(2003.07.13/2003.11.30upd)

OLYMPUS OM-1修理記

■一番機:バルブのシャッター粘り (2003.11.30)

症状:バルブ時に戻りのシャッターが粘る。感触としては1秒のガバナが動作してしまっている感じ。
ただし、シャッターボタンをゆっくり戻すと即座に後幕が走る。
原因:不明(憶測の域を出ず)
対処:未定

まず、スローガバナの動作原理がよくわからない。基本的に適当なトルクを持ったギア群で、バネなどの力で回すと一定の速度で回転するもののはず(ゼンマイ式のタイマーに似ている)。で、回転速度自体は変らないので、シャッター速度は回転角度で調節しているものと思われる。たとえば、噛み合わせの歯車を半月形にして、半月の端から端まで回転すると1秒、噛み合うスタート地点が半月ギアの中程なら1/2秒、末端に近ければ1/4秒や1/8秒、といった感じ。ギアが端まで回転するとそのあとは噛み合わせから解放されて、後幕の動作に移る。

と考えると、一般のスローガバナの粘りというのは、ガバナのギアがスムーズに回転しないことに起因するものと思われる。ところが、今回問題になっているのは、バルブのときの粘りなのだ。バルブは粘るはずがない。なぜなら、原理的に言ってガバナギアと噛み合わないはずだから。また、ゆっくり戻すと粘らないという理由もわからない。リペアマニュアルを見ても、このあたりの構造は恐ろしく判り難い。実際にバラしながら動かしてみないと良く判らない。

ということで、ちょっと特殊な状況ではないかと思う。考えられるシナリオとしては――正常動作には二つのアクションが同時に起きる必要がある。ところが、その一方の可動部が動きが鈍くなっていて、もう一方の動作とタイミングが合わない。このため、スローガバナと噛み合ってしまう。しかし、レリーズボタンをゆっくり離すと二つのアクションの動きが等しく遅くなり、タイミングが一致するので正常を動作する――と言ったところだろうか? 具体的にどうなっているのかは判らないが、これ以外のシナリオで、この症状を説明することは難しいのでは?

ちなみに、ガバナのギアは外からは見えない。三脚穴の台座を取り外すとちらっと見える。

■五番機:巻き上げの空回り (2003.11.08)

症状: 巻き上げレバーを回しても、スカスカ空回りしてまったく巻き上げができない。
原因: 巻き上げレバーの根元の部分のギアの噛み合わせが悪い。
対処: トップカバーを開けて、噛み合わせを調節してやれば直る。
また、巻き上げレバーの戻りも非常に悪かったが注油で?改善された。

トップカバーの開け方:比較的楽。以下の三か所を外すだけで開く。

  1. 巻き上げ軸の分解:カニ目が付いているが、迂闊にカニ目レンチを使うと9分9厘、化粧板に傷を付けるので、ゴムのレンズ回しの小さなものを使うと良い。さらに、トップカバーを固定している円板ネジがあるが、これはカニ目レンチを使うべきだろう。普通の順ネジなのである程度力任せで大丈夫。
  2. シューの付け根の部分:ジャンクコンパスなど、ごく小さな二穴用レンチが必要。「ジャンクコンパス」が使いやすい。傷を付けないように慎重に。
  3. 巻き戻しレバー部:裏蓋を開けて、巻き戻し軸にドライバ突っ込んで回すと、巻き戻しハンドルが取れる。その下に隠れている小さなネジを二つ外す。
以上でトップカバーは外れるが、注意すべき点が一つある。それは、左手側の肩の部分に裏蓋フック用のスプリングが入っているので、これをなくさないこと。

●ギアの噛み合わせの調整

さて、肝腎の空回りの修理だが、実はこれはよくわからない。問題のギア群はフィルムカウンタの下の部分にあり、これが上手く噛み合わないために空回りする。だから、ドライバなどでギアを少し調整して、うまく噛み合うようにすればよいのだが……具体的にどこをどうすると言うことがわからない。ただ、スプロケットを直接手で回しながら、ドライバの先でギアを適当に抑えてたら突然噛み合うようになった(^^ゞ 全然参考にならん。

●レバーの戻りが遅い

で、巻き上げはできるようになったんだが、今度は巻き上げたレバーの戻りが非常に遅い。これはゴミが詰まっているとか、そういう感じ。で、乾式潤滑のポリシーには反するかも知れないが、直接CRC 5-56を少量吹き付けて、ドライバでこちょこちょしていたら直った。現時点では非常に快調。

