†PCうそつき講座†

EPSON Endeavor AY301 Pentium E5700【ヤメタランス】

作成開始日 2020.08.01
最終更新日 2024.06.18

【重要事項】
メモリスロットが1本しかないためRAMは2GBが上限(4GB RAM使用不可確認済)
PCIスロットあり(1本);AY系としては例外的
VGAコネクタがない(DVI→VGA変換アダプタ使用)
ネイティブOS/2も動作するが、極めて不安定で実用は困難
C2D E7500モデルはVT対応と明記(SLGTE);RAM 2GBで仮想化環境は苦しいが…
発熱を考えるとPenE5000系/CelE3000系への換装も選択肢

2010年4月発売のEPSONのオフィス用小型デスクトップPC。筐体はAT990E系よりも一回り小さい。Core2 Duo世代(LGA775)で、Win7を標準搭載OSとしていた。本機はCore2 Duo E7500モデルだが、Celeron 430モデルもあった。2020年7月、オークションにて1円即決(コミコミ¥1112)。「いらないので持って行って下さい」状態——だが充分使える。

とは言うものの、RAMの上限が2GBというのはWin7でも流石に厳しい。何とか4GBモジュールが使えないか、いろいろ試してみたが無理だった。ここが本機の最大のネックだろう。最近のブラウザは2GBくらいすぐに食い潰すだろうし、仮想化環境(VirtualBox等)も実用的なパフォーマンスが出せるかどうか…やる気をなくさせるスペックなので【ヤメタランス】と命名。

実は、このAY301、発売時期がはっきりしない。 2009年12月に「AY301-V」なる機種の発売がリリースされているが、 これはWinXPモデルのみ(Win7のダウングレード版という扱いらしい)。 Win7のリリースとの兼合いで、Win7搭載モデルが2010年4月になったカンジ。 無論、Win7モデルがメインなので、2010年4月をAY301の発売日とみなした。

おそらく、AYシリーズ初号機はAY300(2009年08月発売)で、ハードウェア構成はAY301と同じくG41+ICH7のCore2 Duo機。したがって、AY301もハードウェアの時代目安としては、2009年夏モデル相当と思われる。

ハードウェア仕様
CPU Pentium E5700 @3.00GHz/65w/Wolfdale(200MHz)/pm=1740
Core2 Duo E7500 @2.93GHz/65w/Wolfdale(266MHz)/pm=1900(2020年3月以前の旧スコア)
C/S G41 Express + ICH7
RAM 2GB DDR2-800 / RBU256X64D2U800C5E(ロープロ仕様) ※1-slot
HDD 160GB (SATA300/7200rpm) 8000h/9000c
※Windows 7 Pro (32bit) インストール済み
DVD super multi drvie
VGA DVI-I (w/D-sub adapter)
LAN 1000/100/10 (ATHEROS AR8121)
PS2 2 (keyboard/mouse)
PCI 1 (PCI2.2/low-profile)
size W103×D339×H289mm
noise 25dB

CPUの換装

Core2 Duoは意外に高発熱で、ファン音がけっこう気になる。また、C2Dに所謂「省電力モデル」は存在しない。内部クロックが200MHzでアイドル時の発熱が小さいPentium E5000系/Celeron E3000系の方が実用的だと思う−−と言うことで、Pen E5700に換装した。ちなみに、この世代のC2D/PenE/CelEには性能差があまりない。C2D E7500もPen E5700もpassmark値はほぼ同じ−−1割も違わない。更にPen E5800ならばpassmark値はC2D E7500を超える。

CPUCPUクロックL2キャッシュ内部クロック旧passmark値新passmark値
Core2 Duo E75002.93GHz3MB266MHz18741134
Pentium E57003.00GHz2MB200MHz1737 (93%)1084 (96%)
Pentium E58003.20GHz2MB200MHz1892 (101%)1171 (103%)
※PenE5700/E5800のpassmark値の後の%値は、C2D E7500のpassmark値に対する割合

なお、Celeron 400系はEIST(SpeedStep)非対応のために、アイドル時の発熱が半端なくデカい。TDP 35wという数字に欺されてはいけない。この世代の最も省電力なCPUはCeleron E3200。

CPUの温度

Core2 Duo世代はSpeedStepが実装されているため、アイドル時の消費電力・温度はかなり低めに抑えられている(Celeron 400系は除く)。が、少し負荷が掛かると温度が「びよん」と跳ね上がる。そうなると、ファンが爆音を出して回転し始め、ほぼ使い物にならない。そこで、Windows 7の電源管理機能で、CPUの上限を80%(2.4GHz)に制限してみた。

