†貧乏カメラ館†

OLYMPUS OM10 ★★★☆ 発売年月 1979.06(QD:1979.11)/標準価格 ¥4.3000
チープなAE専用機


廉価AE専用機。OMシリーズの普及機第一弾。OM-2と同じくダイレクト測光機だが、操作系は独自。廉価機のためボディの造りはチープで、機能的にも優秀とは言えない。しかし、総合的に見ると意外に欠点が目立たない。他社の同クラスのカメラに比べ、ホールディング、ミラーショック、静音性が優れている。コストの範囲内で頑張っている印象。マニュアルアダプタがマニア心をくすぐる。(2008.05.31 upd)
(注)写真のグリップはOM-3/4用を接着剤で無理矢理くっつけたもの。

このカメラに多くを望むのは初めから無理な話し。だが、同じ廉価機のOM20と比べてもはっきりと劣ると言うことは覚えておくべきだろう。確かに、ZUIKOレンズが使えるTTLダイレクト測光の一眼レフなのだから、常識的なシーンでは問題なく奇麗な写真が撮れる。その意味では悪いカメラではない。しかし、露出補正が必要な場合や、ヘビィデューティーな用途には全く不向き。入門機と言うよりもコンシューマ機という方が当たっていると思う。便利で手軽な機種だが露出の勉強には不適当と言わざるをえない。

●基本性能

シャッター速度はB, 1〜1/1000"。スクリーンはスプリット・マイクロで交換不可。同時期・同クラスの他社製品と同じようにAE専用機だが、専用のマニュアルアダプターを使用するとマニュアル露出も可能になる。また、ダイレクト測光を採用したのも特徴的(ただし、ストロボのTTL調光は不可)。さらに、横走り布幕シャッター採用で静音性に優れ、ミラーショックも小さめ。質感がチャチなのは事実だが、操作性は同クラス機の中では優秀な部類だと思う。重量400g台、価格4万円台という典型的な80年価格革命の落とし子。なお、電子シャッターのみであるため、電池切れや夕立に遭うとお手上げ。この点では1/90"メカニカルシャッターを備えているNikon EMの方が優れている。

●TTLダイレクト測光

基本的にOM-2の廉価版(と言い切れない部分が沢山あるが)で、OM-2同様TTLダイレクト測光をウリにしている。ただし、OM-2とは異なりTTLオートストロボは使えない。ホットシューはシュー3と似たタイプだが、ストロボチャージ信号の接点のみで、TTL調光の接点がない。TTLダイレクト測光はストロボ撮影時にこそ、その本領を発揮するので、これは些か物足りない。

TTLダイレクト測光自体についてはOM-2の項で触れるのでここでは割愛。注意すべき点は、空シャッターを切る際フィルムの切れ端などを入れておかないと、シャッターが思いっきり遅くなること。これを故障と勘違いする人もいるほど。また、原理的に裏蓋を開けてしまうとAEが効かなくなるので、テレビを使った簡易速度チェックも不可能。

●露出補正

最大の問題点は露出補正。ISOダイヤル兼用の補正ダイヤルだが、とてつもなく回しにくい上に、うっかりモードダイヤルまで動かしてしまうことが多い。AEロックや逆光補正ボタンもないのでかなり厳しい。オプションのマニュアル・アダプタは必須だろう。しかし、露出補正目的でマニュアル・アダプタを使うのは決してスマートではない。と言うか、そもそも見当違いの行為のような気がする。メータード・マニュアルではないので、ファインダーを覗きながら露出を決めることができず、何度も目をファインダーから離して操作する必要があるからだ。結局、こいつは露出補正ができないと考えるべきだと思う。

●耐久性

機械的にチャチなのも恐いところ。購入時点でバッテリチェックのスイッチがバカになっていたし、上海では夕立に降られて動作不能に(乾燥したら復活)。また、鞄の中に放りこむと、よくバッテリチェック・スイッチがオンになってしまい、すぐに電池切れになる。遠出のお供にはちと恐い。だもんで、旅行用カメラはOM-1に切り替えちゃった。あ、ケースに入れて持ち運べばいいのか(^_^; ちなみに、このバッテリチェック・スイッチの問題にはオリンパスも気がついたようで、OM20以降は改善されている。

