†PCうそつき講座†

VIA EPIAシリーズ

作成開始日 2018.05.20
最終更新日 2022.06.09

EPIAとEden

VIA EPIAシリーズはCPU直付けの組込用基板。CPUはVIA製のC3/C7/Nano系。VIAが提唱するmini-ITXフォームファクターを採用(後にはnano-ITXやpico-ITXのモデルも出た)。EPIAシリーズの中で、ファンレス動作するものには「Eden」マークが付く。ファンレスとファン付きで型番の付け方が微妙に異なるのもこのため。パフォーマンスよりも小型・低消費電力・低コストを目指した製品。現在ではコンシューマ市場にほどんど流通していないが、当初はCPU搭載マザーボードとして、アキバなどにかなりの量が出回っていた。

もう少し正確な表現をすれば、「Eden」には次のような意味がある;

一般論だと判り難いので、初代のEPIA-E533に限定すると;

が、EdenのEdenたる要件と言う事になるだろう。

一方、同時発売のEPIA-C800のCPUは「C3」と明記されており、Eden processorではないとされている。もちろん、Eden platfromでもない。ただし、C800のC3もEBGAパッケージでMB直付け版だ。ファンの有無とPLE133のヒートシンクの色を除けば、システム構成もE533と全く同じである。であれば、Eden ESPとEGBA版C3って、どこが違うのだろうか? ざっくり言うと、Eden ESP 5000は《C3/533MHzをMB直付けに変更した物》と言う認識で良いと思う。調べた限り、コアはSamuel2で、プロセスルールも150nmで変更されていない。とすれば、C800のC3は、単にそのクロックを800MHzに上げただけではないのか?

何が言いたいのかと言うと、「Eden」という名称が実体のない空虚なブランド戦略ではなかったのか?と言うこと。C3のEBGA版を「Eden」と呼ぶこと自体は悪くないが、じゃあ、同じパッケージングのC800のC3をなぜ「Eden」と呼ばないのか?ファンレスか否かが名称の基準ならば、C800のFSBを下げてファンの電源を引っこ抜けば、C800も「Eden」になるのか? だとしたら、「Eden」は単なる「低クロック版」を意味するだけではないのか? 静音自体は嬉しいが、新たな省電力機能を追加したのでもなければ、プロセスルールの微細化で低電圧化したのでもないし、パッケージの工夫で放熱性能を高めたわけでもない。ただ単にクロックが低いだけなら、ブランドにして威張るようなこっちゃあるまい。

この問題はC7時代に入ると、さらに怪しくなる。C7はそもそも単体CPUとして存在していない(*)。どう考えても、ファンレス版とファン付き版は同じCPUのクロック違いとしか思えない。ヒートシンクを取り去った状態の製品写真を比較しても違いが見つからない。それでも、低クロック版を「Eden」と呼び、高クロック版を単なる「C7」と呼んでいる。

(*)単体のC7がEPIA-PNとセット販売されたと聞くが見たことがない

なお、コアに関しては多少疑問が残っている。ネットで調べた限り、Eden ESP 5000のコアはSamuel2で間違いなさそうだが、EPIA-C800のC3のコアが何かが判らない。単なるEden ESPのクロック違い版ならば同じSamuel2だろうが、どこかでEzraだというハナシを聞い憶えがある(典拠失念)。EzraとSamuel2は性能的にも構造的にも似たようなものだが、プロセスルールが異なる。もし、E533のEdenのコアがSamuel2で、C800のC3のコアがEzraならば、「同一CPUのクロック違い版」説は破綻する。まあ、組込の世界は、その時々の都合で様々なバリエーションモデルが発生してしまうので、そこまで神経質に考えなくても良いのかも知れないが。

C3モデル

初代(2002.04):EPIA-E533・EPIA-C800(EPIA-5000・EPIA-800)

Mシリーズ(2002.11):EPIA-ME6000・EPIA-M9000・EPIA-M10000 Vシリーズ(2003.01-02):EPIA-VE5000・EPIA-V8000・EPIA-V10000 Nehemiah版EPIA(2003.05):EPIA-M10000・EPIA-V10000
  • 少々特殊なポジションの製品。Ezra版のM10000/V10000は2003年2月に既に出荷されていたが、その3ヶ月後にCPUのみNehemiahコアに変更したモデルが登場した。この二つのコアは性能差・発熱差がかなり大きいのだが、EPIAとしての型番は全く同じ。入手する際には重要なチェックポイントになる。
CLシリーズ(2004.01)…デュアルLAN(Nehemiah)

TCシリーズ(2004.02)…オンボード電源

MIIシリーズ(2004.02)…PCカード&CFスロット搭載モデルらしい(Nehemiah)

MSシリーズ(2004.06):EPIA-MS10000・EPIA-MS8000?・EPIA-MS12000?

