†PCうそつき講座†

Lenovo ThinkCentre A61e AthlonX2 BE-2400【nelonga】

作成開始日 2022.05.11
最終更新日 2022.07.04

2007年12月発売のSocket AM2世代オフィス用超小型PC。デスクトップ用CPUと3.5"HDDを搭載するPCとしては、極めて小さい。EPSON Endeavor AY300系の半分程度のサイズ。無論、モバイルPCをデスクトップ化したような超小型PCと比べれば大きいが、ケースファンも含め、デスクトップ用汎用パーツが使え(RAMは除く)、筐体開閉が極めて簡単なのは大きなメリット(改造前提?)。また、静音性も大きなセールスポイントになっていた(後述)。

当時の価格は、Sempron LE-1150モデル(RAM 1GBx1)が6万円台、AthlonX2 BE-2350モデル(RAM 2GBx1)が8万円台だった。2018年5月、オークションにて800円で落札(コミコミ¥1690)。入手した時点で、CPUはAthlonX2 5400+(Brisbane)に、RAM(SO-DIMM)は512MBx2に換装されていた。また、ACアダプタは何故かSONY VIO用(90w)で、先端のプラグが交換されていた。

2022年5月、大幅に改造してDebian 11をインストール、居間用PCとして使用中。その風貌から【nelonga】と命名。黒いし、目が光るし、静かだし、ネロンガ好きだし… …いや、今ネットで画像調べたらそんなに黒くないのね、背中の黄色も目立つし…でも、私が見た白黒テレビの映像ではとても黒かった(^_^; ともかく、この子はnelongaに決めた。

2022年6月、OSをDebian 11(HDD)からDebian 8(SSD)に変更。別に11で問題があった訳ではないが、8GBの産業用SSDでまとめたら《システムとしてカッコイイ》と思ったので。流石に、8GBでは11は無理があるので、容量と機能のバランスで8を選択−−が、そうスンナリと行ったハナシではなかった。ここに辿り付くまでに、Debian 9、Xubutnu 14、BusterDog、Fossapup、Tahrpup、Quickpupなど、さまざまな試行錯誤を繰り返さざるを得なかった。キモはサスペンド/レジューム;Debian系はAMDのC/S(Radeon)でレジューム機能に致命的な不具合が発生する。

SPEC 2022.05.13
BaseLenovo ThinkCentre A61e 6499A55(Sempronモデル)?
M/B(mini-ITXサイズらしい)
CPUAthlon X2 BE-2400 (2@2.3GHz/45w) pm=1200 ※Brisbane/4450e同等品
Athlon X2 5400+ (2@2.8GHz/65w)
C/SAMD 690V + SB600
RAM4GB : 2GBx2 PC2-4200(DDR2/533MHz) ※2-slots
2GB : 2GBx1 PC2-4200(DDR2/533MHz)
1GB : 512MBx2 PC2-5300(DDR2/667MHz)
SSD
HDD
8GB 2.5" SSD Hagiwara HFD25S-008GB (SATA-II)
80GB 2.5"HDD Seagate ST980310AS(SATA-II/5400rpm/2.5w)
VGAATI RADEON X1200 IGP (A690V)
LAN1000/100/10 Broadcom BCM5786
AUDATI SoundMax (HD Audio)
PS/2なし
PCIなし
FAN6cm x 20mm OWL-FE0620L-BK(3500rpm/23dB)※元は25mm厚
PWR90w ACアダプタ(SONY製改造品) ※本来は135w

●CPUの換装:AhtlonX2 5400+ → AthlonX2 BE-2400

CPUはAthlonX2 5400+(65w)からAthlonX2 BE-2400(45w/4450e同等)に換装した。そもそもが冷却能力の低い筐体なので、TDP=65wのCPUを載せるのはかなりの無理があった。静音化を考えると、少なくとも定格のTDP=45wのCPUに戻さなくてならない。また、速度的にも5400+(2.8GHz)がpm=1400、BE-2400(2.3GHz)がpm=1200で、それほど大きな差はない。それに、本来がBE-2350(2.1GHz)のマシンなので、オリジナルよりは少しだけ高速化した事になる。

●メモリの換装:1GB → 2GB → 4GB

メモリも512MBx2から2GBx1に換装した。仕様上はPC2-5300(667MHz)で、元の512MBはPC2-5300だったが、換装した2GBはPC2-4200(購入するときチェック忘れたorz)。が、特に問題なく動いているようだ。メーカーPCなので、PC2-4200に対応しているのかどうか判らんが…なお、(多分)デュアルチャンネル対応なので、換装によってメモリ周りはけっこう遅くなっている可能性がある。それでも容量の方を重視した(Debian 11を予定していたので)。

【追記】その後、2GB×2枚=4GBに換装。デュアルチャンネル化したが、やはりPC2-4200。安価だったのと、OS/2実験を想定していたので、遅めのメモリを選んだ。OS/2は全く起動しなかったが、Debianで使う限り実害はないようだ。32ビット版のDebian 8で使用しているが、PAEのおかげか、4GB全て認識している(2022.07.04)

