(2003.02.13/2005.11.10upd)
で、この初代Pentiumは、FSBこそ50MHz、60MHz、66MHzと多彩だったが、電圧は基本的に3.3v単一電圧だけだった。3.52vや3.45vのVRE版というのもあったようだが、存在理由はよく知らない。まあ、一般論として、電圧が高い方が動作は安定するし、当時はまだ消費電力が深刻な問題にはならなかったので、高い方が良いくらいに考えられていたのかも知れない。それとも、低電圧では動かないデキの悪いCPUが高電圧版として安価で売られていたのだろうか? ちなみに、3.3v版のPentium 75の消費電力は3w/8w(通常/最大)、Pentium 133だって4w/11wだった。ファンレスも可能なレベルである。3.5vにしても知れている。
ちなみに、何で同じ設定で高速化が図れるのかと言うと、WinChip C6は倍率設定に細工がしてあって、x1.5設定でx4動作するのであった。つまり、Pentium 90 (60x1.5)を抜いて、WinChip C6を差せば、60x4=240MHzで動作するのである。ただし、この初代WinChipのパフォーマンスは悲惨なレベルで、同クロックの初代Pentiumと比較すると6割程度の速度しか出ない(特に浮動小数点演算)。つまり、240MHzと言っても実際は150MHz相当にしかならない、かなりインチキ臭いものだった。ただ、発熱量は比較的小さく、同クロックのPentiumよりも安かったし(当たり前だが)、MMX命令も一応サポートしていた。何よりSokcet 5のマザーでそのまま240MHzが出せるというのは、それなりに魅力的だったような気がする。
なお、WinChip C6には200MHz(66x3)、225MHz(75x3)というのも存在するが、これらの存在理由はよく判らない。x3設定はPentiumでもWinChipでも同じなので、単純な交換だけではクロックアップできないだろう。x2設定でx3動作するというハナシもあるが資料不足で確認できない(マザーもWinChipはなかなか正式サポートしてくれなくて、取扱説明書にもジャンパ設定が書いてない)。また、定格使用ではないが、C6 200MHzをPentium 75(50x1.5)と換装すれば、そのまま50MHzx4=200MHz動作するという使い方も考えられる。
ともかく、WinChip C6はODP的な存在意義しかなかったが、このWinChip 2/2AはPentium互換CPUとして、それなりのポジションを得た。また、特筆すべきは消費電力の少なさで、一般的な3.5v版でも同クロックのMMX Pentium (コア2.8v)よりもかなり低い。200MHzで比較すると、MMX Pentiumは最大16w、WinChip 2は最大12wである。3.3v版ではさらに低く、200MHzで最大9w程度しか食わない。AMDやCyrixの同クラスCPUが最大20w程度消費するのに比べると、際立ったメリットである。
もっとも、3.3v版はかなりレアのようで、私も実物を見たことはない。ひょっとすると、3.5v版がそのまま3.3vで動くかも知れないが、試したことはない(噂では動くらしい)。また、12wや9wという数字も、どこまで信用してよいのか、多少疑問ではある。少なくとも、通常時の発熱量で比べると、MMX Pentiumの方が小さいような気がする。というか、チップの構造上、WinChip 2は常時最大発熱をしているのではないかと思われるフシがある。理論的な根拠はないが、使用してみた実感である。
ところが、例外がある。それが、MUの最終バージョンであるMU-400(285MHz)とMU-433(300MHz)だ。プロセスルールを変更し(0.35μ→0.25μ)、コア電圧を下げて(2.9v→2.2v)、一気に低消費電力化を実現した、MU最後の死に花である(0.25μ/2.2vの333なども存在はするらしいが未見)。最大消費電力は、MU-400で12w、MU-433でも13w。通常時のデータがないのでファンレス化が可能かどうかは判らないが、低速の静音ファンで十分使える。しかも、整数演算に関しては表記速度よりも速いくらい(浮動小数点演算は実クロック並みだが)。静音PC作成にはかなり魅力的な選択肢であるが、何しろ今となっては入手が難しい。
全般的に言って、K6/K6-2シリーズはパフォーマンスに優れていて、単位クロック当たりの消費電力も比較的小さい。たとえば、K6-2/400 AFRを例に取ると、消費電力は10w/17w。200MHzに換算すると5w/9wで、MMX Pentium 200の7w/16wよりも大幅に低い。ファンレス化可能なレベルだ。我が家のLinuxサーバはK6-2/500を200MHzでファンレス動作させているが、熱暴走は一度も起きていない。その上、同クロックのMMX Pentiumよりも1割以上パフォーマンスが優れていると言われている。Socket 7の決定版のCPUと言ってもよいだろう。
