OLYMPUS E-10 ★★★★ 発売年月 2000.10/標準価格 \19.8000
銀塩ライクなフラグシップ機

キャメディア・シリーズの初代フラグシップ機。レンズ固定の一眼レフ・デジカメで、操作性は銀塩にかなり近い。また、画質も当時としては頭一つ抜きん出ていた。アクセサリーも豊富で、汎用の外部ストロボも簡単に利用できる。しかし、ガタイが大きく取り回しに不便な上、画像の処理速度が極めて遅いため、総合的な使い勝手はあまり良くない。

私がデジカメを嫌う理由は三つある。

以上はあくまでも一般論で、機種によって程度は様々だが、どのデジカメも多かれ少なかれ似たような問題を抱えている。要するにデジカメは玩具からカメラに進化してきたので、カメラが本来持っていなければならない機能について、極めてセンスが鈍いのである。しかし、カメラメーカーが銀塩のノウハウをデジカメに投入すれば話は別。その一つの結論がこのE-10。

●基本スペック

レンズ固定式一眼レフ式デジカメ。ハーフミラータイプ(厳密にはプリズムで分光している)でミラー駆動機構はない。400万画素、2/3"原色CCDを採用。35mmフィルの約1/4のサイズ。レンズは光学4倍ズームで9-36mm/F2.0-2.4(35mm換算35-140mm)。アクティブAFとパッシブAFを併用。MFも可能。最短撮影距離0.6m、マクロ時0.2m。ストロボ内蔵。ホットシュー装備でTTL端子が出ていて、専用外付けTTLオートストロボが利用できる。また、シンクロターミナルもあり、汎用の外付けストロボが簡単に使用できる。

特筆すべきなのは、AFが一点測距である点と、ズームとストロボが完全手動制御である点。明らかにハイアマチュアを念頭においてスペック決定をしている。サイズは銀塩の高級機並みで、重量も1050gある(電池別)。

●外観

基本的に、銀塩のL一桁シリーズをデジタル化したのものと考えればよいだろう。しかし、流石に定価が20万近いフラグシップ機だけあって、造りは非常に高級にできている。質感がよい。そして重い…。アルミダイキャストボディにF2-2.4の4倍ズームレンズ込み。これで1kg強(電池抜き)を重いと言うのは酷かもしれないが、OMでスナップすることと比べると、ちょっと…。大艦巨砲主義はニコンに任せておけば…と思わないでもない。少なくとも、OMで感じた一眼レフの楽しさのかなり部分が、E-10には欠けている。違う物だということは百も承知してはいるんだが…。

●操作性

1ボタン=1機能というポリシーで、下位機種のようにメニューによる一括管理はしていない。その点は非常に高く評価するが、ボタンの配置とか大きさとかはもう少し考慮しても良かったような気がする。慣れていないせいもあるが、しっくりこない操作も多い。もちろん、コンパクトやミドルクラス機と比べれば圧倒的に良いのは事実だが。

●書き込み速度

E-10の最大の問題点は画像データの書き込み速度。世間の評判通り、強烈に遅い。ただし、撮影モードによって書き込み速度には大きな差があるので注意。当初、私は図らずも最も遅いモードで使用していたため、絶望的な気分になったが、モードを変更したらかなり改善された。それでも、他機種に比べると目茶苦茶遅いのは事実だが。以下に、私のテスト結果を示す。

画素数 圧縮率撮影可能間隔 1枚書込時間 バッファ書込時間
2240x1680 1/2.7 3" 7" 25"(4枚)
2240x1680 1/4 3" 7" 20"(4枚)
1600x1200 1/4 4" 13" 60"(4枚)
1024x 768 1/8 3" 7" 20"(4枚)

使用メディアはスマートメディア(メーカー不明)。トランセンドの25倍速コンパクトフラッシュでも試してみたが、SMよりも若干遅かった。なお、露出はMで1/100"固定、MFモード、被写体は室内の適当なもの、秒数は口で数えた(^_^; 実にいい加減な計測だが、感覚は概ね正確に反映していると思う。なお、バッファ書込時間とは、バッファフルの状態からすべて開放されるまでの時間。

最も注目すべは、画像サイズが小さい方が書き込み速度が遅い点。恐らく、縮小処理に時間を食われるのだろう。また、1枚の画像の書き込みに最低7秒も掛かっているが、SMやCFでも少なくとも3MB/Sくらいの速度は出るので(48倍速ならば6.6〜6.8MB/Sくらい)、書き込み時間のほとんどが圧縮処理に費やされているだろうと想像される。つまり、高速メディアを使っても、書き込み時間が短縮される見込みは小さい。

