†PCうそつき講座†

TOSHIBA EQUIUM S6400 Celeron E3200【u-tom】

作成開始日 2018.07.12
最終更新日 2023.09.13

TOSHIBAのオフィス用ミニPC。2008年1月発売のCore2 Duo機。OSはWindows Vista/XP。Opera Piccoloに似た長方形の筐体で、当時としてはかなり突出した小ささである上、スペック的にもデスクトップ機並?だったので、価格は22万円以上。ACアダプタ駆動で、ファンは筐体中央の8cmのCPUファンのみ。発熱と騒音が足枷になって、高性能CPUに換装することは難しい。

スペックを考慮すると、ノートPCにディスプレイとキーボードをつなぐ方が賢明かもしれん。「デスクトップ機並」なんぞと持ち上げたが、実際はCeleron Eで精一杯だもんな。

ともあれ、当時の技術力を凝縮した感じはする。コモデティ化する前のオフィス用小型PCという感じで、良い意味で造りが古い。NECのMK27R/B-Eがcrazygonなら、こいつはu-tomだよなぁ…(^_^) ただし、同時期のEPSON Endeavor ST110のCore2 Duoモデルが10万円以下だったことを思うと、ちょ〜っと強気に過ぎる価格設定のような気もする。

SPEC
CPUCeleron E3200/2@2.40GHz/Wolfdale/VT対応/65w/pm=1400 ※内部クロック200MHz
Core2 Duo E7500/2@2.93GHz/Wolfdale/VT対応/65w/pm=1900
Core2 Duo E4500/2@2.20GHz/Allendale/VT不可/65w/pm=1300
FANX-Fan RDL8015S (2000rpm/21.6dB/0.09A) ※静音ファン
DELTA AFB0812SHB (4000rpm/42.5dB/0.40A) ※爆音ファン
C/SIntel G31 Express+ICH7
RAM2GB:DDR2-667 1GB x2 Samsung M378T2953EZ3-CE6 ※標準は512MBらしい
VGAIntel G31 Express(64MB+192MB)
HDD80GB/2.5"/SATA150 : Fujitsu MHW2080BH
DVDCD-RW/DVD-ROM (IDE):TEAC DW-224E-V ※DVD-RW/RAM等も読めるらしい
LAN1000/100/10:RTL8110SC ※8169準互換、OS/2 GenMacで対応(後述)
AUDIntel HD Audio:Realtek ALC662? ※型番の確証なし
USBUSB 2.0 x4(前面x2+背面x2)
PS/2x2 (keyboard+mouse) ※故障とのこと
PCIなし
OSWindows 7 Professional (32bit) ※COAシールはWinXP
PWRACアダプタ(4pin)/定格42w(最大150w)

CPUの換装と発熱・騒音

CPUはCore2 Duo E4500(2.2GHz/Allendale/VT不可/65w)。初代C2Dの廉価モデルでキャッシュが少ない。VT非対応、FSBも抑えてある。旧passmark値は1200台でAtom 330の2倍強の性能。速度はともかく、VT不可はちと痛いか?もう少し上位のCPUに乗せかえれば良いだけの話だが…

と言うことで、Core2 Duo E7500(2.93GHz/Wolfdale/VT対応)に換装したところ、快調に動いてはくれたが、発熱の増大に応じてファンが常時爆音状態に。騒音低減のために静音ファンに換装したら、今度はCPU温度がすぐに50℃を超えるようになり、筐体も熱くて触れない状態に。実用は困難。が、Wolfdaleの正常動作を確認できたことは大きな収穫。

この実験結果、実は少々腑に落ちない。E4500はAllendale/266MHz、E7500はWolfdale/266MHzなので、アイドル状態ではE7500の方が低発熱でないと理屈に合わない(詳細後述)。

なお、S6400にはCeleron 430/1.8GHzモデルも存在する。こちらはシングルコアでTDPが35wと非常に小さい。本機もCeleronに換装すれば発熱を抑えられる…と思ったのだが、実際は真逆。Celeron 400系はSpeedStep(EIST)に対応していないため(*1)、常時フルスピード?で作動。Celeron 450を試してみたが、アイドル状態ではCore2 Duoよりも20℃近く高温になった。

