†貧乏カメラ館†

RICOH XR-10P ★★★ 発売年月 1995.03/標準価格 ¥3.7000
使いやすそうだが期待外れのAE機


モータードライブ内蔵の露出フルモードAE機。旧PKマウントでも絞り優先AEが可能(シャッター優先AEやプログラムAEにはRIKENON Pレンズ必須)。露出補正、スポット測光などの機能を備え、スクリーンも交換式と、価格には不釣り合いなほど充実した機能を持つ。多彩な機能と外観から「AFのないEOS」を髣髴とさせるが、実際の使い勝手にはかなり大きな開きがある。なお、ストロボ内蔵タイプのXR-10PFもある。
(2008.09.15)

以前からかなり気になっていたカメラ。性能的に特別なものがあるわけではないが、露出フルモードのPKマウント機で、旧PKレンズでも絞り優先AEが可能だ。ペンタックスの廉価AE機が軒並みにKAレンズ必須だったことを考えると(無論Aシリーズ以降)、このメリットは大きい。しかも、XR-7クラスに比べると、機能も多彩でスクリーン交換も可能と、かなり本格的なスペックである。また、XR-Xに比べれば操作性も格段に進歩しているように見える。「まともに使えるPKマウントAE機」が欲しかった私に取っては、言わば垂涎の的だった。そう考える人が多いのか、意外な人気機種で、オークションでも手の届く価格にまではなかなか降りて来なかった。しかし、先日、運良く廉価で入手できたので、大いに喜んだのだが…

実際に手にしてみると、質感の低さ、操作性の悪さにガッカリしてしまった。入手したのが、ファインダー内表示が故障した機体のようなので、断言するには問題はあるが、第一印象は「安物」。プラの質感自体が低く、各部もなんとなくガタがありそうな印象。実際にガタあるわけではないが、そうした不安を惹起する造りである。また、XR-Xに比べればホールディング感は遥かに良くなってはいるが、単三電池4本が入っているグリップ部に重量が集中し過ぎていて、バランス的にイマイチ。

XR-Xと比較すると操作性は向上している。ボタン式をEOSライクな電子ダイヤル式に変更しただけでも評価はできる。しかし、驚いたことにダイヤルの動作がサイクリックではない。これではダイヤルの意味はあまりない、というか、ダイヤルの何たるかを理解してないのではないか? おまけに、非常に数多くの設定項目を、二つのモードボタンと一つのダイヤルで済まそうとしているため、設定は煩瑣で表示もわかりにくい。「直感的操作」にはほど遠い。「AFのないEOS」を期待すると、大いにガッカリすること間違いなし。

そう言えば、サンダー平山氏が、このカメラはモードを固定して使うものだ、と書いていたな。きちんとした出版社の出版物では、このページのように好き勝手を書くわけにもいかないから、あからさまな悪口は避けているけど、端的に言えば「操作性が悪い」ということなのだろう。

ファインダーは非常に明るくて好感が持てるが、ピントのヤマが今一つ掴みにくい気もする。なお、スクリーンは水平スプリット+マットが標準で、交換も可能。一応、当時のカタログにはH・S・Bの三種のスクリーンが載っている(各3000円)。と言っても、交換スクリーンが入手できる可能性は限りなくゼロに近いだろうが。ファインダー内表示もこの機種のウリだが、私の機体は故障しているようで、まったく何も表示されない(T_T) バックライトが切れているのかな?

全体的な印象を言えば、カタログスペックと見た目だけの機種ということ。従来、リコーはカタログスペックだけを無駄に詰め込む傾向があったが、このXR-10Pでは、ホールディング感や操作感まで「偽装」している印象がある。触っていると随所で「違うだろ!」と叫びたくなってくる。EOSの猿真似をしなかった点は評価するが、結果から言えば猿真似をして欲しかった。いずれにしろ、もうリコーのフル電子カメラは終わりにしよう。完全に憑き物が落ちたな。まあ、かなり辛い評価になったけど、外観とスペックから「隠れた名機」なのではないかと勝手に期待していた分、短所が目立ってしまう。先入観なしで見れば、値段以上の価値はあるとは思うのだが…

余談だが、ペンタックスのAE機でまともなシャッターダイヤルが付いているのは、実はLXのみなんだね。それはそれで驚いた。P30/P50はKA専用のようだし(初代P30/P30Date以外はPKレンズで絞り優先AEが効く)。あ、K2があったな…名機らしいが。う〜む、まともなPKのAE機はどこかにないものか…

さらに余談は続く。ウチの嫁さんは料理が下手だ。何でこんなに下手なのか以前からずっと不思議に思っていたのだが、最近料理番組を見ていたら、その理由がなんとなくわかったような気がした。その番組では、ズボラな奥さんが、プロの料理人に怒られながら親子丼を作っていたのだが、自己流の作り方とプロの作り方の対比が仲々面白かった。そして、この奥さんの考え方というか、料理に取り組む心構えというのが、うちの嫁さんを髣髴とさせるものだったのである。

うちの嫁さんの料理の四原則:一つ、手間を惜しむ。二つ、量を測らない。三つ、細かなところに気を使わない。四つ、味見をしない。出来上がったもののイメージだけで、テキトーに作っているのである。以前はホイコーローを作るときも、生キャベツをいきなり味噌で炒めていたので、調理中に水が出てしまって、いくら味噌を使っても少しも味が付かなかった。味噌を絡める前に炒めて水を飛ばすのを覚えたのは、比較的最近のことだ。

工夫と几帳面さとセオリー順守−−料理でもカメラでも、そして他の分野でも、良いものを作るコツは意外に似ている。素人が見た目だけ真似ても結果はかくの如し。明らかに自分よりも上手な人がいるのだから、真似るなら全部真似しなさい。はっきり言って、「競う」レベルにはないよ。

主要諸元
発売年月 1995年3月
型式 プログラムAE一眼レフ[露出フルモード][電動巻上]
マウント PK(プログラムAE/速度優先AEにはRIKENON P必須)
シャッター 電子制御・縦走り金属シャッター、32"〜1/2000"
ピント調節 手動
測光方式 平均測光/スポット測光
露出制御 プログラムAE/絞り優先AE/速度優先AE/マニュアル
露出補正 可…1/2ステップだったかな?忘れた(u_u;)
スクリーン 水平スプリット+マット(交換可能)
ファインダー ?% x0.?
外観 151×97.5×62mm/500g(電池別)
電池 単三電池4本
仕様出典 メーカーホームページ ※リンク切れ
その他 ポップアップストロボ内蔵のXR-10PFもある


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