†PCうそつき講座†

AOpen MZ915-M Pentium M760

作成開始日 2020.08.28
最終更新日 2020.09.18

2005年10月発売のPentiumM用小型ベアボーン。通常のキューブ型よりも背が低く、ロープロファイル仕様になっている。電源はACアダプタ、光学ドライブはノート用スリムタイプと、小型化に徹した仕様。小さくてオシャレで静かなのは良いが、反面、排熱性能が犠牲になっていて、実用性を考えると苦しい。ケースの天板で温泉玉子が作れるレベル。

また、AOpen製品共通の問題だが、取扱説明書がほとんど役に立たない。オールカラーのビギナー向け取扱説明書が付いているのだが、必要な情報が大量に欠落していて、これを頼りにアセンブルするのは、ほぼ不可能。ジャンパピンの位置さえ、まともに書いていない。入手段階でコネクタの接続ミスや接続忘れも散見された。まともに書いてないのだから仕方ない。初心者向けの取扱説明書を見て組み上げることができるのは上級者のみ、と言う皮肉なベアボーン。

個人的には、OS/2の標準稼動環境として使用するつもりだったが、思ったほどのパフォーマンスが出ない上に、Seamonkey 2.28において原因不明のフリーズが頻発したため断念。代わりにXenialpupをインストールしてみたのだが、これがノーエラーでスコスコ動きやがる…orz もうOS/2信者やめようかな、レベル(u_u;)

SPEC
CPUPentium M760 / 2.0GHz / TDP=27w / pm=460 ※Pen4なら3.4GHz相当, PenIIIなら2.1GHz相当
CPU-fan 6cm x 10mm / 3pin ※換装済み
C/SIntel 915G + ICH6
RAM 2GB / DDR2-533 1GB x2 / dual-channel / 2-slots ※通常のデスクトップ用のDIMM
HDD ---
DVDPanasonic UJ-840S / DVD-RAM x5 / slim-IDE
SONY NEC AD-7530A
LANGigabit Marvell Yukon 88E8053
AudioHD-Audio ALC880
USBUSB 2.0 x 4 (front:2+rea:2) ※USBメモリブート可
カードリーダー内蔵(CF/SD/SM/MS)
PS/2x2 (Keyboard/Mouse)
SLOTPCI x1 (low-profile)
PCIe 16X x1 (low-profile)
PowerAC adapter 19v/150w

●CPU

CPUはPentium MのDothan(第二世代)のみ対応。Banias(第一世代)不可と明記されている。チップセットのi915はFSB 533/800しかサポートしておらず、FSB 400のBaniasは動かないものと思われる。同一ソケットで同一名称のCPUなのに互換性がないってのは、かなり異様な感じがする。そう言えば、以前i915のMBでCeleron Mが動かないので不思議に思ったが、あれはFSBが原因だったかも知れない。Celeron MはDothan世代でもFSB 400だからなぁ…あ、Wikiによると、同じFSB 400のCeleron Mでも855対応のものと915対応のものがあるらしい。ナンノコッチャ…

ところで、Pentium Mと言えば、必ず問題になるのがPAE対応。が、この問題はウソである。問題自体がウソである。そもそも、Intelの資料ではM745以外のPentium Mは全てPAEをサポートしている。M745という例外を除けば、Pentium MでPAE問題は発生しない。んが、実際はそうではない。Linuxなどのインストール段階で、PAE非対応としてハネられるケースが非常に多い。恐らくは、Nx bitの有無をPAE対応とイコールと見てハネているか、そもそもPentium Mならば問答無用でハネているかのどちらかだろう。実体の伴わない差別である。なので、技術的に対応の有無を論じても意味がない。んが、一応述べておけば、Pentium M760はPAE対応、Nx Bit対応。

●光学ドライブのトレイの開閉不可能問題

最初に述べておくと、私のAOpenに対する心証はあまり良くない。AOpen製品は、今回を含めベアボーンが2台、マザボは数枚程度しか弄ってないが、見た目はハデだが、肝腎な部分がおろそかという印象が強い。今回は、光学ドライブの開閉問題でそれを痛感した。本機は入手時点で光学ドライブ故障ということだったので、開閉しないこと自体は覚悟していた。が、イジェクト棒を突っ込んでもトレイが出てこないのには少々困惑した。しかも、当然、ドライブを交換すれば直るだろうと思っていたのだが、これが直らない。別ドライブでも全く同じ症状なのであった。

