†貧乏カメラ館†

Canon EOS 1000 ★★★☆ 発売年月 1990.10/標準価格 ¥4.7000
性能充分、質感ゼロ、使い捨て一眼レフ


キヤノンの掟破りの廉価AF一眼レフ。モードラとフラッシュ内蔵でボディ重量が460g、標準ズームの35〜80mmなんて170gしかない。発売当時は驚異的な軽さだった。しかも、プログラム、絞り優先、速度優先、深度優先、マニュアルと露出モードも多彩、また各種撮影モードを切り替えるベストショットダイヤルも装備、写りも確かに一眼レフ画質。これで標準ズーム付きで6万9000円。バカ売れするわけだ。
(2006.07.19)

第二世代EOSのエントリーモデル。EOS1や10の下位機種という位置付け。通常、廉価機は中級機と差別化するために機能を落とすものだが、このEOS 1000は露出フルモード装備、スポット(部分)測光も可能で、内容的には中級機とまったく遜色ない。AFもEOS第二世代のもので、現在でも充分実用レベル。同時期のミノルタのエントリーモデルα-3700i(定価4万1000円)がプログラムモードのみで、絞りも速度も表示されない「大きなコンパクト」だったことを考えれば驚異的。もう1ランク上のα-5700i(定価6万2000円)よりも内容的には充実している。

では、なぜこんなめちゃくちゃなコストダウンが可能だったのか? 無論、キャノンの優れた量産技術のなせる業とも言えるが、それ以上に、耐久性や質感を犠牲にしたことによる部分が大きい。道具として存在感は全く顧慮されていない。ボディはただの安っぽいプラスチックの塊。マウントまでプラ。いくら金属以上の耐久性があると言われても感覚が拒否する(流石に後継の1000Sでは金属に戻ったようだが…ホントか?手許にある1000Sはプラマウント見たいなんだが…)。操作感を一言で表現すれば「ぱこぱこ」。質感はα-3700iよりも明らかに下。

道具というのはそれ自体が尊敬と愛情の対象でなくてはならない。特にカメラはその傾向が強い物のはずだ。しかし、このEOS 1000にそうした感情を懐く人は皆無ではないか。これでちゃんと写らなきゃ、それ見たことか、で済むのだが、けっこう使い易くて綺麗に写るから困ってしまう。今までカメラおたくが蘊蓄を傾けて語っていたことが、すべて虚妄だと証明されてしまった(^_^;

ただし、素材の耐久性が優れていたとしても、製品としての耐久性にはかなり疑問がある。電池ボックスの開閉部と蝶番部はかなり不安。それにシャッターの油汚れは不可避的に生じる致命的な欠陥(別項参照)。10年酷使に耐るカメラではない。地金が出るまで使い込まれたNIKON Fの美しさなど、到底望むべくもない。道具としての性能は十分だ。しかし、持つ事の喜びは皆無という、不思議なカメラ。

ちなみに、現在EOSのエントリーモデルはEOS KISS VL。価格は6万2000円。物価が違うとは言え、カメラ全体の低価格化を考えれば、キャノンも薄利多売商法からは手を引いたと見るべきだろう。

主要諸元
シャッター 電子制御 縦走金属 B,30〜1/1000秒 X接点1/90秒
測光方式 3分割評価測光/中央部分測光
露出モード プログラム/速度優先AE/絞り優先AE/深度優先AE/マニュアル
露出補正 ±2EV
ファインダー倍率0.75倍、視野率90%
外 観148×100×69mm、460g
電 池2CR5
その他ストロボ内蔵GN12、ベストショットダイヤル、プリワインド
独断評価
操作感 A 全体的に良好
耐久性 B シャッター幕汚れ
ファインダー B まあまあだが視野率や倍率は物足りない
測光系 A このクラスとしては贅沢
携帯性 A 情けないほど軽い
用 途 ○仕事 ○趣味 ◎スナップ ◎軽旅行 △海外旅行


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