†PCうそつき講座†

AOpen XC Cube EZ855 Pentium M765

作成開始日 2017.07.15
最終更新日 2022.08.05

Pentium M/i855GMEベースのキューブ型ベアボーン。2004年12月発売、WinXP世代のマシン。EZ855には初代とUの二種類があるが、本機は初代の方。違いはFSBらしい(400MHz/533MHz)。2017年7月、オークションにて¥1980[コミコミ¥2980]で落札。Pentium M765とRAM 512MB付き。恐らくOS/2がスンナリ動作する最速・最後の省電力レガシー機。逆に、Windows7のインストールには少々骨が折れるらしい(試してはいない)。

「レガシー機」の定義は明確ではないが、私は一応「レガシーOSが安定動作するマシン」と言う意味で使用している。もう少し具体的に言えば、「IDE接続がメインで、Windows Me用のドライバが用意されている環境」のこと。Intelでは恐らくi855機が最後だろう。同じPenMマシンでもi915機はレガシー機に該当しない。VIA系ならばさらに新しい機種もあるかも知れないが…

SPEC
ModelAOpen EZ855 (95.EZ859.1Z3)
C/SIntel 855GME+ICH4-M
CPUPentium M765 (2.1GHz/2MB/400MHz/21w) ※FSB533不可
RAM2GB:PC3200 1GB x2 (2 slots/single/max.2GB)
512MB:DDR-400 512MB x1
SSD8GB Hagiwara(IDE/SATA変換) ATA100
LANGigabit:RTL8169
100M/10M:RTL8139(増設)
PS/2x2:keyboard+mouse

【注意】本機は、ときどき電源が入らなくなる事があるが、以下の点をチェック。
@電源ユニットの電源スイッチ(背面)がオフになっていないか確認
A電源ボタンが接触不良気味なので、しっかりと(ぐりぐり)押してみる
B設定保持用のコイン電池をチェックする;コイン電池が切れると一切ブートしなくなる

ハードウェア的な特徴

@ストレージがIDE接続である

i855はSATAサポートをしていないので、ストレージは基本的にIDE接続となる。i855搭載マザーでも、別途コントローラーを搭載してSATAをサポートしているものがあるが、本機ではIDEのみ。SATAへの過渡期の製品なので、割り切った感がある。

A内蔵ビデオが省電力である

i855GMEは内蔵ビデオの性能こそ劣るが、低消費電力で熱への対処も楽(TDP 4.3w)。これは、非常に大きなメリットと言える。後継のi915Gでは内蔵ビデオの3D性能が大幅にアップしているが、同時に消費電力も大きく上がっている(TDP 16.3w)。静音・省電力PCとして、どちらが正解かは言うまでもない。

そもそも、3DゲームをやりたいのならPentium Mマシンは選ばないし、選んだとしても高性能なビデオカードを増設するはず。内蔵ビデオの強化はナンセンス。ノートなら意味があるって?ファンが悲鳴のような唸りを上げた挙げ句、オーバーヒートでクロックダウンして、亀のように呪くなるのがオチである。

BWindows Me用のドライバが用意されている

意外なことだが、Intel純正のWindows Me用ドライバがあるのはi855までで、i915ではサポートされていない。少なくともひょいと見つかるような場所にはなかった。なので、i915でWinMeを使いたければ、WinMeをサポートしているビデオカードを増設するしかない。他のドライバもしかり。レガシー愛好者にはi855機は貴重。

CUSBメモリからのブートが可能

USBメモリからPuppy Linux(LxPup 15 noPAE tahr/slacko)のブートを確認。現在では当然の機能だが、この時代ではけっこう微妙。実感として半々くらい。同時期のNEC Mate MY11F/FR-Eでは不可。Pentium MはPAE問題が付いて回るので、OSのインストール前にLive USBで動作の可否が確認できるのは大きなメリット。

CPUの互換性

Pentium Mと言うCPUはけっこう厄介で、世代間の互換性に乏しい。初代Banias(FSB400)と第二世代Dothan(FSB400/533混在)の2種類しかなく、ソケット形状も全く同じなのに、FSBの違いによって動かないことがしばしばある。FSB533のマザーでFSB400のCPUが動かないと言う、信じられないような事が起きる。

で、i855はFSB400専用である。つまり、Baniasと、DothanのFSB400版(型番の末尾5)は動くが、DothanのFSB533版(型番の末尾が0)は動かない。そう、Pentium M765は動くが、Pentium M760は動かないのである…ホントかよ? なお、本機の後継機のEZ855-Uは独自拡張によりi855でもFSB400/533両対応になっている。

CPUの性能

ともあれ、クロックあたりの性能は非常に優秀で、Pentium 4の2倍とも、+1GHzとも言われている。旧passmark値から推定すると、M765/2.1GHzはPen4換算で3.5GHzくらいに相当する。ただし、これも物は言い様で、PenMが優れているんじゃなくて、Pen4がひど過ぎるだけで、クロック当たりの性能はPenVやAthlonXPと大差がない。

それまで、OS/2ネイティブのマシンとしては、GeodeNX 1500/1.0GHzを使用していたが、クロックで2倍強、体感ではさらに速く感じる。passmark値(推定)でも2〜3倍と言ったところ。何より、重くて実用にならなかったSeamonkey 2.28がフツーに使用できるのに感動した。レガシーマシンとしては、上限に近い性能だと思う。