●静音PC…なのか?静音ファンへの交換

本機はACアダプタ駆動で、ファンはCPUファン兼用ケースファン1つのみ。発売当時は、その圧倒的な静音性を大きなセールスポイントにしていた。が、実際に使用してみると決して静かではない。机の上に置くと騒音で作業が妨げられるレベル。これは、そもそもこのレベルの騒音で、私が神経質過ぎるのか、或は、経年劣化で騒音が大きくなったのか…いずれにしても、静音ファンに交換せざるをえない。

ファンは6cm×25mmの3pinというありふれた仕様で、交換も簡単。ただ、25mmの在庫が払底していたので20mmで代用した。構造的には20mmでも15mmでも問題はない。特徴的なのはファンの固定方法で、一般的なネジ止めではなく、ゴム製のピン2本で固定されていた(防振目的?)。ただ、これを奇麗に抜くのは至難の技で、1本は何とか外せたが、奥の1本は無理と判断して切断した。新しいファンは普通にネジ止めで取り付けた。

換装したファンはOWL-FE0620L-BK(3500rpm/23dB)。確か、0.14Aで、元のファンの半分程度の消費電力だったと思う。で、どうなったかと言うと…これが大幅な静音化に成功した。これならば「囁くような」レベルと言っても過言ではない。ただし、その代償として冷却能力がかなり落ちた。Debian 11でモニタしたのだが、元ファンならば40℃台前半だったCPU温度が、新ファンでは50℃弱に上がった(室温約25℃)。アイドル状態でこの温度は少し気になる。

また、ブラウザでWeb埋込動画を再生したらCPUに猛烈な負荷が掛かって、CPU温度が70℃を超え、ファンが唸り出した。こうなると爆音PCである。「静音」と言うのは、あくまでも負荷の小さな状態。本機では高負荷作業を避けるべきだろう。ただし、同じ動画再生でも、動画ファイルを直接mplayerで再生する場合はそれほどの負荷は掛からず、静音状態で鑑賞できる。

それよりも深刻なのが、BIOS表示時(恐らく片コアの負荷率100%)で、数分間で70℃まで上がった(ヘルスモニタでチェック)。恐くてすぐに電源切ったが、これはどこまで上がるか判らない。冷却が発熱に追い付いていないのだから、原理的には更にどんどん上がるはず。尤も、その状態でもファンの回転数は2000rpm前後、つまり全力回転ではない。更に高温になれば回転数が上がるのかも知れないが、恐くて実験できない。BIOSではスマートファン設定を変更できない。

【追記】九日連続猛暑日の中、ファンが物凄い音で唸るようになった。CPU温度=60℃が高速回転の閾値のようだ。ウチは省エネで、クーラーをつけた室内でも30℃近くあるため、やむをえない所であるが。夏が過ぎるのを待つしかない。尤も、排熱能力不足は否定し難く、そもそも30℃の居間で使うPCとして適切な選択だったのか、というのを考えてしまう。SN68SG2のように大口径ファンが使えるPCの方が適しているのは明らかだが、あれは別の用途があるので。(2022.07.04)

●消費電力(実測値)

省電力性能はなかなか優秀。アイドル時には30wを切っている。

Debian 11アイドル状態 :29w
Debian 11 h.264動画再生状態 :35〜40w ※mplayerを使用
Debian 11サスペンド状態 :2〜4w
サスペンド復帰時の最大消費電力 :61w
ブートプロセスにおける最大消費電力 :57w

本機付属のACアダプタは本来135w仕様。ただし、私が入手した機体は、SONY製の90wアダプタが付いてきた(しかも、先端のプラグが交換されていた)。消費電力を見る限り、このアダプタでも何とか間に合いそうだ。なお、経験的に、AthlonX2世代のPCの最大消費電力は[25w+TDP]なので、45w CPUならばmax.70w、65w CPUならばmax.90wとなる。

●ストレージ

ストレージは3.5"SATA-HDDが1台搭載できるようになっている。汎用性とコストを考えると悪い選択肢ではないが、今使おうと思うと流石に… SSDにしようかと思ったが、生憎適当な容量のSSDの空きがなかったので、2.5"HDDで代用した。今回は最低でも40GBくらい欲しかったので、Seagate ST980310AS(80GB/SATA-II/5400rpm/2.5w)を使用した。消費電力も発熱も騒音も小さい。

問題は2.5"のHDDをどうやって固定するか? SSDなら養生テープで貼り付けておくだけで十分だが(^_^; 流石に可動部のあるHDDでそれは恐い。なので、樹脂性の2.5"/3.5"変換ジャケット被せてネジ止めした。と言っても、この変換ジャケットは3.5"HDDとネジ穴の位置がずれている。4箇所中2箇所しか止まらない。仕方ないので、ぶらついている部分をやっぱり養生テープで固定した。

