(1999.12.19/2006.02.17upd)

ASUS TX97シリーズ

本家Socket 7の完成期のマザーボードで、Intel 430TXチップセットを搭載した優等生的な存在。安定性が高く、温度モニタなども組み込まれていて、使い勝手がたいへんに良い。ただし、IntelがSocket 7から370への完全移行を目指してMMX Pentiumを捨て去る一方、AMDなどがSocket 7を独自に拡張しようとした時期でもあり、過渡的な要素も多い。高クロックのK6-2やMUを使うには多少の工夫や改造が必要になることがある。また、初期モデルではレイアウト上の問題があり、使用するケースによってはクーラーの高さに制限が出ることも。USBはサポートしているが、MB上のコネクタの規格が一般的でないため工夫が必要になる。なお、AGPはサポートしていない。

●バリエーション

TX97シリーズには、TX97、TX97-E、TX97-X、TX97-XE、TX97-L、TX97-LEなど、さまざまな種類がある。末尾の記号は「X」がATX仕様で、「E」がSIMM/DIMM両対応(混在不可)、ということらしい。なお、その他にも「N」とか「V」とかがあるようだが、詳細は知らない(NはNLXかも知れない…)。
 TX97 / TX97-E
TX97の基本モデル。ともにBaby-ATで、TX97がDIMM専用、TX97-EがDIMM/SIMM両対応(排他利用)。基本的に、Vcore=2.8v、FSB=66MHz、倍率=x3.5までで、公式サポートの上限はMMX Pentium 233。ただし、私の手許には2.1v/83MHz/x4.5までの設定がシルク印刷されたTX97-E REV.1.12もある。なお、ZIFソケットの配置が悪いため、CPUクーラーとシャドウベイが干渉することがある。

 TX97-X / TX97-XE
TX97/TX97-EのATX仕様らしい。これは持っていないのでよく知らないが、当然レイアウトは変更されている。

 TX97-L / TX97-LE
TX97/TX97-Eの改良版で、TX97-LがDIMM専用、TX97-LEがDIMM/SIMM両対応らしい。ともにBaby-AT仕様だが、TX97/TX97-Eよりもボードのサイズが一回り小さくなり、ZIFソケットのレイアウトも変更された。これによって、CPUクーラーの高さに制限がなくなった。また、CPUも2.1v/83MHz/x4.5を正式サポートしている。

●基本スペックとCPUサポート

初代TX97の基本スペックは以下の通り。要するに、MMX Pentiumとその互換CPU用のマザーで、所謂Super 7 CPUはサポートしていなかった。なにしろ、マニュアルにはMMX Pentiumでさえ200MHzまでしか記載されていない。しかし、後継機種を見れば判るとおり、430TXチップセット自体は低電圧/高クロックのCPUにも対応できるので、初期モデルのTX97やTX97-Eでも、K6-2/400MHz程度までならサポートは可能。ただし、それなりの工夫は必要になる。

■無印TX97の基本スペック
型式 Socket 7/Baby AT 
PCB Rev.1.21初期リビジョンと思われる
発売日1997年2月かな?マニュアルに記載
チップセットIntel 430TXIntel最後のSocket 7用チップセット
対応CPUPentium75〜200MHz/AMD K5/Cyrix 6x86K6設定もリザーブはされている
コア電圧2.5v/2.7v/2.8v/2.9v/3.4v/3.5v隠し設定により2.2v化可能
FSB50MHz/60MHz/66MHz/(75MHz)/(83MHz)75MHzは準正式対応、83MHzは裏技に近い
倍率Intel:x1.5/x2/x2.5/x3, Cyrix:x1/x2/x3/x4基板上に印刷されているCyrixの倍率とは異なる
RAMDIMM(3.3v)×3, Max256MBスロットと容量の関係に制限あり

▼チップセット
チップセットはIntel最後のSocket 7用チップセットである430TX。安定性は折り紙付きだし、性能的にも高い評価を受けている。おそらく、430HXと並ぶ、最も「安牌」のSocket 7用チップセットだろう。

なお、430HXは430TXよりも1年も前に出ているが、HXの方が上位のチップセットのようで、メモリ容量やL2キャッシュの容量はHXの方が大きい(HXのメモリ容量は512MB、TXは256MB)。TXのアドバンテージとしてはACPIのサポートが上げられるが、総じて430HXがハイエンド(サーバ用途等)で、430TXが中級機用(クライアント等)ということのようだ。低電圧/高クロックCPUへの対応に関しては、HXもTXもほぼ同等らしい。

