(2015.06.26)

Fuji FinePix Z5fd

普及機ながら高感度に強いことを謳っているモデル。ノンストロボのブツ撮りに拘る私が、今までなぜF10以降の高感度・高画質モデルに手を出さなかったかと言えば、答えは「フジだから」(^_^; 好き嫌いと言うより、明らかにコンシューマ−−しかも機械オンチの若い女性をターゲットにしているメーカーの製品なので、痒い所に手が届かない(後述のように、それは今回も痛感した)。おまけに、ユーザーを見下していると感じることが多々あり、信頼がおけないのである。Finepix 2900Zで飲まされた煮え湯が、未だに深い深いトラウマになっている。また、恥ずかしいくらい狂うA500の時計や、パンクしまくるキャパシタも、フジというメーカーの印象を極めて悪くしている。

で、まあ、本機なのであるが、単体で云々するより、我が家の標準機とも言えるOptio 30および先日入手したμ750と比較して見ていこう。

●換算感度

まずは、感度と速度の関係から。次の表は、我が家の標準サンプル被写体をノンストロボで撮影したときのデータ。

■3機種の感度・速度・開放F値と換算感度
機種名 Optio30 μ750 Z5fd
開放F値
F値の差
F2.9
±0
F3.3
-1/2ev
F3.5
-2/3ev
ISO 400
ISO 800
ISO 1600
1/15"
--
--
1/10"
1/20"
1/40"
1/8"
1/15"
1/28"
換算感度 ±0 -1/2ev -1ev

これを見れば判るように、Z5fdはレンズの開放F値が暗く、実効感度がやや低めであるため、換算感度においてOptio30よりも1段低い。つまり、Optio30のISO 400と、Z5fdのISO 800は同じ速度になる。したがって、高感度画質が向上したとしても、換算感度の低さでその効果を相殺してしまうことになる。

  実効感度が低めなのはFinepix全般の特徴。 ただし、それが《間違っている》のかどうかは別問題。 Finepixの方が正しくて、Optioやμが不当に高いのかも知れない。
  「換算感度」と言うのは私の造語。 Optio 30を基準にして、レンズの開放F値の差と実効感度の差を 足し合せたもの。換算感度の差はそのままシャッター速度の差になる。 同じISO感度設定でも、換算感度が1段低ければ、速度は半分になる。

で、そもそも論なのだが、なぜこんなチェックをしているのかと言えば、Optio 30の感度が少し物足りないから(まあ、使えるんだけどね)。できれば、標準サンプル被写体が1/30"で切れると嬉しい。つまり、実用画質のまま、1段上積みしたいわけだ。で、1/30"以上ということになると、μ750もZ5fdもISO 1600ということになる。

●高感度時画質

そこで画質である。まず、基準となるOptio 30のISO 400だが、これは「まあまあ使える」レベル。もちろん、ISO100や200に比べればノイジーだが、露骨に汚いというレベルではない。そこで、このレベルの画質がキープできれば良しとする。

Z5fdの画質は流石に評判通り。ISO 1600でも、Optio 30のISO 400よりもノイズが少ない。尤も、本当にノイズが少ないのか、後からノイズ低減処理をしたのかは微妙なところ。拡大してみると、どうも加工した臭い感じがする(何の確証もない)−−が、まあ、そこは問わない。この場合、重要なのは結果である。故に、Z5fdはISO 1600が可能で、換算感度にしてOptio 30よりも1段アップ可能(約1/30")。これは当初の目標に達していると言えるが、でも、1段だけかぁ…という感じは残る。評判が良かっただけに、2〜3段は稼げないと、有難みは薄い。

一方、μ750の方は厳しい。ISO 1600の画像を拡大してみると、ノイズが盛大に乗っているのが確認できる。ただし、等倍であれば、まあ許容できないレベルではない。また、カメラ本体で拡大再生するとメチャクチャ汚く表示されるが、PCに吸い上げて見てみるとそこまで酷くはない。Optio 30のISO 400よりやや劣るが、使えないのかと言われると微妙である。また、ISO 800であれば実用レベルの画質がキープできる(純粋に画質を比較すれば、発色も解像感もZ5fdに遠く及ばないが、部品撮影ならば実用範囲内という意味で)。

