(2003.10.10/2005.10.13upd)
ファンレスCPU
●最近のこと…
しかし、ちょっと自作をサボっている内に、トレンドはどんどん低消費電力/低発熱/静音化に向かっているんだね。もう、Socket 7やSocket 370の知識やテクニックなんて、まったく無意味だよなあ…。現在、一般的に入手可能で低消費電力をウリにしているCPUは以下の通り(2005年8月)。
メーカー | CPU | スペック | ソケット | 備考
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Intel | Pentium-M | 2.26GHz@27W | mPGA479M | 高い…、1.6GHzならば10wらしい
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Celeron-M | 1.6GHz@21w | mPGA479M | 値段は手頃、1GHzは5wらしい
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AMD | Geode NX | 1500@6w | Socket A | クロックは1GHz
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VIA | C7-M | 2.0GHz@20w | ???? | まだ発売されていない…よね?
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C3 | 1.2GHz@18w | Socket 370 | C3-1.2Aでファンレス動作確認済み、800MHzは5w
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C3はSocket 370の遺産の有効利用が魅力だが性能は飛びぬけて低い。Goede NXはSocket Aがちょっとネックだが性能はまずまず。Pentium-Mは性能も価格も高い。Celeron-Mはマザーの価格が問題。現状の懐具合で丸々新規に一台組むならGeode NXが最も良い選択肢。しかし、諸般の事情によりVIAチップセットは当面見合わせたい(完全に個人的な理由)。と言うことで、C3/i815がほとんど唯一の選択肢になっている。
1GHz超でTDP=10wを割るCPUが普通に販売されているんだから、何にも考えなくても金さえ出せばファンレス化可能だろうなあ…。今までの苦労は何だったんだろう? と言うことで…。
…以下は無意味…
●発熱量と消費電力
自然対流のみで冷却可能な消費電力の目安は6wと言われている。しかし、この「6w」はどのような状況での消費電力だろうか? 基本的に、発熱量随チ費電力であるが、必ずしもイコールではない。発熱量に着目した指標はTDP(Thermal Design Power)と呼ばれるのだが、このTDPの定義はメーカーによって異なっている。
少なくとも、IntelのTDPは最大消費電力(MTP)とほぼ等しいが、VIAでは標準的な状態での消費電力(TTP)をTDPとしているようだ。VIAでは最大消費電力をTDP maxと表記している。通常、TTPとMTPは倍以上違う。したがって、TDPをどう取るかによって、見掛けの「消費電力」は全然違ってしまう。たとえば、両社の733MHzのCPUの消費電力を比較すると次のようになる。
メーカー | CPU | 典型値 | 最大値
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VIA | C3 733 | 6w | 11.6w
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Intel | Celeron 733 | 7.85w | 19.1w
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「TDP」あるいは単に「消費電力」と表示した時に、C3では6w、Celeronでは19.1wと表示されることが多いので、まるで3倍以上の差があるように思われるが、実は典型値では25%の差に過ぎない。最大値でも40%程度だ。これは非常に微妙だ。というのは、C3よりもむしろ25%遅いCeleronを選ぶ方が、トータルパフォーマンスが良いかも知れないからだ。
とすると、このような表記をするVIAはアンフェアではないかと思われるかも知れない。しかし、必ずしもそうとは限らない。Nehemiahの項でも述べるが、VIAのCPUは実際の発熱量が意外に小さいからだ。IntelチップでMTP=18wのチップをファンレス化するにはかなり工夫が必要だが、VIAではわりとスンナリできる。
指標をどう取るか、どう呼ぶかは、メーカーの方針やCPUの特性によって異なって当然で、単純に他メーカーのCPUを比較するのはナンセンスだろう。「本当の」消費電力は実際に使って見なければわからないようだ。
●CPU負荷と温度
