†貧乏カメラ館†

EOS 55 未評価 発売年月 1995.09/標準価格 ¥8.8000
視線入力・静音設計の実力機


(2005.06.20/2005.08.29)

何と言うか、流石ですわ。ともかく、カメラとしての基本性能を実にきっちり抑えている。好みは別として、外装の趣味性にまで気を使っているのは偉い。もちろん、このカメラのウリは視線入力だが、これはアートコード同様、消えゆく運命にあるテクノロジーでしょう。むしろ、それ以外の部分が見事なんですわ。私は個人的にはCanonに反感を持っているが、脱帽ですな。もっとも、基本的にEOSは100で既に完成段階にあったわけで、この55の価値はAF性能や操作性(およびダンパ溶け対策)をより高めた点でしょう。優等生的すぎて癪だけど、取り立てて指摘したくなる欠点が見当たらん。

視線入力が意味を持つのは、EOS 3のように測距点が面状に多数配置されている場合のみで、3点では全然便利とは感じない(まだ実戦では使ってないから憶測に過ぎないが)。おまけに、そのEOS 3ですら何等かの問題があったようで、その後の高級機からは視線入力が消えている。EOS 1vも45点測距なのに視線入力は採用しなかったようだ(スペック表には出ていない)。デジタルEOSでも採用された形跡がない。要するにそれが答えでしょう。中央一点測距で使いましょ! ……次はイメージセレクトが消えてくれると嬉しい(^^ゞ

こいつを使ってると、つくづくEOS 100の良さも再確認できるよなあ。つまり、55の良さはほとんど100の良さなわけだ。そうそう、シャッターの静音性とグリップのホールディングに関しては100の方が上だと思う。シャッター音に関してはわざと大きくて金属的な音にしたのかも知れないが(サンダー平山が著書の中でEOS 100は静かすぎてシャッターを切った実感がないとか書いてたっけ…)。

●問題が多かった試写結果

今回は浅草サンバカーニバルで試写をしたが、問題が非常に多かった。まず、一番気になったのがAF性能。少なくとも、EOS 55+EF75-300/4-5.6Uでサンバのように動きの予測できない動体を追うのは非常に難しい。下手をすると、最短〜無限遠でギコギコやり出す。よしんば合焦できても、最終段階で微調整を繰り返すため、確実にシャッターチャンスを逃す。御自慢のAIサーボも、この種の被写体には原理的に対応不能。また、視線入力はまったく役に立たず、徒に測距点を動かすため合焦速度に悪影響を与えるだけで終った。

この傾向は暗くなってくるとさらに顕著になり、夕方からはAFはまったくと言ってよいほど実用にならなくなった。仕方ないのでMFに切り替えて撮影したが、視度補正なしのわりには合焦はしやすかった。少なくとも、AFで合焦させるよりは遥かに楽(^_^; α-9000はMFがほとんど実用にならなかったが(標準スクリーンを使用した場合)、それに比べるとかなりマシだった。この点は評価する。

なお、これはEOS 55のAF性能が以前のモデルに比べて劣っているということではない。EOS 100にEF 75-300/4-5.6Uを着けて試してみたが、55よりもさらに合焦が遅かった。要するに、暗いズームで動体を追うのは根本的に無理だということだ。最新のEOSが同様な条件でどこまで高速に合焦できるか知らないが、何となくあまり期待できないような気がする。AFにこだわるなら焦点距離を200mmで我慢して、F4通しの明るめのズームを使うべきだろう。あるいは、MFに乗り換えるのも現実的な選択肢のような気がする。

今回は連続4時間ほど撮影したが、これだけ長時間になるとホールディングの問題は切実になる。EOS 100に比べると掌にフィットしない形状だが、それが非常に苦になった。最後の方になると、指先でボディをつまんで無理矢理力を入れてズームリングを回していた。何でこんな変なことをしていたのか自分でも良く判らないが、ともかく、手に力が入らなかった。

また、今回は初めてストロボ撮影も行ってみた。被写体までの距離は10mくらいはあるし、レンズは暗いしで、ストロボはナンセンスと思っていたが、流石に5時近くになると光量不足が深刻になる。そこで、430EZをくっつけて撮影することにした。これでISO400を使えば10m以上飛んでくれる。ところが、どうも動作がおかしい。ホットシューにつけると、電源を切っておいても、ボディ側は電源が入っていると見なしてしまうようなのだ。おまけに、ホットシューから取り外して一晩放置しておいたら電池がほとんど空になった。故障なのかも知れないが、シンプルな外光オートの方が使い勝手は数段上だと感じた。OM-2のときも感じたが、TTLオート調光は決して便利ではないなあ。

●ミドルクラスEOSのAF性能

ミドルクラスの定義は難しいけど、EOS 1000/Kissよりは上級だが10万円は越えない、というのが一つの目安。ま、このクラスがシリーズの中核となるわけだが、中古を買う際に気になるのがAF性能。EOSは初めからαシリーズよりも遥かにキビキビ動くAFを採用していたので(その代わり苦手な被写体があったりするんだが)、650でさえ今でも十分実用になる(少なくとも静止した被写体に関しては)。とは言え、やっぱ頼んなく感じることがあるのも事実。