  • CFスロット搭載モデルだが、背面コネクタがVGA/LAN/CFしかなく、そのままではUSBもPS/2も使えないという特殊仕様。組み込み用の省スペース設計らしい。MB上にIFのピンが出ているので、そこから好きな場所にコネクタを引っ張ってくるらしいが、コネクタボードは標準添付されているのかね? せめてKBD端子(USB/PS2)がないと手も足も出ないよ。
    ⇒その後、各種IFを搭載したコネクタボード付きのMSを発見;これが本来の形態?
    ⇒その後、メモリがノート用のSO-DIMMらしいことが判った。
  • C/SはCLE266。800MHzと1GHzがファンレスのEdenで、1.2GHzがC3(恐らくNehemiah)と言うことだが、この段階で1GHzのファンレスを実現しているのか…?コアが変わったのか?プロセスルールが微細化されたのか?型番の命名ルールも崩れてきているゾ。いろいろと謎なモデル。ネットでMS10000の写真を検索する限り、ファン付きのように見えるのだが…まあ、正確に言えば800MHz/1GHzはファンレスという記述はない;Eden ESPと書かれているだけなので、これはC/S用ファンだよ〜〜と言われればそれまで(^_^; マア,VIAダカラ
  • VOD STBというセットトップ・ボックス(実質的にミニPC)がEPIA-MSを採用しているようだが、詳細は不明。入手はしたがまだ弄っていない。
PDシリーズ(2004.09):EPIA-PD10000
  • CLのFDDコネクタを工業用のGPIO(汎用入出力端子)に換装したモデルらしい(典拠不明)。C/SはCLE266らしい。
  • 1GHz版(PD10000)しか確認していないが、同じ1GHz版でもファンレス版とファン付き版がある。ミニPCであるDNRH-001に搭載されているのはファンレス版らしい。
EPIA-PE10000G(20??.??)
  • 詳細不明だが、恐らくEPIA-PD10000の兄弟機だと思われる。
  • スペック的にはC3/1GHz(ファン付き)+CLE266+デュアルLAN。
  • GPIOに関しては確認が取れなかったが、FDDコネクタはないので…
MLシリーズ(2004.09):EPIA-ML5000EA・EPIA-ML8000A
  • CPUはC3、C/SはCLE266、HDDはIDEx2、FDDコネクタは削除。コアは不明だが、クロックからEzraの可能性が高い。しかし、型番末尾にこれ見よがしに付けられた「A」はNehemiahを示唆しているような気がしないでもない。或は、従来のEPIA-MシリーズがSamuel2で、このMLシリーズはEzraとか…
  • この辺りもややこしくて、通常、末尾に「A」を付けるのは、コア違いの同クロックCPUを区別するためだが、C3に関してはそのルールが曖昧…というか、杜撰に運用されていたフシがある。また、組み込みの世界では「時期的にNehemiahが出ているのだから、わざわざEzra版やましてSamuel2版を出すはずがない」という常識も通用しない。つまり、末尾の「A」の意味は謎。
  • スペック的には従来モデルよりもダウンしており、FDDコネクタも削除されたことから、Mシリーズの廉価モデルではないかと思われる。性能的には初代のE533/C800と同程度と思われるが、C/SがPLE133からCLE266になったのは改善点。
  • その後、ヤフオクでEPIA-ML6000EA(Eden)の存在を確認(2019.01.24)。
SPシリーズ(2005.02):EPIA-SP8000E LVDS・EPIA-SP13000 LVDS
  • CPUはC3(SP800EはEden)、コアは不明、C/SはCN400、SATAサポート。
  • キモはC/S変更に伴うSATA対応とビデオ性能のアップらしい。Unichrome ProはMPEG4アクセラレータ搭載とのこと。
  • 「LVDS」と付いているが、商品説明を読む限り「LVDS」っぽい機能は明記されていない。
EKシリーズ(2006.09)
  • CoreFusion Luke(C3+CN400)採用、低電圧でファンレス800MHz;C7登場後のC3系

C3 EPIAのポイント

◎C3にはSamuel2、Ezra、Nehemiahの3種類のコアがある
◎NehemiahはSamuel2/Ezraと比較して低発熱・高性能
◎C/SにはPLE133、CLE266、CN400の3種類があるが、PLE133ではDVD画質の動画再生は困難
◎CLE266はPLE133の高速版、CN400は高速化に加えてSATAサポートが追加された
◎ファンレス(Eden)は500〜600MHz程度、ファン付きは800MHz〜1GMHzが目安(例外あり)
◎MSやPDのC3/1GHzにはファンレス版があるが熱暴走が不安…(Fusionは大丈夫だろうが)
◎FDDサポートモデルはM/V/CL…他にもあるかもしれないが未チェック

