†貧乏カメラ館†
RICOH MIRAI |
★★★
発売年月 1988.10/標準価格 ¥7.3000 (QD¥7.7500) 無駄に豪華な超高機能ブリッジカメラ |
![]() | 35-135mm/F4.2-5.6の明るい4倍ズームレンズを搭載した超高機能ブリッジカメラ。ファインダーは一眼レフ形式で、AFは位相差検出方式。しかも、測距結果がメートル単位で液晶部にグラフ表示される。単なる「レンズ固定式一眼レフ」よりも上のレベルを狙った意欲的な機種。デザインも個性的で魅力的。テレコンや外部ストロボなどのオプションも用意されていた。しかし、スペック負けの印象が強く、使い勝手や精度、実用性には疑問符が付く。 |
(2005.07.03/2006.07.19) |
豪華に作り倒したブリッジカメラ。げっぷが出るほど機能が詰め込まれている。改めてスペックをチェックしてみると、その異様さに頭がくらくらしてくる。ところが、実際に使ってみると、自慢の高機能を有効に利用できる造りにはなっていない。一言で言えば、ムダの塊だ。いったい、どんなユーザーをターゲットにしていたのだろう? 間違ってもプロが使えるカメラではないし、ハイアマチュアも眉をひそめて手を出さないだろう。かと言ってビギナーには荷が重く、中間層のニーズともマッチしない。当時のキャッチコピーを見ると、金余りのビギナー向けという印象が強いが……ワケわからんまま突っ走ったバブルという時代を象徴する存在のように思う。
レンズも35-135mm/F4.2-5.6と一眼レフ並み。当時の廉価一眼レフの標準ズームは35-80mm/F4-5.6あたりが一般的だったので、これもワンランク上。ちなみに、ほぼ同時期のEOS用レンズEF 35-135mm/F4-5.6が定価5万円。MIRAIは全部ひっくるめて7万7500円だから、非常に割安だ。ストロボはGN15と、内蔵タイプとしてはかなり大型。
こうしてスペックを見て行くと、異様にハイスペックなのに驚かされる。AF一眼レフ、しかもエントリーモデルよりはワンランク上のレベルの一眼レフをターゲットにしていたことがわかる。しかも、このデザインだ。賛否はあるにせよ、SFチックなデザインは文字通り「未来」を感じさせる物だっただろう。だが、このハイスペックもこのデザインも、結局は徒花だったような気がする……機能は生かし切れてないし、デザインは操作性の足を引っ張る結果になったように思う。
テレコンを装着すると焦点距離がx1.5になる。望遠端が135mm→200mmとなるTele-Conなので、TC-200Mなんだろう(安直な…(^_^;)。これを使えば、ズーム域は50-200mmになり、一般的なレンジ(35mm〜200mm)がこれ1台でカバーできるようになる。F値は1絞りずつ落ちると思うが、正確な資料が手許にない。ビミョーではあるが、200mm/F8ならば使えないこともないだろう。
外部ストロボSL-301Mの方は詳細が不明だが、型番から類推すれば、多分GN=30程度であろう。ISO 400で15m飛ぶそうだから、15/2×4.230で、ほぼ辻褄が合う。Canon 300EZとかOLYMPUS T32と同クラス。しかも、内蔵ストロボとの併用が可能。立派なものだ。オートストロボで、外部調光窓がないので、恐らくTTLオート調光だと思われる。ちなみに、シューは独自の丸型4点接点(+、−、チャージランプ、TTL調光?)で、汎用ストロボとは互換性がない。
さらに、操作系にも問題がある。MIRAIの操作系の特徴は、良い意味でも悪い意味でも整理されていないこと。各種の設定や操作が階層メニューに統一されておらず、1機能1ボタン的な操作系になっているので、慣れれば素早く操作できるのがよい。反面、どのボタンがどの機能なのかよく判らず、慣れずに使うと現場でパニックになる可能性もある。このあたりはOLYMPUSのデジカメにも一脈通じるところがあるが、E-10などと比べても遥かに未整理の感がある。また、MFモードでは、例外的に一つのレバーに複数の機能を割り振ったために、操作性が極めて悪くなっている(後述)。