(*1)サーバ用のCeleron 445は例外。445のみEISTにもVT-xにも対応している。ただし、LGA771なので本機では使用できない。

Core2 Duo世代のCeleronでも、Eモデル(dual-core)はEISTが有効。したがって、Celeron Eならば低発熱化も期待できるのだが−−思ったよりもクロックが高い。例えば、Sandy Bridge(Core第2世代)ならば、Celron Gが2.4〜2.7GHz、Pentium Gが2.6〜3.1GHz、Core i3が3.1〜3.5GHzと、CelG-PenG-Ci3の順でクロックがほぼ一直線に並ぶ(*2)。Ci3とCelGのローエンドを比較すると0.7GHzの差がある。しかし、C2D世代ではC2D/PenE/CelEがほぼ平行したクロックになっていて、ローエンドの差は0.1〜0.2GHz程度。これでは「Celeron=低クロック=低発熱」の法則は使えない。

(*2) Tモデルやモバイル・モデル等は除く。なお、Core2 Duo世代には、Core i世代のT/Sに相当するモデルは存在しないようだ。1-coreのCeleron 400系を除けばTDPはすべて65w以上。

coreAllendaleWolfdale
CLOCK (GHz)内部 (MHz)CACHEVT対応 CLOCK (GHz)内部 (MHz)CACHEVT対応
Core2 Duo 1.8〜2.66266/2004M/2M混在 2.53〜3.33333/2666/3M混在
Pentium E 1.6〜2.42001M不可 2.50〜3.33266/2002M混在
Celeron E 1.6〜2.4200512k不可 2.40〜2.702001M

どうやら、Core2 Duo世代では、キャッシュサイズによってPentium E/Celeron Eと差別化を図っていたようだ。動作クロックに大差がない以上、発熱を抑えるためにC2DからPenE/CelEに換装するのは、余り意味がなさそうだ−−と思っていたが、実はそうでもない。ポイントは;

内部クロックは333MHz/266MHz/200MHzの3種類
SpeedStepの倍率の下限はx6
Allendale(65nm)よりもWolfdale(45nm)の方が発熱が小さい

つまり、内部クロックが200MHzの場合、アイドル時の動作クロックは200MHz×6=1.2GHzまで下がる可能性がある。これは定格の動作クロックの値に寄らない。且つコアがWolfdaleであれば、発熱を最少限に抑えられる。ただし、Core2 Duo/Wolfdaleに内部クロック200MHzのモデルはないので、Pentium E5000番台/Celeron E3000番台が現実的な選択肢となる。

一方、定格の動作クロックが低くても内部クロックが266MHzの場合、アイドル時の動作クロックは266MHz×6=1.6GHzまでしか下がらない。且つコアがAllendaleだったりすると、発熱量はかなり大きくなる。例えば、C2D E6300/1.86GHz/266MHzのアイドル状態の温度は、C2D E4500/2.93GHz/200MHzよりも10℃くらい高い。

SpeedStepの最低倍率がx6というのは、あくまでも仕様上の話で、アイドル状態ならばいつでもx6まで落ちるという事ではない。実際、Core2 Duo E7500はx7(1.86GHz)までしか下がらなかった。しかし、Crystal CPUIDで強制的にx6(1.60GHz)とすることは可能だった。

アイドル時CPU温度(静音ファン使用)
CPU動作クロックコア内部EISTアイドル時クロック温度消費電力
Celeron E32002@2.40GHzWolfdale200MHz1.40GHz (x7)47℃34w
Core2 Duo E75002@2.93GHzWolfdale266MHz1.86GHz (x7)46〜47℃36〜38w
Core2 Duo E45002@2.2GHzAllendale200MHz1.20GHz (x6)45〜47℃36〜38w
Core2 Duo E63002@1.86GHzAllendale266MHz1.60GHz (x6)53〜55℃48〜52w
Celeron 4502.20GHzConroe200MHz不可2.2GHz60℃〜--
※ファンの回転数は温度に連動しているため「発熱量∝温度」という訳ではない(∝は比例)

SpeedStep不可のCeleron 450を除けば、見掛けの動作クロックが最も低いC2D E6300/1.83GHzが最も高発熱という皮肉な結果になった。無論、これはアイドル状態に限ったハナシで、高負荷が長時間連続するような作業(例えば動画のエンコード)などでは、全く違った結果になるだろう−−が、本機でそんな作業をするのは自殺行為。

本機のファンは必ずしもCPU温度とのみ連動しているわけではない。おそらく、ケース内センサーやC/Sのセンサーとも連動している。そのため、CPU温度のみが下がっても、ファンの回転数が落ちるとは限らない。