CPUクロックアイドル時高負荷時ピーク時(*)備 考
Pentium E57003.0GHz(100%)40℃60℃前後67℃室温30℃
Pentium E57002.4GHz(80%)40℃50℃前後57℃室温30℃
(*)デバイス・ドライバのインストール時、およびmpvによる動画再生時に発生

PenE5700のTcoreは74℃らしいので、3.0GHzのピーク温度67℃でもまだ余裕はあるが、流石に騒くて使い物にならない。一方、2.4GHzに落とせば、ファンの唸りはほぼ消える。その分処理速度は遅くなるわけだが、体感で困るほど低速化するわけではない。ただ、2.4GHzで良いのなら、わざわざE5700を使う必要はなく、E5300(2.6GHz)で十分だろう。

【参考】CPUの上限を制限するなら、C2D E7500を換装する必要はないと思われるかも知れないが、C2DとPenEではアイドル時の消費電力・温度がかなり異なる。Wolfdaleで200MHzのPenE5000系/CelE3000系は、アイドル時の消費電力が非常に小さい。CPU-Zでチェックしたところ、200MHz×6=1.2GHzまで落ちていた。多分、C2D世代で最も実用的なCPUは、アイドル時の消費電力が小さく、高負荷時でも唸らない上に、VTにも対応しているCeleron E3200だろう。今更、この世代のCPUに絶対性能を求めることはないと思うので。

【追記】PenE5700は、3.0GHz(x15)フルスピードの次が2.4GHz(x12)になっているようで、中間の値である2.8GHz(x14)や2.6GHz(x13)には設定できないようだ。

小型化の弊害

本機の特徴は、一般的なデスクトップ用パーツ(モバイル用ではない)を使用して、可能な限り小型化している点。が、小型化のために、いくつかの制限が出て来ている。一番のデメリットはメモリスロットが1本しかないこと。当然、デュアルチャンネルにはできない。これはパフォーマンスにかなり大きな影響が出るだろう。実際、後継機種では同サイズの筐体でも、メモリスロットが2本に増えている。

【追記】デスクトップ用DDR2メモリ(非ECC)の実質上限は2GB。従って、メモリスロットが1本しかない本機の上限も2GB。実際には4GBのメモリも存在するが、基本的にAMD用でIntel系では動作しない。ネット情報では、内部クロック200MHzのCPUならば、動作することがあるとかないとか…と言う話だったが、本機ではCeleron Eでも動作不可能を確認している。チップセット/BIOSの問題か?

また、私が入手した機体に使用されていたメモリモジュールは超ロープロ仕様で、高さが一般的なDIMMの半分程度しかない。メモリスロットの上部にあるDVDドライブに干渉しないようにという配慮だろうが、そこまで必要だったかどうかは、ちょっと判らない。ぱっと見では、標準サイズでも問題ないような気がするのだが…ともあれ、特殊仕様のパーツはコスト面でデメリットになっただろう。

また、AT900系では2本あるPCIスロットが1本(ロープロ)に減っている。 尤も、後継機種ではPCIスロットが全くなくなったので、1本でもあるのは感心。 これが、OS/2を動かす際には極めて重要な要件となった。 ただ、一般ユーザーにはどの程度有益かな?とも思う。 本機の構成から言って、必要性が高いのはUSB 3.0増設ボードだと思われるが、PCIeでないと増設は困難なので。

もう一つ盲点なのが、ビデオ出力がDVI-Iのみで、VGA(D-sub)出力ポートがない点。DVI→VGA変換アダプタが標準添付されているが、これを使うと、背面のスペースがけっこう余分に必要になる。オフィスでの設置を考えると、地味にデメリットになる。そのためか、後継機種では、DVIとVGAの両方のポートを備えるようになっている。

ファンコントロールの問題

本機には、電源ファンとCPUファンの2つのファンが搭載されている。所謂ケースファンはない。で、電源ファンはひとまずおくとして、ちと厄介だったのがCPUファン。外部からのコントロールを受け付けない。通常は20%の速度で回転していて非常に静かなのだが、CPUの温度が上昇すれば自動的に回転数も上がる。当然、騒音も大きくなる。