運用上の問題点は撮影間隔の長さ。確かに連写モードはあるが、いったんレリーズボタンから指を離してしまうと、やはり3〜4秒は撮影不可能になる。どんなモードでも、1〜2秒おきにパシャパシャ撮るということができないのだ(注:下記参照)。しかも、バッファが小さいので連続撮影は4枚が限界。画像サイズを小さくしても同じ。バッファがいっぱいになると、20〜30秒のデッドタイムが発生してしまう。無論、開放された分は使用できるので、7〜8秒待てば1枚は撮れるようになるが…。なお、バッファの状態は液晶の残り枚数表示の横のバーグラフで表示される。

  実は、この3〜4秒というレリーズ間隔はRec Viewを生成するための時間のようだ。したがって、Rec Viewをオフにすれば「1〜2秒おきにバシャバシャ撮る」ことも可能になる。ただし、それもバッファがいっぱいになってしまえばおしまいで、上限は連写と同じ4枚。それに、Rec Viewがないのはやはり不便。重要な機能がボトルネックになってしまっているので、快適な撮影環境とは言えない。

また、書き込み速度が遅いために、Rec Viewでチェックした画像を消去するのに手間取るのも気になった。特に、モデル撮影をするときは、一瞬モデルさんと気持ちが切れちゃう感じになる。これはかなり大きなマイナス・ポイント。いっそ、Rec Viewなしで勝負するか? それも恐いしなあ……でも、最初にRec Viewオンでテスト撮影をして、本撮影はRec Viewなしというのが現実的な運用方法だと思う。まあ、銀塩でポラパック使う感覚に近いけど、デジタルのメリットは半減だな。

【追記】その後、私は完全に宗旨替えをした。テスト撮影以外では、Rec Viewはオフにすべきものである。本番で1枚ずつの確認なんかしていては、シャッターチャンスを逃したり、気持ちが切れたりして、デメリットの方が大きい事に気が付いた。ゆえに、ここでE-10の欠点として挙げた撮影間隔の長さは、実際にはかなりの程度軽減され、取り立てて大きな欠点とは言えなくなった。

●ファインダー系

基本的に一眼レフだが、ハーフミラーを使ったビームスプリット方式なので、ミラーの駆動系がない。入射光をファインダーとCCDに分割して使用している。EOS RT同様、レリーズの瞬間がちゃんと見える。ミラー駆動方式を採用しなかったのは、CCDのホコリ対策らしい。逆に、液晶ファインダーにしなかったのは、見えの良さにこだわったためのようだ。問題はどの程度の光のロスがあるかということだが、概ね10%がファインダー系に使われるようだ(数値は推測)。ロスは少ない方だろうが、反面、ファインダーはあまり明るくない。ただ、実用面で困るような暗さではない(Zenit-Cよりは遥かに明るい…つ〜か、比べるなっ、て〜の(^^ゞ)。

なお、ファインダーは視度補正付き。スクリーンは全面マットだが、MFでのピント合わせも何とかできる(デジカメの中ではかなり良い部類に入るそうだ)。また、視野率95%ということだが、どうも実感としてはもう少し小さいような気もする。フィアンダーと液晶モニタの画像を比べると、80%台のような気がするのだが…気のせいか?

また、撮影中にファインダーがとても覗きにくい印象を受けたことがある。ファインダー内部の問題ではなく、アイピース部に難がある感じ。眼鏡で覗くと視線がまっすぐ揃いにくいのだ。このE-10も中古入手だが、実は前オーナーはニコンのアイカップをアイピースに接着していた。見苦しいので取ってしまったが、何でそんなことをしたのか、理由が判ったような気がする。

●AF

AFはアクティブ&パッシブのデュアルAFで、測距点は1点。1点というのは逆に凄い。正直に言って、多点測距は不便だと思う。下位機種で採用した多点測距を敢えてフラグシップ機では採用しなかったことが、全てを物語っているだろう。なお、デュアルAFは、アクティブで大雑把に合せて、パッシブで微調整するシステムのようだ。この方式は合焦速度が速いそうで、他社でも採用しているところがある。

実写結果を見ると、全体的にピント精度は悪くない。合焦している被写体にはきちんと合っている。何となくピンが甘いというのは見当たらなかった。しかし、40数枚撮って、あからさまなピンボケが3枚ほどあった。合焦マークをろくに確認していなかったので原因は不明だが、ちょっと気になるところだ。ただ、こちらの慣れが十分でないので、この結果を以って評価はしない。合焦音は騒いのでオフにしていたが、やはりオンにすべきかも知れない。

なお、1m程度先の細い被写体(鉛筆や紐のようなもの)には非常に合いにくいことに気が付いた。また、通常モードで60cmよりも近づくと、明らかなピンぼけ位置で合焦マークが点くことがあるようだ。微妙な距離での撮影のときには要注意。