そもそも、AF性能って客観的な基準が作りにくい。カメラ雑誌のテストレポートなんかで使ってるテストチャートは、センサーの性能を判断するのには使えるが、トータルな使い勝手は反映できない。笑っちゃうんだが、EOS 1vよりもEOS 750の方が成績が良かったりすることもある。だからテストの基準がどうだとかいう気はないし、入門機と最高級機ではAF精度が違うのだから、単純に比べるのもはナンセンスなんだが、それでも目安は欲しいと思うわけ。

で、カタログなどの謳い文句や発売時期の技術水準を勘案すると……まず、初代650/620は流石に厳しい。静止被写体をじっくり撮影するのには使えるが、パレードのようなものは無理でしょう。動体予測機能もない。で、630になってAFの高速化がセールスポイントになったから、これは間違いなく向上しているだろう。確かに、620でサンバカーニバル撮影するのは厳しかったけど、630でマーチングバンドを撮影するのは比較的楽だった(これは動体予測の問題じゃなくて、ワンショットのレスポンスの問題)。だから、ここで一段アップしているのは事実でしょう。

そのあと、10になってどうなったのか……常識的に言えば改善されているはずだが、630から一年で、その一年もほとんど多点測距に費やされたと思われるから、素のAF性能が劇的に改善されているとは考えにくい。また、10では従来の速度重視型AFから精度重視型AFに変わったらしい。「もたつく」と言う点ではむしろ悪くなったかも。100は新技術がほとんどない機種なので、むしろ基本性能の向上が期待できるのだが、値段を下げた分だけどうだろうと言う気もする。ただ、100のAF性能で困ることはほとんどない。ちなみに、中古価格は10よりも100の方が上。

55になれば、もう全然問題ないだろう。1995年と言えばAF技術の成熟期、速度も精度も十分でしょう。だから、問題は630と100がどの程度実用的かと言うことなんだが(10は嫌いなので使わないだろうから)、両機とも実際に使ってみて全然問題がないことが判ってるんだから、いったい私は何を問題にしようとしていたのかと言うと、これが我ながら全然判らない(^_^; そうね、55と100の間は4年も開きがある。この4年間のAF技術の進歩は凄まじいので、当然100と55の間には相当な性能の差があるはず。ところが、それが余り実感できない。55はもちろん、100でも十分なのだ。そこに嬉しい反面、釈然としないものが残るわけ。

表1 EOS中級機のAF性能(概ね8〜9万円)
発売年型番定価AF性能備考
1987/036508万遅いし動体予測なし
1989/046308.5万速度アップ、動体予測可能に;速度アップ明記はここだけ?
1990/03109万初の3点測距だけど速度はどうだったんだろう?
1991/081007.6万10から1年半経ってるけど、安いからどうだろう?
1995/09558.8万100から4年だから、大幅にアップしているはず
2000/1079.3万使ったことないけど、多分物凄く速いでしょう。

主要諸元
発売年月 1995年9月 定価8.8000円
型式 [AF一眼レフ][中級機]
AFTTL位相差検出方式、3点/1点(3点中任意の1点)、視線入力可
静止(ONE SHOT)/動体(AI SERVO)/自動切替(AI FOCUS)
シャッター 電子制御 縦走金属 B,30"〜1/4000" X接点1/125"
測光方式 6分割評価測光/部分測光/中央重点測光
露出モード プログラム/速度優先AE/絞り優先AE/深度優先AE/マニュアル
イメージセレクト4種
露出補正 ±2EV(0.5EV)
ファインダー上下90%×左右92% x0.71 -1dpt
ストロボ内蔵GN13、リトラタクタブル式、原則手動制御
外 観152.5×104.5×71mm/595g(電池別)
電 池2CR5
仕様出典取扱説明書、'96カメラ総合カタログvol.111
CANON CAMERA MUSEUM
その他 ◎EOS 5の後継機種だが、価格帯から言うとEOS 100の後継機ではないかと思われる。EOS 5に比べると、シャッター速度や測距点の数がスペックダウンしている。
◎EOS 100譲りの静音設計。
◎たぶん、こいつからE-TTLのEXストロボに対応したんじゃないかな?


Longrun reports ...

2005.06.20/格安で入手。外装に傷が多いのとタバコ臭いのを除けばなかなかよい。そのまま転売しても利益は出るが……などという誘惑に負けそうになる。ただ、55を触っていると100の良さが再認識されて、やっぱり100でいいんじゃない?という気にはなってくる。一番気にしていたAF性能も、少なくとも室内AF合焦テストにおいては、大きな差は感じられない。55は非常に良い機種だが、100から乗り換えるほどのアドバンテージを感じないのね。ただ、100は外装の安っぽさと「なで肩」デザインが気に入らない。その点ではむしろ10に軍配が上がる。10は3点測距といっても設定で1点に変更できる。そうなると、10も魅力的な選択肢になるんだが、それなら55の方が良いわけで……何を悩んでるんだろう、私は?

2005.08.27/【浅草サンバカーニバル】AFが全然ダメ!これはショックだった。おまけに、今年は異様に混雑していて身動きも取れず目茶苦茶疲れた。も一つおまけに、私のすぐ後ろには「日本人ぶち殺してやる」とブツブツ言っていたアラブ人がいたし…流石にちと冷や汗もんでしたが、いやあ、浅草ですなあ。しかし、来年から少し考え直さないといかんなあ…


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