なお、E4500とE7500は温度・消費電力ともにほぼ同じだが、ファンの回転数はかなり異なる。E7500は最初から常時高速回転になり、静音ファンでもかなり耳障り。E4500は35℃あたりから始まり、だんだん熱が筐体内に籠っていく感じで、放置していても少しずつ温度が上がって行き、騒音も漸増する。静音ファンではそもそも排熱能力が不足しているようだ。

で、最後に試したのがCeleron E3200。このCPUのキモはWolfdaleで内部クロックが200MHz−−つまり、最も低発熱である事が期待できる。しかも、なぜかVT-xにも対応しており、その意味ではC2D E4500よりも上位のCPUと言える。結果は上記の表のように47℃だったが;

確かにcore 0は47℃だが、core 1は常時30℃台だった
ファンの回転数は1600rpm台で安定していて、かなり静かだった

つまり、CPU温度が比較的高いのはファンの回転数が落ちているせいで、発熱量は確実に低下しているようだ。と言うことで、ようやく実用面で問題のないシステムに辿り着いた。なお、passmark値で比べてもWEI値で比べても、Celeron E3200はCore2 Duo E4500よりも高性能である。

チップセット

チップセットはG31 Express。毎度お馴染みのローエンド向けのチップセットだが、OS/2がネイティブで安定動作する貴重なC/S。ただし、発熱はかなり大きい(TDP=17w)。私の大嫌いなi915G(TDP=16.3w)よりも高発熱。C/S温度は60℃を超え、筐体もC/S裏が物凄く熱くなる。しかも、HDD直下にあるため、HDDを炙ってくれる。アイドル状態でもHDD温度は47℃。高負荷の作業をしたら50℃超えは確実、故障率バカ上がり。まともに使うならSSDへの換装必須。

なお、上記の温度はファンを静音タイプに換装した場合の値。爆音ファンを使えばHDD温度も数度下がる。本機はCPUファンがケースファンを兼ねているため、CPUの都合だけで冷却能力を落とすと、C/Sの冷却ができずHDDにしわ寄せが来る…けっこう悩ましい。

発熱と騒音のまとめ

ストレージ周り

HDDは標準で2.5" SATA 80GB(1.5Gbps)1台。増設不可。なお、構造的に装着可能なのは9mmまたは7mm厚のHDD/SSDのみ。TOSHIBAの1TB/12.5mm厚を2台持っているのだが、ちょっと使えそうにない。SATA150の2.5"HDDと2@2.2GHzのCPUでは、Win7の動作は流石にもっさり。また、前述のようにHDDはC/S直上にあるため温度が上がり易い。本気で使うならSSDへの交換は必須。

光学ドライブはスリムタイプのDVD-ROM(CD-R/RW)。接続はslim IDE。DVDは-Rや-RAMも含めて読み込み可能だが、書き込みはできない。なお、未ファイナライズのDVD-RWは読めなかった。

この他にメモリカードリーダーも標準装備らしいが、これはUSB接続だろう(未確認)。

テレビとの接続

本機は居間用なのでテレビに接続することにした。問題になったのは画面の解像度。テレビ側は1366×768(16:9)というやや珍しい解像度で、S6400側に同じ設定はない。アスペクト比が同じ1280×720で代用しようとしたが正常に表示されなかった。結局、1280×768(16:9.6)で代用することになったが、この解像度で画面いっぱいに表示すると、数%ほど横に延びて表示される。デスクトップでの作業には支障はないが、動画再生は気になるレベル。

ただし、SMPlayer(私のデフォルトの動画プレイヤー)では、画面のアスペクト比を明示的に指定できるので、[モニターのアスペクト]を[16:9]に設定すれば、全画面表示で正しく表示される。ウィンドウ表示では多少問題が出るが、まあ、満足している。

テレビのドットクロックを調整すれば、正味の1280×768サイズで表示できるはずだが、それでは左右に黒帯が発生してしまう。同じく、テレビには標準のXGA設定(1024×768)もあるが、こちらはアスペクト比こそ問題ないものの、画面サイズが大幅に縮小されてしまう。

OS/2の動作

RAMをDDR2-512MBx1に変更したらOS/2が起動した。速度・安定性・機能とも、ほぼ問題がない。2.2GHzでも速度的にはスコスコ、充分実用的。V-OS/2で見られる「引っ掛かり」が少なく、かなりスムーズに動く。Mozilla系メーラーも1ウェイト掛かる感じはあるが、同クロックのPenMよりはかなりマシ。メイン機でなければ、このままでも何とか実用になる。あるいは、PORONという選択肢もある。

