(2005.03.15/2006.05.11)
フルメカニカルにこだわるのは、耐久性と自由度の問題。純粋に耐久性を比べたら、フルメカでも電気カメラでも大差はないかもしれないが、電気カメラは壊れると処置なしになるのが許せない。それに、電池を使うカメラは電池切れや液洩れの恐れもある。また、電気カメラはプログラムAEオンリーの場合が多く、露出補正もまともにできない。失敗の責任をユーザー自身が取れるカメラが欲しいのだ。 |
LOMO SMENA 8M
スペック的には良いがともかく使い勝手が悪い。巻き上げとシャッターチャージが別なのですぐに忘れる。チャージレバーが手に当たってシャッターが正常に切れない。内面反射が多くてコントラストが低い、発色が変にハデ(この発色を好む人も多いが)。
LOMO SMENA 35
非常に軽くてスペック的には理想的だがチャチ。レリーズボタンをはじめ、各部の動作の質感もかなり低い。使い勝手はかなり改良されたが、セルフコッキングではないので、シャッターチャージは必要。レンズ性能はSMENA 8Mと同じ。
LOMO SMENA Symbol
SMENA 8Mを高級化したもので、巻き上げとチャージが一体化したのが特長。ファインダーもすっきり。質感も作りかなり良いのだが、巨大化・重量化(約360g)してしまったのが惜しまれる。絞りで感度設定、速度で露出決定。
BelOMO VILIA
SMENA Symbolに酷似しているが造りは雲泥の差。機能的にはSymbolよりも凝っていて、ファインダーはアルバダ式だし、お天気マークもファインダー内に表示される。しかし、所詮は無茶な背伸びで、質感も操作感も到底Symbolには及ばない。速度で感度設定、絞りで露出決定(Symbolと逆)。
BelOMO ELIKON 535
非常にコンパクトで絞りも速度も可変なのだが(ただし絞りと速度は連動)、最低速度が1/90"なので低輝度側がEV10 (ISO 100)までしかいかない。ISO 400を使っても、室内でストロボなしで撮影するには2段足りない(ISO 800を使えばギリギリなんとか…)。質感・操作感は非常に低く、露出の設定に苦労することも。
BelOMO AGAT 18K
ハーフサイズ。スペック的にはELIKON 535に似ていて、絞り・速度連動タイプだが、低輝度側がEV9とELIKONよりはマシ。ただし、光線漏れと内面反射が酷いらしく、そのままでは使えない。造りは思いっきりチャチで、アルバダ式のファインダーもゴミが多い。しかし、デザインだけは極めて秀逸。あ、レンズもけっこう評判良いか。
Beier Beirette vsn2
東独製のコンパクト。スペック的にはSMENA Symbolを小型軽量化した感じ。軽量・セルフコッキング・大口径・1/30"可能という理想的なスペックだが、最速1/125"とか、お天気マークがISO 100までしか対応できないとか、細かい所ではいろいろな問題も。造りのチャチさはLOMOとBelOMOの中間くらい。
ということで、いろいろ候補はあるものの、決定打に欠ける。強いてこの中から一台選ぶなら、Beiretteかなあ…。また、当然のことだが、上記の機種はどれもデート機能を持っていない。一眼レフにデートは不要だが、スナップにはあると便利なことが多い。その点でも二の足を踏む。
次にBピントだが、これはゾーンフォーカス(目測式)が望ましい。ところが、フルメカのゾーンフォーカス機と言うのも、実は超レア種なのだ。80年代には、各メーカーとも判で押したように、「フルメカ機は固定焦点、EE機はゾーンフォーカス」という差別化をしていた。単なる販売戦略だとは思うが、これが大きなネックになっている。もちろん、AF時代に入るとゾーンフォーカスは絶滅した。唯一、FujiのPicPAL 2がフルメカのゾーンフォーカス機だが、選択肢が狭すぎる。したがって、「ピント調節にも目をつぶらないとしょうがない」ということになる。
ということで、いきなりフルマニュアルの三条件のうち、二条件を捨てることになった(^_^; 残る条件は@絞りだけ。ただし、この絞りの問題は、実は速度にもピントにも密接な関係を持っている。すなわち、速度可変であることを望んだのは、室内でのストロボなし撮影をしたかったからだが、それならば「高感度フィルム+絞り開放」という組み合わせでも実現の可能性がある。また、ゾーンフォーカスを望んだのは、ピンボケを避けたかったからだが、それならば絞りを十分に絞って被写界深度を稼ぐという解決方法もある。絞りの自由度が高ければ、諦めざるを得なかった二条件も蘇えってくるのだ。