▼対応CPU
無印TX97の取扱説明書によれば、正式対応している最速CPUは以下の通り。2.5v/66MHz/x3が限界なので、目茶苦茶遅い。そのままでは、クロック的にも電圧的にもK6-2、MU-433などの高速CPUに対応できない。

正式対応している最速CPU
Intel : Pentium 200(66MHzx3=200MHz)
AMD : K5-PR133(66MHzx1.5=100MHz)
Cyrix : 6x86-166+(66MHzx2=133MHz)

しかし、基板のプリントによれば、FSBは75MHzまで出せるし、Intel系でもCyrix系でもx3.5が可能だ。また、MU(2.8v版)にも対応している。これを信じれば、Pentium 233MHz(P55C最速?)、AMD K6-233MHz(3.2v版)、Cyrix MU-333GP(262MHz)が使えることになる。 しかし、233MHzでは200MHzと大差はないし、333MHz相当のMUは発熱に苦しめられそうだ(MU-300が物凄かった)。さらに、いずれにしてもGUI-OSを使うには少々力不足の感は否めない。

恐らくそのまま使える最速CPU
Intel: Pentium 233(66MHz×3.5=233MHz)
AMD: K6-233(66MHz×3.5=233MHz)
Cyrix: MU-333GP(75MHz×3.5=262MHz)

ということで、本命はK6-2/400MHzやMU-433ということになる。これらのCPUを使うには、コア電圧を下げることと倍率を高くすることが必要。

▼8.4GB超HDD
一応、8.4GB超にも対応しているようだ。特に制限は書かれていない。ただし、一部メーカーの8.4GB超のHDDの使用には、BIOSのアップデートが必要。IBMが危ないんだよなあ…これはちょっと困った。

●Super 7 CPUへの対応

本来、「Super 7」というのはFSB=100MHzをサポートしたシステムを指す用語だと思うが、残念ながら430TXではそこまでは出ない。83MHzが上限のようだ。したがって、厳密な意味でのSuper 7ではないが、ここではコア電圧2.2vをサポートし、概ね300MHzを超えるクロック速度を実現するシステムを「Super 7」と呼ぶことにする(私は勝手に「Super 7-」と呼ぶこともあるが…)。

さて、この「Super 7」を実現するには、低電圧と高倍率のサポートが必須になる。高クロックのCPUは軒並み2.2v以下だし、FSBの上限が83MHzではx4以上の設定がないと300MHzを超えない。TX97-Eの後期リビジョンやTX97-Lなどでは標準で2.1v/83MHz/x4.5をサポートしているが、初代TX97などでも、ほぼ同等の設定を実現する方法がある。

▼BIOSアップデート
まず、大前提としてBIOSをアップデートしておくべきだろう。これは、設定に必要と言うよりも、単にマザーがCPUの型番を判別できるようにするためのものだと思うが、やはりやるべきだろう。

BIOSのアップデートファイルはASUSのHP(www.asus.com.tw)から入手できるようだが、このHPはWindows/IE完全依存という非常にタチの悪い作りなので、OS/2からではまともにアクセスできない。仕方ないので、ftpサーバに直接ログインする。最終アップデートはtx5i0108.zipのようだが、tx5i0104.zipでも低電圧/高倍率対応は可能なようだ。

url: ftp.asus.com
user id: ftp (anonymous)
pass word: (mail addr.)
directory: /pub/ASUS/mb/sock7/430tx/tx97
file: tx5i0104.zip〜tx5i0108.zip
utility: /pub/ASUS/mb/flash/aflash221.zip

  OS/2版Mozillaでも、 http://support.asus.com/download/download.aspx?SLanguage=en-us で型番(ここではTX97)をSEARCHすれば、ダウンロードファイルまでたどり着けることは確認した。ただし、JavaScriptをオンにすること。また、これによると、BIOSの最終バージョンは0112.001(ベータ)らしい。

