(2004.04.01/2004.10.04upd)
機 種 | 発売年 | 特 徴 |
Zenit(初代) | 1952 | 底蓋式、ノブ巻き上げ、シンクロターミナルなし、小型 |
Zenit-C | 1955 | Zenitにシンクロターミナルを付けたもの。 |
Zenit 3 | 1960 | レバー巻き上げ、裏蓋取り外し式に変更、ボディ巨大化 |
Kristall | 1961 | レバー巻き上げ、裏蓋開閉式に変更。3Mがメジャーモデルになったが、Kristallの方が外装が凝っている。中身は基本的に同じ物。 |
Zenit 3M | 1962 |
共通スペックは、手動絞り、露出計なし、非クイックリターンミラー。また、ミラーが小さく、プリズムの透明度が低いため、ファインダーは視野率が低く暗い。その割にはピント合わせは困難ではないが、実用性には乏しいと言わざるをえない。
しかし、初代/Cは小型でデザインが秀逸であるため、独特の存在感を持っている。構造的にはZorki-1とビゾフレックスを一体化させてしまったもの。ベース部分がZorki-1なので、一眼レフとは思えないほど小さい。パンケーキ・レンズであるIndustar-50を付ければ、コートのポケットにも入りそうだ。
これに対して、3/3Mはかなり大型で、一般的な一眼レフとほぼ同じサイズになっている。デザイン的には、3は没個性的、3Mは多少アクがある、Kristalは外装がハンマートーン仕上げで凝った感じだが優れているとは思わない。やはり、M39ゼニットの華はZenit-Cだろう。
Mir-1 | 37mm/F2.8 | 一般的に入手可能な唯一の広角レンズ |
Industar-50 | 50mm/F3.5 | パンケーキ、初期Zenitシリーズの標準レンズ |
Helios-44 | 58mm/F2 | 3M付属 |
Jupiter-9 | 85mm/F2 | ポートレート名玉 |
Jupiter-11 | 135mm/F4 | 通常入手できるレンズの中では一番の長さ |
以上5本は実際に入手済みなので、間違いなく存在する。以下のレンズはインターネットでチェックしただけなので、実在するのかどうか確信が持てないものもある。
Orion-15 | 28mm/F6 | パンケーキ、Topogonコピー |
Jupiter-3 | 50mm/F1.5 | 一番明るい標準レンズ |
Indastar-22 | 50mm/F3.5 | 初代Zenit付属? |
VEGA-1 | 50mm/F2.8 | 未見 |
Indastar-10 | 50mm/F3.5 | |
Indastar-26M | 50mm/F2.8 | |
Industar-61 | 52mm/F2.8 | |
Helios-40 | 85mm/F1.5 | むやみに明るいが描写は? |
Industar-24M | 105mm/F3.5 | 未見 |
Tair-11 | 133mm/F2.8 | |
Jupiter-6 | 180mm/F2.8 | |
Telemar-22 | 200mm/F5.6 | 価格はそれほどではないがF5.6はキツイ |
なお、M39マウントとL39マウントのフランジバックの差は約16mm。したがって、16mmの中間リングを使えば、L39ボディでM39レンズを使うことも不可能ではない(実際、LマウントのIndustar-50はモロにそういう造りになっている)。距離計連動は無理だが、絞って目測で使うなら使えないことはないかも知れない。
一方、M42とM39はマウント径が異なるだけなので、簡単な変換リングを使えばM39マウントのレンズをM42ボディで使用することができる。ただし、絞りピンはないから手動絞りにしかならないし、そもそもM42マウントは安価で玉数が豊富なので、あえてM39のレンズに細工をして使わなくてならない必然性がない。逆が可能ならば物凄く有り難いのだが……
マウント | マウント径 | フランジバック |
---|---|---|
M39 | φ39mm | 45.??mm |
L39 | φ39mm | 28.80mm |
M42 | φ42mm | 45.46mm |
M39の正確なフランジバックは不明だがM42よりも少し短い。そのため、M39レンズをM42ボディで使うと、厳密には無限遠が出ない。なお、M42マウントもメーカーや機種、個体によって微妙に値が異なる。
機 種 | 発売年 | 特 徴 |
Zenit E | 1965 | 手動絞り、セレンメーター付き(Bはメーターレス) |
Zenit EM | 1972 | 自動絞りに改良(BMはメーターレス:ごく少量生産) |
Zenit TTL | 1977 | セレンメーターから指針式のTTL露出計(絞込測光)に変更 |
Zenit ET | 1981 | 手動絞り、自動絞り、メーターレスなどバリエーション多数 |
Zenit 11 | 1981 | EMとほぼ同スペック、最後のセレンメーター機 |
Zenit 12 | 1983 | TTLとほぼ同スペック |
Zenit 12XP | 1983 | TTL露出計を2点LED式に変更 |
Zenit 122 〜 412LS | 1989 | TTL露出計を3点LED式に変更、外装を樹脂カバーに変更 (注)500番台、600番台はチープなコンパクト |
絞り制御:@手動絞り → A自動絞り
露出計 :@セレンメーター → A指針式TTL露出計 → BLED式TTL露出計
ただし、M39 Zenitとは異なり、完全に時系列順に進化しているわけでもなさそうで、系統樹的に見るとちょっとややこしくなる。何故、TTLのあとに11を出したのかとか、ETの位置付けとか、ちょっとすっきりしない。