そして、特筆すべきは、測距の結果が上部液晶にグラフ表示されること。目盛りは1.2m/1.5m/2m/3m/5m/10m/∞で、まあ目測マークと大差ないと言われればそれまでだが、それでもかなり見栄えのする機能だ。ただし、この測距結果はファインダー内からは確認できない。ま、一眼レフなのでスクリーン上でピントが確認できるはず−−なんだけど、例によってただのすりガラスだし、何より視度補正がないので、私の視力では実質的に不可能。測距結果はそれなりに有効な情報だと思うんだが、ファインダー内で見られないので、あまり意味がない。そう、意味がない機能だよね〜(^_^;。
AF性能自体は不明だが、実写の感じでは、けっこう外すことが多い。所詮、この時期のAFで動体は無理なのかもしれない。サービスサイズのプリントで8割くらいは許容範囲内だと思うが、日の丸構図なのに背景にピントが合ってるものもあった。
しかし、こういう仕様なので、AFが効いてズームも任意の、通常の近接撮影ができるわけではない。ここがちょっと引っ掛かる。個人的には「テーブルの向かいに座った嫁さんの上半身とテーブルの上の料理が撮れること」を、最短撮影距離の一つの目安にしているので、その点からは失格だ。ま、レンズスペックなどを考えると無理からぬ点はあるんだけど、「寄る」楽しみ(マクロではなくパースで遊ぶ)は想定していなかったのかも知れない。こういう点で「豪華スペックでも所詮ビギナー向きか〜」と感じちゃうんだよね。
確かに、ロジカルに詰めて行くと、この方法にはそれなりの合理性がある。一見、底面のA/M切り替えスイッチとMFボタンの役割が重複しているように見えるが、実際には二つとも必要不可欠だ。しかし、それは、ズームレバーとピントレバーを兼用させようというムチャが根本的な原因で、一眼レフのようにピント調節をヘリコイドで行うか、せめて別のピント専用レバーを用意すれば、物凄くシンプルな操作系にできたはずだ。MFは殆ど使用されない機能とは言え、これは酷い。
なお、ピントの確認に関しては前述の通り。少なくとも私の視力ではスクリーン上の像でピントを確認するのは不可能なので、フォーカスエイドに頼っている。また、フォーカスの移動速度はかなり遅く、動体には絶対に追い付かない。高輝度や縞模様の静止物体など、MFが有効性を発揮できる被写体は限られるだろう。
露出制御に関しては正直言ってかなり凄い。まず、基本的にプログラムAEだが、レンズの焦点距離に応じて広角・標準・望遠のプログラムラインに自動的に切り替わる。恐らく、これにマクロを加えて「4種類のプログラム」ということなのだろう。また、プログラムシフトも可能だ。絞りと速度はファインダー内に表示される。個人的には、ピクチャーモード・ダイヤルよりもずっと好感が持てる。
露出補正も可能で、4EV±0.3EVという本格的なもの。0.3EVステップは凄いと思うが、このカメラのユーザーがポジを使用すると考えていたのかね…? なんかチグハグな感じがする。しかし、広い範囲で細かく補正ができること自体は高く評価すべきだろう。また、操作性も優れていて、+-ボタンを押したまま左右ボタンを押せば補正値が切り替わる。一眼レフ並みの扱いやすさだ。MF周りがごちゃごちゃしていたのとは対照的で、実にすっきりしている。
もちろん、無茶は承知の下らない愚痴なのだが、豪華な露出制御周りを見ると、もう少しレンズを奢れよ〜と言うか、スペックのバランスを考えなさいと言いたくなる。こいつには、常にアンバランスさが付いてまわる。まともな一眼レフから、ブリッジでは実現困難な部分を省いた設計になっているので、こんな凄いことができるのに、こんな簡単なことができないの、みたいに感じることが多い。
