†ろしかめ研究室†

KMZ Zorki 3-C ★★★★ 発売年月1956年? /標準価格 ?
使いやすさ抜群のZorki完成形


バルナック型Zorkiの完成形。初代Zorikから順次改良を重ね、機能面での不便さをほぼ克服したモデル。ボディはかなり大きくなり、初代のような致密さや繊細さは消えたが、操作性は格段に向上している。特に、大きくて見やすいファインダー&距離計と、一軸式シャッターの装備が目を引く。裏蓋取り外し式でフィルム装填も簡単。シンクロターミナルとアイレットを搭載。ボディの質感も高く、レトロな風格と実用性のバランスがとても良い。
(2007.04.13 upd)

バルナック型Zorkiの中では最も気に入っているモデルだ。ともかく、重厚な外観がカッコイイし、Zorki 1で不便だと感じた点がほとんど改良されている。つまり、便利になっても安っぽくならなかったという、貴重な存在なのだ。同じZorki 3でも、3-C以前のモデルはシャッターが二軸式だったり、シンクロターミナルがなかったりだし、Zorki-4後期型や4Kは外観がかなり安っぽくなってしまった。また、Zorki-5以降はバルナックの面影がなくなっている。Zorki 3-C(およびZorki 4前期型)だけが、風格と機能と兼ね備えたモデルと言えるだろう。

ボディのロゴを見る限り、Zorki 3は「Zorki 3-M」や「Zorki 3-C」という表記方法が正しく、Zorki-4以降は「Zorki-4」「Zorki-4K」「Zorki-5」といった表記方法を取っているようだ。

●基本スペック

シャッターは一軸式不等間隔回転式でB,1"〜1/1000"を実現。シンクロ接点は1/25"。ファインダーは連動距離計兼用。ほぼ等倍で明るく、視度補正も入っている。フィルム装填は裏蓋取り外し式。ノブ巻き上げ、ノブ巻き戻し。シンクロターミナルとアイレットを装備しているが、セルフタイマーはない。

●シャッター

一軸不等間隔回転式−−と言うと何やら難しい感じがするが、我々が普通に考えているシャッターの一歩手前くらいの技術レベルに来ているということ。初代ZorkiやZorki 2にはそもそもスローシャッターがなかった。Zorki 3になってスローシャッターも装備されるようになったが、高速/低速の二種類のシャッターダイヤルを持つ二軸式だった。それが、3-Mで一軸式に改良され、3-Cにも引き継がれた。シャッターダイヤルが一つしかないというのは、そんなにアタリマエのことでもないわけだ。

「不等間隔」というのは、シャッターダイヤル上の速度メモリが等間隔に並んでいないこと。「回転式」というのは、シャッターを巻き上げたり切ったりすると、それに応じてシャッターダイヤルが回転すること。シャッターを切る際にシャッターダイヤルに指が触れていたりすると、速度が狂うというという欠点がある。内部機構がそのままトップカバーの外に出てしまっている感じだ。なお、巻上前でも速度変更はできるが、メモリが一致しないので余り意味はない。

●ファインダー

このZorki 3-Cで最も有り難かったのは、実はファインダーの改良だ。初代Zorkiは距離計とファインダーが別々で面倒だったし、アイポイントが低いせいか、眼鏡で覗く場合にはアイピースに眼鏡をぴったりくっつけなければならなかった。おまけに、そのアイピースにギザギザが刻まれているため、眼鏡のレンズが傷だらけになってしまうのに閉口した。

それに比べると、3-Cのファインダーは一眼式だし明るいし、倍率が大きいし、視度補正も入っているし、眼鏡のレンズは傷つけないしで、実に使い易くなっている。ただし、アイポイントは低いままのようで、眼鏡で覗くと四隅が蹴られる。というよりも、真ん中しか見えないと言った方が正確かもしれない。したがって、眼鏡を掛けている場合は、50mmでも外付けファインダーを使う方が好ましい(それでは一眼式の意味がないのだが…)。

●フィルム装填、巻き上げ、巻き戻し

フィルム装填は裏蓋取り外し式。まだ裏蓋蝶番式にはなっていないが、初代の底蓋式に比べると遥かに便利。巻き上げや巻き戻しは未だにノブ式。ただ、これは見た目ほど不便ではない。そもそも気持ちに余裕がないときには使わないカメラだから、ゆっくり巻き上げて、のんびり巻き戻せばよい。Zorki-4Kではレバー式巻き上げになったが、むしろ異和感があって嫌だ。Zenit 3Mの出来損ないみたいな感じでカッコよくない。

●デザイン

シンクロターミナルを備えたZorki CやZorki 2-Cの問題点は「デザインの破綻」にあった。「破綻」というは言い過ぎかも知れないが、シンクロターミナルなしのZorkiやZorki 2に比べると、軍艦部が間抜けになった印象は禁じ得ない。ターミナルの分だけ、トップカバーを高くしなければならないのだが、他の部分をいじらなかったので、バランスが崩れて間延びしてしまったのである。

