†貧乏カメラ館†

OLYMPUS IZM 300 ★★★★ 発売年月 1988.03/標準価格 ¥6.4000
機能に溺れなかったブリッジカメラ


一時ブームになったブリッジカメラの代表的な機種。レンズシャッター式だがレンズ性能は完全に一眼レフレベル。38〜105mmでF4.5〜6はかなりの明るさ。描写もシャープで発色も良好。機能的にも、パッシブAF、スポット測光、露出補正など多彩。デフォルトでストロボオフにできる。また、右手側にストロボがあるのも縦位置撮影のときに便利。完成度が高く使い心地がよい。
(2001.10.10/2002.03.27)

ブリッジカメラ(=一眼レフとコンパクトカメラの中間)はバブル時代の遺産だ。この時代には多機能、でかい、妙ちくりん、というカメラが次々に登上した。もちろん、高価なAF一眼レフと、性能面で劣るコンパクトの中間を埋めようとする発想自体は悪くなかったけれど、出てきた製品を見ると、何か熱に浮かされていたような感じがする。しかし、このIZM 300はそうしたバブリーカメラの中でもかなり良識的な製品だ。ともかく、カメラとしてよく練られていて、スペックにも操作性にも手抜きがないのが嬉しい。

●基本スペック

スペック的に目をひくのは、やはりレンズの明るさ。38-105mmというズームレンジは今では1万円のコンパクトのレベルだが、F4.5-6という明るさのものはまずない。現在の一眼レフの標準ズームにほぼ匹敵する。というよりも、これは明らかに一眼レフのレンズにコンパクトのボディをくっつけたもの。描写が一眼レフレベルと言うのも頷ける。けっこうびっくりする写りよ。シャープだし発色いいし、リキ入れて作ったのが伝わってくる。

AFはパッシブ方式を採用し、AFのステップ数も200ステップ(通常撮影時)という細かさ。AF補助光あり。実写結果を見てもAF性能には問題はなかった。ただし、AFは所詮AFなので、合焦しない被写体は必ず存在する。このクラスの製品にMFまで望むのは少々無茶とは思うが、ここまで来ると欲しかった。と言っても、一眼レフではないから距離計を追加するか目測にするしかないが…やっぱ無茶か。なお、鏡胴に焦点距離が書いてあるのは良心的。意外にね、こういうところで手を抜く機種が多いんだよね。

最短撮影距離は少々問題。通常で1.3m、マクロ時0.8m。室内撮影のときには、通常で1m以下でないとかなり不便。マクロなら0.8mに寄れると言っても、105mm固定だからね、かなり使いづらい。もっとも、マクロ時にファインダーがパララックスを自動補正するのには驚いた。枠が付いているだけとか、液晶で一部隠すと言う簡便なものじゃなくて、ちゃんとファインダーがずれるもんね。これはけっこう贅沢な機能。ちなみに、フィルターネジが切ってあるので、たぶんクローズアップレンズが使えると思う。ピンは…パッシブAFだからTTLで測距しているんだよね。じゃあAFが効くかもしれない。ま、これは試さないと何とも言えないなあ…。

●操作性

操作性はかなりよい。ほどよい大きさでホールディングが良く、ほどよい重さで手ぶれもしにくい。各種ボタンの配置も問題なし。ただし、設定ボタンのカバーは邪魔。ない方がいい。本気で使うなら壊してしまえ。また、特筆すべきは動作音が比較的静かなこと。これは、後継のL-10を使ったときにとても気になったので高評価。

持ち運びは少々不便。まず、こいつのストラップには、グリップ・ストラップとグリップ+ネック・ストラップの二種類があるようだ(ちょっと確信が持てない)。ネック・ストラップが付いていればよいが、グリップ・ストラップだけだと鞄に放り込むしかない。既製品の肩掛けストラップをくっつけようとしたが、厚すぎてダメ。専用の薄手のものが必要だけど、中古だとグリップ・ストラップしか付いてないことが多いんだよね。カメラカバーの方には汎用の吊り具が付いているけど、こっちに肩掛けストラップ付けると、持ち運びは良くても取り出しがしにくい。

あと、ちょっと気になったのが、ファインダーに視度補正が入っていないこと。私は眼鏡を掛けていても-2くらいの補正が欲しいので、これは少々困った。別売であるのかな? なお、後継のIZM 330には視度補正が入っている。