で、検証した結果、ドライブの故障でもなんでもない、ベゼルが開口部に引っ掛かっているだけであった。「だけ」と言っても、これはけっこう厄介な問題で、本機は光学ドライブの取り付け位置が調整できるわけではないので、ベゼルの上部を削るしかない。それはイヤだなぁ…。で、物は試しと、ドライブの取り付け時に、ネジ穴のアソビいっぱいまで下方向に押し付けて取り付けたら、何とか正常開閉するようになった。できたから良いと言うハナシではない、根本的に造りが杜撰なのだ。

●ファンと冷却の問題

本機の冷却ファンはCPUファン1個のみ。サイドフロー方式で熱せられた空気をそのまま側面から排気する構造。そのため、静音性には優れている。問題は、このファンが10mm厚で極めて貧弱だと言う点。入手時点で経年劣化でカラカラ音がする状態だったので、手許にあった同形ファン(多分Opera Piccoloの付属品)に換装した。カラカラ音はしなくなったが、冷却性能が上がったわけではない。所詮10mm厚では無理があるのだが、これ以上の厚さのファンは構造上取り付けられない。BIOS表示状態でCPU温度64℃は、けっこう厳しい。一応、グリスの塗り直しもしたのだが。無論、ファンの回転速度を上げれば(smart→full)冷却性能も上がるが、流石に騒くて使う気にならない。

なお、本機はBIOSにCPU温度(cputemp)とシステム温度(systemp)の項目があるが、このうち、システム温度が何を指すのかが良く判らない。普通にケース内温度のことかと思ったが全然違った。筐体オープンでも50℃オーバーになる。で、どうやら、チップセット温度のことであろうと推測された。したがって、50℃オーバーになっても特段ビビる必要はない。

それはそれで良いのだが、それではケース内の温度はどうなっているのか? 実際に使ってみると判るが、こいつの排気はけっこう高温で、ケース内がかなりヤバイ感じがする。この排気はCPUファンのエアフローがそのまま側面パンチングから出ているもので、ケース内温度を反映したものとは言えないのだが、本機のCPUファンは極めて貧弱なので、筐体内にも相当の熱が放散されていると見るべきだろう。

だが、ケースファンの取り付け場所は用意されていないし、側面のパンチング付近にファンをくっつけようとしても、sysfan端子はチップセットの温度に連動してしまう…まあ、ペリフェラル4pから電源取って、常時フル回転でもいいんだけどね、いずれにしろ静音機が一気に爆音機になってしまう。抵抗噛ませて回転数下げれば…あ〜、そういうハナシに落ちていく…

●消費電力とHDD

当初はSSDや2.5"HDDで使用していたが、その場合のアイドル状態の消費電力は39〜40w程度、BIOS表示状態で46w程度だった。正直、Pentium Mにしてはかなりの大喰らいの印象。その後、3.5"HDDに換装したら、アイドル状態でも47〜48wになった。もう、省電力システムでも何でもない。VIA C7マシンをSSDで運用すると、アイドル時17wで済んでいることを考えると、そもそもPenMがモバイルCPUだと言う認識に疑問を呈さざるを得ない。そうね、PenMノートPCが、非常にしばしば過熱でクロックダウンするのは、当然のことだったんだな…

と言うわけで、実用目的で使うつもりなら、最低限2.5"ストレージを使用すべし。ただし、本機にはFDDベイと3.5"HDDベイが各1つ用意されているが、3.5"HDDベイには底板がない。このため、2.5"→3.5"変換マウンタを利用して2.5"HDDを取り付ける場合には、ネジ穴位置の互換性に注意する必要がある。前後左右の4箇所のネジ位置がきちんと揃っていないと取り付け不可能。安手の寸足らずのマウンタは使えない。FDDベイが空いていれば、寸足らずマウンタでも取り付けることは可能だが。

ちなみに、HDDのマウントは必須。SSDなんかは軽くて壊れないので、その辺りに放り出しておいても問題ないが、流石に物理可動部を持つHDDでそれは無理。かつ、2.5"ストレージを置ける空いてる場所はPCIeスロット周りしかなく、ここに発熱体を置くと、CPUファンの吸気が高温になってしまう。小さく作る無理が祟っているなぁ…