IDE/SATA変換

本機はIDE接続専用で、ストレージのシリコン化には不便。当初はIDE/CF変換アダプタを使用していたが、書き込み速度が非常に遅い。テスト運用ならばともかく、実用システムには適さない。そこで、MARSHALL TRANSFORMと言うIDE/SATA変換ケースを使用してSSDを接続。これは、2.5"SATAストレージを3.5"IDE物理互換に変換する優れもの。ただ、秘蔵の品なので、こいつ専用にするにはちょっと…。同様な変換ケースとしては、Novac NV-SA400も持っているが、こちらは互換性に難あり。

MARSHALLの変換ケースは、SATAでインストールしたシステムを、IDEでそのまま認識してくれる。しかし、Novacは、空のSATAドライブを装着して、空のIDEドライブとしてからシステムをインストールする必要がある。

と言うことで、新たにIDE/SATAの変換アダプタを購入した。MARSHALL TRANSFORMが入手できれば良かったのだが、廃番品で入手困難だったため。で、機能的には問題なかったのだが(SATAでインストールしたシステムを認識できる)、物理形状で躓いた。キューブケースはドライブ周りがけっこうキチキチなので、普通に取り付けるとケースが閉じられなくなる。

そもそも、本機に2.5"ストレージを取り付ける際には、2.5"/3.5"マウンタ必須で、しかも寸足らずの安物では取り付け不可能。加えて、今回は中心位置が問題になった。マウンタは中央揃えだが、コネクタ位置揃えでないと、変換アダプタが横にはみ出してしまう。結局、ちょいと変なテクニックを使って回避したが、かなり変態的なことになった(通常のネジ固定ではなく、マウンタと天板でSSDをサンドイッチした)。

静音性

静音性重視で、高負荷時でも30dB(公称)。実際、使用していても騒音はほとんど気にならない。ファンは6cm×10mmのCPUファンと電源ファンの2ファン構成。CPUファンはサイドフロータイプで、ケースの側面から排気する構造になっている。そもそもCPUが熱くならないので、かなり静かである。CPU温度39〜41℃(アイドル時/筐体オープン)。電源ファンもデフォルトで問題なかった。消費電力はアイドル時に33w。これまた、この時代としてはかなり優秀。

【追記】RAMを2枚に増やしたら、アイドル時の消費電力が36wとなった。(2022.08.05)

OS/2の使用

OS/2に関しては問題なく−−と言うか、非常に快調に動作する。難関のSeamonkey 2.28も実用レベルの速度で安定的に動作している。Audioも正常動作、USBも安定している。唯一の問題がSeamonkey 2.28のメーラー。これだけが常軌を逸してクソ重い。Seamonkey 1.xのメーラーや古いThunderbirdならば軽快に動くのだが、それらとSeamonkey 2.28は同時に使用することができない。DLLのバージョン不整合で引っ掛かる。そのため、たとえば、HTMLメールからリンクに飛ぶような使い方ができない(ヤフオクのアラートメール等)。代替手段としてPM Mailを試してみたが、使い勝手が悪すぎる。

で、しょうがないので、REXXでメーラーを自作した。とりあえず、新着メールのチェックができさえすれば良いので、送信・返信機能も添付ファイルの処理も省いた。リードオンリーのメーラーなので、PORON[POP Read ONly]と命名;熊熊蛙。メールは任意のテキスト・エディタや、ブラウザで表示することができる。やっつけ仕事のカタマリになったが、軽快に仕事をこなしてくれる。

【追記】その後、RAMを2GBに増設、OS/2の動作を確認。起動時の空き容量は1900MB以上、Seamonkey 2.28使用中も1700MB以上。これを見る限り、必要なメモリ容量は300MB〜400MB程度で、正直、2GBは過乗スペックと言う感じだ。しかし、Seamonkey 2.28でNHKの新型コロナのページを表示した途端、空き容量が1500MB台に減り、タスク数が11から一気に509に跳ね上がった。RAM 512MBでこのページを表示したときには、メモリ喰い尽くして、スワップに入った途端にシステムがフリーズした。今回は2GBあるので、そこまでの酷い状況ではなかったが、やっぱ、RAM 512MBじゃ無理…いや、NHKをアク禁にすれば済むハナシか。(2022.08.05)

【追記2】ネイティブOS/2(N-OS/2)の実用性に関しては再考が必要かも知れない。Seamonkey 2.28が動くとは言え、表示できないページがかなりある。また、ワイヤレス機器への対応、省電力機能なども殆ど望めない。むしろ、VirtualBox上で使用して、各種デバイスや最新ブラウザへの対応は、ホストOSに任せる方が現実的なような気がする。速度的にも、V-OS/2だから言って特段遅くなるわけではない。Core i3-2120(3.3GHz)のV-OS/2と、本機のPentium M765(2.1GHz)のN-OS/2であれば、V-OS/2の方が若干速い気がする。V-OS/2は所謂“エミュレーション”ではなく、ほとんど“生x86”で動いているので。(2022.08.05)


Longrun reports ...

2017.07.14:オークションにて¥1980[コミコミ¥2980]で入手(w/PenM765&512MB)
2020.09.22:テスト開始;OS/2が極めて順調に動作した
2020.10.19:IDE/SATA変換アダプタ装着
2022.08.04:RAMを2GBに増設、OS/2の動作を確認


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