それにしても、この樹脂性サイズ変換ジャケットは実に使えない。安いからと衝動買いしたが、ネジ穴はずれているし(FDDマウントベイ用?)、ハンドル部が目茶苦茶邪魔だし、まったく持て余していた。今回有効利用ができて大変に嬉しい。

【追記】その後、80GBのHDDから8GBの産業用SSDに換装した。固定が不安定なため、HDDではやや不安だったのと、やっぱ、このPCなら産業用SSDの方がサマになる、という美的意識の問題。ただ、8GBではDebian 11の使用は困難、別途OSを選択しなければならない。そして、これが実に厄介な問題を引き起こすことになった(後述)。(2022.07.04)

●OSの選択−−Debian11

本来、本機はOS/2のインストールを想定して入手したものだが、入手したあとでPS/2コネクタが1本もないことに気が付いたorz これではネイティブOS/2は無理である。おまけに当初は静音性が期待外れだったこともあり、しばらくはお蔵入りになっていた。が、今回(2022年5月)、PCのローテートに伴い、新たな居間用PCとしてアセンブルすることになった。

用途から言っても、ハードウェア・スペックから言っても、OSはPuppyあたりが丁度良いのだが、敢えてDebian11を選択した。これは、近々やや高スペックなマシンにDebian11を載せる予定があったので、その下準備と言うか、練習のつもりだった。案の定いろいろ手間が掛かったけれど、とにかく実用レベルにはなった。しかし、このスペックで素のDebian 11は無茶かな。

●OSの選択−−サスペンド/レジュームが壁 (2022.07.04)

ストレージを8GBのSSDに換装したことにより、Debian 11は使用困難になった。で、新たなOS選びとなったわけだが、設定した条件は以下の通り。

@8GBストレージにインストールして、3GB程度の空き容量が確保できること
Aサスペンド/レジュームが正常に機能すること(必須)
Bデスクトップ環境としてXfce/LXDEが使用できること
CBluetoothスピーカーが使用できること(できれば)

以上を勘案すれば、Debian 8 Jessieあたりが順当な選択肢になるのだが…

この中で、今回最大の難点になったのが、Aのレジュームの問題。Debian系はAMDのC/Sと非常に相性が悪いようで、オンチップのRadeonのせいでレジュームが不可能になる。これはDebian 11でも起きた問題だが、11はfirmwareのインストールですんなり解決できた。しかし、Debian 8/9では、そう簡単には行かなかった。結果的に8で解決できたが、そこまでに、実に多くの試行錯誤を繰り返した。最終確定まで2週間を費やしてしまった。

ちなみに、Ubuntu系ではAの問題は起きない(実は兆候っぽい現象が起きたことはあるのだが)。なので、XubuntuやLubutnuならば条件を満たすのだが、Ubuntu系は原則rootでのログインができない。案の定、一般ユーザーでのシステム設定は実に煩瑣でメンタル的に参ったし、root不可の有用性も疑問。今回はXubuntu 14(Debian 8世代)を試したが、@〜Cの条件を十分に満たし有力な候補になった。だが、rootログイン不可は致命傷だった(回避方法はあるのだが)。

もう1つの選択肢がPuppy系。これもベースはUbuntuなのでAの問題を回避できる。しかし、Bの問題が立ちはだかる。Fossapupはサイズや機能の点では合格なのだが、JWM+ROX+セーブファイルという環境は、私にはどうしても馴染めない。派生種のBusterDog/LXDEやQuickpup/Xfceも試してみたのだが、Fossapupに比べると完成度が低い。バグや未実装機能が多く実用は困難と判断。特に、Quickpup 21はセーブファイルが壊れると言う致命的なバグを抱えていた。

【追記】これはバグではなく仕様だったようだ。そもそもFAT32はサポート外らしい。(2022.09.12)

で、結局どうしたかと言うと、原点に戻ってDebian 8 LXDEにfirmwareをインストールしてAの問題を解決した。ポイントは、通常のnon-free設定で出てくる「firmware-amd-graphics」ではなく、Debina JPのミラーサイトなどにある「firmware-linux-nonfree」をインストールすること−−ここに致るまでが大変だったのだ。これでレジューム問題は解決。他は満点だ。Bluetoothスピーカーの接続には少し手間取ったが、現状では問題なく使用できている。

もちろん、他の選択肢もなかった訳ではない。「Xubuntuのrootログインを可能にする」「FossapupにXfce/LXDEをインストールする」「Quickpupの20を使う」などなど、可能性としては面白い。実際、FossapupにXfceを入れてみたこともあるのだが、使える環境を整えるまでには遠いなぁ…というカンジで、Debian 8のレジューム問題に取り組む方がゴールに近い感覚があった。そもそも、2時間で入れ替える予定が2週間になってしまった訳で、可能性を追求する余裕はなかった。


【PCうそつき講座目次】 【ホーム】