なお、当初はマウスホイールが機能しなかったが、「USBマウス+USBマウス・ドライバ+s-mouseドライバ」で正常動作するようになった(USBキーボード・ドライバは不要)。また、本機は入手時に「PS/2ポートが潰れている」とのことだったが、特段不具合はないようだ。PS/2キーボードは問題なく動作したし、PS/2マウスもホイール以外は正常に機能した。

LANは少々問題。OS/2にRTL8110用のドライバは存在しないが、GenMacのRTL8169用ドライバで正常動作を確認している。では、8110と8169に互換性があるのかと言うと、それも何とも…少なくとも明示的な記述は見つからなかったが、手許のメモ書きにはそれらしい記録が残っている。う〜ん、典拠不明だが、どこかでそうした情報を目にしたはずだ。信用して良いものかどうか…

【追記】その後、暫く使用してみたところ、GenMac RTL8167/8168/8169用ドライバはかなり不安定だと判明した。機嫌が良いときは良いのだが、悪くなると家のルータにpingしても、反応に1000ms以上掛かるようになり、ほぼ実用は不可能になった。単純にドライバの問題か、OS/2のネットワーク設定のどこかに問題があるのかは不明。(2022.11.11)

一方、RTL8110の兄弟チップのRTL8111は、当該ドライバでは正常動作をしないことを確認している(TF7050-M2、TA690G)。ドライバの組み込みは可能だが、システムが極端に不安定になり、僅かの操作で即座にシステムがフリーズした。これを見ると、やはり不安が…

こうなると、LANカードを増設できない本機では手詰まりになってしまう。一応、USB LANで唯一?ドライバが提供されているMCS7830搭載のSTARTECH USB2106Sをキープはしているが、これも正常動作するかどうか甚だ疑問(未確認)。

消費電力はアイドル時で32w。SSDを使用しているためHDD/Win7よりも低消費電力。省電力モードは実質不可。常時32wでは、常用にはちと辛いか…

OS/2の動作(2)−−512MB超での動作

OS/2 Warp 4.52にW45_PACKを当てて、DANISドライバを組み込んだところ、512MB超える環境でもOS/2の起動が可能になった。1GB×2=2GBの環境で動作を確認している。ただし、W45_PACKを適用するとマウス/キーボード周りがかなり不安定になる。本機ではそれほどでもないが、AY301ではほぼ使い物にならない状態になった(マウスが縦方向にしか動かないとか、キーボードのマッピング大幅に狂うとか…)。しかも、LANドライバと干渉しているような印象。そのため今までW45_PACKを避けてきたのだが、RAM 512MB超環境にはどうやら必須のようだ。どちらを取るか…

まあ、OS/2のネイティブ動作は諦めるのが正解だろうな。LANの問題もあるし、無理矢理ネイティブで使わなくても、VT対応のCPUに載せ代えてVirtualBoxで使用するのが最も現実的だろう。


Long-run reports ... 2018.07.12:オークションにて¥1200[コミコミ¥1980]にて入手;w/2.5"HDD(Win7 Pro)  なおPS/2ポートは故障とのこと 2020.08.30:OS/2のネイティブ動作を確認;RAMは1GB×2→512MB×1(DDR2-667)に換装  なお、マウスホイールは機能せず 2021.09.04:本格的にOS/2の稼動実験;マウスホイール問題も解決、総じて非常に快調に動く 2022.10.10:自宅LANの全面的Gigabit化に伴い、速度測定目的の仮サーバとする  最初、Win7でテストしていたが、あまりもっさりなのでCPUをC2D E7500に換装  高速化はしたが、サーバとしては優秀ではなく、Win7からTahrPupに換装  最終的にはファイルコピー速度が80MB/sまで出たが、長い道のりだった… 2022.11.09:OS/2実験(512MB超起動)に使用;W45_PACKによって2GB起動が確認できた  が、不安定で実用は困難と判明;問題はマウスとLANドライバ…ちょっと厳しい 2023.08.28:汎用実験機としてシステムの再検討に着手;が、早々に諦めた…  理由は二つ;@想定していたシステムが起動できなかった(クローン実験)  A発熱・騒音が大きい上に逃げ道がない−−Celeron 450で72℃(u_u;)  とりあえず使えるレベルに整備して、お蔵入りと言うことで… 2023.09.02:Core2 Duo E6300/1.83GHzの動作実験;意外にも物凄い発熱(@_@) 2023.09.12:Celeron E3200換装実験;非常に良好な結果、これで確定! 2023.10.16:居間のテレビに接続;アスペクト比問題でけっこうハマる


【PCうそつき講座目次】 【ホーム】