●ファインダー

ファインダーはF3.5〜4.5クラスのズームではピン合わせが少々きついレベル。OM-1と比べると圧倒的に暗い。このカメラの性格から言っても、安価な標準ズームで撮ることが多いだろうから、気になるところ。しかし、ピン合わせはそれほどやり難くはない。暗さはNIKON EMと同レベルだが、EMよりは少しピンが合わせにくい程度。ただし、暗い望遠を使うときはプリズムのカゲがどうしようもない。F4.5辺りが限界か? 廉価機にしてはプリズムの角度がシビアなのかも知れない。精度と見やすさは両立しないので一長一短。ファインダースクリーンの交換ができないのが恨めしい。

実は、比較的簡単な分解でスクリーンを交換することもできる。しかし、元々が正規の方法ではないため、かなり慎重に作業しないとスクリーンを傷付ける可能性が高い。私も一台、でっかい傷を付けちゃったんだよなあ。けっこう痛い授業料でした(T_T)

●その他

マニュアル・アダプタは元値が3500円、数年前に大阪で購入した時が4000円、2000年現在で東京の中古ショップで8000円。う〜ん、ちょっとアホらしいねえ。初めからマニュアルモードのついているOM20を買うほうが賢明。

主要諸元
シャッター 電子制御 横走布幕 最速1/1000 X接点1/60
測光方式 TTLダイレクト測光(中央重点測光)
露出モード 絞り優先AE、マニュアル(別途アダプタ必要)
露出補正 ISOダイヤル(操作性非常に悪い)
ファインダー 倍率0.92倍、視野率93%
外観 430g
その他 別売マニュアルアダプタでマニュアル可
独断評価
操作感 B 高級感はないが悪くない、ただし露出補正ダイヤルは最低
堅牢性 C 雨に濡れると壊れる/電池必須
機能 B 基本的な機能は過不足ない
携帯性 A- 430g/携行時の電源スイッチの扱いには注意が必要
用途 ×仕事 △趣味 ◎スナップ ○軽旅行 ×海外旅行

[修理記]手許にあるOM-10は巻き上げがゴリゴリ言い出していて、グリスアップが必要な状態。で、自分でオイル差していたんだが、どうも、それが電気接点を絶縁してしまったみたいで(?)、ときどきシャッターが落ちなくなる。その場合は、底蓋を外してレバーをコチョコチョとすると落ちる。で、あとはボディを振ったりして、油を飛ばすと、正常に戻る。ホンマかいな? 何にしても自分でいじるのは止した方が無難。しかも、金を掛けてOHするような機種じゃない。つまり、ゴリゴリのまま使い続けるのが正しい。なお、OM-10は電池の消耗に比較的強い事が判明。同じ電池でも、XR-7mIIでは使えないことがある。


●試用レポート

1991.08.07/1台目を1万4000円で購入。確か、我楽多屋だったような気がする。購入の同機はよく覚えていない。前年にEOS 650を買っていたし、当時はまだカメラ・コレクションの趣味はなかったから、理由が全然わからない。AFはいやだ〜!と思うことがあったのかも。ただ、OM10を選んだのは価格が最大の理由だったと思う。ともかく、記念すべき趣味のカメラ第一号であったことは間違いない。

結婚前/有栖川公園で嫁さんとなる人を撮影。ポートレート用のレンズがなくてZUIKO 135mm/F3.5で撮った。ISO感度を間違えて設定したため、すべて2段オーバーになっちゃったが、光のにじみで面白い雰囲気の写真になった。当時は嫁さんも可愛かったな〜。日比谷公園でも嫁さんを撮影したな。バックの花をぼかしてポートレートを撮影した。オフクロに見せたら「奇麗な写真だねえ」…(u_u;)

新婚旅行/ガラパゴス島に連れてった。これが大問題。バッテリチェックのスイッチがバカになっていたので、鞄の中でオンになってしまい、あっという間にバッテリ切れ。幸い予備電池を持っていったから事無きを得たけど冷や汗もの。動物撮影ということで、ZUIKO 200mm/F4がメイン。これはジャンク屋で拾ったレンズだがなかなかの掘り出し物だった。写りには非常に満足した。

三峡下り/中国旅行にも連れていった。このときは上海でスコールにあってかなり濡れてしまった。そしたら見事に動かなくなった。これを機会にOM-1への移行が始まる。ただし、動かなくなったOM10もしばらく放置しておいたら見事復活。以後、10年近くノントラブルで動き続けた。メカニカル機信仰は実用面と言うよりはメンタルな安心感を得るためのものだろう。ちなみに、このときも写りには不満なし。SIGMAの24mmが活躍した。

