†PCうそつき講座†

DNRH-002(P4-855-S) Celeron M370

作成開始日 2018.01.30
最終更新日 2021.06.05

恐らく、SUMICOM S625Fベースの工業用モデル。標準ストレージは1GBのSSD(Dsik On Module/IDE-44pin)で、正面にPCMCIAスロットが付いているのが特徴。組込Linuxベースで制御用に使われていたんじゃないかな?と…。そもそも汎用的なOSをのっけるマシンじゃないのだが、SSDを16〜32GB程度に換装すれば、それなりに使用できる。Celeron M 1.5GHzはPentuim 4 2.8GHzよりも速い(^_^; OS/2およびPuppyLinuxの動作確認。

S625シリーズには10種ほどのバリエーションモデルがあり、「S625A PCMCIA」というモデルがスペック的に非常に近い(一部異なるようだ)。また、「S625E CF reader」というモデルも存在するらしい。

SPEC
CPU Celeron M 370 1.5GHz(SL8MM/Dothan/FSB400MHz/fan-less)PAE passmark=340
C/S i855GME/ICH4
RAM 512MB×1(DDR400/low-prof.)(DDR333/266×2slot)※別途1GBも付いてきたが外した
VGA i855GME(on-chip)/ VGA (D-sub 15pin) & DVI
SSD CF/IDE変換アダプタ(44pin/内蔵) ※デフォルトは1GB SSD (DoM)
LAN Intel Pro 10/100(E100)※OS/2で動作確認済み
AUD Realtek 650

OS/2のインストール実験用マシンとして入手したが、標準状態ではストレージの交換がかなり面倒で(対処法はある)、かつ発熱が予想以上に大きく、作業中に熱暴走によるフリーズも経験した。従って、インストール実験用マシンとしても、常用機としても適さないことが判明してしまったorz 用途と改造に関しては、ちょっと思案中。DVI端子があるので、居間用には良いかも…Linuxなら発熱も抑えられる?

【追記】2018年10月に実家用PCとしてアセンブル−−直後に母が急逝し、年末まで実家に滞在、その間はメイン機として使用した。4GBのハーフサイズSSDにSATA/IDE変換を噛ませて接続、OS/2をイメージ・インストール。Seamonkey 2.28も実用速度で動くので、基本的に必要条件は満たしている。しかし、ディスク周りが非常に遅く、リソース競合っぽい症状も多発する。もう少し手を入れないと実用は厳しい。そこで、USBメモリでLxPupをブートして使用したが、こちらはかなり快適。ネット環境、動画環境ともにOS/2よりもかなり上。ただし、テキスト環境だけはOS/2の圧勝で、LxPupだけで運用するのは難しい。OS/2環境を整備するか?LxPupで動くまともなテキストエディタを探すか?

付記:OS/2のmplayerはリサイズが非常に汚く、原寸表示以外は見られたものではない。原寸の縦横比が表示アスペクト比と違っていると、けっこう困る。しかし、-sws 9 -vf scale=-1:-2:0:0:3のように、フィルターを使ってアスペクト比を指定してやれば、奇麗にリサイズできることを発見した。

●CPU

CPUはCeleron M370(Dothan)1.5GHz。CelMだがPAE対応モデルで、恐らく比較的新しいLinuxなども動作可能と思われる。passmark値は340くらいで、GeodeNX 1500の倍、Atom 330の半分強と言ったところ。シングルコアCPUとしてはそこそこ速い(シングルスレッド限定ならばAtomの倍近い性能:450 vs 250)。TDPは21wで、通常はファンが必要なレベル。ファンレス運用するなら、排熱にかなり神経を使わなければならない。

CPUclockpassmark
Pen4 1.4GHz 164
PenIII 800MHz 180
PenIII 1.4GHz 300
Pen4 2.8GHz 320
CelM 1.5GHz 340
この時代、デスクトップ用CPUは熱爆(NetBurst)のPen4が主流だったが、クロック当たりの速度はPenM系の圧勝だった。passmark値(旧値)で見ても、Pen4は同クロックのPenM/CelMはもちろん、PenVにさえ負けていた。Pen4最速の3.8GHzでもpassmark=480、PenM/2GHzと同程度。Celeron M370はその7割程度の性能なワケだ。

なお、一応CPUのモデルナンバーは確認してはいるが、本当に本当なのか?多少疑問は残っている。通常、Dothanならばi855ではなく、i915と組み合わせて製品化しそうなものだし…まあ、Linuxの動作チェックなどをして確証を得たいところではある。別にモデルナンバーの刻印を信じないワケではないが、けっこうキワモノなので、どこに落とし穴があるか判らない。

【追記】Celeron M370はFSB 400MHzなので、あえてi915を使う必要はなかった−−と言うか、ひょっとすると動かなかったかも?また、用途的に言っても、内蔵ビデオが猛烈に発熱するi915の搭載は無理だろう。そもそもFSB 400MHzのDothanって、そういう事情から生み出されたのでは?プロセスルールが130nm→90nmに移行するのは必然として、高発熱のi915しか使えないのは困る、i855で動く90nm CPUが必要だったと。

