†逆襲のOS/2†

OS/2のイメージ・インストール

作成開始日 2018.07.16
最終更新日 2020.12.12

OS/2のインストールは非常に面倒臭い。OS/2現役当時でも面倒臭かったが、ハードウェア互換性が失われた現在では、極めて厄介な状況にある。

ハードウェアの問題:OS/2のインストールにはレガシー環境が必須。Warp 4.0以前はレガシーFDDが必要(USB不可)、4.52でもATAPIのCD-ROMが必須(SATA不可)。また、RAMは512MB/667MHzまで、HDDはIDE/80GB以下;現在ではほとんど無茶な要求。

汎用性の欠落:OS/2のインストーラーは機種依存する。ビデオカード、サウンドカード、LANカードなど、それぞれ専用のドライバが必要。しかも、サポート状況が極めて貧弱。デフォルトではほとんどの周辺機器が動かない。SVGAが表示できれば御の字。

環境構築の手間:OS/2はデフォルトの状態では実用レベルにない。インストール後に数多くの設定変更や大量のツールの追加インストールが必要。これを毎回やっていたのではたまらない。私の場合、一から常用環境を構築すると丸一日潰れてしまう。

こうした問題を解決する手っ取り早い手段は、仮想化環境を使用すること。一番目と二番目の問題は即時解決。最後の問題も、一度、仮想ディスク上に常用環境を構築しておけば、あとは仮想ディスクファイルのコピーだけで、新たなマシンに同じ環境を再現できる。ターゲットPCではホストOS(Linux)と仮想化ソフト(VirtualBox)のインストール、およびOS/2の登録だけで良い。

尤も、それでもLinuxとVirtualBoxのインストールは必要なわけだし、何より仮想化環境が実用にならないマシンも存在する(仮想化支援技術が実装されていないとか、CPUパワー不足とか)。やはり、どうしてもネイティブのOS/2を使いたい場合がある。その場合は、レガシーPC上でDANIS/SNAP/GenMac/UniAudioのなどの汎用ドライバを使用してシステムを構築し、そのディスクイメージを保存しておく。新たにインストールする場合は、そのディスクイメージをターゲットHDD/SSDに展開すれば良い。僅か数分で常用環境が再現される。

●ディスクイメージの作成と保管

原理さえ理解できれば、どんな手段を使っても構わないのだが、一応、私が使用した環境を例に説明する。

@レガシー仕様のノートPCを用意する。34pinFDDやATAPI(IDE)CD-ROMの内蔵が条件(私はNECのDuron 900MHzのノートPCを使用した)。

ACF/IDE(44pin/2.5"仕様)変換アダプタを用意し、HDDとして2GBのCFを接続する。CFの容量は512MB〜任意だが(ただし、インストールするOS/2がデフォルトで認識できる容量まで)、実用システムを作成するなら【2GB】を強く推奨。運用方法にも依存するが、大きすぎても管理が不便。なお、データ領域は別ドライブが大前提。

B2GBのCFにOS/2をインストールする。全領域を基本区画として確保、HPFSフォーマットすれば良いだろう。この段階ではブートマネージャはインストールしない方が良いと思う。恐らく、基本機能は特に問題なくインストールできると思う。

CインストールしたOS/2のドライバを差し替える。IDE周りはDANIドライバに、ビデオはSNAP(フリー版)に、サウンドはUniAudioに、LANはRTL8139やYukonなどのメジャードライバを\IBMCOM\macsに追加し、別途GenMacもHDD(CF)上にコピーしておく。USBドライバやマウスドライバ(smouse v.1.2)などもアップデートを推奨。

D必須アプリケーションをインストールする。私なら、FWEditor、WX III、PMView、Seamonkey、AlwltFX、NPSWPS、lSwitcher、NetDriveなどの他、大量の自作ツール&スクリプト類を入れておく。CONFIG.SYSのPATHやLIBPATHも必要に応じて書き変える。また、各種設定も必要に応じて変更しておく。環境構築が終ったらOS/2を終了して、CFをノートPCから取り外す。

EWindows PCを用意して、USB Image Toolというソフト(フリー)をインストールする。USBカードリーダーを経由して、OS/2のインストールされたCFを接続する。WindowsはHPFSを認識できないので、初期化ダイアログが表示されるが、もちろん初期化してはいけない。