あとはファインダーの裏側のカビ取りだな。

■四番機:巻き上げ不良 (2003.04.21)

2003.04.18/シャッターが正常に切れず、ミラーアップのままになる。例によって巻き上げ3ギアの問題。今回はCギアがスムーズに回らないのが直接の原因。シャッターチャージ後Cギアが元の位置に戻らない。

ここでは、底部にある巻き上げ系の3つのギアを、右手側から(写真では左から)Aギア、Bギア、Cギアと名付ける。

さてと…基本的に、Cギアがスムーズに回るようにならなければどうしようもない。おそらく、これもナフタリンの結晶のが原因だと思われるが、それなら今まで発症しなかった理由がよくわからない(Bギアのスプリングがよほど強かったとか…)。とりあえず、ベンジンを少し試してみるか? それでだめなら、オーバーホールと言うことになるのだが…ちょっとなあ…

2003.04.20/基本的には修理は成功。しかし、Bギアのスプリングを紛失(痛恨!(>_<))、とりあえずジャンクの五番機から調達。したがって、現時点では五番機にはBギアのスプリングがない。→【発見】大掃除したときに発見!!まだ五番機には戻してないけどね。掃除はするもんだ。

Cギアの回転不良の直接の原因は、Cギアのストッパーの変形にあった。つまり、先端がギアをこすって回りにくくなっていんたんだな。ナフタリン説は却下。なおCギアのストッパーの中心のネジは逆ネジになっているので注意!

【重要】巻上不良はまずCギアのストッパーを疑え

各フェーズにおける3つのギアの状態
基本状態Aギアの溝は垂直、Bギアはの切り欠きは9時少し前、Cギアはストッパーの上にネジが来ている。この段階では3つのギアはすべて噛み合っていて勝手には動かない。
巻上途中Aギアは反時計回りに、Bギアは時計回りに、Cギアは反時計回りに回転する。AギアとBギアの噛み合わせが悪いと巻き上げができない。
チャージ
完了
Bギアはスプリングの力で基本状態の位置に復帰、それに合わせてCギアも元の位置に戻る。このとき、何らかの理由(Cギアのストッパーの変形など)でBギアが元の位置に戻らないと、巻き上げロック症状になる。
この段階で、BCギアはAギアの噛み会いから外れ、Bギア内のスプリングの力しか受けなくなる。したがって、BCギアは時計方向に指で簡単に回るようになっていないといけない。

スプリングがない場合

チャージが完了してもBCギアは元の位置に復帰しない。何の力も加わっていないので完全にフリーな状態になっている。しかし、シャッターを切ると元の位置に戻る。このとき元の位置に戻らないと巻き上げがロックされる。

Bギア内のスプリングはチャージ後にBCギアの位置を元位置に戻すためのだけのもののようで、BCギアがスムーズに回転する限り、なくてもなんとかなりそうだ。

スプリングのはめかた

とても面倒くさい。とりあえず、ヒゲが5時の位置に出るように装着。そのままBギアを軸にはめて、ヒゲをピンに引っ掛ける。ただし、Bギアはきちんとははめ込まない。ギアを噛ませず少し浮かしたまま時計回りに一回転させる。そして、ギアを噛ませてしっかりはめる。→【修正】スプリングは1回転ではなく半回転程度の方がよいようだ。

●四番機:巻き上げ最後にクシャ感[2003.05.09]

Bギアのスプリングが強すぎたようだ。AギアとBギアの噛み合わせが抜けるときに非常に大きな抵抗がある。で、Bギアのスプリングを1回転から半回転にしたらかなりスムーズになった。スプリングを外してしまうとさらにスムーズになるんだけど…(^^ゞ

2003.05.22/それでもまだ若干クシャ感が残っていたので、その後、もうちょっと手を入れてみた。で、判ったことは、どうやらポイントはCギアのストッパー位置らしい。微調整をしたらほとんど気にならないレベルになった。

●四番機:シンクロ不調[2002.07.28]

おそらくFP/Xの切替スイッチの故障。常時FP接点になっていた。導線を一本切断して常時X接点にした。もちろん切替スイッチの修理が望ましいのだが、傷を付けずに分解するのは困難だし、今日びFP接点は不要と考えたため。結果は良好だが修理とは言えない。

【貧乏カメラ館目次】 【ホーム】