†貧乏カメラ館†
Autoboy EPO |
★★★
発売年月 2000.10/標準価格 ¥4.4000 コンパクトカメラの完成形 |
![]() | 28〜90mmのワイド系万能ズーム機。超広角28mmから中望遠90mmをカバーし、小型で軽量で小粋なデザインで、レンズも優秀、マクロ撮影も露出補正も可能だ。広い風景や室内集合写真からポートレートまで撮れるEPOはまさに万能コンパクト。コンパクトに超望遠を求める場違いな人たちは別にして、このカメラに不満を感じるユーザーはほとんどないだろう。まさにコンパクトの完成形。 |
(2008.09.06) |
だが、この完成形の何と手垢にまみれたものであることか! コンパクトカメラがこの世に登場して約四十年、カメラマニアではなく、一般ユーザーに如何に好まれるかを試行錯誤し続けて、最後に出て来た最大公約数の塊がこのEPOだ。斬新なようなでどこかで見たようなデザイン、当り外れのない性能、ユーザーの想像力から一歩も外に出ていないスペック、それらを見せ付けられたとき、つくづくコンパクトカメラと言う分野が終わったことを実感させられてしまった。
無論、EPOのあとにもAutoboyと名の付くカメラは出ているし、いわんや他社からはさらに多くのコンパクトが出ていることだろう。しかし、その大半はオープン価格のバーゲン用商品に過ぎない。もう、コンパクトカメラに新しい技術を注ぎ込む時代は終わってしまったのだ。道具としてどうしようもないほど完成してしまい、価格競争しかすることがなくなっている。そうなる直前の、最後の灯火のようなカメラがこのEPOなのである。
●レリーズタイムラグ0.02秒のRTレリーズモード搭載
シャッターボタン半押しで、測光・AF測距演算・AFレンズ駆動を完了、シャッターボタン全押しと同時に即撮影となるリアルタイムレリーズモードを搭載しています。シャッター全押しから実露光までのレリーズタイムラグは、わずか0.02秒。一瞬のシャッターチャンスにも即応します。
−−Canonのホームページ(技術レポート2000年12月)より
たとえば、ストロボをオフにする、あるいは強制発光にする場合、まず、ボタンを押してストロボ制御モードを選び、しかる後にズームレバーでストロボの設定を選ぶ。スポットAFや露出補正も同じ。ほとんどの設定変更が2ステップ以上の操作を必要とし、恐ろしく使いにくい。
おそらく、メーカーの発想としては、ほとんどのユーザーがベストショットダイヤルで事足りるので、それ以外の設定に関しては部品数を減らしてコストを削減したかったのだろう。ベストショットダイヤル自体は否定しない。確かに、世界一アホなアートコードシステムや馬鹿高いカードシステムよりはマシだろう。だが、それをメインに置いて、より基本的な設定を等閑にするのは、傲慢としか言い様がない。自分たちが想定した撮影シチュエーションが全てだとでも思っているのだろうか?
これはEPOのみの問題ではない。Autoboy SやLunaでボタンにカバーを付けたのも全く同じ発想。要するにCanonの中には「ユーザーは馬鹿なので操作させない」という伝統が脈々と流れていると判断せざるを得ないのだ。そして皮肉なことに、コストの問題でこの傲慢な思想を貫ぬけなかった廉価機に、優れた操作性の機種が生まれていたりする…。
無論、Canonに反省がないわけではない。こうした批判を予測したかのように、EPOにはパーソナル機能という、カスタマイズ機能が追加された。これは、ユーザーの好みの設定をダイヤルに記憶しておく機能で、例えば私なら「ストロボオフ+スポットAF」を記憶させている。ダイヤルを回すだけでいつでもこの設定が呼び出せる。
だが、これもおかしな話で、ストロボとスポットモードのボタンをきちんと独立させておけば、そもそも不要な機能だ。事実、他社製品にはそうした機種がいくつもある。まるで、わざと使いにくくして、それを補うためにさらに機能を追加しているようだ。
28mmからのズームと言うのも実は少々引っ掛かった。個人的には28mmは大歓迎だが、28mmと35mmは完全に別の絵を作る別の画角である。にもかかわらず、このEPOで28mmと35mmを使い分けるのはかなり困難。ズームを35mmで止めるなんて至難の技だし、そもそも鏡胴に焦点距離が書いてない。35mm〜の標準ズーム機とニコンミニの二台を持って行く方が使い勝手がよい。
前々から思っていたんだが、なんで多焦点レンズってないんだろう?28-90のズームより、28/35/90の3焦点レンズの方がよっぽど実用的だと思うのだが…。標準系のズームレンズなんて、まず広角端と望遠端しか使わないもんね。RF機のターレット・ファインダーみたいなコンパクトってカッコいいと思うけどなあ。
第二、カタログスペックに出る部分は、たとえ有害な機能でも外さない。たとえば三点AFやオートストロボがそれ。本当に三点AFで中抜けが防げると思っているのだろうか? あるいは、博物館の中や風景撮影のときに勝手に光るストロボが便利だと信じているのだろうか?
結局、これは所謂「ドシロウト」のことだけを考えて作ったカメラだということ。価格帯に不釣り合いなほど(と言っても4万だが)中級ユーザーを無視してる。ユーザーニーズを的確に汲み取ることと、素人に媚びることとは全く別だ。売れ筋スペックの塊じゃなくて「見識」を出せよ、70年もカメラ作ってんだから…。メーカーにはプライドと自覚を持ってほしいものだ。
このカメラ、チノンが作ったんなら大絶賛しただろうが、世界最大のカメラメーカー製ということで、うんと辛い評価をさせてもらった。劣等生の60点と優等生の60点は全然意味が違う。しかも、60点しか取れなかった理由が傲慢さにあるとしたら…
主要諸元 | |
---|---|
レンズ | 28〜90mm/F4.5〜9.9(6群7枚) |
ピント調節 | ハイブリッド3点AiAF |
AFロック | シャッター半押し(AEロック兼用) |
近接撮影 | 通常60cm マクロ時45cm(f=90mm固定) |
露出制御 | プログラムAE |
露出補正 | ±1.5EV |
測光連動範囲 | 広角:F4.5-2" 〜 F14.2-1/640" (EV3〜17) 望遠:F9.9-2" 〜 F30-1/350" (EV6〜18) |
フラッシュ | GN=12? オート/オフ/オン、スローシンクロ、赤目軽減 |
ファインダー | x? 84% |
外観 | 117×64×43mm/250g(電池別) |
その他 | 視度補正 0〜-3dpt、リアルタイムレリーズ(0.02") |
2004.04.23/試写結果上がる。あまり良くないなあ。確かに、ピンが合って露出が適正であれば、キャノンらしい優等生的な写りをするが、問題はピンボケ、露出アンダー/オーバーが意外なほど目立つこと。また、ラボがタコなので、全部オーバーで焼いていて、色が浅く見えるのも印象を悪くしている。う〜ん、ちょっとねえ…評価という点では難しい。もちろん、正常動作は確認できたし、便利な実用機としては合格だが…。
2004.08.15/施設に入っている婆さんを撮りに行く。操作性の悪さを実感。