音の表情(抑揚)を幅広く描き

分けているのが見事。録音も良い。少し変奏部の緩い

テンポはやりすぎで、たるんで感じられるのが惜しい。

Vedernikov

 

 

○ ピアノ : ガブリエルチョドス

(time:22.55 recording:2001 age: unknown)

 

ダイナミックで力強いタッチと、繊細で美しい音色を

両立、しっとりとしたニュアンスも美しく5つ星レベル。

しかし、部分的にテンポが少しゆっくり過ぎる。

違和感があるほどではないが、テンポ以外が

非常に素晴らしいだけに「なぜこのテンポ・・・」かと。

Gabriel Chodos

 

 

○ ピアノ : スティーブン・ハフ

(time:16.19 Live recording:2008 age:47)

 

柔軟なタッチから生まれる粒だった音色と、各パート

の丁寧な描き分け、歯切れの良いリズムによる

多彩な表情をもつバランスのよい演奏中盤に

音楽が弱くなるのが惜しい。また、上位と聴き比べ

てしまうと(ライブゆえか)少しだけ音幅を狭く感じる。

Stephen Hough

 

 

○ ピアノ : アリーナ・カ

(time:15:50 recording:2005 age:23)

 

力強さと繊細さを両立し、柔軟で抑揚の利いた

しなやかな音楽を奏でる。音の保持がうまいのか

曲が息継ぎすることなく脈々と流れてゆく。

強弱の抑揚も巧みだし、音像もボケないが、

ダイナミックな表現力については物足りない。

kabanova

※シャコンヌ・交響的練習曲・32番と私の好きな曲満載

 

★★★★

 

 

○ ピアノ : タチアナ・ニコラーエワ

(time:18.12 Live recording:1987 age:63)

 

独自の解釈・美学を感じる表情の豊かな演奏。

「え?ここで休止?」等と個性的な展開が

各所でみられるが「なるほどこう弾くのもいいな」

思わせる魅力と説得力がある。正当派云々に

こだわらない方には、一聴をおすすめしたい。

Nikolajewa

※音質は良いほうだが観客の咳などのノイズ多い。

 

○ ピアノ : パウル・パドゥラ=スコダ

(time:16.22 recording:1987age:60)

 

慎重で丁寧、抒情性を大切にした出だしが

とてもいい。録音もよく、響きの美しさもまずまず。

パート毎の表情の描き分けが確で、その分

いくらかクッキリした傾向(特に後半の高域)と

感じるが、情感を損なうほどではなく、好印象。

sukoda

※アラウ・バックハウス・スコダによる32番の聴き比べCD

 

○ ピアノ : スティーブン・コヴァセヴィチ

(time:17.27 recording:1973 age:33)

 

コントラストを上手に用いたスケールの大きい表現で

響きが豊かな演奏。強打後の弱い旋律が、

柔らかい音質と相まってとても甘く美しく響く。

ただ唯一、中間フォルテパートを速く弾くときに

肩に力が入りすぎるのか、表情が単調に感じられる。

kovacevich

 

 

○ ピアノ : ミキ・スクタ

(time:17.44 recording:2008 age:48)

 

導入部のしっとりとしたニュアンスが素晴らしい.。

前後半のたゆたう表情と対比させる独特の美意識で

中盤では積極的にリズムを刻み、表情に幅を与える

工夫が感じられるが、反面、曲の一貫性が少し崩れ

全体の曲想をどこへ持っていこうとしているのか曖昧

Miki Skuta

 

 

○ ピアノ : ジョン・オコーナー

(time:17.28 recording:1990 age:43)

 

丸みのある柔らかいタッチで繊細な音楽を奏でる。

情感の豊かさと、躍動的なリズムなど多彩な

表現が違和感なく共存しており、W・ケンプに

学んだというのも納得。ただ唯一、録音が原因か

音のレンジがわずかに狭く、少し輝きに欠ける音

O'CONOR

※アイルランド出身(HP

 

○ ピアノ : ピーター・ゼルキン

(time:19.02 recording:1984-85 age:37-38)

 

詩情を醸し出すために様々なニュアンスの工夫が

施された演奏・録音に好感を持つ。タッチや間の

取り方、空間のエコーを利用して、フォルテピアノの

乾いた音にしっとりとした響きを加えることに成功

している。音が混じりすぎる所もあるがやむを得まい。

Peter Serkin

※フォルテピアノ (コンラート・グラーフ)

 