C7モデル

ENシリーズ(2006.04):EPIA-EN12000EG・EPIA-EN15000G

  • CPUはC7、C/SはCN700、HDDはIDEx2+SATAx2…らしい。FDDはなさそうだ。
  • EPIA初のC7搭載モデルだが、いきなり1.2GHzでファンレスは豪気なもんだ。ヒートシンクが巨大。が、後続のファンレスモデルが1GHzであることを考えると、けっこう無理したかも。
  • ネットを見ていると、CPUの互換性問題が何件か発生しているような…別にファンレスのせいではないだろうが。
  • その後、オークションにて「EPIA-EN10000EG」というモデルも発見。
CNシリーズ(2006.06):EPIA-CN10000E・EPIA-CN13000
  • ENをスペックダウンした廉価版のようなものらしい。CPUクロックを落とし、LANをGigaから100/10に変更した。
PN(2006.08)…ソケ479M対応でC7だけでなくPenM/CelMも搭載可能

EXシリーズ(2007.01)…CX700M2(N/S統合チップセット)

LNシリーズ(2007.04):EPIA-LN10000EG

  • CPUはC7、C/SはCN700、HDDはIDEx2+SATAx2、FDDはなさそうだ。
  • クロックとヒートシンクの大きさ以外は、EN12000EG/CN10000Eとあまり変わらないような気がする。
  • CX700M2登場後のCN700機ということで、旧スペックの廉価機という位置付けか?
⇒その後、「LN10000EAG」と言うモデルを発見。違いは不明。普通に考えると、コア違いではないかと思うのだが…

VBシリーズ(2007.04):EPIA-VB7001G

  • LN10000EGを1.5GHzにして、ファンを付けたもののようだ。なぜか、型番が従来の命名ルールから外れている。
  • LNとVBは基本スペックが共通で、各1モデルしか確認されていない。「LN&VB」シリーズとまとめるべきかも。
LTシリーズ(2007.09):EPIA-LT10000AG・EPIA-LT15000EG
  • CPUはC7、C/SはCX700、HDDはIDEx1+SATAx2、FDDはなさそうだ。デュアルLAN装備。
  • 1GHz(LT10000AG)がファンレスで、1.5GHz(LT15000EG)はファン付き。「E」が付いているのにEdenではない。
  • EXシリーズのバリエーションモデルとのこと(PC Watchの表現)。また、本来はPOS用らしい(ショップのPOPの表現)。
PXシリーズ(2007.04):EPIA-PX10000G・EPIA-PX15000G・EPIA-PX5000EG
  • CPUはC7、C/SはVX700、FFはpico-ITXで、VIA純正のミニPC・ARTiGOシリーズに採用された。
  • ストレージはIDE-44pin、SATA、CFが使用できるらしい。
  • PX10000G/PX15000GのCPUはULV版ではなく、通常のnanoBGA2版C7のようで、TDPは1GHzで9wある。
  • PX5000EG(2008年5月発売)のみはEden ULV 500MHzを使用、TDP=1wの完全ファンレス仕様となっている。 厄介なのは1GHz版にファン付きとファンレスの2バージョンが存在すること。 恐らく、当初はファンレス版を出荷していたが、熱的に厳しいので後からファンを追加したのではないかと… ファン付きのARTiGO A1500が爆音機だったので、ファンレスのA1000に期待していたのだが…
  • なお、ARTiGOのファンはノートPC等で使用されている被せ式の水平排気タイプ(シロッコファン…なのか?)。静音ファンへの換装は困難と思われる。
SNシリーズ(2007.09):EPIA-SN10000EG・EPIA-SN18000G
  • SN180000GはC7/1.8GHz搭載で、発売時の最高クロックモデル。
  • C/SはCN896;SATA-2 x4+IDE x1。

C7 EPIAのポイント

◎プロセスの微細化…ファンレス駆動が1GHz超となった
◎SATAサポートが標準となった…IDEも残ってはいる
◎FDDコネクタ搭載モデルが見当たらない…全部チェックしたわけではないが

FDD必須の古いシステムではC3モデルの性能で充分であろうし、C7のパフォーマンスが要求されるような用途ではFDDは必要とされない、という判断かと。その一方でIDEサポートは律義に残している。シンクライアントなんか、未だにIDEのDoM使っていたりするからね。組み込みの世界は奥が深い。EPIAの話ではないが、ISAバスも健在らしい…そう言えば、中小企業の工場なんかではCバス(PC-9800シリーズ)も現役らしい。


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