伊良湖フラワーパーク/帰省のついでに遊びに行った。一泊のごくお手軽な旅行。こういうときには実に便利なカメラ。レンズもZUIKO 35-70mm/F3.5-4.5の一本だけ。贅沢を言えばきりがないが、特に不満はなかった。ただし、これならコンパクトでも変わんないか、というのが実感。超広角とかボケの味わえる中望遠とかを持っていかないと、一眼レフの存在意義が問われる。そうねえ、絞り優先AEだからボケをコントロールできることと、70mmでF4.5というのはコンパクトでは仲々ないか。

2001.06.03/パソコンの画面撮影。50mm/F1.8に×2テレコン使用。マニュアルモードで1/2"-F8を基本に撮影。ファインダーは少々問題あり。覗く角度によってファインダー像に歪みとズレがあるため、平行が非常に出しにくかった。しかし、ピントは比較的ちゃんと出ていて、コントラストも奇麗。撮影結果は良好、中級機並みの写り。

2001.06.03/画撮の途中で露出計がかなり大きくアンダーぎみに出ることが判明(3〜4段)。単純な電池消耗ではないようだ。原因は注油? それとも露出計のヘタリか? 断定はできず。ヘタリならメーカー修理も考えるが、修理が可能かどうかも不明。

2001.06.08/白山神社で紫陽花を撮影。ワイドコン使用。28mm+ワイドコンで単純計算17mm相当。ファインダーを覗くだけでも画質の劣化がわかる。もちろん四隅にケラレが出る。だが遊びとしてはかなり面白い。ただ、画質の劣化云々以前に、ピンがちゃんと合ってない(^_^;視度補正レンズが必要! 露出の狂いははっきりとはわからない。プリントの際にかなり補正をしてくれているようだ。いずれにしろ、十分使うに足るカメラだということはわかった。

2001.06.09/AE故障の考えうる原因:@電圧不足、A光路遮蔽、B測光素子のヘタリ。@は除外してもよいだろう。電池チェックやシャッターの動作も正常だから。Aは測光素子周りに異物が混入した場合。自家修理可能かも? Bならばメーカー修理しかないが、部品交換となると不可能だろう。Aはオイル侵入と関係あるかも。しかし、症状は安定している。粘度の低い液体が原因とは思えない。

2001.06.11/トップカバーの取り外しに成功(詳細はこちら)。しかし、プリズム部(測光部)を見るにはさらに分解が必要。電子系のフィルム配線なども剥がす必要があり、これ以上の深入りは危険と判断。元に戻してメーカーに問い合わせることにする。

2001.06.12/神田小川町のオリンパスのサービスセンターに持ち込む。やはり、CdS(硫化カドミウムセル:測光素子)がヘタっていた場合は修理不能とのこと。可能な場合(感度調節でもするのかな?)はOH扱いで1万4600円均一。OM10の中古価格を考えると馬鹿々々しいがとりあえず依頼する。

2001.06.19/修理仕上がり。一応直ったが、やはり交換部品がなく電気的に調整しただけのようだ。そのせいか、まだ半段くらいアンダー目のような気がする。電気的な調整だけなら自分でもできた? また、グリスアップもしてくれたようだが、巻き上げのゴリゴリ感はそれほど改善されなかった。ただ、それほど酷くはないから、気にしなきゃしないで済むレベルだが。

2001.06.19/視度補正レンズ(-2)を装着。ピンがかなり合わせやすくなった。ただし、元々それほど悪くないので、Pentax MXのような劇的な改善とはいかない。

2001.06.20/OM10とは直接関係ないが、OSAWAのOM用望遠ズーム(100-200/4.5)を分解掃除。素人仕事なのでホコリや拭き汚れが沢山残ってしまい、お世辞にも奇麗な状態ではないが、当初のカビだらけの状況に比べると大きく改善。OM10で試写をするつもり。しかし、これを手持ちで使えるのかねえ?