レンズの描写に関してはきちんとした評価はできない。試写がパニックに近い状態だったため、まともに評価の対象になるような結果が得られなかった。ピンボケと手ぶれの山である。ただし、レンズに起因する破綻は見当たらず、レンズ性能自体はかなり高いのではないかと思われる。ピントが合えばヌケが良くてシャープな描写をする(と思う)。ボケも素直だし、顕著な周辺光量低下や歪曲収差も見られない(んじゃないかな)。おいおい…。いや、でもマジで良いと思うよ。
なお、レンズの焦点距離は液晶部に表示されるが、ズームを移動させた直後数秒間しか表示されない。
……てなことを言ってる内に、どうしても元に戻らなくなった。は〜〜、修理しなきゃならないカメラが溜まる一方だ。
RICOH | OLYMUPS | NOTES |
MIRAI | IZM 400 | 超高機能一眼レフ式ブリッジカメラ |
MIRAI 105 | IZM 300 | 高機能ビューファインダー式ブリッジカメラ |
-- | IZM 330 | IZM 300のマイナーチェンジ版(上位機種) |
MIRAI ZOOM 3 | -- | MIRAI 105の廉価版 |
MIRAI/IZM 400とMIRAI 105/IZM 300はほぼ同時期に出ている(IZM 400だけ少し遅いかも?)。面白いのはリコーとオリンパスの三作目の違い。オリンパスはIZM 300の基本性能を踏襲して、細部を詰めてより使いやすい機種IZM 330を作り上げた。一方、リコーはカタログ映えするさまざまな機能を追加しながら、基本性能を落としたMIRAI ZOOM 3を開発した。両社の違いがよく見える。…ZOOM 3が出た1991年はバブルが崩壊した年だ。
主要諸元 | |
---|---|
発売年月 | 1988年10月 定価¥7.3000(デート付きは¥7.7500) |
型式 | [レンズ一体型一眼レフ][超高機能ブリッジ] |
レンズ | 35-135mm/F4.2-5.6 |
シャッター | 縦走り金属羽根シャッター B,32"〜1/2000" |
ピント調節 | TTL位相差検出方式AF/電動MF可 |
AFロック | シャッター半押し |
最短撮影距離 | ノーマル時1.2m/マクロ時49cm(マクロ時はMF) |
測光方式 | TTL開放測光(自動逆光補正/中央重点平均測光)自動逆光補正はスポットのこと? |
露出制御 | プログラムAE(プログラムシフト可能) |
測光連動範囲 | ? |
露出補正 | 4EV±0.3EV、AELボタンによりAEロック可能 |
フラッシュ | 手動制御GN15、外付け専用ストロボ有り |
ファインダー | ?% x0.? |
外観 | 134.5×80.5×125.5mm/1010g(電池別) |
電池 | CR-P2またはUM4×4、CR2025(デート用) |
仕様出典 | '90カメラ総合カタログ Vol.98 |
その他 |
◎オプションとして、専用増設ストロボSL-301M(GN30?)、専用テレコンバータTC-200M(200mm)、マクロコンバータAMなどがある。 ◎OLYMPUS IZM400と同じものだが、ひょっとすると細部は多少違うかも知れない。電池が違っているような気がする(未確認だが)。 |
2005.07.03/【牛込柳町の七夕祭りで試写】サンバを撮ってくる。長期間眠っていた機体をいきなり実戦投入したせいか、絶不調で、半分以上が正常に撮れなかった。ミラーが戻らない、ストロボが光らない(チャージを感知しない)、ピントが合わない、フェザータッチのレリーズボタンをうっかり切ってしまう、おまけに操作方法が直感では判らないなど、どうしようもない。まあ、慣らし運転も使い方のチェックもせずに持ち出したのがいけなかったかもしれんが…。浅草サンバカーニバルよりも遥かに近い距離から撮影できるのに、実に惜しいことをした。このイベントは試写には向かんな。安牌のスナップシステムで結果を撮りに行くべきだろう。