CPUの温度は負荷によって大きく異なる。たとえば、C3-800やCeleron 566は、ブラウザなどの負荷のあまり大きくないアプリケーションを使用しているだけなら、ファンレスでも40℃前後に収まる。ところが、マルチメディアを駆使するゲームのような負荷の大きなアプリケーションでは60℃以上に達してファンが必要になる。温度差は20℃以上ある。
だからこそ、どういう負荷状態での消費電力を指標に取るかで、実際の発熱量は大きく違ってしまう。上記の結果から言えば、9wのC3-800も、15wのCeleron 566も、発熱量はほぼ同じだと言うことになる。データシートの値は各社独自の前提条件を採用しているので、異なるメーカー間での比較にはあまり役に立たない。負荷を替えながら温度をモニタリングするのが最も確実な発熱量のチェック方法である。
●ファンの問題
多くのユーザーにとって、最終的に静音化を実現できればよいのであって、必ずしもファンレスでなければならないわけではない。ファンレスは目的ではなく手段である。そう考えて、静音ファンを取り付けてみたことがある。14dB、20dBの二種類を買ってきた。もちろん、14dBの方は冷却能力が著しく劣るが、元々消費電力の小さいCPUしか使わないので、冷却能力自体は問題はなかった。
しかし、肝腎の静音性はいずれも失格。20dBはもちろん、14dBでも充分気になるレベルの騒音が出る。ケースの遮音性が低く音が響きやすいのも事実だが、今更ケースに細工して遮音性を高めるのも面倒だ。やはりファンレス化に突き進む方が正しいだろう。ただし、ファンコントローラは試しても良いかも知れない。一般的な作業をする場合と、ゲームなど高負荷の作業をする場合では、発熱量が全然異なるので、必要に応じてファンを回すというのは賢明かも知れない。
ファンコントローラを使えば、必要なときだけ高速に回転させることができるので便利ではないだろうか…ということなんだが、実はこれにも落とし穴がある。そもそも、ここで問題としているような低消費電力のCPUの場合、5v化ファンでも十分である。しかし、その5v化ファンの音さえ、私には気になる。そして、一般のファンコンはたいてい最低電圧が5vなのである。つまり、ファンコンを使っても5v化ファンよりも静かにはならない、だったら5v化ファンの方が安くて簡単で、そして両方とも静音性は失格なのである。低温時には自動的に停止するファンとか、ユーザーが負荷に応じてファンの電源をオン/オフできるスイッチを使うのがベストだろうが…。
●Socket 370
Socket 370でファンレス化を考えると、現実的にはVIA以外の選択肢はない。Intelでも低クロックのCoppermineが10w台前半なので、ヒートシンクやクロックダウン次第ではファンレス化が不可能ではないかも知れないが、VIAに対するアドバンテージがあるとは思えない。ま、マルチメディア系に関して言えば、たとえばCoppermineを300MHzで使う方が、C3 800MHzよりも速くなるかも知れないが…。
▼VIA CyrixV 667A MHz (6w/??w)
チップ表面の刻印はCyrixVだが、コアはC3と同じSamuel2を使用している。TDP=6wと、Ezra 800よりもやや大きめの消費電力だが、使用実感としてはこちらの方が発熱量が小さいように感じる。
▼VIA C3 Ezra 800A MHz (5w/9w)
Ezraコアの最低クロックのチップ。恐らく、Socket 370用ファンレスCPUの大本命だろう。ただ、5wの割には発熱量は大きいかな、という感じ。もちろんファンレス化は可能で我が家でも大きめのヒートシンクだけで安定動作している。なお、Celeron換算ならば600MHz程度の実力。もちろん、浮動小数点演算やマルチメディア系の処理は悲惨なくらい遅い。
▼VIA C3 Nehemia 1.2A GHz (??w/18w)
このチップは、未だに正式な消費電力が公表されていないようだが、TDP maxは概ね18wくらいと言われている。常識的に考えればファンレス化は不可能なはず。しかし、大きめのヒートシンク(昔1000円くらいで購入)だけで安定動作している。ケースファンも使っていないが、通常使用で室温+20℃、高負荷時でも+40℃くらいで何とかなる。筐体を開放するとさらに若干温度が下がる。コアは1.0AまでのNehemiahよりも低消費電力のNew-Nehemiahかも知れない。処理速度はCeleron換算で800MHz程度。浮動小数点演算は従来のC3よりも若干強化されている。
主要CPUの消費電力
メーカー | CPU | クロック | コア | TDP | TDPmax
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VIA | C3 | 700 MHz | Samuel2 | 5.81w | 9.88w
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VIA | C3 | 800 MHz | Ezra | 5.0w | 8.3w
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VIA | C3 | 1.0A GHz | Ezra-T | 5.7w | ?
