OLYMPUS FE-115

2006年初めに発売された海外モデル。X-450に始まる、コロコロぐにゃり形状のビギナー機の最終形。画素数が増え、ぶれ軽減モードが追加された。実質的な最大感度はISO 400。500万画素、2.8倍ズーム、単三2本、NO-OVF、1.5" LCD(13万画素)、広角端Sマクロ(2cm)、USBは汎用mini-B、といったところが主な仕様。このシリーズの最大の長所は、キャパシタパンクの煩わしさから解放されていること。ビギナー向け機能が邪魔だが、トータルな使い勝手はかなり良い。なお、LCDは屋外での視認性に問題があるそうだが、私は室内限定のメモ撮り専用機として使用しているので、まったく気にならない。(2014.03.08)


●系譜

X-450(元祖)→ FE-110/FE-100(画素数アップ)→ FE-115(高感度モード追加)

●ぶれ軽減モード

要するに、ISO 400モード。 正確に言えば、実質的な上限感度がISO 400の感度オートモード。 ただ、増感アルゴリズムはイマイチ不明。 1/30"あたりを閾値にしているのか思ったが、そうでもないようだ。 少なくとも、1/80"ではISO 400のままだった。 試写結果を調べたら、ISO200-1/200"、ISO250-1/200"というデータがあったので、 閾値は1/200"あたりなのかも知れない。 まあ、室内ノンストロボでは実質的にISO400固定と同等と考えて良いだろう。 ちなみに、Pモードは実質的にISO125固定。 また、実効感度はほぼ数値通りか、若干低めかな、という印象。 ま、広角端の開放F値がF2.8ではなくF3.0なのも多少は関係はあると思うが。

で、高感度時の画質だが、300万画素等倍で見ると、けっこうノイズが目立つ。 XGAくらいにリサイズすると目立たなくなるのだが、XGAサイズはないからね。 何で、500万/300万/30万なのか、スペック決めたヤツの気が知れない。 このカメラの用途から言って、SHQ(低圧縮モード)なんて要らないから、 《フルサイズ(500万)/L判用(200万)/PC用(XGA)/メール用(VGA)》 が当然の選択肢だと思うのだが。

●VGAがわりと奇麗である

VGAの圧縮率1/4:ファイルサイズ約170KB

ただし、これは兄弟機であるFE-110のスペック。 FE-115のデータは発見できなかったが、 撮影可能枚数から逆算したところ、FE-110と同じと思われる。 VGAのファイルサイズは公称値で170KBだが、実測では120〜150KBくらい。 これに対して、FE-130の実測値は40〜80KBくらい(1/8?)、 X-550は35〜60KBくらい(1/10?)。 また、Optio30(★★)は100〜120KBくらい(1/6?)。 もちろん、被写体によって幅はかなりある。

このうち、FE-130のVGAはまったく使えないレベル。 圧縮率というよりも、リサイズのアルゴリズムが 根本的におかしいのではないかと思われる。 輪郭線のジャギーが目立ち、ノイズも乗りまくりである。 リサンプリングなしの、単純縮小ではないだろうか…? X-550はファイルサイズこそ小さいが、FE-130よりはかなりマシ。 だが実用レベルかと言われると、ちょっと厳しい。 それに比べると、FE-115はかなり使えるレベル。 VGA/ISO400で撮ったぽてちゃんの顔なんて、 4倍に拡大しても圧縮ノイズがほとんど見られない。 メモ撮りになら充分使えるだろう。

手持ちノンストロボでこれだけ撮れれば御の字である。 しかも、焦点距離は約90mm相当。室内で中望遠が手持ちノンストロボで使えるのは、けっこう衝撃的。コロコロぐにゃり形状のホールディングの良さも効果的。このサイズだと手ぶれも高感度時のノイズもほとんど目立たない。(15.6mm/F4.8-1/10"-ISO400)
眼の部分を4倍拡大してみた。

●マクロ性能

最短撮影距離はNマクロで正味20cm、Sマクロで2cm。Sマクロは広角端なので、38mm/F3.0-ISO 400が可能。これならば、室内でも1/30"程度で切れ、気を付けて撮れば手ぶれもしない。

なお、Nマクロではデジタルズームが効くが、Sマクロでは不可。広角端でパースがキツすぎる場合には、1サイズ大きな画素数で一回り小さく撮って、あとで切り抜くことになる。これは少々面倒だが、普通のデジタルズームよりは奇麗に処理できる。まあ、手軽さと画質を天秤に掛けてどっちが、というハナシなのだが……やっぱ、Optio30みたいに、2cmマクロでもデジタルズームが使えるのに越したことはない。