なお、BIOSの書き込みプログラムにはflash, aflash, pflash, pflash2, amiflashと5種類もあり、それぞれ対応マザーが異なるそうだが、通常のIntel系-P&Pマザーボードであれば、aflashで問題ないそうだ(AMI BIOSのAthlon/Duron系はamiflashを使うらしい)。ちなみに、本項執筆時点では実際にはアップデート作業をしていないので、ここの記述は未検証。

▼コア電圧の2.2v化
■2.2v設定
VID0 None
VID1 1-2
VID2 None
電圧設定に関しては、実は初期モデルから2.2vに対応している模様。単に取扱説明書などに記載がなく、隠し設定という扱いになっているだけのようだ。ちなみに、ASUSのHPによれば、初代TX97のコア電圧を2.2vにするには、ジャンパを右表のように設定すればよい。また、2.1vサポートのTX97-E/Lなどでも、ボード上には2.2v設定は書かれていないのだが、同じ設定で2.2vが出せるらしい。なお、TX97-Lの取扱説明書に記載されている電圧設定は以下の通り。2.1v〜3.5vを0.1v刻みで出せるようになっている。おそらく、この電圧設定はTX97シリーズ共通のものだと思われる(ただし、リビジョンによって設定が異なる場合もあるので注意。下手すると死ぬよ)。また、2.1v、2.9v、3.5vは同じジャンパ設定で、CPUによって自動的に電圧が切り替えられるらしい。もし、BIOSが認識できない2.1v CPUを載せると…ちょっと恐いね。

▼K6-2新コアのx6設定
次に倍率の問題だが、最初に注目したいのは、K6-2の新コア(26351)。こいつは、x2設定でx6が出る。したがって、コア電圧を2.2v、FSBを66MHzに設定し、x2設定でK6-2/400(新コア)を差せば、そのまま400MHzで動作する。マザー側で高倍率を出す必要はない。TX/HXマザーのユーザーに取っては、恐ろしくありがたいCPUだ。もちろん、75MHz×6=450MHzや、83MHz×6=500MHzも可能だ。

  新コア/旧コアを判別するには、CPU表面左下に書いてある数字を見ればよい。「26351 」という刻印があれば新コアだそうだ。金色で刻印してあれば写真だけでも判別しやすいが、色なしの刻印の場合はちょっと難しそうだ。オークションで入手する際には注意。なお、新コア/旧コアが混在しているのは300MHz〜366MHzだけで、380MHz以上はすべて新コアだという話も聞いたことがあるが未確認。

▼マザー側での高倍率化
K6-2の新コアはありがたいのだが、問題点もある。まず、旧コアのK6/K6-2や他社CPUでは当然x6設定は使えない。また、x3.5の次がx6では間が空きすぎていて、中間の倍率を使いたいときは不便だ。これは、静音化の際にはかなり大きな問題になる。発熱量をチェックしながらクロックを決めるときに、選択肢の幅が非常に狭くなる。

ということで、素直にx4〜x5.5の設定が使いたいことも多い。実際、TX97-E後期リビジョンやTX97-Lでは、x4やx4.5設定を正式サポートしている(x5やx5.5も出るらしいが正式サポートはされていない)。じゃあ、2.2v設定と同様に初期モデルのTX97でも隠し設定で高倍率化できるのか…というと、実はそんなに簡単でもない。

■高倍率設定
jumperx5x5.5
BF22-3 2-3
BF12-3 1-2
BF01-21-2
高倍率をサポートしているマザーでは、倍率設定ジャンパがBF0/BF1/BF2と3本あるのに対して、x3.5までしかサポートしていない初期モデルではBF0/BF1の2本しかない。この欠けているBF2が高倍率を出すのには必須なのである。たとえば、x5およびx5.5設定(正式サポートではない)は右表のようになる。BF2がないとどうにもならない。また、下図はTX97-Lの取扱説明書からの転載だが、やはりBF2がないとx4およびx4.5は設定できない。

ただし、BF2がないと言っても、まったく存在していないわけではない。確かにジャンパ端子は付いていないが、BF1の横にBF2用のプリント配線は来ている。したがって、BF2に相当する部分のプリント基板にリード線を半田付けして、BF2ジャンパの替わりにすればよい。もちろん、半田付けをしてしまうと設定変更が面倒になるが。また、半田付けではなく、CPUソケットの特定のピン穴に細い導線をブリッジさせることで、同様な効果を出すこともできる。