FUSB Imgae Toolを使って、CFのディスクイメージをファイルとして保存。物理イメージの保存なので、フォーマットは関係なく保存できる。保存形式はimz(圧縮形式)が効率的。私の標準環境の場合、圧縮ファイルは400〜500MBくらいになる。無圧縮の場合は、メディアの容量と同じサイズ(ここでは2GB)になる。

G新規インストールする場合は、ターゲットのストレージをUSB経由でWindowsマシンに接続して、USB Image Toolで保存したイメージファイルを展開すればよい。ターゲットはUSB接続ができれば、CFでもSATA-SSDでもIDE-HDDでも構わない。ただし、ターゲットの容量は、イメージファイルの容量(ここでは2GB)と同等か、それよりも大きくなければならない(詳しくは後述)。

Hシステムの変更が必要になった場合は、CFをレガシーPCに戻して編集すればよい。なお、一度システムを構築すれば、以後の編集作業は必ずしも最初のレガシーPCベースである必要はない。私は、リムーバブルなCFスロット(IDE接続でブート可能)を備えたPCで編集作業をしている。このPCにはATAPI-CDDもレガシーFDDもないが、OS/2のイメージをコピーしたCFから起動し、システムの編集作業をする事はできる。

この方法は非常に便利で、インストール作業が圧倒的に効率的になる。ただし、若干の問題点もある。

すべてのCFがデフォルトでブータブルな訳ではない
ソースとターゲットの容量の違いによる弊害が発生する
OS/2のインストールにWindows PCが必要になる

●大前提

各論に入る前に、本稿の大前提について若干説明しておく。ここで扱うイメージコピー式のインストールが必要になるのは、レガシーPCとCore i世代の狭間の、かなり限定された世代のみである。レガシーPCは通常のインストールが可能だし、逆にCore i世代ではそもそもネイティブOS/2は動かない。その中間の、CPUやメモリ周りは問題ないが、ディスク周りの問題で通常インストール作業が不可能なPCへの対処である。

具体的には、Pentium M/i915、ソケ754世代のAthlon 64と言った中途半端な世代、あるいはVIA C7や第一世代Atomなどのように、シンクライアント/ネットトップ/ネットブック系の拡張性を切り捨てたシステムを想定している(Atomでは動作確認をしていない)。もちろん、レガシーPCでも、通常インストールよりもイメージコピー式の方が便利ではあるが、不可欠なものではない。また、これより新しいシステムでは、仮想化環境を摸索する方が賢明である。

問題の核心は、OS/2が「ATAPI-CDD/34pin-FDD」と言うレガシーデバイスからしかインストールできない点にある(正確にはSCSI-CDDなどからも可能だが)。いずれもほぼ絶滅状態。また、USBメモリやUSB-CDD/FDD、SATA-CDDからはインストール不可能、と言うかブート自体が不可能。つまり、Live CDみたいなものを想定するにしても、最初のブートデバイスが存在しないのでオハナシにならない(これについては、後でもう少し検討する)。そこで、SSD/HDDに直にシステムのイメージを書き込むと言う方法を取る。

また、ストレージ容量は512MB〜16GB程度を想定している。OS/2 Warp 4.52は最小で512MB、フルシステムでも2GBあれば実用システムが構築出来る上、HPFSの1ドライブの実装上限が64GBなので、500GBや1TBと言ったストレージは余り意味がない。また、大容量ストレージへのイメージコピー式インストールは、成功した実績がない。

要するに、中途半端に古いPCにOS/2を入れて、ネットトップ的な使い方をすることを想定している。必要なのはWeb/メール/テキスト/静止画を扱う環境;動画も扱いたいがOS/2のスペックでは少々苦しい。

●CFのブート

基本的にCF/IDE変換アダプタを噛ませれば問題はないが、希にCFからブートできないことがある。その場合、まず、使用しているCF/IDEアダプタがブート可能なものかどうか確認する(取扱説明書などでスペックを調べる:容量制限などにも気をつける)。変換アダプタを多段で使用している場合は特に注意(SD→CF→IDEのような変換をする場合)。なお、正常起動が確認できているCFを1枚、テスト用にキープしていると便利。