Zorki 3になると、ファインダーが大型化したために、軍艦部のデザインの大幅な見直しが行われた。デザイン的に言えば、実は無印3が最も魅力的だ。ただし、無印3および3-Mにはシンクロターミナルはない。3-Cになってターミナルが追加されたが、それに伴い再度軍艦部のデザインに変更が加えられた。この変更はなかなか成功した。ファインダーが大型化したおかげで、ターミナルを追加してもデザインバランスが崩れなかったのだ。魅力と言う点では無印3に一歩及ばないが、破綻のない良いデザインに仕上がっている。これはそのままZorki-4にも受け継がれた。

Zorki 3-CとZorki-4初期型は、デザインも機能も基本的に同じカメラである。ところが、Zorki-4後期型になると、基本デザインを踏襲しながらも細部がかなり変わった。量産化に伴い、手を抜いてコストを削減する方向に走ったと思われる。たとえば、3-Cや4初期型ではファインダーや距離計窓は縁取りがされていたが、4後期型では省略されている。ボディの表面もダイキャストをそのまま表面処理して塗装していた?のが、安っぽいビニールレザーに変更された(バリエーションはいろいろあるようだが)。さらに、正面ロゴやシャッター速度のメモリが彫り込みから印刷に変更されている。

文字で列挙すると大した違いには思えないかもしれないが、実際にZorki 3-Cや4初期型と4後期型を見比べると、風格に雲泥の差があることを実感できるだろう。また、速度ダイヤルのプリントはしばしばかすれて、実用面でも問題が多い。

●実写テスト

■これが噂のORION-51(売却済)
JUPITER-8 50mm/F2、ORION-51(15じゃないよ) 28mm/F6とKMZ製ターレットファインダー、それにSekonicのセレンメーターを持ってテスト撮影に行ってきた。やはり、一枚撮るのに物凄く手間が掛かる。まず、ロケーション決めて、ターレットファインダーを覗いて構図を決め、おもむろにセレンメーターを取り出して露出をチェック。絞りと速度を合わせたら距離計を覗いてピント調節をしていると、雲が出てきて露出が狂うので再度メーターを取り出して、露出を調整してようやくシャッターを切ることができる。コンパクトでパチパチとは全然違う。しかし、これが正しい人の道というものだ。

で、24枚撮り一本使って満足できる写真は一枚だけ(^_^; おまけに、ラボが強烈にタコで目茶苦茶な発色。オーバーに焼くのは毎度のことだが、今回は赤がカブってる。しょうがないので、ネガをスキャンして画像ツールで色を整えたら、タコラボ・プリントの100倍くらい奇麗な写真になった。500円というのは現像代のみと考えるべきかな…

ということで、撮影には随分手間が掛かるが、それはこの時期のレンジファインダー機が抱えていた本質的な特性で欠点とは違う。むしろ、欠点は……実は内面反射。けっこう強烈なフレアが発生していた。半逆光ぐらいでもけっこう出る。ひょっとすると、順光でも出ているんじゃないか(被写体の白い部分から反射してくる光で……(^^;)。原因はレンズかボディか…? レンズの描写自体は悪くない。流石にJUPITER-8もORION-51(15)も定評のあるレンズだ。ただ、JUPITER-8は開放だと甘いかな? ピントの精度が出ていないという可能性も高いが(自分でOHしちゃったレンズだし)。

いずれにしろ、実戦投入はもう少しシステムを整備してから。JUPITER-9とJUPITER-12を買って、ボディをオーバーホールして、フードを作らないと、実用目的で使うのはちょっと厳しい。

主要諸元
型式[Lマウント・レンジファインダー]
発売年月1956年ころ?
マウントLマウント
ピント二重像合致式(距離計・ファインダー兼用一眼式)、視度補正付
絞り手動
露出計なし
シャッターB,1,1/2,1/5,1/10,1/25,1/50,1/100,1/250,1/500,1/1000、X接点1/25"
シャッターダイヤル不等間隔一軸回転式
ストロボシンクロターミナル&アクセサリシュー(ホットシューではない)
巻き上げノブ巻き上げ
フィルム装填裏蓋取り外し式
外観145×90×35mm/590g(ボディのみ、実測)
その他 ◎セルフタイマーなし、アイレットあり。


Longrun reports ...

2005.05.15/JUPITER-8付で入手。ちょっとワケありで、非常に安く入手できた。下手するとレンズ単体の価格よりも安いかも知れない。ボディはスローシャッターも含めて比較的良好だが、レンズはヘリコイドがかなり重い。

2005.05.16/JUPITER-8のメンテナンスをしていたら、ヘリコイドが固着。スムーズに動くようにグリグリしていたら、逆に全く動かなくなってしまった。しょうがないので分解掃除。ほぼ完全にバラした。けっこう苦労したが、意外に何とかなるもんだ。ただし、ピントの精度は少々心配。

2005.05.22/研究室のOB会に持って行く。パーティースナップには全然適していないことが判明。ナニヲイマサラ…(^_^; 

2005.06.06/近くの神社でテスト撮影。今回はORION-51が中心。被写体がなくて困った。


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