しかし、マザーの方が問題になる。というのは、430TXや430HXなど、Socket 7の定番チップセットを搭載したマザーでは、通常、FSB=66MHz、電圧=2.5v、倍率=x3.5が限界で、2.2vのコア電圧とx4以上の倍率が必要なK6-2を載せることができない。そもそも、本家IntelはMMX Pentium 233を最後にSokcet 370に完全移行しているので(モバイル版には266MHzや300MHzのMMX Pentiumも存在する)、Intel規格にないSuper 7なんぞをサポートする義務はないのである。もちろん、SiSとかVIAとかAlladinとかのチップセットの搭載されたマザーならばK6-2を正式サポートしている物があるが、探すとなるとけっこう大変だ。
そもそも、なんで今更Socket 7なのかというと、ATフォームファクターの古いケースが捨てられないからだ。10年以上前にアメリカから輸入した486DX2のマイクロタワー機の篋体をまだ大事に使っているので、どうしてもATでなくてはならない。背面板の交換も不可能な時代なので、ATXのマザーは乗らないのである。baby-ATのマザー自体がもはや珍しくなっている時代に、チップセット云々はなかなか言っておられない。いわんや、Super 7対応のマザーは多くがATX仕様である。となると、何とかTXやHXでK6-2を動かさなくてはならない。
では、どうするのかと言うと……まず、電圧は隠し設定で2.2vが出せるようになっているマザーが多い。430TX搭載のマザーならば、ほぼ大丈夫だと思う。各メーカーのHPを調べて見るとよい。しかし、倍率の方は少々厄介で、高倍率を出すにはBFのジャンパピンが3本必要だが、多くのマザーでは2本しかない。端子が出ていれば自分で半田付けするとか、ZIFソケットの特定のピンをショートさせるという方法もあるようだが、非常に気乗りがしない。
救いの神となるのが新コアのK6-2。こいつは、x2設定でx6動作するのだ。つまり、FSB=66MHz、倍率=x2の133MHz設定にしておけば、66MHzx6=400MHzで動作してくれる。非常に有り難いCPUなのである。ただ問題は、6倍しか設定できない点。x3.5の次がx6では、消費電力を考慮してクロックダウンをしたいときなど、細かな調整が効かない。FSB側で調整する方法もあるが、パフォーマンス的に不利だろう。
Vcore | CPU | clock | TDP/MAX | ||
3.5v | WinChip 2 200 | 66MHz x 3 | --/12w | ||
WinChip 2 225 | 75MHz x 3 | --/13w | |||
WinChip 2A 300 | 100MHz x 3 | --/16w | |||
3.3v | Pentium 200 | 66MHz x 3 | _7w/16w | ||
WinChip 2 200 | 66MHz x 3 | --/ 9w | |||
WinChip 2A 300 | 100MHz x 3 | --/12w | |||
2.8v-2.9v | MMX Pent 166 | 66MHz x 2.5 | _6w/13w | ||
K6 /166 ALR | 66MHz x 2.5 | 10w/17w | |||
K6 /200 ALR | 66MHz x 3 | 12w/20w | |||
2.2v | K6 /266 AFR | 66MHz x 4 | _8w/12w | ||
K6 /300 AFR | 66MHz x 4.5 | _9w/15w | |||
K6-2/300 AFR | 66MHz x 4.5 | 10w/17w | |||
| 66MHz x 6 | 10w/17w | |||
66MHz x 6 | 13w/16w | ||||
66MHz x 6 | 14w/23w | ||||
K6-2/500 AFX | 100MHz x 5 | 12w/20w | |||
MU-400 | 95MHz x 3 | --/12w | |||
MU-433 | 100MHz x 3 | --/13w | |||
1.8v | K6-2/300 ANZ | 66MHz x 4.5 | _9w/10w |
Super 7のもう一つの選択肢はMU-400/433。これは、実質的にSuper 7でしか使用できない(本来の性能が出せない)CPUなので、折角Super 7があるなら是非とも候補に入れるべきだろう。MU-433で最大13wという消費電力は大いに魅力的。
Socket 7ではファンレス化よりも低速ファンによる静音化を目指す方が現実的だと思う。定格14dbの静音ファンを5v化して使えば、多分7〜8db程度まで騒音を抑えられる。この超静音ファンならば何とか我慢できる範囲である。
ただし、いずれのCPUもOSインストール時にはファンを使用した。高負荷作業でファンレスは無理だと思った方が賢明だ。超静音ファンも少々心細い気がする。ファンコンを使って、12v定格での動作も可能にしておくべきだろう。
この数字をクリアできるのは、K6-2なら400AFRまで、K6は2.2v/2.1v版のみ、MUならば433/400のみ、WinChip 2とMMX Pentiumは概ねOK。あとは、上述の指針を参考にしてMBに合わせてCPUを決めることになるだろう。