†PCうそつき講座†

AMD 785Gと880Gについて

作成開始日 2021.07.07
最終更新日 2021.07.11

AMD 785GはAM3 CPUに対応した初期の廉価C/Sで、メモリはDDR2/DDR3両対応。
DDR3にも対応しているのがミソで、AM3 CPUを下位互換モードで動かしている訳ではない。
しかし、700系は本来AM2+用であり、785Gも所詮「AM3も動くAM2用C/S」ではないか?
とすれば、785GではAM3 CPUの性能を十全に引出せないのでは?その懸念が払拭できない。
785G後継のAM3専用C/Sとして880Gがあるが、785Gとどのような違いがあるのだろうか?

●AM3専用チップセットなんて考え方がナンセンス

−−が、これは問題の立て方自体がそもそも見当違いだった。一般に、C/Sの型番と対応CPUには、下表のような関係があると言われている。だから、AM2+用の700系でAM3 CPUを動かすと、何等かのペナルティーがあるのでは?と思ったのだが、実際は、690系、700系、800系とも機能に本質的な違いはなかった。下表は単に各CPUと同時期に使用された主なC/Sを示しているに過ぎない。

たとえば、AM2とAM3の決定的な違いは《DDR3メモリの可否》だが、この表を見る限り700系はDDR3不可、800系からDDR3サポートと考えるのが普通。が、実際は、初期のAM3/DDR3 マザーでは790GXが使用されたし、785GでもAM3/DDR3は動くし、中には690G搭載のAM3/DDR3マザーと言う珍品も存在する(FOXCONN A6GMV)。


C/SCPU
690系 AM2
700系 AM2+
800系 AM3
900系 AM3+
2008年8月:790GXリリース(AM2+用として)
2009年2月:AM3 CPU(Phenom II)発売
  〃:AM3マザー発売(790GX+DDR3が主流)
2009年8月:785Gリリース(当然AM3での使用を想定)
2010年4月:880Gリリース(DDR3のみサポート:MB側の問題)

●DDR3メモリの可否はCPUが決める

なぜこんなことが可能かと言えば、Athlon 64以降はメモリ・コントローラーをCPU内に内蔵したため。どのメモリが使用可能かは、チップセットではなく、CPU自体が決める。なので、AM3 CPUが使用可能であれば、どんなチップセットでもDDR3に対応できる。AM2とAM3の本質的差異をDDR3対応とするなら、それはチップセットには関係のない話である。各世代のチップセットに差があるとすれば、内蔵グラフィックスのクロックとか、PCIeのレーン数のような程度の差でしかない。

●Socket AM3とは単なる物理的な細工?

こうなると、一般に言われていることも、もう一度再検討してみる必要がある。たとえば、Socket AM3とは何か?一般には、DDR3に対応したCPUソケットと考えられているが、上述のように、DDR3の可否はCPUが決めることで、Socketとは直接関係がない。そうではなく、Socket AM3とは「DDR3のマザーにAM2のCPUを装着不可能にする物理的な細工」と考える方がしっくりくる。

また、「Socket AM3ではAM2 CPUは使用できない」と言うのも、表現の仕方として本末転倒のような気がする。「AM2 CPUを装着不可能にしたSocketをAM3と呼ぶ」の方が正しいと思う。要は誤装着防止機能。この問題がややこしくなるのは、DDR2/DDR3両対応のコンボマザー。AM3 CPUがDDR3で動くのに、Socket形状はAM2になっている。でも、これはAM3マザー…

●表現・誤解・混同…

以上を踏まえると、冒頭で785Gを「DDR2/DDR3両対応」と表現したことからして的外れ。が、この手の表現はそこら中に溢れている。どうも「結果」と「機能」を混同した表現が一般的になってしまっているようだ。確かに、785GはAM2(DDR2)のマザーにも、AM3(DDR3)のマザーにも搭載されているので、結果を見れば「DDR2/DDR3両対応」と言う表現は間違いではない。しかし、それはメモリをCPUが制御するからであって、785Gに両対応機能が備わっている訳ではない。

同じく「880GはAM3専用」という表現があるが、これも800系がAM3マザーにしか採用されていないと言う事実を述べたに過ぎないだろう。おそらく、880GはAM2(DDR2)マザーのチップセットとしても実装可能だと思うが、そんな事をするメリットがない。これを「AM3専用の特別な機能が付いているのだろう」と誤認識してしまうのが恐い。そもそも、今回こんなことを調べ出したのも、その誤認識が始まりだったわけだが…

●本題:785Gと880Gの違い

と言うことで、880GはAM3専用などと言っても、実は785Gとの本質的な差異などどこにもないのであった(この程度の調査で、そこまで言い切って良いものかどうか…)。Socket AM3で使用する限り、両者ともメモリはDDR3-1333まで(MBによってOC可)、HTは3.0(max.2.6GHz)と同スペック。内蔵グラフィックスのクロックや、PCIeのレーン数は若干異なるが、性能に大きな差が出るような違いではない。

ちなみに、785Gの開発コードネームは「RS880」、880Gは「RS880P」。
初めから兄弟であり、785Gは800系ファミリーの隠れメンバーだったようだ。

むしろ、留意したいのはA-Link Express(north/south間のリンク)で、880Gは785Gの2倍の速度が出るそうだ。このため、880GはSATA 6Gbpsをサポート可能だが、785Gは3Gbpsしか出ない。これは大きな差だ。と言っても、SATA 6Gbpsサポートにはサウス側がそれに対応した性能でないと不可能で、廉価C/Sである880Gでは、廉価サウスのSB710などが使用されることが多く、結果として3Gbpsしか出ないことが多いようだ。

●本当の本題…785GのAM3マザーは買いか?

そもそもは、中古で785G搭載AM3マザーの格安品を見つけたので、これが「買い」なのかどうか?というのが本当の本題であった。もし、700系ではAM3 CPUに機能制限が出てしまうというハナシならば「ナシ」、800系と本質的な差がないのなら「買い」、と思って調べ出した。が、調べれば調べるほど混乱し、そもそもAM3ってなに?と言うハナシになって、アイデンティファイする要素がDDR3対応だけで、しかもそれがCPU側の機能だとなると、「AM3用C/S」って言葉には実体が全くないんじゃないか、と思い出した…いや、そんなまさか…と泥沼にはまっていって…一応は「買い」という結論に達したのだが…

ぐだぐだ考えているうちに、結局、買いそびれてしまったのであったorz


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