だが、喜ぶのはまだ早い。80年代であれば、安物の固定焦点機でも固定絞りというのは滅多になかった。ところが、最近の固定焦点機は絞り固定の方が普通である。コストダウンとネガのラチチュードの広域化が原因だろう。つまり、「プラ外装・フルメカ・固定焦点・可変絞り」というカメラは、特定の時期に、しかも特定のメーカーでしか作られていないのだ。何か、物凄くありふれたスペックのように思えるのだが、実際に調べてみると意外に選択肢が少ないのに驚く。
一流メーカーで「プラ外装・フルメカ・可変絞り」を出しているのは、コニカだけと言っても良い。フジのフルメカ機は固定絞りが圧倒的に多いし、5大メーカーの製品に至っては絶無に近い。辛うじて、PentaxのPinoとかOLYMPUSのShoot & Goがあるくらい(多分、すべてOEM機)。あとは、CHINON、Panasonic、GOKO、MIRAX、Raynoxなどの製品になる。 |
また、固定焦点自体は良いとしても、ピント位置の問題は少し考える必要がある。古い固定焦点機の場合は、被写界深度が最大になるようにピント位置を決めていたが、最近の固定焦点機は人物が奇麗に写るようにと、ピント位置を近めに設定しているものが多い。しかも絞りはF8前後で固定。このため、遠景の描写に物凄く大きなしわ寄せが来る。被写界の広さを重視するか、人物の描写を重視するかで、選ぶ機種も変わってくる。
FUJI PicPal 2
私が知る限り、国内で唯一の「プラ外装・ゾーンフォーカス・フルメカ」機。絞りも可変だ(フィルム感度とストロボの有無でF4.5/F8/F11/F16)。しかし、元来が簡易カメラであるため、ピントや絞りの調節は意外に面倒。操作系が鏡胴周りに集中していて、設定の際に迷う感じがする。スペック的には良いが、実用性にやや疑問が残る。デート機能なし。
Konica EFJ/Manbow/Tomato
この3機種は実は最有力候補だ。比較的大口径のレンズを搭載し、絞りもF4〜F16を1段ステップで変更できる。と言っても、フィルム感度とストロボスイッチの組み合わせで変化するもので、絞り値を直接設定できるわけではない。ピント位置は、EFJとTomatoは3m弱、Manbowは2m弱だと思われる。いずれもF16まで絞れるので、遠近を問わず、描写が極端に落ちることはない。Tomatoはレンズ性能に若干の難があるが、EFJやManobowは悪くない。3機種ともデート機能付き。
Konica 撮れ太/Dr.Finder
両機種ともEFJの簡易版という感じ。レンズが少し暗めになって、絞りの設定範囲も狭くなった(Dr.FinderはF13くらいまで)。デート機能なし。外観は極めてチープだが、描写自体は意外なほど良い。しかし、上記3機種に比べて特段のアドバンテージはない。
CHINON 35F-II AD
チノンの安物コンパクト。スペック的には一応選択肢の中に入るのだが、いかんせんレンズの描写が「一般的でない」(^_^; 平板ふぇち用カメラ。初代の35Fの方はかなりマトモなレンズを使っていたようだが…。この機種をあえて選ぶ理由はないよなあ……なくしても惜しくないのが取り柄かも(^^ゞ いや、デート機能なしならば兎も角、デート機能付きのADはけっこうレアだったりする。
Yashica Partner
プラ製フルメカ機なのに、前蓋開閉式沈胴カメラと言うイロモノ。露出はお天気マーク式で、ISO感度のみで絞りを決める他社製品よりもちょっと高級。ただ、全体にそこはかとなく漂うチープさはいかんともしがたい。ピントは固定式。距離マークも書いてあるので、一見ゾーンフォーカス機のように見えるが、これはストロボ時の絞り調節に使うもの。
45Camera Basic N
ばったもんの代表として取り上げた。といっても、レンズはコニカ製、ボディは(たぶん)RaynoxのOEMで、写りは意外に良い。絞りもF5.6/F8/F16くらいに変更できる(数値は推定)。もちろんデート機能はないが、実用性だけで考えると悪くないかも。もっとも、作りが思いっきりチープなので、使っていて些か情けなるのは避けられない(u_u;)
Rollei 35
国産でもプラ外装でもないが、一応ピックアップ。一番近いと言えば近いが、まさか普段持ちにして鞄に放り込むワケにも…。デート機能もないし…って、そんな問題じゃないか。
この中から選ぶとしたら、KonicaのManbow(人物中心)かTomato(風景中心)。ベストとも言えないが、他の機種を選ぶ理由が見つからない。本当なら、28mmでF8/F16の二段絞り、デート機能付きというのがあると嬉しいんだが、ないんだよなあ、これが…。