●ストロボ

何と言っても、ストロボが右手側に付いているのがとてもよい。というか、このタイプのブリッジカメラの場合、ストロボを左手側にするのはほとんど不可能。ボディが大きくて特殊なスタイルをしているため、左手を上にして縦位置撮影することが困難だからだ。ただ、じゃあ何で普通のコンパクトのフラッシュは左手側に付いてんだろうね? ちょっと謎。ポートレート撮るときは、モデルはたいてい右向きになるから? カンケーないかなあ…

GNは不明だが多分10〜12前後。ズーム連動で発光量が変化するそうだが、外光オートストロボなんだろうか? TTL調光はありえないと思うが、このあたりはよく判らない。

ストロボはデフォルトでオフにできる。ストロボに限らず、電源を切ってもすべての設定を記憶しているため、再度オンにしたときも前回の設定が生きているわけ。Subject設定(マクロとかポートレートとか)が保持されているのはけっこう欝陶しいかもしれないが、ストロボモードに関しては大歓迎だな。スローシンクロや赤目軽減モードはない。

ちなみに、後継のIZM 330ではスローシンクロと赤目軽減モードを追加し、設定の保持を無効にしている。ちょっと評価が難しい。恐らく、大多数のユーザーはIZM 330の方が良いと思うだろうが…

●総評

と言うことで、このカメラはとても良くできていると思うのだが、では使い続けたいカメラかと言うと、ちょっと考えてしまう。やはり、大きさ・重さとズームレンジの兼合いが問題。メインで使うにはズームレンジが狭い、サブで使うには大きすぎる。中途半端と言う印象は否めない。実用を考えるなら、迷うことなくOM-1とSlim Tを持って行くな。ま、だからこそブリッジカメラは消えていったのだが…。

最後に、このIZM 300はRICOHにもOEMされていて(あれ?逆かな?IZM 400はMIRAIのOEMという話しだし…)MIRAI 105という商品名で発売されていたのだが、こっちは設定ボタンのフタがついていない。でも、ボタン自体が押しにくく、やはり操作性には難がある。

主要諸元
レンズ 38mm〜105mm/F4.5〜6、11群12枚
近接撮影 1.3m(通常)、0.8m(マクロ時)
合焦機構 パッシブAF、350ステップ(通常200+マクロ150)、低輝度時補助光
AFロック シャッター半押し
シャッター プログラム式電子シャッター 2秒〜1/500秒
露出 SPDによるプログラムAE、中央部重点平均測光、スポット測光
露出補正 スポット測光、露出補正±1.5EV(0.5EVステップ)
ストロボ 自動発光、発光停止、強制発光、ズーム連動でGNが変化
ファインダー 実像式ズームファインダー AFフレーム、マクロ時パララックス自動補正、AF合焦マーク、ストロボ発光マーク、スポット測光表示
電池 DL123A×2
大きさ 132mm×79mm×95mm、600g(電池別)
その他 1.3コマ/秒の連写可能、フィルター装着可(φ40.5mm)、ストロボ&撮影モード保持


Long-run reports ...

2001.10.10/4台1000円で落札したのジャンクの中の一台。これは大儲け!他の3台も一応動くしね。え?ファインダー内に何も表示されない?じゃあ壊れてんの? どうもそうみたいだな。う〜ん、4台1000円じゃ文句言えん。

2002.01.15/2台目を1600円で落札、やはりファインダー内表示はある。一台目は故障と判明。この2台目は外観が多少悪く、ファインダーの見えがやけに悪い。視度補正レンズの問題かなあ? ちなみに、マクロモードになるとファインダーが本当に補正されることを発見。これは凄いわ。

2002.03.08/なんと3台目を入手。今度はけっこう程度が良くて2000円。

@ ¥1000/4 機能完動?、ファインダー内表示不良
A ¥1600 機能完動、外観並下
B ¥2000 機能完動、外観良

2002.03.11/【試写開始】で、なぜか二番機を持って帰省。試写をする。一番気になったのは、ファインダーの見にくさ。これは完全に私の視力のせいだが、視度補正が入っていないのは辛いな。IZM 330にも220にも入っているのだが。それから、この大きさ・重さはやはり問題があるなあ。気楽なスナップには大袈裟だし、メインのカメラにはしては力不足は否めないし、首から吊り下げられないので取り回しがとても不便(グリップの部分にストップでも付くのかね?)。いちいち鞄から出し入れしなきゃだもんね。

2002.03.27/試写結果上がる。悪くない、かなりシャープだ。発色は少々物足りないところもあるが、充分一眼レフレベル。まあ、一眼レフのレンズにレンズシャッターをくっつけたカメラなんだから、それも当然か。ただ、用途に困るところはあるなあ…。これをメインに据えるには少々物足りない部分もあるし。


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