なお、本機はACアダプタ駆動だが、変換ロスがかなり大きい。電源オフ時でも3〜5wくらい食っている。また、内蔵LAN(Yukon/Gigabit)もけっこう大喰らいで、RTL8139(100M)に変更するだけで、消費電力が3〜4w低下したこともある。もし、本気で省電力システムを組むのなら、この辺りも手を付けるべきだろう。

また、このi915GというC/SはTDPが16.3wの高発熱体。同じPenM用でも855GMEが4.3wだったことを考えると、システム全体として、この選択はどうだったのかとも思う。PCIeスロットもあることだし、少なくともこのマシンで内蔵グラフィックスの性能にこだわる必要はなかったんじゃないかな…などと言っても仕方のない事だが、逆に同じAOpenのPenMキューブでもEZ855(入手済)なら、もうちょっと実用的な環境を作れるのでは?と淡い期待を抱いたりする。

●OS/2の問題

基本的に、OS/2はPentium Mでも普通に動作する。ネックはメモリだが、1GBx2→1GBx1とすれば問題なし(デュアルチャンネルなので2枚差すとOS/2はブート不可能)。Core2 Duoで見られた512MBの壁は存在しないようだ。LANドライバ(Yukon 88E8053)もGenMacで対応可能。ただし、消費電力と安定性を考えて、鉄板のRTL8139 PCI LANカードを増設、主にこちらを使用した。そして、通常の使用においては、特段の問題なく、スムーズに動いてくれる。

ところが、肝心要のSeanomkey 2.28で問題が発生した。Seamonky 2.28はOS/2を現役で使用するための最重要ポイントで、これがまともに動くか否かが実用の分かれ道。ところが、まずは速度的に不十分。無論、OS/2自体はMMX Pentium 166MHzでも動くように設計されており、2.0GHzの本機では通常の機能は十分すぎるほどの速度で動作する。が、Seamonkey 2.28は例外。その例外が必須な点がOS/2の不幸なのだが…。確かに、C7/1GHzで使用したときよりは軽いが、常用レベルにはない。Core2 Duo E4500/@2.2GHzと比較すると、圧倒的に遅い。更に悲しいお知らせだが、Xenialpup上のSemonkeyと比較すると、全く全然足許にも及ばない。同じハードウエアで、どうしてここまで違うのか…トホホホホ(;_;)

が、遅いだけなら我慢できないわけではない。無分別にタブをぱんぱん開かない限り、実用にならないわけではない。最大の問題点はシステムフリーズが頻発すること。これは以下の三つのシチュエーションで起きている;
@ヤフオクのページを開いた場合、
Aメーラーを起動しようとした場合、
B設定ダイアログを開こうとした場合。

このうち、最後の設定ダイアログの問題は、そもそも設定に不具合が発生し(ダウンロード先のディレクトリを記憶できなくなった)、その確認のために開こうとしてフリーズした。状況が特殊な上に1度しか発症していないので、大きな問題ではないが、発症の仕方が@やAとそっくりだったのが、非常に気に掛かる点。

@やAも毎回発症するわけではないが、@は非常に頻繁に、Aも複数回発症した。BIOS弄ったり、ストレージ変えたり、Seamonkey自体を別ディレクトリに再インストールしてみたりと、試せることは一通りやってみたが、全く効果がなかった。原因特定もできず。ただし、特定のURL(s.yimg.jpとかwing-auctions.yimg.jp)をブロックすると頻度は改善される。どうも、大量のデータを扱う際に発症するようだ。しかも、ディスクアクセスに行くタイミングでフリーズしているようなので、ディスクI/O周りのトラブル、しかもストレージ自体ではなく、チップセット起因のトラブルではないかと倪んでいる。まあ、IDEコネクタもあるので(デフォルトではDVDドライブを接続)、IDE HDDで試してみたい気もするが…あとは、メモリの問題か…容量減らしたり、クロック下げたりしたら改善しないか? いずれにしろ、この発熱では常用機にはならないので、当面実験はしない。ちなみに、CF/IDEではブートできなかった。


Longrun reports ...
2017.05.14:オークションにて2000円[コミコミ2803円]で入手
           何故か、純正150w ACアダプタの他に、東芝製60wアダプタが同梱されていた
2020.09.07:実験開始;入手後3年以上手を付けていなかったのか…(^^;
2020.09.18:実験終了;OS/2は無理、Xenialpup上々、発熱注意、と言ったところ
2020.09.19:素の状態に戻して収納


【PCうそつき講座目次】 【ホーム】