2001.06.24/上野動物園にて修理上がりOM10とカビ取りOSAWAズームのチェック撮影。ボディは特に問題はなさそう。ただし、OSAWAのズームは100mm側で無限遠が出ない。200mm側では出る。ひょっとして、レンズを組み立てるときに向きを間違えた? 注意していたはずだが…。それから、このレンズはF4.5通しだが、スプリット・プリズムにかなりカゲが出る。OM10はファインダースクリーンの交換ができないので辛い。重いし長いしバランス悪いし、200mm/F4を持っていれば特に必要のないレンズだな。ま、オマケだったから…

2001.06.28/PLフィルターのチェック。ガラスの反射光だとそこそこ効果を実感できる。青空も撮ってみたが、これは違いが判るかなあ…

2001.06.29/上野動物園の試写の結果(一部)上がる。ちゃんと撮ると28mm/F3.5はかなりいいねえ。シャープだよ。今まで悪かったのがウソみたい。今回はASA400使ってF11〜16くらいで撮ってみた。また、ワイドコンも絞って使えば十分イケる。ケラレも出ないし周辺の画質の低下も極端ではない。OSAWAのズームの方はそれなり。やっぱりね、素人修理の上にピンも怪しいしで、要するに200mmで写ってますよ〜程度。だって、焦点距離を固定するのが難しいし(ちょいと傾けると自重で動いちゃう感じ)、プリズムがカゲるから仲々ピンが合わないし、しっかり握るとピンが動いちゃうしで…いやいや言い訳はすまい。ただ、少なくとも現在の私の腕では使えないレンズだな。

2001.07.05/上野動物園の試写結果(続き)上がる。OSAWAのズームは逆光で極端に悪くなることが判明。逆に言えば順光ならばそこそこ。フードは付けてないけどね…。また、ワイドコンにケラレが出ないというのは勘違いだったようだ。遠景だとはっきりとケラレが出る。絞ったせいかな? PLフィルターの効果は実感できず。修行が足りない。

2001.07.28/二番機(黒)入手。50/1.8付きで\7250。程度まずまず。

2001.07.30/重要なことを見落としていた。OM10はOM-2と同じTTLダイレクト測光なのだ。つまり、ファインダー表示用の測光系と、実際にシャッターを制御するダイレクト測光系の2系統を持っている。で、前者はあくまでも目安に過ぎず、実際に露出に影響を与えるのは後者のみ。逆に言えば、ファインダー表示用の露出計が狂っていても、ダイレクト測光系が正常なら全然問題ない。それどころか、前者の狂いを補正するためにASA感度を変更したりすると、返って露出を狂わせてしまうことになる。にもかかわらず……ネガのラチチュードって、本当に広いんだねえ。

2003.05.15/三番機入手。う〜ん、思ったよりもずっと程度が悪い(T_T) プリズムにゴミのようなものが付いている。元々ZUIKO 135/2.8狙いだったんだが、その135/2.8がガタガタで分解痕もある。とほほほ。ZUIKO 50/1.4、135/2.8、Winder 2、取扱説明書、ストラップのセットで13500円、ちょっと高かったかなあ…。50/1.4は黒縁で程度も良いのだけれど、他はなあ…。ただし、巻き上げ感は一番機よりもずっといい。ふ〜ん。

2003.06.03/四番機(黒)入手。これもレンズ狙い。ZUIKO 35-105と故障のマニュアルアダプタ付きで8800円だったんだが、ボディもレンズも程度が悪く、ちょっと高い買い物だったかな、という感じ。入手早々ボディ、レンズ、マニュアルアダプタとも分解して遊ぶ。レンズは中玉の大きなカビが取れたけど、まだ後玉や前玉にカビがある。マニュアルアダプタは意外なほど苦戦している。ボディは基本的にスクリーンの分解掃除だが、とりあえず要領がわかったので収穫はあった。掃除はもうちょっときちんとやらないとね。

2003.06.04/三番機、四番機のスクリーン掃除。あっちゃ〜、四番機のスクリーンに大きな傷を付けちゃった……(T_T)

2007.06.01/ジャンク品を入手してメンテナンス。かなりボロボロな状態だったが、セルフタイマー以外は使用可能に。スクリーンを1-1に交換して「OM10改」とする。

2007.12.23/OM10改の試写結果出る。概ねOK。露出もピントも許容範囲内。スクリーンの交換もうまくいったようだ。相変わらずプリントは全部1段くらい浅いけど(u_u;) 使用したレンズは、ZUIKO 28/2.8、Tamron 70-210/4-5.6、Tamron SP 24/2.5、SIGMA zoom-κ 70-210/4-5.6の4本。すべて特段の問題点は見当たらず。ただし、ZUIKO 28/2.8は半逆光で盛大にフレアが発生している。マルチコートじゃないのかな? Tamron SP 24/2.5はカビ玉だが、実用には支障はなさそう。


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