○ ピアノ : アルトゥーロ・ベネディティ・ミケランジェリ

(time:16.34 recording:1961 MONO age:41)

 

前半のリズムがやや単調なのが気になるが、

中盤以降はミケランジェリ独特の柔らかいタッチと

重なりの美しい音の魅力を感じる。また、

トリルなどで細かくリズムを刻むところも美しく、

モノラル録音であることを忘れて聴き惚れてしまう。

Michelangeli

 

 

○ ピアノ : マリア・グリンベルグ

(time:16.50 recording:1966 age:58)

 

各パートの役割が意識され、繊細で豊かな表情に

描きわけられた演奏。ただ、古い録音ゆえの少し

鈍い音色と抑えすぎの出だしで第一印象だけは

今一つだが、その後は情熱的で表情豊か、さらに

終盤に向かっては感情のこもった歌が素晴らしい。

Grinberg

 

 

○ ピアノ : アンドレアス・ヘフリガー

(time:17.29 recording:2003 age:Unknown)

 

とても自然に耳にスッと入ってくる演奏。

退屈に感じるところがなく描きだされる音楽が

始終、生き生きとしている。特別な個性を求める

のでなければ、歌うところはしっとりと奏で、表現

の豊かさもあるこの演奏は十分魅力的だと思う

Haefliger

 

 

○ ピアノ : アンジェイ・ラトゥシニスキ

(time:21.40 recording:1981 age:Unknown)

 

シャープでデリケートな良さと、表現の柔軟さが

両立された演奏で大変魅力的。第2楽章はかなり

ゆっくり弾いているが、十分に豊かな音楽を聴かせて

くれる。内容はトップクラスと感じたが、唯一高音域

タッチが少し耳につくのが本当に惜しい・・・。

ratusinski

 

 

○ ピアノ : 辻森 公恵

(time:16.00 recording:2002 age:Unknown)

 

柔らかいタッチと響きが多めの音色。しかし、甘く

流れはしない。曲の表情を繊細かつ対比効果豊かに

描き、また、響きを生かす美しい“間”が各所にあり、

印象深い。美しい響きとドライブ感を維持しながら

(ダレることなく)一気に歌いあげている。

辻森公恵

※32番の録音では高域がマイクから遠く感じる。(HP

 

○ ピアノ : アンティ・シーララ

(time:17.49 recording:2011 age:32)

 

しっとりとした歌い口で情感が感じられる好奏。

演奏技術も確かな感じで、ソツがなく聴き易い

ただ、深みのようなものより、シャープ・スマートさを

好む傾向が感じられる。淡泊ではないが、この演奏

ならではと感じさせる“何か”が少し足りない。

Antti Siirala

 

 

○ ピアノ : F・W・シュヌアー

(time:16.32 recording:1995 age:66)

 

しっとりとした歌い口と、力強い構築感の両立が

印象的。また、響かせ方が独特の音色も興味深い。

ただ、中盤の早いパッセージでは、少しつんのめる

感じのテンポ運びが気になった。指運びに少し

不器用さを感じるが、解釈の豊かさでカバーしている。

Schnurr

※この偉そうな写真は印象が悪いが、演奏は違うと感じた

 

○ ピアノ :ミハイル・プレトニョフ

(time:16.38 Live recording:2000 age:43)

 

柔らかさと力強さを兼ね備えた美音、のびのびと

曲を展開させていく演奏が心地よい。伝統的な

基礎力と柔軟な即興性の共存が(人間的な

温かさを感じさせる)彼の演奏の魅力。即興性と

相反するためか、構築性と完成度は少し弱い。

Pletnev

 

 

○ ピアノ : パウル・コーメン

(time:18.13 recording:1993 age:unknown)

 

しっとりとした歌い口、間のとり方、繊細な表情を

持つ各部、全体が醸し出す雰囲気がいい。

フォルテピアノの魅力を引き出すよりは、現代の

ピアノに近い印象を感じる。よく曲相を組み上げた

魅力ある演奏だが、現代ピアノで弾いては?とも。

Komen

※フォルテピアノ (コンラート・グラーフ c1830)

 

○ ピアノ : スチュワート・グッドイヤー

(time:16.08 recording:2010 age:32)

 

特別抜きん出た何かはあまり感じられないが、

しっとりとした情緒感や美しい音色、心地よい

リズムなど過不足のないバランスのとれた演奏。

他と比べなければ満足できるレベルだが、5つ星と

比べると、わずかに表現に軽さや単調さを感じる。

goodyear

 

 