ちなみに、Nマクロでは望遠端でもコンデジを画面いっぱいに写すことは不可能。ホームラジオで辛うじて、というレベル。P-AUTOモードのNマクロでデジタルズームを効かせて、ストロボを発光させれば、Sマクロの最近接に近いレベルの倍率は確保できるが、ノンストロボは無理。[Nマクロ/デジタルズーム/ISO 400/ノンストロボ]はシャレにならないレベルの画質劣化が起きるし、手ぶれも強烈。Nマクロはマクロとしては、ほぼ使い物にならない。

●電池寿命

FE-110を含めて、電池寿命のデータはどこにもない。 メーカーが隠しているとしか思えないほどに。 つまり、《かなり短い》と考えるべきだろう。 一応、兄弟機のFE-110には次のようなデータが見つかった(出典:価格.com)。

 メーカー公表値:同梱オキシライドで160枚(元情報は未確認)
 ユーザー報告@:同梱オキシライドで50枚は無理、せいぜい20枚
 ユーザー報告A:同梱オキシライドが25枚とPC接続でアウト

まあ、FE-115もこれに準拠と言ったところでしょう。 それにしても、オキシライドで20枚は酷いな…。 この数字を鵜呑みにするなら、Optio30の方がずっとマシだろう。 が、実感としてはそんなに悪くはない。Ni-MHでももっとずっと持つ印象。 むしろ、同梱電池の方に問題があるんじゃないか、と思うほど。 ま、画像サイズは300万とVGAしか使っていないし、全てノンストロボだが。

  【追記】その後、少し使い込んでみたが、やはりかなりヘタリ弱いことが判った。 PowerShot A560なら何ら問題なく使える残量たっぷりのNi-MHでも、 FE-115/FE-110ではアウトだった。 その割には、へたり気味のアルカリ電池でも動作した。 容量よりも電圧に敏感な感じ。少なくとも電池は選ぶ。 なお、USB接続時はPC側から給電されるようだ。

もっとも、問題の本質はそこではない。 電池はいずれなくなるものだし、書斎使用限定だから、多少短寿命でも構わない。 なくなれば替えれば良いだけのこと。Ni-MHのストックは沢山ある。 真の問題は、電池を交換すると何が起きるか、である。 即死型キャパシタで、電池交換の度に設定も時計も全部パーでは、困るのである。

●キャパシタの問題

これまたFE-110のデータしかないのだが、 一応キャパシタ自体はある(保持期間1日:公称値)。 どうせ即死型だろうが、一応あることはある。 FE-115もやっぱりあるだろう。 キャパシタがあるのは当然、と思われるかも知れないが、 このシリーズでは必ずしも当然でも必須でもない。 と言うのは、設定も時計も内蔵メモリ(またはxDカード)に保存されるようなのだ。

設定は全て不揮発メモリに記録されるので、キャパシタが死んでも問題なく保持可能。 一方、時計は電源供給がなくなれば止まってしまうが、設定はクリアはされない。 不揮発メモリに最後に書き込んだ日時が残っているのである。 したがって、仮にキャパシタが死んでいたとしても、 電池交換時に時計がリセットされることはなく、交換に掛った時間分しか狂わない。 手際よくやれば数秒で交換可能なので、数秒遅れるだけである。 コンデジの時計にどれほどの精度を求めるかは判らないが、 実用上は全然問題ない狂いだろうし、修正もごく簡単にできる。

ただし、日時記録のタイミングは不明。 一定間隔ごとか、あるいは特定イベントごと(例えば電源オン/オフ)かも知れない。 それによっては、時刻の狂いの大きさは異なるだろうが、 毎回毎回西暦から合わせないといけない、従来の即死型キャパシタに比べれば、 修正は遥かに楽。

  簡単な実験をしたところ、日時保存説が実証できた。4/2に電池を抜いて放置、4/10に電池を入れて確認したところ、時計は4/3で止まっていた。公称通り、1日はキャパシタが持ったようだ。そして、キャパシタが空になっても、カレンダーは初期化されず、直前の日時を保持していた。ちなみに、同時に実験したFE-110は4/5で止まっていた。こちらの方が若干持ったようだ(チャージ量が同じだった保証はないが)。この実験から、日時書き込みは恐らく定期的に行われていると考えられる。

●USB

USBは汎用のmini-Bで、マスストレージクラス。 xDというマイナーメディアなので、本体=リーダーという感覚になる。 SDやCFなら、メディアだけ取り出して汎用リーダーにポンで済むが、 xDだとアダプタ噛ましたり、外したり、専用リーダー引っ張り出したり… 実に面倒なことになる。USB接続が正解だろう。 ただし、コンデジのためにケーブルの種類を増すなんてのもゾッとしない。 ノーマルのBかmini-Bで繋がらないUSB機器は使わない! と言うのが、周辺機器の多いPCユーザーの率直な感覚だろう。 xD機ではmini-B/マスストレージクラスは必須条件だと思う。