ただし、換算感度が0.5ev低いので、ISO 800ではOpito 30/ISO 400に対して+0.5evにしかならず、1/30"には達しない。尤も、手ぶれ補正が+0.5evくらいの効果があるとすれば、併せて+1evに相等すると考えることもできる。で、あれば、μ750/ISO800もOptio 30に対して1段アップに相等、ということになる。

以上から言えること;

●操作性と仕様

という事で、実はZ5fdもμ750も、この目的に関する限り、どっこいどっこいである。そうなると、むしろ問題なのは操作性。画質では一歩(と言うか十歩くらい)勝るZ5fdだが、操作性についてはかなり問題が多い。と言っても、流石に使いにくい独自UIは捨てて、業界標準UIに準拠しているので、そんなに致命的ではないのだが…

  「業界標準UI」というのも私の勝手な造語。 基本的に《十字キー+中央OKボタン+再生ボタン》という構成のUI。 この方式を最初に採用したのがどのメーカーかは不明だが、 少なくとも、2001年発売のOLYMPUS C-40Zはこれに近い構成だった (ただし、再生は表示ボタンのダブルクリックという変則仕様)。 現行の標準UIの直接の祖先は2003年発売のOptio 550/33LFあたりかも…?

最初に戸惑ったのは、マクロとISO感度が保持できない!ということ。Mモードにすると、たいていの設定は保持されるようになるのだが、なぜかマクロはオフに、ISO感度はオートに初期化されてしまう。まあ、意図はわからんでもないが、このあたりが「女の子向け」と感じる部分だ。それならAモードを使わせれば良い訳で、Mモードの意味はない。

正直、これだけで「もう使うの止めようか」と思ったのだが、実はシーンモードを使えば以下のような設定で起動できることが判った。

■シーンモードの起動時設定
モード ISO感度 マクロ ストロボ
花マクロ 800 ON OFF
ブレ軽減 1600 OFF OFF
ナチュラル 800 OFF OFF
Mモード 800 OFF 設定保持
※すべてのモードでISO感度はオートに初期化されるが、室内では自動的に上記の値まで上がる。

私が欲しいのは「ISO 1600+マクロON」で起動できるモード。何ともビミョーである。この設定で起動できるモードがないか探してはみたのだが、どうもないようだ。尤も、ブレ軽減で起動すれば、1ボタンでマクロに移行できるので、まあ、実用的には大きな問題ではないとも言える。

また、この機種のレリーズボタンはソフトで手ブレが発生しにくい。明らかにμ750よりは上である。なので、ISO 800(1/15")の花モードでも実はけっこうブレずに綺麗に撮れる。その意味では、素直に花モード固定で使っても悪くはない。でも、それではOptio 30/ISO 400に対してのアドバンテージはない。

また、画素数はVGAの次が2Mで、XGAや1.2Mがない。これは私の使い方ではけっこう大きなデメリット。また、再生ボタンで再生モードに移行することはできても、撮影モードに戻ることはできない。撮影モードへの移行はレリーズボタンの半押しをしなくてはならない。これもけっこう生理的にイヤ。

  画像サイズに関しては、PCへの吸い上げと同時にリサイズするスクリプトを書けば、まあ、何とかなるかな…と。で、書いたら何とかなった。

一方、長所はと言うと、屈曲光学系のフラットボディで、ガジェット感に優れ、起動も速い。レリーズボタンが軽めなのも、この用途には非常に良い。総じて、気持ちの良い使用感である。モノとしての魅力で言えば、OLYMPUS AZ-2とは好対称と言って良いだろう。

●まとめ

と言う事で、もう少しレンズが明るく、もう少しユーザーの意図を尊重してくれたら、言う事なしの機種。このモデル自体には問題があるが、このシリーズを少し追いかけてみよう、という気にはさせてくれた。

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