†貧乏カメラ館†

FUJI PicPAL 2 ★★★★ 発売年月 1984年ころ?/標準価格 ¥1.4300
唯一の?プラ外装・フルメカ・ゾーンフォーカス機


簡易カメラの「はしり」とも言える、プラ外装のフルメカニカル廉価機。ただし、絞りはF4.5〜F16で4段階に切り替えられるし、ピントもゾーンフォーカス式(国産プラ外装フルメカ機では恐らく唯一)。現在の簡易カメラに比べると遥かに自由度が高い。描写もリーズナブルだし、質感も極端に低くはない。割り切った使い方も、多少凝った使い方もできる、嬉しい一台。
(2006.11.14)

一言で言って、私はフジのカメラが好きではない。確かに、TIARAやKLASSEのような良質な製品を作る能力も見識も持ってはいるが、フィルムを売らんがためのお座なりなカメラがあまりに多すぎる。デザインも他社製品の影響を色濃く受けたものがいくつもあるし、スペック的にも手抜きが多い。大手カメラメーカーが決して出さない単速・単絞りのパンフォーカス機を平気で出し続けてきた。

しかも、なお困るのは、そんなお座なりカメラでもそこそこの写真が撮れてしまうことだ。レンズ性能は意外に良いし、フジフィルムの派手めの発色やラチチュードの広さから、素人目には不足のないプリントができあがる。こういう製品が跋扈するようになると、良質なコンパクトはどんどん駆逐されてしまう。同じ感剤メーカーでも、コニカの方がはるかに“ちゃんとした”カメラを作っていた(少なくともある時期までは…)。

●PicPALとPicPAL 2

そんなフジの廉価コンパクト群の中では、このPicPAL 2はかなり異色の存在だ。“PicPAL”という名称は、おそらく“ピクニックのお供に”という意味だろう(単純にPicture-Palかも知れないが)。もちろん“2”は二代目を意味する。価格的に言っても、造りから言っても、当時(1980年代半ば)としては最低ランクのカメラだった。しかし、絞りは4段階に切り替えられるし、ピントもパンフォーカスではなくゾーンフォーカスを採用している。当時はカメラ自体が高級品だったので、安物とは言えこのくらいのスペックは当然だった……のだろうか?

実は、PicPAL 2の前に出た初代PicPALは、恐らく大手メーカーとしては初の全固定(単絞り・単速・固定焦点)カメラだったのだ。当時としては極めて異例と言うか、むしろ暴挙であったように思う。当時のネガのラチチュードは今ほど広くはなかったろうし、そもそもカメラ自体のステータスが高く、PicPALのような“安物”でも1万円以上した。1万円の機械としてはあまりに貧弱なスペックだ(ちなみに、1986年の私の下宿代は月1万5000円だった)。結果云々より、このスペックが怪しからん。

これは勝手な想像だが、初代PicPALのあまりに貧弱なスペックに社の内外から批判噴出し、その反動でPicPAL2はピントも絞りも可変になった…と読んでいるのだが、どうだろう(^^ゞ もしそうだとすれば、ケガの功名だな。

●基本スペック

レンズはFUJINON 34mm/F4.5、絞りはフィルム感度に応じてF8/F11/F16、およびストロボ使用時にF4.5開放、ピントはゾーンフォーカスで1m〜∞。シャッターは1/100"単速機械式。ストロボ内蔵(単三×2)。フルメカニカル機なので、ストロボ以外は電池なしでも動作可能。

もちろん、最大の特長はゾーンフォーカスであること。ゾーンフォーカス自体は比較的ありふれたものだが、プラ外装のフルメカニカル機で採用しているのは珍しい。金属外装機やEE機ならば何機種かあるが、国産のプラ外装フルメカ機では唯一ではないかと思う。また、レンズが比較的明るいこと、フィルム感度が2段階ではなく3段階切り替えであること、F16まで絞れることが目を引く。F16で1mに設定すれば、計算上は60cmまで被写界に入る。逆に、絞り開放でISO 800を使えばLV8まで対応できる。ネガのラチチュードを見込めば、室内ノンフラッシュもギリギリできないことはないかも。

●使用感

初代PicPALが全固定であったがゆえに、PicPAL 2は絞り可変・ピント可変という対極的なスペックになったが、元々の製品コンセプトが変わったわけではない。レンジファインダー機のように、ユーザーが絞りやピントを自由に変更して撮影する、という使い方には全然適していない。あくまでも廉価の簡易カメラである。

特に問題になるのは、レンズカバーの開閉、フィルム感度設定、ピント調節の操作がすべて鏡胴周りに集中していること。どのレバーがどの設定なのか、確実に戸惑う。中でも、露出補正目的でフィルム感度を変更するのはとても面倒だ。やはり、普段はフィルム感度固定、ピントも3m固定というのが、このカメラの正しい使い方だろう。

−−尤も、こまめに操作していないと、イザというとき余計戸惑うようになってしまうのだが。私も、室内ノンフラッシュの際に、電池を抜いてストロボをオンにすればF4.5開放にできることをうっかり忘れていたし… ま、可能性としては開かれているカメラだから、やっぱり普段から弄りまわして使うのが正しいのかも知れない。

ホールディング、ファインダー、巻き上げ、レリーズはまずまず。取り立てて欠点は見当たらない。基本的な操作性は悪くないと思う。質感も精一杯頑張ってる…かな? 最近の廉価機は、こういう基本の部分での手抜きが目立つので、あえて評価してあげたい。

●実写結果

このクラスのカメラとしては悪くない。写るんですレベルと言えばそれまでだが、けっこうピントに芯が立つ、まともなレンズである。周辺部の描写は?だけど、そんなことをあげつらうカメラじゃない。いろいろなシチュエーションで試写をしてみたが、ゾーンフォーカスのメリットはやはり大きい。そこそこ近接も可能だし、絞りとの組み合わせによっては、背景をぼかすこともできる。これでデート機能が付いていれば、本気で常用カメラとしても悪くないなあ…と思っているくらいだ。

主要諸元
型式[ゾーンフォーカス][可変絞り][フルメカニカル]
レンズFUJINON 34mm/F4.5
シャッター1/100"単速機械式
ピント1/1.5/3m/∞の4点ゾーンフォーカス
絞りF4.5/8/11/16(flash/ASA100/200/400)
露出EV11〜14.6(ISO 100を入れて絞りを変更した場合)
フラッシュ手動制御
近接撮影なし(1m-F16の設定ならば0.6mまで被写界深度内)
電池単三×2(フラッシュのみ)
外観124×70×47.5mm/175g(電池別)
仕様出典'85 カメラ総合カタログ vol.83


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