†貧乏カメラ館†

PocketZoom ★★☆ 発売年月 1991.08?/標準価格 ¥3.9800
小さいことはいいけれど…


チノンの超小型ズームコンパクト。発売当時(1991年8月)は世界最小・最軽量のズームコンパクトだった。しかし、長所はそれだけで、カメラとしての基本性能には相当大きな問題がある。レンズの描写、操作性、基本性能とも決して褒められるものではない。詳細なスペックは不明だが、AFのステップ数や測光連動範囲などはかなり手を抜いているのではないかと想像される。
(2004.11.23/2005.11.23)

今手に取ってみると、けっこうずっしりとした手応えだが、発売当時は世界最小・最軽量のズームコンパクトだった。当時のズーム機はNew AutoboyやIZM210のように300〜400 gが普通で、300gを切るとズームではなく二焦点になっていた。この時期が二焦点機の最盛期だったような気がする。

もちろん、世界最小の座はすぐに他社に奪われはしたが(Big mini 310ZやMyPort zoom mini)、一時でもチノンが世界一になったのは嬉しい。しかも、レンズもこのクラスとしては明るめだし、シャッターもアイリスシャッター(一眼レフレンズの絞り羽根と同じ形式?)を採用している。デザインもZOOM BROSシリーズと同系統のぐにゃ系でなかなか洒落た感じがする。

…と、一見期待を持たせてくれるカメラなのだが、実写するとガッカリしてしまう。レンズの描写力やAE性能、AF性能などには相当大きな問題があると言わざるを得ないのだ。

●基本スペック

レンズは38-60mm/F3.9-5.8。ズームには違いないが、1.5倍という中途半端なもの。正直、こんな狭いレンジでは中間の焦点距離なんて絶対に使わないから、実質的に二焦点と変わらない。AFはアクティブAFだが、ステップ数は不明。実感として、数ステップしかない感じがする。また、測光連動範囲も不明だが、これまた感じとしては絞り2段(ISO100/400=F8/F16)、速度1/125"の単速、ではないかと思ったりする。

根拠は、曇りの屋外で撮影したところ、ほとんどがパンフォーカス的な被写界深度の深い絵になっているから。しかも、ISO 400を使っているのにも拘らず、全体にアンダー気味になる。逆にピーカンで撮影するとハイエストが思いっきり飛ぶしね。このような現象が起きる原因はいろいろ考えられるが、「AFが2ステップ、絞りは感度に応じて固定、シャッターは単速機開式」と考えると、実にスッキリ納得できる。事実、同社の単焦点廉価コンパクトでは、これに近いスペックを採用している。実際は室内ノーフラッシュでもかろうじて撮れているので、測光連動範囲はもうちょっとマシかとも思うけど、かなり狭いことは事実だろう。

ま、間違ってたらゴメンだけど、ちゃんとしたスペックだったら、カタログに記載するはず。カタログに書けないということが、手抜きスペックの証拠と言えなくもない(チノンの場合、上位機種に関しても詳細スペックは記載していないけど…)。チノンだから大目にみたいけど、流石にこのクラスでこれはな〜、というのが実感。

●レンズの描写力

あくまでも、私の実写結果からの判断だが、かなり悪い。細部が潰れて平板で、色の乗り方にクセがあるレンズ。確かに、試写の条件は余り良くなかったし、古い機種だからレンズが黄変してしまっている可能性もある。フィルムもタダでもらった古いKodakのフィルムだし。しかし、それにしても良くない。総じてレンズ付きフィルムよりも下。

●操作性

操作性も良くない。そもそも設定できる項目が少ないので、操作性は問題になりにくい機種なのだが、ズームボタンと電源ボタンが近いため、しばしば誤操作をしてしまう。ファインダー見ながらズームを調整するのはけっこう難しい。

主要諸元
型式[AFズーム][小型軽量]
レンズ38-60mm/F3.9-5.8 (5群5枚)
ピントアクティブAF、0.6m〜
シャッターヘキサゴンアイリス・シャッター
露出プログラムAE
フラッシュ自動/強制/禁止 GN=10?
デートあり
電池CR123A
外観123×67×47/280g(電池別)
価格¥3.9800
仕様出典カメラ総合カタログ VOL.103('92)
その他MinoltaのP-TWINと何等かの関係があるかもしれない。細部に妙に似た部分がある。


Longrun reports...

2005.11.21/神田祭りのDPE上がる(フィルムを半年も寝かすなよ!)。結果はかなり酷い。まず、発色がおかしい。全体に黄色が被っていて、まったく色が出ていないようなコマもあった。フィルムはKodakの400なので、黄色が強いのはある程度納得するが、それで説明がつくレベルではない。もちろん、色が出ているコマもある。黄色と青が深くて鮮やかで、いかにもコダックらしい発色だが、やっぱり全体に黄色が被っている印象はぬぐえない。発色の問題は、フィルムの特性、使用期限、レンズの特性、レンズの黄変、ラボの処理とさまざまな要素があるので一概には言えないが、どうもレンズの黄変が怪しいような気がする。

と言うことで、他の要素をどうこう言えるレベルではないが、総じてピントは甘く、ディテールも潰れている。同社の廉価固定焦点機ほどではないにしろ、かなり平板な描写だ。ひょっとすると、AFのステップ数が少なく、それをカバーするために絞りを絞るプログラムラインになっているのかも知れない。曇天でも背景がほどんどボケず、露出不足ぎみのパンフォーカスみたいな絵が多かった。流石に、1m以下の近距離の被写体では背景がボケたが…。ちなみに、上位機種のHady Zoom 5001でもAFは16ステップしかない。Pocket zomでは2ステップか3ステップじゃないのかなぁ…?

また、コントラストが高い被写体、たとえば「初夏の晴天の花畑+鬱蒼とした木立」程度でも明るい部分が飛んでしまって非常に見苦しい。もちろん、外部CdSによる平均測光だろう。手許の資料には測光連動範囲が明記されていないが、おそらく上限はEV15(ISO 100)くらいではないだろうか? ISO 400を入れてピーカンで使うのはそもそも厳しいのかも知れない。ひょっとすると、絞りも2段階くらいしかなかったりして…詳細スペックが手許にないので、どんどん疑心暗鬼になる。

周辺光量低下はあまり見られなかったが、当時の「最軽量ズーム」以上の価値を見出すのは少々難しいだろう。個人的にはチノン・ファンだけど、性能となると誉める訳にはいかないのが悲しい。


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