●画質

画質に関してはかなり評価が高い。私としては銀塩SLRライクな操作性で手頃な価格のものが欲しかっただけで、画質の良し悪しはほとんど気にしていなかったのだが、購入後に調べたら、けっこう評判が高い機種なので驚いた。少なくとも2001年初頭の段階では飛び抜けた画質だったようだ。実写結果を見ても、非常にナチュラルで好感の持てる描写に仕上がっている。どこぞのメーカーのように、肌が蛍光ピンクにならないのがよろしい。また、サブ機としてC-2020Zを併用したところ、同じ画像サイズでも画質にはっきりとした差があることがわかった。むやみに彩度を求めるのではなく、自然だけど色にツヤがある感じなんだよね。

ただ、用途によってはやはり彩度が物足りなく感じるかもしれない(ハデ系のおねーちゃんを撮る場合とか)。コントラストをHIGHにすると、液晶モニタ上では彩度が上がったような同じ印象を受けるが、実際にはかなり不自然な絵になるので注意。彩度の高い絵が必要な場合は、このカメラを使うべきではないだろう。どうしても補正がしたければ、レタッチソフトを使うこと。カメラ側の設定はいじるべきではない。

なお、ISO感度80/160/320相当の設定ができるが、高感度にするとやはり画質は落ちる。80と160を比べてみたが、4倍に拡大すると差がはっきりわかる。等倍ならば極端な差は出ない。Lumix LC-5のような画質の劣化が顕著な機種と比べれば遥かにマシである。E-10の場合、初めから標準の感度が80と低めだし、全体にアンダー目の設定になっているので、実際は80/160/320ではなく、50/100/200くらいのつもりで使う方がよいかも知れない。ただ、それでも160を常用感度に使うのは少々ためらわれる。

●ストロボ

そして、ストロボ。メーカーが何と宣伝しようと、内蔵ストロボは使わない。これが私の結論。E-10でもしかり。ISO80でGN13という比較的強力なストロボを内蔵しているのだが、それでも光量、発光面積、光色とも不満。少なくとも、私の試写ではそうだった。最初にストロボ撮影してみてがっかりしたもん。で、外付けの汎用ストロボを試したところ、見違えるほど良くなった。

なお、露出補正とストロボ光量補正は独立しており、内蔵ストロボ使用時に露出補正を掛けてもほとんど効果がないので注意。必ずストロボ光量を補正すること。

  ふと思ったんだけどね、こいつは通常の露出補正は非常に簡単にできるが、ストロボ補正はメニュー操作で少し面倒。何でかな?と思ったけど、ストロボの補正が必要な撮影ならば、内蔵ストロボは使わないよなあ…。で、外付け汎用で試してみたんだが、この場合は露出補正はマニュアルモードの絞りで調節するわけで、これはとても簡単。ダイヤル回すだけだもん。E-1がストロボを乗せなかった理由が何となく解るような気がする。

正直なところ、内蔵ストロボは完全にオマケ。こんなものを使って撮影したんじゃ、折角の高画質が台無し。勿体ないよ。それはメーカーも判っていたようで、外付けストロボが大変に使いやすいようになっている。TTL接点付きのホットシューも汎用シンクロターミナルも備えている。専用TTLオートストロボは高価だが、安価な汎用ストロボもごく簡単に使える。

この「ごく簡単」というのがミソね。C-2100UZみたいに馬鹿高い変換ケーブルも不要だし、Lumix LC5みたいにストロボを選ぶ事もないし、マニュアル露出モードだとAF性能が落ちて支障が出る、ということもない。銀塩同様、ごく当たり前に汎用ストロボが使える。これがいかに凄い事か、しみじみと実感している。

ちなみに、私の仕事部屋で天井バウンスする際の設定は次の通り。少しオーバー気味だが、そのあたりは絞りで容易に調節できる。

外部ストロボPE-28S(ホットシュー接続)フル発光
ISO感度ISO 160(通常のカメラのISO 100くらいに相当)
ホワイトバランス5500K(天井は薄めの茶色)
絞りF2.4開放

●電池

消費電力はかなり大きい。マンタンの1600mAhの電池を入れ、内蔵ストロボなしで30枚くらい撮ったら電池切れ。予備電池に交換したがそれもすぐに切れた。酷いときには、1600mAHフル充電直後の電池なのに、1枚撮影しただけで電池切れ。いくら何でも早すぎ。スペック上は1600mAhでも200枚は撮影可能なはず(50%発光)。まあ、撮影条件が違うし、充電性能が落ちているし、大容量の充電池を使えばとも思うが、現状ではかなり気になる点だ。重要な撮影の際にはリチウム電池パック(CR-V3型LB-01x2本)を持っていくべきかもしれないなあ。2本で二千円前後とちょっと割高だけど。