  もちろん、「ゲタ」という方法もある。私は基板に半田ゴテを当てるのには抵抗があるので(処女信仰(^_^;)、むしろゲタの方が好ましい。しかし、初期モデルのTX97などでは、ゲタを付けるとケースのシャドウベイとぶつかってしまう。また、ゲタはクーラーの選択肢が狭いため、ファンレス化が難しくなるのが難点。

●USBコネクタの問題

TX97シリーズは標準でUSBをサポートしている(ただし、デフォルトではDisable)。今日びUSBは必須なので、当然これを使いたいと思うのだが、コネクタの接続で少々苦労する。マザーボードのUSB用のコネクタには大きく別けて2種類の配列があるのだが、TX97シリーズのコネクタはそのいずれとも異なっている。
 2列9ピン配列
1つのUSBは4本の端子を必要とする。通常はUSB 2ポートで1セットになっているので、4本ずつ並行に配列して8本。さらに逆差し防止用のピンを加えると2列9本になる。これが一応Intel推奨の業界標準の配列(Intel Front Panel I/O Connectivity Design Guide)のようだ。ASUSでも、P/I-P55T2P4などはこのタイプ。なお、逆差し防止ピンをUSB1の側に付けるものと、USB2の側に付けるものの2種類があるようだ。

 2列8ピン配列/2列10ピン配列
やはりUSB 2ポートで1セットの配列だが、ピンを対称(逆並行)に配列することで、どちら向きに差して問題ないようにしたもの。逆差し防止の必要がないので、単純に2列8本の配列になる。GigabyteのGA-586HXなどがこのタイプ。また、GNDを各2本にして2列10ピンとしたものも多い。
で、TX97シリーズのUSBコネクタなのだが…これが困ったことにどちらでもない。正確に言えば前者の2列9本に近いのだが、USBに加えてPS/2やIrなどを一体化した2列17ピンという独自タイプなのである。USBだけならば2列9本タイプがそのまま流用できるのだが、そうなると、残った部分に上手くはまるPS/2の方がない(マザー付属のPS/2は17ピン全部を被うためUSBと同時には使えない)。多少なりとも改造が必要なる。

改造自体はそんなに難しくはない。まず、汎用のUSBブラケットを買ってきて、コネクタからピンを全部引っこ抜く。コネクタのストッパをピンセットなどでめくりあげれば、簡単に引っこ抜ける。で、引っこ抜いたピンを、TX97添付の17ピン・コネクタ(PS/2しか付いていない)に差し込む。差し込む順番は次の通り。

  赤(+5v)、白(USB-)、緑(USB+)、黒(GND) ※灰(GND)は取り付けない、黒と灰はそのままでは通電していない

なお、17ピン・コネクタのコードの接続方法には、差し込み式と圧着式がある。差し込み式の場合は上記の方法で良いが、圧着式の場合は先端のピンを切り取って、コードを圧着金具に挟み付ける必要がある。面倒…というか、ピンを切り取って傷物にするのがイヤだけどね(処女信仰(^_^;)。

もちろん、別売で専用のMIRボードも出ていたが、今となっては探すのに苦労する。一応、ネットショップで互換品を売っている店を見つけたが、それもシャクだ…。なんか、オンボードのUSBはあきらめて、PCI用のUSBボードを買う方が賢明なような気がしてきた。ちなみに、ASUS P5A-Bも2列17ピン配列。良いマザーに限って、こんな配列。

●ZIFソケットのレイアウトの問題

既に何度も述べているが、初期モデルTX97の最大のネックは実はCPUソケットの位置。CPUクーラーの位置にマイクロタワー・ケースのシャドウベイがぶつかってしまうのだ。大型のヒートシンクはおろか、標準サイズのクーラーですら使えないことがある。静音化の際には物凄いデメリットになるし、ボードをケースに装着したままでのCPU換装は困難を極める。私がTX97やTX97-Eの使用をあきらめた最大の理由が、まさにこれ。

ちなみに、我が家のケースの場合、CPUソケットがマザーボードの後端から23cm以内に収まるか、下端から12cm以内に収まらないとシャドウベイと干渉する(どちら一方の条件を満たせば干渉しない)。どうやらこの23cm/12cmというのが標準的な値のようで、TX97-Lでは、この数字に合わせるようにソケット位置がずらしてある。

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