†Linuxなんて大キライ†

eBoxで動くLinux

作成開始日 2018.03.25
最終更新日 2018.06.30

何も知らずにeBox-3310A-JSKというミニPCを買ってしまった。ファンレスでCF/IDEドライブが使えるので、OSのインストール実験に便利なんじゃね?と思って、つい…まあ、安かったし。が、これ、搭載されているCPUがVortex86DX(つまり、憧れのRise mP6の子孫!)で、何とi486互換なのであった。つまり、Pentium以上が要求されるOSは動かないのである(@_@)。正確に言えば、「i486完全互換&Pentium準互換」らしいが、この「準互換」がネックなワケだ。

この《非互換性問題》はかなり深刻で、簡単に言えば《ほとんどのLinuxは動かない》のが現実だ。加えて、1GHz/512MBという性能上の制限も大きな足枷になる。例えば、Debian 8.0は、本機でも普通に動作可能な希な例外だが、動作が非常に重く、デスクトップ環境としては実用にならない。無論、サーバとして使用したり、CUI版を使用したりすれば別だろうが。今回、十日間に渡りさまざまなディストリビューションを試してみたが、そこから得られた結論は;

Puppy 4.3.1とSlax-ja 6.1.2-2以外はまともに動かない

という哀しい現実であった。共に2009年製で、標準ブラウザはTLS1.2未対応、実用には厳しい環境である。一方、最近のバージョンはほぼ全滅。本機の発売は2008〜2009年ころと思われるが、不幸なことにこの少し後くらいから、i386/i486サポートの切り捨てが大々的に始まっている。例外中の例外として、TinyCore 9.0(2018年)のみは動作したが、正直、あそこからシステムを構築するのは相当にシンドイ…普通の意味で実用的とは言いがたいと思う。そもそも、USBメモリからCF/IDEドライブへのインストールに失敗して萎えたorz ついでながら、OS/2も起動できなかった(BIOSにはOS/2に関する項目があるので、全く動かないと言うことではないかも知れないが…)。

一応、動いたLinuxについて簡単に説明すると;

Puppy:4.3.1は動作したが、5.7.1は起動不可。後続の派生ディストロも試した限りで全て不可。
4.3.1もCF/IDEドライブの認識に難があるようで、インストールにはBIOS設定のIDE周りをいじる必要がある。

Slax-jp:6.1.2-2で起動を確認。かなり軽いが、デフォルトでLANドライバは組み込まれない。
DMPが公開しているLANドライバ(r6040-1)をインストールしたら開通した。
HDDインストーラはついていない(手作業で行う)。標準で追加できるアプリが極端に少ない(数個)。Konqueror[征服者モドキ]というネーミングセンスには虫酸が走る(KDEの問題ではあるが)。7.0.8も起動したが、Xが立ち上がらない。DMPが公開しているビデオドライバを使えば可能かも?だが試していない。

Debian:8.0は普通に起動したが、動作は非常に重く、ブラウザはほぼ使い物にならない。
8.7はgenericカーネルを使用するというメッセージが出て起動した。こちらもメチャ重。
5.0は起動しなかったが、どうやらブートディスクに細工をすれば起動するらしい。具体的な手順も公開されているようだが、けっこう面倒臭そうだったので試していない。
なお、9.0はからVortex86を初め、WinChip系、VIA C3などほとんどの旧型互換CPUがサポート対象から外された。

Linux Mint:8/9は起動を確認したが、両方ともLANドライバが組み込まれない。
DMPのHPに公開されているドライバを9に組み込もうとしたが失敗、どうやらkernelバージョン違いらしい。対処法が海外のユーザーさんのHPに掲載されていたが、上手くいかなかった(望みはある)。LANドライバとバージョンが一致するMint 6を試そうとしたが、こちらは起動もしなかった。

Kona black:2.3の起動を確認。他バージョン/他エディションは試していない。
「超軽量」を謳い文句にしているが、この環境ではメチャクチャ重い。ブートに15分、Firefox起動に10分。

TinyCore:CorePlusの9.0で動作を確認、OperaをインストールしてWeb表示まで成功。
tc-installでCF/IDEにインストールしようとしたが、途中でフリーズしてしまう。Puppyのところで述べたIDE周りの設定の問題かも知れない(未確認)。いずれにしろ、使える環境を整えるまでが大変なOSで、途中で根気がなくなったので放棄した。

本来、このシリーズはWEC7やXPeを乗せて制御用とかセットトップボックスとかに使うものらしい。製造元のDMPのHPにはWECやXPeのイメージファイル(デモ版らしい)があるので、多分ここからDLすれば使えるようになると思う。Linuxも、X-Linuxと言うeBox専用の組み込みLinux(?)が用意されている。更に言えば、Vortex86用のLinuxカーネルのソースも用意されているようで、本気になればかなり使えるはず。ただし、それなりの知識と技術は大前提。つまり、そもそもそう言う用途の製品で、私のような素人ユーザーが汎用のデスクトップ環境を望むこと自体が間違いと言えば間違いなのだが…