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VIA | C3 | 1.0A GHz | Nehemiah | 11.25w | 15w
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▼Celeron 566MHz Coopermine (15w)
前言を翻すようだが、実はこいつもファンレス化可能。TDPは15wだが、通常使用時はヒートシンクのみで40℃前後(室温25℃)に収まる。ただし、高負荷時は当然ファンが必要になるだろう。実感としては、発熱量はC3-800よりもやや大きく、パフォーマンスはC3-800よりもやや劣る。ただし、浮動小数点演算に関してはC3-800よりも圧倒的に優秀。また、Intel純正なので、他社製CPUのような互換性の問題は出ない(非Win系ではけっこう問題になる)。用途によっては有力な選択肢だろう。もちろん、より低速の533Aもファンレス化は可能だろう。
●Super 7
通常「Super 7」と言えば、Socket 7のFSBを高速化し、コア電圧を低電圧化したものを指す。ただし、ここで問題にしているのはファンレス化なので、FSBは無視して、コア電圧が2.2v以下のものをすべてSuper 7と呼ぶことにする。なお、Super 7のCPUはIntelには存在しない。互換チップメーカー独自の仕様である。
▼AMD K6-2 400MHz AFK(2.2v; 14w/23w)
K6-2はバランスの良いチップで、パフォーマンスは同クロックのPentiumよりも優れているし、発熱も比較的少なめだ。流石に定格では無理だが、半クロックでのファンレス化には成功している。なお、同クロックでも、AFK版よりもAFR版の方が消費電力は少ない。また、K6-2/500AFXも12.5w/21wとかなり魅力的な選択肢だ。
ちなみに、K6-2にはモバイル版もあるが、こちらは取り立てて低発熱というわけではなさそうだ。また、K6-Vはパフォーマンスを高くした分、消費電力も大きくなっている。むしろ、K6-2/233AMZ(1.9v; 6.3w/9w), 266AMZ(1.9v; 7w/10w)、300ANZ(1.8v; 9w/10w)が、定格動作でファンレス化可能なチップとして魅力的だ。しかし、入手はかなり困難だろう。同クロックのAFR版と混同しないこと。
なお、K6-2+、K6-V+など末尾に「+」が付くCPUも存在するが、こちらはプロセスルールが変更されて(0.25μ→0.18μ)、消費電力がかなり大きく下がっている。しかし、非常にレアなCPUで、オークションなどではバカバカしいような値段が付く。これにそんな大金を注ぎ込むくらいなら、Geodeでも買いなさい。
▼Cyrix MU-400 (2.2v; 12w)
初期のMUシリーズは目茶苦茶熱くなるCPUだったが、最終モデルのMU-400および433は消費電力が大幅に低下している。数字的にはK6-2とどっこいどっこいだが、実感としては発熱量はずっと小さいように思う。流石に定格動作でファンレス化は困難としても、降圧とクロックダウンで十分にファンレス化できる。
ただし、MUは実効クロックを採用しているので、実クロックは400MHzや433MHzではない。整数演算の速度がPentium換算で400MHz相当、433MHz相当ということに過ぎない。実際のクロックは285MHzと300MHzで、浮動小数点演算に関しては実クロック相当のパフォーマンスしかでない。この点が多少ネックになる。ファンレス化できるギリギリの線の性能で比べると、K6-2に軍配が挙がるかも知れない。
▼Rise mP6 366 Kirin (2.0v; 3.7w/5w)
この石が実在しているかどうかは知らないが、Rise社がスペックを公表していたことは確かだ。もし、実在していれば、間違いなくSuper 7最強のファンレスCPUだっただろう。なお、Rise社も実効クロックを採用していて、実クロックは250MHz。
●Socket 7
Socket 7のCPUは実質的にMMX PentiumとWinChip2以外の選択肢はない。性能も発熱量もどっこいどっこい。そして、どちらも数百円で買える現在では、あえて互換チップのWinChip2を選ぶアドバンテージはない。強いて言えば、WinChip2は単一電圧で動作するということだが、よほど珍しいマザーでない限り(Socket 5とか)、メリットと言うほどではない。したがって、Socket 7はMMX Pentiumで決まり。
▼MMX Pentium 166MHz (2.8v; 6w/13w)
めちゃくちゃありふれた石。定格でファンレス動作の実績もたっぷり。当然、パフォーマンスも本家なりの性能が出る。しかも、秋葉原で100円で買えるもんなあ。なお、モバイル用の低電圧版MMX Pentium 166MHzというのも存在するらしいが、入手が困難な上、通常版でもファンレス化できるので、それほどの有難みはない。
▼WinChip2 200MHz (3.5v; ?w/12w)
WinChipには初代C6とW2、W2Aの3種類がある。で、C6は浮動小数点演算が目茶苦茶遅くて、W2で大幅に改良され、W2AでFSB100MHzに対応したんだっけ? この辺りはよく覚えてない。ただ、WinChipのウリが「安さ」と「低消費電力」であったことは確か。しかし、価格はともかく、消費電力の方は期待ほどではない。200MHzを定格で動作させるとファンレス化は厳しいだろう。温度を測りながらテストしてみたが、133MHz程度が実用限界と言うのが結論。そうなると、Pentiumに対するアドバンテージはない。ちなみに、けっこう降圧に強く(2.5vでも動いた)、W2以降ならばパフォーマンスも悪くはない。
▼Rise mP6 266 (2.8v; 6w/8.5w)
Kirinほどではないにしろ、幻の石。Soket 7のファンレスCPUとしては極めて魅力的な選択肢だが、入手が困難。たまにオークションに出品されるが、数千円で取り引きされている。Socket 7のマザーによほど執着していなければ、手は出さないよなあ…。
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