  ちなみに、LB-01は「アルカリ電池の3〜10倍長持ち」だそうだ。で、約500枚撮れる。逆に言えば、アルカリ電池でも最低50枚は撮れるということ? それなら予備にアルカリ電池を持っていく方が賢明かもしれない。4本で200円〜だからね。ストロボ無しで30枚程度は撮れることを確認している。

その後、さすがに不審に思って再度テストしてみた。まず、フル充電の1600mAhのNi-MH電池を装填したが、やはり30枚強撮影した時点でバッテリー切れマークが出た。しかし、この段階ではまだ撮影続行可能。また、電源スイッチの入れ直しでバッテリー切れマークが消えた。これを繰り返す事で、100枚程度までは撮影できた。つまり;

ということ。ただし、先回の撮影会では30枚ちょいで「撮影不可能」になったのだから、今回のテストとはちょっと事情が異なる。ひょっとすると、バッファメモリがいっぱいになって撮影不能になったのを電池切れと間違えたのではないか? しかし、当時の記憶をたどると、ファインダーが暗くなってはっきりと電池切れの症状を示したように思う。

  その後、NiMH電池が異常に早く消耗する現象が再現できた。要するに、電池が古くて充電性能が落ちていたせいらしい。ただし、その電池でもC-2020Zやストロボなど、他の製品は特に問題なく使用できる。要するに、E-10は電池消耗に対して異様に弱いということ。対策は必要だ。

電池でもう一つ問題になるのが自然放電の問題。二次電池は一次電池よりも自然放電が早い。だから、カメラに入れて数週間放置しておくと、勝手になくなってしまう。本当に全部なくなればよいのだが(交換または充電をするので)、困るのは、とりあえずマンタン・マークが付いてしまうこと。もちろん、数枚撮影しただけで撮影不能になる。そして、これは電源の入れ直しでもほとんど回復しない。つまり、あと数枚しか撮れない状態でも、とりあえずマンタン・マークが点いてしまうのだ。

デジカメは電池食いなので充電池の方が経済的だと思っていたが、これには閉口する。電池残量がまるっきりアテにならないので、イザというときに全然役に立たない。やっぱり、一次電池に乗り換えるべきかもしれない。ちなみに、リチウム電池パック(二本で2000円くらい)で500枚というのは、36枚撮りフィルムに換算して十数本。やはり銀塩に比べるとかなり割高だ。銀塩よりもデジカメの方がランニングコストが安いというのは幻想かもしれないなあ…

●総評

画質は良好で外部ストロボも使いやすい。しかし、デカくて遅いのが苦痛。長所と欠点が非常に極端な形で出ている。長所は非常に高く評価するが、短所もこれまた耐えられないくらい嫌だ。

私が望んだ物は、銀塩一眼レフ・ライクな操作性のデジカメ。その答えがここにあるわけだが…随分仰々しいもんだなあ、というのが実感。そもそもデジカメは操作が必要な機能が多すぎる。いっそ、マニュアルと絞り優先オートのみにして、AFなしの――つまり、OM-2にCCDパックを付けたようなカメラだと嬉しいんだけどね。機能的に欲しいのは、操作しやすい露出補正と汎用シンクロターミナルだけ。それ以外は余分だよね。

主要諸元
撮影素子 2/3"原色CCD 400万画素
記録画素数 2240×1680 / 1600×1200 / 1280×960 / 1024×768 / 640×480
レンズ 9-36mm/F2-2.4(35mm換算35-140mm)、11群14枚
最短撮影距離 通常0.6m、マクロ時0.2m
シャッター B,8"-1/640" (オート時は2"-1/640")
測光方式 ESP(分割)測光、TTL中央重点測光、スポット測光
露出補正 可 ±3EV 1/3ステップ
ファインダー 倍率?倍、視野率95%
内蔵ストロボ GN 13 (ISO 80)、手動制御、プリ発光あり
液晶モニタ 1.8"TFTカラー(118000画素)
電池 単三型×4またはCR-V3×2(単三型Li電池およびマンガン電池不可)
外観 128.5×103.5×161mm/1050g
その他 ホットシューおよび汎用シンクロターミナル付き
独断評価
操作感 B 操作性自体は優れているが書き込みが遅すぎる
堅牢性 B 丈夫そうに見える(^^ゞ
機能 A およそ不足はないわな
携帯性 C 重い…
用途 ○仕事 ◎趣味 △スナップ ×軽旅行 ×海外旅行

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