絞り/露出計 | セレンメーター | 指針式TTL露出計 | LED式TTL露出計 |
手動絞り | @E, ET | -- | -- |
自動絞り | AEM, ET, 11 | BTTL, 12 | C12XP, 122〜412SL |
なお、M42フルメカニカルのZenitは初代のEであろうと、最新の412LSであろうと、基本的に同じ物である。自動絞りの追加やメーターのTTL化、外装の変更などはあるが、基本ユニットは1965年以来ほとんど変化していない。1/30〜1/500"のシャッター、視野率の低い小さなミラー、手動で戻さなければならいないカウンタ、判りにくい巻き戻しボタンなどは、40年間ほとんどそのまま受け継がれている。
その一方で、AE機やモードラ機も出しているのだから、改良する能力がないわけではないだろう。むしろ、40年間不変であるということは、その時点で完成された道具だということではないだろうか? 確かに、ウデさえ確かなら、Zenit EとJupiter-9で素晴らしいポートレートを撮影することも可能だ。ソ連では、カメラが人に媚びることを拒否し、人もそれを是とした−−せざるを得なかった。そうした条件の下で良い結果を得るには、己の能力を磨くしかない。高性能のAFカメラが安価で買える日本人が、あえてロシカメを使う理由は、そこにあるような気がする。 |
以上の点から推測すると、ETはZenitの本流の機種と言うよりも、廉価機、ライセンス生産機のような位置付けだったのではないだろうか。たとえば、私の持っている自動絞りタイプのETは、おそらく11の廉価コピーという位置付けで、独自の存在意義はなかったように思う。
http://www.rus-camera.com/camera.php?page=zenit&camera=zenitet(←消えたみたい(;_;))に数種類のETの判別方法が掲載されているが、ここにリストアップされていないモデルもあるようで、外観から判別するのは非常に困難。一番簡単な判別方法はレンズの型番で、HELIOS-44は手動絞り、HELIOS-44Mは自動絞り。 |
となると、やはり実用性が高いのはセレンメーター・タイプのEM/ET/11だが、ETは11の廉価コピーなので、選ぶとすればEMか11。しかし、EMはまだシャッターダイヤルが回転式で不等間隔のはず。したがって、11が最も良い選択肢ということになる。
Zenit 11以降のモデルは進化ではなく単なるバリエーションと考えている。TTL露出計を進化と見るか、バリエーションと見るかは議論の別れるところだが、ZenitのTTL露出計は精度、信頼性、操作性のすべてに問題がある。実用性を考えると、決してセレンメーターよりも進化しているとは言いがたい。Zenit TTLはZenit 11よりも前に出ているが、その意味で“バリエーション”と見做す。 |
初代Zenitで問題になり、以後改良されたのは@ノブ巻き上げ、A底蓋式フィルム装填、B非クイックリターンミラー、C露出計なし、D手動絞り、E一軸回転式シャッター、の6点。
改良点 | 初代Zenit | Zenit 11 |
◎マウント | M39 | M42 |
@巻き上げ | ノブ巻き上げ | レバー巻き上げ |
Aフィルム装填 | 底蓋式 | 蝶番式 |
Bミラー | 非クイックリターン式 | クイックリターン式 |
C露出計 | なし | セレン・メーター |
D絞り制御 | 手動絞り | 自動絞り |
Eシャッターダイヤル | 一軸回転式 | 一軸不回転式 |
マウント | 機種 | 改良点 |
M39時代 | 初代Zenit・Zenit C | (Cでシンクロターミナル装備) |
Zenit 3 | @レバー巻き上げ | |
Zenit 3M/Kristall | A裏蓋蝶番式 | |
M42時代 | Zenit E | Bクイックリターン・ミラー Cセレンメーター内蔵 |
Zenit EM | D自動絞り | |
Zenit 11 | E一軸不回転式シャッターダイヤル |
「自動絞り」とは、レリーズの直前に絞り羽根が絞り込まれるシステム。ファインダー像を見ている間は常に開放状態になっているため、明るくてピント合わせや構図の決定が楽。構造的には、レンズのマウント面に絞りピンがあり、ボディのマウント下部のパネルが絞りピンを押すことで、所定の値まで絞り込むようになっている。「AUTO Takumar」や「AUTO CHINON」の「AUTO」はこの「自動絞り」のことを指す。「自動露出(AE)」とは全く関係がない。
なお、M42 Zenitの「自動絞り」は本物の自動絞りではない。シャッター半押しで絞り込みピンが押される仕組みなので、レリーズ直前にファインダーが暗くなる。強制的にプレビューされるようなもの。また、初期のPentaxのように、絞り込みは自動的に行われるが、開放に戻す時は手作業が必要なものもある。これらの不完全な自動絞りを「半自動絞り」と呼ぶ事もある。
一方、「手動絞り(実絞り)」は、絞り値を設定した時点で絞り羽根が絞られるシステム。このため、開放以外に設定するとファイダー像が暗くなり、構図決定やピント合わせが困難になる。そこで、通常は開放状態でピント合わせや構図の決定をしたあと、いったん構えを崩して絞りを設定し、再度構え直してレリーズする。使い勝手は悪いが、ボディ側に絞りを制御するシステムは不要。
「手動絞り」は単純で互換性が高いが、実際の使用にはあまりに不便であった。そこで、あらかじめ設定しておいた絞り値で絞りリングが止まる「プリセット絞り」という方式が開発された。これならば構えたまま所定の絞り値まで絞ることができるし、手動絞りのボディがそのまま使える。ロシカメのレンズを見る限り、プリセット方式はかなり普及しているようだ。