CF2枚差しのCF/IDEアダプタの中には、CF1枚では機能しない物がある。

変換アダプタ自体に問題がないようならば、CFの方を疑う。たいていはFDISK /MBRやMBM、あるいはDISKPARTなどでブート領域を弄れば何とかなると思うが、手っ取り早いのは、一度LinuxのLive USBのイメージを書き込むこと。これでブータブルなCFになるはず。それでもダメなら、別メーカーのCFを試す。別メーカーのCFでもダメなら、CFが原因ではないだろう。

アダプタもCFも正常で、なおかつブート不可能としたら…ちょっとお手上げ。

●ターゲットのストレージの容量

最初に白状しておくと、私は、ディスクの容量とクラスタサイズに関しては十分な知識を有していない。つまり、小容量のディスクのイメージを大容量のディスク上に展開した場合、どんな不具合・制限が出るのか、論理的に説明することができない。なので、経験でしか物を言えないのだが…

私が標準としているシステムは2GBのCF上で作成したもの。この2GBのディスクイメージは、8GBや16GBのSSDに展開しても何等問題なく機能している。28GBのSSDまでは確実なインストール実績がある。また、記憶が曖昧だが、32GBでも使用できたと思う。

ただし、ブートマネージャはクラスタ(シリンダ)サイズの影響をモロに受けるため、メニューが崩れたり、まともに機能しないなどの不具合が発生した。なので、ひな型となるシステムはブートマネージャを導入しないで作成する。ブートマネージャが必要な場合は、ターゲットにひな型を展開後、そのシステムから導入する。

やや不安なのは、ブートマネージャでは明確な不具合が発生するのに、システム本体では問題が起きない理由を理解できていないこと。こうした不安を払拭するためには、SSD/HDDをブータブルなHPFSドライブとしてフォーマットした後、システムファイルを転送するというインストール方法が考えられる(標準のインストーラに近い)。こちらは物理イメージではなく、ファイル単位での操作になるため、ディスクの物理構造の違いに起因する不具合は発生しないのだが、そう簡単に実現できるわけではない。この点は別項で少し考えてみる。

●USBメモリ1本で完結できないか?

前記の私の説明したスキームでは、イメージの作成にも展開にもWindowsのUSB Image Toolを使用している。今日び、OS/2ユーザーと言っても、OS/2のみを使っているとは考えにくいので、Windowsでの操作は問題ないとは思うが、やっぱり釈然としない。LinuxのLive CDやLive USBならば、メディア一つでインストールを完結できるのに、わざわざストレージをWindowsマシンに持っていって、あれやこれや操作するのはスマートではない。それに、ストレージを基板に直付けしている一部のネットブックなどは、ストレージの取り外しそのものが不可能だ。

そこで、OS/2でもLinux同様にLive USBのような物を作成したいのだが、前述のようにUSBからOS/2をブートすることはできない(eCSやArcaならば可能なのだが…)。少なくとも、ブートは別OSに任せなくてはならない。で、思い付いたのがDOS。DOSにも物理イメージを操作できるツールが存在するので、USBメモリからDOSを起動して、物理イメージをターゲットに展開すればいいんじゃね?と考えた。

ところが、これはそんなに簡単にいかない。具体的な手順は別項で述べるが、要するに、DOSでは第一HDDしかブート設定ができないので、USBメモリをFDD扱いにしないければならない、これが大変で…しかも、動作が非常に遅い。イメージ展開に数十分掛かる。これでは趣旨にそぐわない。

で、もう一つの選択肢が当然Linux。PuppyをUSBメモリにインストールして、DDコマンドでOS/2の物理イメージの保存・展開をすると言う方法。こちらの方が見通しは明るいが、まだ試してはいない。が、DOSでの経験から、色んな問題が隠れていそうで、頭で考えるほどスンナリ行くとは思っていない。

なお、根本的な問題として、Pentium M世代のPCは、必ずしもUSBメモリからのブートをサポートしていない。今から考えるとちょっと意外だが、実感としてPentium M世代で半々、Pentium V世代ではほぼ絶望的と言ってもよい。そうなると、技術的にPuppyのLive USBからのDDインストールが可能だとしても、その有用性には疑問符が付く。


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