ただし、当初OS/2ではFE-115のUSBが正常認識できなかった。 X-450のときもそうだったのだが、まあ、たまたま調子が悪いのだろう、 くらいで放置していた。が、こうなると構造的な原因があるのかも… と言う事で、USBドライバをアップデート(USBHCD196)したら正常認識できた。

また、当然のことだがUSB2.0接続で、けっこう快適に転送できる。 そんなことをわざわざ書くのは、FE-130がUSB1.1らしく、 転送にものすごい時間が掛ったから。

●ファイル名

ファイル名は「日付+連番」で、連番はリセットされる。 したがって、その日に撮影した分をその日に吸い上げて(PCに移動)、 さらに撮影をすると、ファイル名が重複する。 私のように、試写を繰り返す使い方だとかなり不便なのだが、 一般的な用途ではどうかな?

●Optio 30との比較

FE-115とOptio30はおそらく兄弟機なので、共通する部分も多いが、 設計思想はけっこう違う。 Optio30は廉価機ながら律義で素直。 上位機種ならともかく、このクラスでこんなにきちんとしているのは、 他社製品も含めて多分これだけだろう。 一方、FE-115はビギナーに媚びたのが裏目に出て、却って複雑な仕様になっている。 それは「ぶれ軽減モード」の名称や仕様に顕著に出ている。 Optio30のように、素直にISO100/200/400固定可能な方がどんだけ便利か… が、まあ、X-450/FE-110系もそれなりに考え抜かれて設計されているのは事実で、 これはこれで捨て難い魅力がある。 ユーザーニーズとズレている印象はあるが、少なくともお座なりではない。 こういうのは、FE-130のようなお座なりモデルで痛い目を見ないと 実感できないかも知れないが。

マクロ性能や最高感度、USB、LCDサイズなどはほぼ互角なので置いておいて、 目立つ違いを比較すると、FE-115は;

 ○電池の持ちが良い(感想/実証作業はしていない⇒かなり怪しい)
 ○キャパシタを気にしなくてよい(仮に即死型でも実害が少ない)
 ○デザインがよい(道具に取って愛着は重要な要素)
 ISO 200固定ができない(感度と画質のバランスの問題)
 XGAサイズがない(Optio30はVGA/XGA/200万/300万と理想的)
 露出情報が一切確認できない(Optio30は撮影時/再生時ともに完全表示)
 △OVFがない(そもそも室内限定用途なので、なくても構わないのだが…)

電池問題はキャパシタとセットで考えるべき。 要は、電池寿命そのものではなく、電池交換時に厄介なことになるか否か。 Optio30のキャパシタは電池交換程度なら持つこともあるが、ほぼ即死=全リセット。 FE-115にはそのリスクはない。 長期間放置で電池が空になっていても、設定は完全保持。 時計も電池切れ直前の日時を覚えている。この違いは決定的。 ちなみに、OptioもS40はこのタイプだった(ような気がする)。

ただ、上記のOptio30の3つのアドバンテージも、かなり重要な要素だからなあ… 迷う。しかし、各社の廉価機をさんざんいじくり回してきたが、初めて迷うに値する機種が見つかった(^^)

●気になった点…

重複になるが、気になった点を列挙しておく。 いずれも大した問題ではないが、使い続けていると、けっこう地味に効いてくる。 それなりの対処方法はあるが、対処を講じないといけないのが嫌なのだ。 しかも、これらの問題は特にコストを掛けなくても改善できるように思う。 となれば、仕様決定のプロセスがね、気になると言うか……

主要諸元
発売年月2006年2月(海外)
撮像素子1/2.5" CCD 500万画素 ※たぶん原色フィルターだと思う
光学系38-106mm/F3.0-5.0(実焦点距離:6.2-17.4mm)
最短撮影距離20cm(Nマクロ)/2cm(広角端Sマクロ)
シャッター速度1"〜1/2000" ※夜景モードでは2"まで
ISO感度ISO 64-400 ※実質最大感度ISO 125(通常)/ISO 400(ぶれ軽減モード)
画像サイズ500万/300万/VGA(30万) ※VGAの圧縮率は1/4
ファインダーなし
液晶モニタ1.5" TFTモニタ/13万画素 ※かなり鮮明
プログラムモード6種/ぶれ軽減モードあり
設定保持不揮発メモリ保存(日時設定を含む)/キャパシタもあり
USB端子汎用mini-B(マスストレージクラス)※OS/2では要ドライバ更新
その他の機能なし
電池単三×2本/CR-V3不可
外形87.5×62.5×38.5mm/140g(電池・メディア別)

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