CASIO QV-3000EX |
★★★☆ 発売年月 2000.02/標準価格 \8.8000 スレーブシンクロ可能な中級機 |
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私は、この機種にはそれほど大きな不満は持っていない。確かに操作性は良くないが、それも予想の範囲内。むしろカシオとしては良く健闘した部類かも知れない。もし、これ一台しか持っていなければ、それはそれで満足できるレベルだ。また、中古市場では非常に低価格で取り引きされており、コストパフォーマンスはべらぼーに優れている。少ない予算で多少凝った撮影をしたい場合には、イチオシのお薦め品だ。同クラスのオリンパス製品と比較するなら、操作性のC-3030Z、スレーブシンクロのQV-3000EXという感じで、用途次第で十分伍するだけの実力がある。オリンパスもキャノンも300〜400万画素でスレーブシンクロができる中級機を出していないので、このクラスでは貴重な存在とも言える。
だが、CASIOである。最近になるまで知らなかったのは、ハナからCASIO製品は眼中になかったため。なぜ眼中になかったのかと言うと、FX-702PとかFP-1100とかでさんざん煮え湯を飲まされていたため(これが何の型番か判る人はエライ!)。CASIOは製品をクローズドでいじくりようのないにしたり、高いオプションで儲けようという体質があり、デジカメでこれをやられたらたまらない、という思いが強かった。
しかし、カタログスペックを見る限り、どうもQV-4000は良さそうにも見える。どうしよう?と散々迷った挙げ句、思い付いたのが下位機種のQV-3000EXで試してみること。QV-3000EXではすべての条件をクリアできないことは判っているが、QV-4000の参考にはなるだろう。何より、価格が……ここではちょっと書けないほど安かった。そして、その結果わかったのは、幾つかの点では危惧していた通りの問題を抱えていたが、予想よりも遥かに良い点もあった。やはり、カタログスペックに欺されずに、機能の有無ではなく、機能の実用性を確認してから購入すべきであると実感した。お試し購入としては大成功だった。
で、QV-4000を買うの? 微妙なところだ(^_^; 当座の間に合わせには良いが、結局C-5050Zに乗り換えたくなることは間違いないだろう。それに(嬉しい誤算だが)当座凌ぎであればQV-3000EXでも何とかなる。そう、この異様に安いデジカメは、私の出した厳しい条件に照らしても、何とか実用になるレベルなのである。
ところが、実際にスレーブシンクロで撮影してみると、結果は決して悪くない。「弱」でも「標準」でも、内蔵ストロボはでしゃばり過ぎておらず、天井バウンスの効果が十分生きている。内蔵ストロボが光ると同時に外部ストロボが光り、外部ストロボの光がカメラのオートセンサーに届いてすぐに内蔵ストロボの発光を停止するのだと思われる。ちなみに、光は1/10000"でも30km走るので、内蔵ストロボと外部ストロボのタイムラグはほとんどゼロ。
この理屈自体はすべてのオートストロボで共通だが(プリ発光で発光量を決めてしまうタイプは別)、こんなにうまくいくのは珍しいのではないだろうか?これが可能になるためには、レンズが明るく、かつストロボの最小発光量かなり小さくなくてはならない(恐らく最小発光量はF8×0.5m=GN4)。理屈としては同じはずのFinePix 2900Zではテカリが非常に気になるが、これはレンズが暗いために、ダイレクト光が当たる部分と当たらない部分の差が顕著に出るからだろう。
また、このQV-3000EXはホワイトバランスの調節も優秀で、色カブリをしても不思議はない天井バウンスでも、きちんと自動補正してくれる。Lumix LC-5ではホワイトバランスのユーザー設定が必要だったし、C-2020Zですら手動補正しなければならかった。FinePix 2900Zに至っては手動補正しても全然効果がなく、どうやっても夕暮れ時のような色にしてしまう。少なくとも、この四機種の中ではQV-3000EXが際立って優秀だ。