○ ピアノ : ウィルヘルム・バックハウス

(time:13:42 Live recording:1960 age:76)

 

バックハウスによるこの曲は、どれも13〜14分の

速さの演奏で、強烈な求心力を感じさせる一方で

要素の削り捨てが気になるが、この演奏は丁寧さが

印象に残り、要所ではしっとりと、タメも用いたり

独特の美しさが感じられる彼の最良の録音と思う。

Backhause

※アラウ・バックハウス・スコダによる32番の聴き比べCD

 

○ ピアノ : 園田 高弘

(time:18.55 recording:1994-95 age:64-65 )

 

自ら校訂版を出版するほどの徹底した研究に基づく

各部の性格つけをしっかりと描き出す独特の演奏。

非常に説得力がある。ただ、理知的な解釈ゆえか、

情感的な歌や感覚的な鮮やかさはあまり感じない。

誠実な中にしっとりとした歌はあり、好感が持てる。

園田高弘

 

 

○ ピアノ : 園田 高弘

(time:17.51 recording:1968 age:38 )

 

各部の性格つけをしっかりと描き出す独特の演奏

約30年後の録音と同様で、間合いを生かす

しっとりとした歌もあり、抒情性もある。しかし、

フォルテの音、特に高域の音がきつく、後半の

長いトリルを始め、高域の音が耳につくのが残念

園田高広

 

 

○ ピアノ : クラウディオ・アラウ

(time:19.49 recording:1985 age:82)

 

アラウ82歳の時の録音。老いに起因すると思われる

テンポの不安定さや、細部を大事にしすぎて全体の

構造を崩していると思われる面もあるが、余韻を生かす

間の取り方や、旋律の描き方、深みのある音色や

ニュアンスなど、アラウならではの味は健在である。

Claudio Arrau

 

 

○ ピアノ :クレイグ・シェパード

(time:16.54 Live recording:2005 age:58)

 

しっとりとした情感を感じさせる柔らかい表現と

集約力というか、ほどよい緊張感が両立され心地

良い。ただ、印象的な音の響きが少なく感じられる。

和音構築や残響音への意識が少し弱いのか。

ライブ録音ゆえか、演奏者自身の動作ノイズ多し

Sheppard

HP

 

○ ピアノ : フリードリヒ・グルダ

(time:16.19 recording:1958 age:28)

 

若い日のグルダがすでに豊かな表現力を獲得して

いたことを証明する演奏。中盤にはやや力任せな

表現や抑えすぎからくる単調さもあるが、繊細で

しっとりとした歌いくちやドラマティックな展開は良い。

この年代の録音でステレオとは珍しい。良質の

Gulda

 

 

○ ピアノ : ジュリアス・カッチェン

(time:18.06 recording:1968 age:42)

 

穏やかでゆったりとしたテンポ、柔らかいタッチ

印象的。テンポや強弱の対比を強調する方向性

ただ、速いところのパッセージが荒く速いだけに

感じられてしまうのが残念。その他大部分の

緩やかなところや後半の盛り上がりは素晴らしい。

Katchen

※60年代の録音としては悪くない音

 

 ピアノ : ダニエル・バレンボイム

(time:19.29 recording:1967 age:25 )

 

ゆっくりとしたテンポで、しっとりと深みのある歌い口、

後半の聴かせ所のドラマティックな展開ぶりは、

この歳にして大物ぶりを感じさせる演奏といえる。

ただ、ここでは、中盤の扱いが単なる他の箇所との

対比を効かせる発想の域を出ていない感じがする。

Barenboim

 

 

○ ピアノ : エリック・ハイドシェック

(time:16.29 recording:1993 age:57)

 

独特の解釈・美学に基づく演奏。緩急の付け方や、

リズムの取り方やアクセントに癖が強い。

第一印象は良くなかったが、音色などの美意識や、

一貫性のある自由な表現力に独自の魅力があると、

他の多くの演奏を聴けば聴くほど感じるようになった。

Heidsieck

※コンサートに行ってみたら、素敵な紳士だった。

 

○ ピアノ : ウィルヘルム・バックハウス

(time:13.00 Live recording:1961 age:77)

 

最速のテンポでまとめあげる個性的な演奏。

剛柔あわせもつ確かなタッチで美しい音色を

奏でる。中盤以降の展開は、私は少し速すぎと

感じるが、やや強引に余韻や細部を犠牲にしつつ

彼の音楽を築きあげ、独特の魅力を生みだす。

Backhaus

 