●発熱

最大の難点はここ。ボディとヒートシンクを密着させてファンレスで冷却する構造だが、かなり高温になる。問題は、構造上CPU温度とケース内温度がほぼ同じになること。BIOS表示で55℃くらいになった。もちろん、内蔵HDDも電解コンデンサもこの温度(+α)になるだろう。実質的にHDDの内蔵は困難で、SSD/DoMしか実用的な寿命を保てないだろう。工業用でこの仕様はどうよ?ってカンジはする。BIOSレベルでクロックダウンの機能を持たせないと使えないだろうに……ざっと見た限り、なさそうだ。

今回の最大の教訓は《ミニPCでファンレスは無茶》ということであった。ファンレス=無音にこだわるなら、筐体サイズは余裕を持たせるべきだし、ミニPCを使いたければ、ファン音を我慢するか、ファンコンを使うか、クロックダウンするか、あるいは極端に性能の低いCPUで我慢するしかなさそうだ。ノートやネットトップでファンレスモデルの人気がない理由がよく判った。

●物理構造の問題

まず、ヒートシンクとボディを密着させる必要から、接触部分はギチギチのサイズで作ってある。そのため、分解・組立が非常に困難である。最初、筐体から基板を抜き出すだけで、3時間掛かった。予め知っていないと、恐くて分解なんてできない−−確実に壊している感覚になる。その後、ヒートシンクの高さ調整用の金属板を1枚抜くことで、分解・組立は非常に楽になったが、当然密着度は落ち、冷却性能もかなり低下したものと思われる。ただし、それでも筐体はかなりの熱を持つので、密着させれば改善されるかと言うと、それはそれで疑問である。

●ストレージの問題

IDE 44pin(2.5"HDD互換)の1GB DoM(コネクタ直結型SSD)を標準装備。DoM自体はメスコネクタだが、オス−オスの変換を噛ませてオスとして使用してる。物理的には2.5"IDE HDD互換デバイスが接続可能(もちろん、HDDでは熱死リスクが高いが)。8GB CF/IDE(44pin)アダプタで動作を確認している。なお、CF/IDEアダプタは本体に同梱されていた(標準添付なのか、前オーナーが別途入手したのかは不明)。しかし、アクセス速度は相当に遅い(u_u;)

なお、i855チップセットはSATAをサポートしているが、本機の基板にはSATAコネクタは出ていない。実質的にIDE(44pin)×1ドライブのみである。FDやCD-ROMなども、USBやPCMCIA経由でないと使用できない。

【追記】i855がSATAをサポートしていると言うのは誤り。i855自体にSATAサポート機能はない。ただし、別途JMicron等のSATAコントローラーを搭載して、SATAに対応しているi855機も少なくない。故に、i855機はIDEオンリーで当然という認識も不正確。

●PCMCIAスロットと構造

通常ならば光学ドライブが搭載される部分にPCMCIAスロットが搭載されている。まあ、光学ドライブとPCMCIAのいずれが便利かはケースバイケースで、実際、このシリーズには光学ドライブモデルもあるのだから、このモデルはPCMCIAを必要とするユーザー向けのモデル、と言うことで、そのこと自体をどうこう言っても始まらない。

が、光学ドライブではなくPCMCIAになったことで、二つ、別の問題が改善された。一つはメモリ。このシリーズは、ロープロファイルのRAMしか使えないのだが、光学ドライブモデルでは、光学ドライブがメモリスロットの上を塞ぐため、普通のロープロよりも更に背の低い、21.5mm高(0.8")の超ロープロ仕様でないと使えない。そして、このメモリは特殊であるがゆえに、超割高なのである。ところが、PCMCIAスロットは光学ドライブよりも左右が狭く、メモリスロットの上を塞がない。このため、通常の25〜30mm高のロープロメモリが使用可能になる。メモリ拡張の際は物凄くありがたい。

もう一つのメリットはストレージの交換のしやすさ。PCMCIAスロットは光学ドライブよりも薄いため、スロットの上の空間が利用できる。ここにストレージを設置できるのである。光学ドライブモデルでは、光学ドライブの下側に設置することになり、放熱の点でも交換のしやすさの点でも問題がある。PCMCIAモデルでは、筐体からメイン基板を引っこ抜くだけで、すぐにストレージが交換できる状態になる。ほぼ、リムーバブル感覚。

ま、こうした副次的なメリットはともかく、肝心のPCMCIAスロットとしてのメリットはどうよ?と言うことになると、実は全然判らない(^_^; そもそも、私はPCMCIAカードをほとんど使用しないので。ただ、CF/ATAカードアダプタがあったので、ここからブートできないかと試してみたが、だめだった。そもそもBIOSにPCMCIAからのブートの項目がない(と言うか、そもそもPCMCIAからのブートをサポートしている機種はごく少数)。このスロットの有効利用に関しては、また、少し考えますか…

●ビデオ

OS/2ではSANPの855用ドライバでOK(水平周波数は60Hzの方が見やすい)。出力はVGA+DVI:S625FにはなかったDVI出力が追加されている。同時出力が可能かどうかは未チェック。

●電源

電源は標準的なφ5.5/2.1mmのACアダプタ(多分)。ただし、AC側は[三つ目コネクタ−3極プラグ]という厄介なシロモノ。そのままでは家庭用テーブルタップには差し込めないので、U-Buddie用のACアダプタを流用した。


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