と言うことで、最大の懸案であったスレーブシンクロによるストロボワークに関しては、予想よりもかなり良い結果が得られた。もっとも、本当にこれがQV-3000EXの技術的な優位性を意味するのかは疑問なところもある。ストロボは単純に光量が小さすぎるだけかも知れないし、ホワイトバランスだって偶然当たったに過ぎないかも知れない。というのは、内蔵ストロボのみで撮ると、光量不足で青みがかった写真になることがあるからだ。今回の私のテスト撮影の条件が、たまたまそれを相殺しただけかもしれない。
「デジカメ」がそこまでの嗜好品的な存在感を持ち得るかは疑問だが、一応「カメラ」という範疇であり、「中級ユーザー向け」ということになれば、当然それなりのレベルの操作性は期待する。また、私が使いなれているオリンパスの中級機(C-2020Z/2100UZ/5050Z)は、間違いなく期待を裏切らないレベルにある。技術やコストではなく、「見識」さえあれば十分できることなのである。
そこを基準にしてしまうと、このQV-3000EXは完全に失格だろう。絞り優先AEモードの露出補正ですら、メニューに潜らなくてはならない。それがすべてを物語っている。「露出周りはメニュー化しない」「設定は(強とか弱とかではなく)数値で表示する」−−最低限、これが理解できないようでは、中級機・高級機分野に参入する資格はない。
が、このQV-3000EXをそれほど酷評したくない。そんなことは購入前から十分覚悟していたし、中古相場がこの機種の評価を如実に反映している。そもそも、カシオはコンシューマ商品のメーカーである。基本的に設定変更しないで使用する道具を得意としている。ユーザーの意図や状況に応じて設定を細かに変えるなどという発想は初めからないのである。それを承知で買う以上、そこに文句を言ってはいけない。そして、このQV-3000EXは、初めから覚悟していた欠点以外は、概ね良好なのである。ならば誉めてやるべきだろう。
知らない人のために忠告しておく。中級以上の機種を買うなら、カメラメーカーの製品を買う方がよい。家電系メーカーの製品には、どこに落とし穴があるかわからない。カタログスペックは立派でも、実際に使ってみると「マジかよ!」って叫びたくなることが必ずあるだろう。カメラに限ったことではないが、開発者がその分野のユーザーではないことはしばしばある。ユーザーの気持ちが理解できない技術者が、仕様書にしたがって物を作ったって、ロクなものにはならん。カメラはカメラメーカー製でなくては駄目だ。 |
主要諸元 | |
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発売日/価格 | 2000年2月25日/8万8000円 |
型式 | [330万画素][光学3倍ズーム][マニュアル撮影可能] |
撮像素子 | 1/1.8" 334万画素 原色CCD |
レンズ | Canon Lens eqv.33-100mm/F2.0-2.5 (7群8枚) |
ピント調節 | AF(位相差検出方式)/MF AFロック可能 |
シャッター | 2"〜1/1000"(裏技により長時間露光も可能らしい) |
絞り | F2.0〜F8.0 |
最短撮影距離 | 30cm(通常時)/6cm(マクロおよびMFモード時) |
測光方式 | マルチパターン測光/中央重点平均測光/スポット測光 |
露出制御 | プログラム/絞り優先AE/シャッター優先AE(マニュアル露出は不可) |
露出補正 | ±2EV (1/3EV step) |
感度 | ISO 100〜ISO 500相当(4段階) |
フラッシュ | 自動/禁止/強制/赤目軽減 プリ発光なし 発光量補正(強/中/弱) |
外部ストロボ端子 | なし(スレーブシンクロのみ) |
液晶モニタ | 12万画素 1.8"ハイパーアモルファスシリコンTFT低反射カラー液晶 |
ファインダー | ?% x0.? |
メディア | コンパクトフラッシュ |
外観 | 134.5×80.5×57.5mm/320g(電池別) |
電池 | 単三型×4 |
仕様出典 | メーカーHP |
その他 | Canon PowerShot G1にかなり近いイメージの機種。というか、光学系はそのまんまらしい。原色フィルターの採用やノーマル発光ストロボなどが大きな相違点。マニュアル撮影機能はかなり充実しているが、設定がメニューの中に潜っていて操作性は良くない。 |