 

○ ピアノ : ペネロープ・クロフォード

(time:16.53 recording:2010 age:Unknown)

 

フォルテピアノをしっとりと響かせ、残響不足を

全く感じさせない。むしろリュート的な音色の魅力が

感じられる演奏。前半は快活な傾向で、少し

ニュアンスが物足りなく、淡泊に感じられるところも

あるが、後半は抒情感も出てきて改善される。

Penelope Crawford

※フォルテピアノ (コンラート・グラーフ 1835)

 

○ ピアノ : ウラディミール・アシュケナージ

(time:17.15 recording:1957 age:20)

 

重々しい出だしと、情感たっぷりの前半は

20歳の演奏とは思えない、充実した内容に驚く。

中盤の各パートの関連付けが弱く感じられるのが

惜しい。それでも真摯な表現に好感度高し。

この年代にしてはまずまず良好な音質といえる

Ashkenazy

 

 

○ ピアノ : クン・ウー・パイク

(time:17.40 recording:2007 age:61)

 

各フレーズに明確な意図を込め、独自の美学に

貫かれた魅力がある。だが第一印象はあまり

良くなかった。この曲の名盤達が持つ共通の

ニュアンスがいくつか欠けていたからだが、

欧米の感性とは異なる地平の独特な表情がある。

Woopaik

※2012年来日時の私のコンサート評はこちら

 

○ ピアノ : クリストフ・エッシェンバッハ

(time:22.16 recording:1978 age:38)

 

神経質なまでに硬質でシャープなタッチ。観念的な

テンポ設定。第一印象は良いものではなかった。

しかし聴き続けているとその極端さの向こうに、

真摯に曲へ向かい合うの姿勢と、奥深さが感じ

られようになり、だんだん好感度が増してきた。

Eschenbach

※この緻密な構築性は、29番では非常に魅力的。

 

 ピアノ : ダニエル・バレンボイム

(time:20.05 Live recording:2005 age:63 )

 

緩急、強弱、タメなどふんだんに駆使して

ドラマチックに仕上げる劇場型の演奏。ライブゆえか、

21年前の録音よりこの作為が露骨で好きではない。

中期ソナタではこの作為は曲の高揚感に貢献している

と感じるが、後期3曲では何故かわざとらしく感じる。

Barenboim

※演奏の質は高く高揚感が重要という方にお勧めの全集。

 

○ ピアノ : パウル・パドゥラ=スコダ

(time:16.23 recording:1970 age:43)

 

比較的速めのテンポで引き締まった展開で、

そっけない印象も少し感じたが、解釈の曖昧な

部分がないためか独特の説得力のある演奏。

ただ、もう少し間とか余韻を使って音の響きに

色気とか、しっとりとした味わいがほしいと思う。

skoda

 

 

○ ピアノ : イアン・ホルサム

(time:16.24 recording:2004 age:unknown)

 

特別な凄みは感じられないが、平均的で欠点無し

と、切って捨てられない演奏。全体のレベルが高く、

おさえてほしいツボを外していない。中盤が

やや抑え気味で少しモゴモゴしているのと、速い

パッセージになると、表現が平板になるのが惜しい。

IanHoltham

 

 

○ ピアノ : ラッセル・シャーマン

(time:18:17 recording:1994 age:64)

 

少し響きが多めの録音。前半など緩やかな箇所で

抒情的な風情が感じられるのに好感を持つ。

一方、変奏部後半などの速いパートでは、手が

ついていっていないのでは?と思う箇所もあり、

曲全体の表現の一貫性を欠く印象がぬぐえない。

Russell Sherman 

 

 

○ ピアノ : マウリッツオ・ポリーニ

(time:17.18 recording:1977 age:32)

 

力強くかつ柔らかなタッチで緩急・強弱自在に

操り、音色豊か抑揚のある音楽を奏でる

しかし、あまり繰り返して聴きたいとは思わない。

音楽に与える様々なニュアンスが、どこか観念的

というか、型通り表面的に感じられてしまう。

Pollini

 

 

 ピアノ : ウィルへルム・オーメン

(time:18.27 recording:1995 age: unknown)

 

しっとりと歌い、誠実丁寧な演奏で録音もよく、

強く印象に残る演奏ではないが、なかなか良い。

ただ、中盤の意図的にゆっくり弾くところのテンポは

自然さを欠き、違和感を覚える。観念的な狙いが

透けて見えてしまうと、音楽の世界観が弱くなる。

Ohmen

HP