ま、それはそれでいいんだが、問題は、その温度と回転数の相関を全く変更できないという点。BIOSにファンや温度に関連する項目が一切ない上、SpeedFanなどのコントロールソフトでも制御不可能。コントローラーに信号が送られているのは間違いないようなのだが、それでも言うことを聞いてくれない。個人的には、ちょっと困った仕様である。ちなみに、AT991EではBIOSやSpeedFanで回転数を制御できる。

なお、入手時点でファンに埃が大量にたまっていた。即分解、簡単に掃除をしたが、まともに使うなら本格清掃が必要だろう。LGA775のクーラーの取り外し・取り付けはけっこうコツがいる。ファンは4pin(PWM)であることを確認。

消費電力

3.5" HDDを接続した状態で、BIOS時53w、Win7アイドル時37w。Core i世代に比較するとかなり大きい印象(37wで大きいと言われても困るだろうが)。SSDに換装後、OS/2アイドル状態で31wだった。HDD→SSDで5w以上の省電力になるようだ。

WindowsUpdateの失敗

本機のみの問題ではないが、リカバリーしたWindows7は、しばしばWindwosUpdateに失敗する。これはWindowsUpdateのバグで、更新ファイル「kb4490628」が導入されないため、それを前提とした更新がすべて失敗してしまう。kb4490628はネットで単独入手可能なので、先にこちらの適用をする必要がある。まあ、サポート切れのOSについて、今更どうこう言うのも何だが、放置と言うのは酷いと思う。

OS/2の動作

OS/2は比較的高速に動作するが(PenM/2.1GHzよりも速い)、非常に不安定で常用は無理。まず、以下のような設定が前提。この設定でないとブートもしない。

RAMをDDR2-667MHz/512MBに換装
BIOSでUSB 2.0をDisableに(EHCIドライバを組み込まない設定でも可)
LANカードを増設してもオンボードLANはDisableにしてはいけない

以上でブートは可能になるが、PS/2マウスがまともに動かない。PS/2ポートの故障すら疑われるレベルで、目茶苦茶な動きをする。が、類似症状を他機種でも経験したことがあるので、故障ではなく相性なんだと思う。

マウスをPS/2からUSB接続に変更すれば、一応動作は安定するのだが、デフォルトではマウスとキボードは同時にUSB化が必須(BIOSレベルでUSBをPS/2互換に変換する機能がある場合は別)。smouseドライバ v1.2をインストールすれば、PS/2キーボとUSBマウスの共存が可能になる(smouse v1.1は不可)。ただし、キーボードが勝手にShiftモードになるなど、動作は非常に不安定。その後、この症状はどんどん悪化している。最早、継続的で安定的なキーボード操作は不可能;実用にならん(u_u;)

さらに、ディスクアクセスに不正なウエイトが掛かる。これは原因不明だが、経験的にUSBが悪さをしている可能性が高い。そもそも、EHCIを組み込むとブートしなくなるシステムと言うのが根本的におかしいワケで、ハードウェア的な問題を抱えているのは確実。表面には出てこないが、深い部分でリソース競合のようなことが起きている印象。少なくともG41+ICH7は避けるべきではないかと…

問題がUSB/PS2周りなので、特にICH7が怪しいと言うことになりそうだが、(恐らく)同じICH7を搭載しているEQUIUM S6400では、こんな症状は出なかった。ホイール機能には問題が出たが、基本動作は正常だった。

その後、USBドライバを10.162や10.197に更新したら症状(PS/2マウス動作、不正ウエイト、キーボード異常)は若干改善されたが、正常には程遠く、実用になるレベルではない。が、この事からも、問題の本質がUSB周りにあるのは間違いないようだ。


Long-run reports…
2020.07.29:オークションにて1[コミコミ1112]で入手
2020.11.14:OS/2実験;ネイティブ動作も不可能ではないが、実用には程遠い
2024.01.14:RAMを4GBに換装するも起動せず;デスクトップ用のはずが実はサーバ用だったorz
 オークションで入手したのだが、型番読めなくしてあった;初歩的なミス(u_u;)
2024.06.09:SanMaxの4GB RAMをテスト;今度は確実にデスクトップ用だが、やはり起動せず
2024.06.13:CPUをCeleron E3400/2.6GHz(200MHz)に換装して4GB実験するも、やはり起動せず
2024.06.13:CPUをPentium E5700/3.0GHz(200MHz)に換装;これで行きましょう


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