†貧乏カメラ館†

Yashica FFT 未評価 発売年月 1973.??/標準価格 ¥3.7800 (50mm/F1.9付)
M42最晩期のフルメカ廉価機


決して珍しいカメラではないのだが、意外なほど情報が少ない。基本スペックは、M42マウント、フルメカニカル、絞り込み測光、定点合致式、1/1000"横走り布幕シャッター、X接点1/60"。スペック的にはPentax SPのコピーと言ってもよいだろう。発売年は1973年ころ(詳細不明)。同じM42マウントのAE機であるELECTRO AXよりも後に出ている。すでにOM-1が世に出ており、時代は完全にバヨネット・マウントに移行していた。
(2006.10.17)

M42マウント機としては最晩期の機種と思われる(Pentax K2の出た1975年がM42の実質的な終焉の年)。このあと、ヤシカもツァイスと組んでY/Cマウントに移るから、その直前の、廉価市場を意識した機種と思われる。50mm/F1.9付きで3万7800円はかなりの破格値だった。

まあ、いくら安くても、この時期に好きこのんでM42の絞り込み測光機を買うユーザーも滅多にいないだろうから、少なくとも国内販売数はかなり少なかったものと思われる。10年遅れのスペックだもんね〜。たぶん、価格に敏感な海外が主な市場だったと思う。ライバルはソ連の雄Zenit E…という感じでは? 情報が少ない理由も何となくわかる。

ちなみに、この機種には一つ非常に面白い特長がある。それは、1/60"以上の速度は、無段階で設定が可能なこと。少なくとも、カタログにはそう書いてある。でも、実際には倍数系列にクリックが入っていて、その中間の速度に合わせるのは不自然な感じ。中間に設定しても、シャッターを切ったショックで、クリックのあるところに動いていしまうことも。そもそも、それほど大きな意味のある機能ではないが、メカニカルおたくとしては、どんな仕組になっているのか、ちょっと興味がある……と言いたいところだが、原理的には難しくないか。ZenitでもSVでも、倍数系列に固定する必然性はないもんなあ。機構的に見て、中間速度が出るように作るのは簡単なはず。むしろ、精度の問題から中間速度を出さないようにしているだけのような気がするが……ま、いいか。

ともかく、枯れた技術の流用だけで済ますことで、コストを大幅に下げた機種だが、当時の価格がいくらでも現在では意味がない。むしろ、完成した技術しか使われていないため、安心感がある機種だというのが、現在における唯一の存在意義か。故障も少ないのではないかな? 実用機として割り切ると悪くない機種だが、今どきM42を実用目的で使うユーザーがいないというのが難点だな。性能云々じゃなくて、SPの方が欲しいもん。無難な性能だけで「物語」のないカメラは、コレクションとしても少々魅力に欠ける。


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