また、本題からはズレるが、今回いろいろなディストリビューションを触ってみて、LinuxのUIはWindowsに全然追い付いていないな、というのを痛感した(主にLXDE版を使用)。スタートメニューやタスクバーこそXPふうにしているが、細かい部分への配慮が欠落している印象を受けた。たぶん、高速なPCを使えば問題はないのだろうが、本機のような低スペックPCでは、レスポンスの悪さをカバーしてくれる仕組がないと途方に暮れてしまう。同じアプリを何重にも起動してしまったり、UIの反応が鈍くてサブメニュー項目の選択に失敗したり、WinやOS/2では経験したことのないイライラを覚えた。PenV/500MHz/256MB−−このスペックで最低限UIがストレスなく動かなくては「軽量」とは言えないと思う。実際、WinMeやWarp4.52のUIはこのスペックで充分軽快に動く。LinuxではPuppyがギリギリというカンジ。最新のデスクトップ環境はきちんと試していないが、細部への配慮を重視して全体が重くなっては本末転倒だろうし。別の道を摸索すべきなんだろうな…

DSL 4.4.10 2008/11 ○起動成功、が、流石にこれは古いか…
TinyCore9.0 2018/02 ◎CorePlusで起動確認、LAN oK、OperaでWeb表示まで確認
slitaz 5.0 2014〜 ▲起動不可、ブートプロセスでi586必須と表示されて止まる
Puppy 5.7.1JP 2014/01 ▲起動しないことを確認、要件はPentium166MMX以上
4.3.1JP2009/12◎LANもデフォルトでoK
Slax-ja 6.1.2-2 2009/12 ○起動成功
7.0.8 2013/03 △コマンドラインで起動、X-Windowは起動失敗
Slacko7002017?▲起動不可、i586必須、正式版ではない?
xenialpup7.52017/12▲起動不可、i586必須と表示されて止まる
LxDD17.08.22017/08▲起動不可、i586必須と表示されて止まる
LinuxBean12.04.5 2015/04▲起動不可、i586必須と表示されて止まる
Lubuntu14.04.5 2016/08▲起動不可、i586必須と表示されて止まる
WattOSR102016/09▲起動不可、i586必須と表示されて止まる
Kona black2.32014/03○起動成功、LAN&Firefox ok、メチャ重!?
Debian 5.0.10 2012/04△起動失敗、細工をすれば使えるらしい
6.0.10 2014/07△起動失敗、細工をすれば使えるらしい
8.0.1 2015/04◎起動成功、かなり重いが使えないことはない
8.7.1 2017/01○何と起動成功(586と書いてあるのに)、物凄く重いけれど…
9.4.02018/03▲起動不可、正式にサポートから外されている
Vine 3.22005/09?Vortex86の動作実績があるらしい(eBoxではないが)
5.2 2010/11▲インストール不可
 
以下はメーカー情報(抜粋)
TinyCore4.2 2011/12○動作可能
Ubuntu 10.0.4 2010/04○動作可能
CentOS 5.5 2010/05○動作可能
Debian 8.0 2015/04○動作可能
WattOS ?.? 2008?○Ubuntu 8.10ベースとある
X-Linux ?.? ???○eBox用Linux(コマンドライン版?)

上記のように、現在動作可能なLinuxは非常に少ない。2012年ころまでのバージョンならば動く可能性があるが、ここ5年ほどはほぼ全滅。10年前のPCなんだから、10年前のOSを使え、と言うところか。例外はTinyCore 9.0、Kona black 2.3、Debian 8.7.1くらい。と言っても、流石にDebianも9.4.0は動かなかったし、Konaも最新版が動くとは思えない。TinyCoreは例外中の例外と言う感じ。尤も、TCLはUSBメモリでちょこっと使うというシロモノではない。

また、KonaやDebianは動くバージョンが存在するとは言え、とても実用になる速度ではない。重量級のDebianはともかく、超軽量を謳うKona blackがブートに15分、FireFoxの起動に10分と言うのには驚いた。もう少し高速のストレージにインストールすれば改善されるかも知れないが、USBメモリでは試用も厳しい。

Puppyは4.3.1はUSBメモリで簡単に起動できて、動作が軽快で、一通りのことができる、とても便利なディストリビューションだが、いかんせん古い。付属のブラウザもSeamonkey 1.1.18で、もはや表示できないページがかなり沢山ある。近い将来、大半のページがTLS1.2必須となるのは必定なので、標準環境で使用するのには無理がある。


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