†貧乏カメラ館†

FUJI ZOOM CARDIA
SUPER 115MR
未評価 発売年月 ----.--/標準価格 ¥5.6000
煩瑣な高機能3倍ズーム機


ZOOM CARDIA SUPER 115のマイナーチェンジ機(「MR」は「メタリック」の意味?)。当時のZOOM CARDIAシリーズの最上位モデルで、定価は5万6000円もした。非常に多機能でレンズも明るめ(ただし、EBCやスーパーEBCではないようだ)。質感・フィーリングもまずまずであるし、操作系・操作感も一見悪くなさそうに見える。しかし、機能が多すぎる上に、高級感を出すためか、表示が凝りすぎていて直感的でなく、全体的に煩瑣な印象を受ける。
(2007.06.19)

これだけの機能を詰め込むのなら、ボタンを増やすか、ダイヤルを使う方がよい。辛口の表現をすれば、作り慣れない多機能機で、意欲が空回りしているような気もする。

●スペック・チェック

コンパクトカメラのスペックで是非ともチェックすべきなのは、レンズの開放F値、最短撮影距離、測光連動範囲、の3点。この三つは一般ユーザーは殆ど気にしないようだが、それだけにメーカーも手を抜きやすい。そして、これらのスペックで手を抜かれると、思わぬ落とし穴にはまることになる。目立たないけれど、重要なスペックだ。

まず、レンズだが、38-115mm/F3.9-8.8と、このクラスとしてはけっこう明るい。高級機の代表であるAutoboy S並みの明るさである(Autoboy Sの方がわずかに明るいが)。同レンジの普及モデルと比較すると概ね1段ずつ明るい。

次に最短撮影距離だが、広角端で0.6m、望遠端で1.25m。これは合格。また、マクロモードでは、望遠端で0.65mまで寄れる。これもまずまずでしょう。無論、「マクロ」と呼べるようなレベルではないが、コンパクトとしては標準的。面白いのは、マクロモードにしていても、遠くの被写体に合わせようとすると、自動的にマクロモードが解除されること。……そんなら、シームレスでマクロに入れるようにすればいいのに…と思うのは私だけか?

ちょいと問題だったのが測光連動範囲。スペック表を一瞥すると、下限がEV 5.5(ISO100)しかなく、夜景が撮れないじゃか、と思ってしまった。このクラスなら、EV3くらいはいかなきゃ手抜きだろう、μzoom105なんかEV 2.3までいけるのに。EV6前後なんてのは、普及モデルのスペックだろう…と思ったんだが、実はそうでもなかったのか、やっぱりそうなのか、今一つよくわからない。スペック表を見ると、「夜景モード」というのがあるので、EV 5.5より暗くても大丈夫のような気がする。しかし、「夜景モード」は「ストロボ発光停止」と同義語のようでもあり、それだと、夜景モードでもEV 5.5が限界ということになる。……ISO 800を常用に使えと言うことか?

ただし、夜景モードとは別にバルブもあって、最長60秒まで切れる。これならば、オーロラだって撮れる。要するに、手持ちの限界を1/3"と見て、それよりも暗い被写体を撮る時は、意図的にバルブモードを使ってもらうか(中級者向け)、フィルムの感度でカバーしてくれ(初心者向け)、ということのようだ。確かに、迂闊に2秒まで切れるように設計してしまうと、夜景は超ブレブレの連発ということになるのだろう。意図は判らないでもないが、釈然としない。……私達はそんなにバカではありません。

と、言い切れない所が難しい。観光地で一眼レフぶら下げていると、おばちゃんから信じられないような依頼をされることがある。昨年も桜を撮りに行ったら、コンパクトカメラのフィルムの取り出し方を教えてくれと言ってきた。そういうユーザーのことも考えて設計しなきゃいけないんだよね。…でも、このカメラは違うだろう。

●いらん機能満載!

その他にも、ファジーズームとか、ポートレートモードとか、スナップモードとか、±3EV(0.5EV)の露出補正、とか…まあ、付けるのは勝手だけど、大半は押しボタンを何度も押さなければならず、とてもではないが実用的とは言いがたい。せめてモード変更はダイヤル式にしてくれ。私は常々キャノンのベストショットダイヤルをクソミソに言ってはいるが、確かにこれよりは遥かにマシである。モードの表示も非常にわかりにくい。自慢ではないが、未だに露出補正の方法がわからない(^_^; なんだよ、これは…。これまた、常々言っているように、使いにくい露出補正は全くのデッドスペック。カタログを華やかにするより他に、何のメリットもございません。

はっきり言って、このカメラのユーザーは、電源ボタンとズームボタンとレリーズボタンしか触らないよ。他は面倒臭くてしょーがない。機能っていうのは、それを使ってみようと思わせること自体が一つの性能なわけよ。だから、より的確に表現すれば「いらん機能満載」ではなく、「素敵な料理が冷蔵庫で腐ってる」状態だな。食わないのは、料理が不味いせいではなく、冷蔵庫にしまい込んで忘れている嫁さんのせいだ。

●実写結果

まだ実写はしていない。

●とりあえずの総評

なんて言うんだろう、リキ入れてるのは判るけど、「写真を快適に撮る」という基本を忘れているような気がする。ぱっと見のイメージや、手にしたときの質感が悪くないだけに、いざいろんな機能を使ってみようとしたときの失望感は大きい。


【貧乏カメラ館目次】 【ホーム】