†貧乏カメラ館†

Minolta DYNAX 3L ★★ 発売年月 ----.--/標準価格 ¥-.----
マニア激怒の超軽量のママカメ


α SweetULの機能省略版で、輸出がメインの機種と思われる。信じがたいほど軽く、信じがたいほど安っぽく、そして信じがたいほど安い。恐らく世界最軽量・最廉価のAF一眼レフ。もちろん、機能も性能も低く、思いっきり割り切らないと使えない。プログラムモード・オンリーのでかいコンパクト。一眼レフだと思って使うと鬱病に罹る可能性があるので要注意(^_^;
(2006.07.19)

このカメラは一眼レフとは言えない。もちろん、一眼レフ方式のファインダーを備えているが、一眼レフカメラが当然備えているべき様々な機能が欠落している。よく、安物の一眼レフを「大きなコンパクト」と表現することがあるが、このDynax 3Lほどこの表現がピッタリあてはまるカメラはないだろう。コストダウンのために機能を削ったからコンパクトのようになってしまったのではなく、メーカーが意図的にコンパクトカメラの仕様で作った一眼レフとしか思えない。

たとえば、このカメラは一眼レフのくせに絞りも速度も表示できない。ユーザーは一切の露出情報を知ることができない。一眼レフならばありえない話だが、コンパクトカメラならばそれが普通である。また、撮影モードやストロボの設定は、電源を切るとすべて初期化されてしまう。これも、一眼レフユーザーならば怒り出すような仕様だが、コンパクトでは普通のことだ。もちろん、露出はプログラムオンリーで露出補正もできない。ここまで来ると、中級コンパクトよりも下かも知れないが…

結局、このカメラが想定しているのは、お遊戯会や運動会で自分の子供を大きく写したい機械音痴のママさんたちだろう。普通のコンパクトでは望遠が物足りないし、200mmのコンパクトでは手ぶれが酷い。さりとて一眼レフは難しそうだ……というユーザーなのだ。こういうユーザーには露出情報はまったく無益だし、数字が表示されると爆発すると思い込んでいる人もいるようなので(ウチの嫁さんだ)、表示しない方が親切なのだ。また、モード設定の意味も理解できないし、自分が前回どんな設定をしたかも確実に忘れているので、電源を入れ直す度に元の状態に戻る方が便利なのだ。

私はママカメ・ユーザーを馬鹿にする気はない。しかし、メーカーはしてるだろうな……でなきゃ、こんなスペックになるわけがないし、こんなスペックのカメラの存在意義はない。コストは重要なファクターに違いないが、コスト優先だけではこのスペックにはならないだろう。で、カメラ好きのユーザーがこのカメラを使うとどうなるか? 腹を立てて床に叩きつけるかもしれんな……いや、ホント、そうしようと思ったもん。尤も、本当のプロはこういう存在を笑って許すだろうな……ははは…

●基本スペック

プログラムモード専用機で、露出補正機能なし。5種のシーンセレクト付き。中央3点測距?、14分割測光。AF・AEロックはあり。最速1/2000"、X接点1/90"。ホットシューはミノルタ形式、シンクロターミナルはなし。ファインダー内表示は一切なし。重量は310gと恐ろしく軽い。私の知る限り、これよりも軽い一眼レフはMF機のPentax MZ-Mだけ。

原則的にPモード専用機で、一眼レフらしい機能はほとんど付いていない。機能も質感もプライドもまとめてゴミ箱に放り込んだようなカメラ。このカメラは充分実用的だが、だからと言ってこんなものを出したら恥ずかしいと思わなきゃいけない。どれほど価格競争が激烈とは言え、なんぼなんでも、CanonやNikonは出さないだろう。Minoltaは襟を正して欲しい。

ただし、標準ズーム付きで実質1.2万を切る価格(新品!)は、下手なコンパクトよりも安い。コストパフォーマンスは抜群に高い。「実用」という言葉をどう解釈するかだが、シャッター押したら写真が撮れて、それが一眼レフ画質であるという意味では実用的。しかし、それ以上のものではない。

●AF性能

AF性能はあまり感心しない。中央部3点測距らしいが、遅いし、きちんとした中央1点ではなく、中央部のある程度広い面積が測距範囲に入ってしまうため、どこにピントが合うのか判らない。しかも、最後の段階で微調整をするようで、モタつく印象がある。このクラスのAFカメラは精度なんかいい加減でいいから(どうせサービスプリントだし)、適当にパッと合って、ダメならすぐに諦めるという潔さが欲しいね。そういう意味では、10年以上前の機種であるEOS 1000の方が快適。実験室性能ではなく、実際に使用するときの心地好さが重要なのよ。

多点測距が一番困るのは、被写体の手前に物がある場合。たいてい手前の物にピントが合ってしまう。しかも、それが被写体の両脇にあったりすると、AFのエリアから逃がすことができない。これは物凄く困る。で、一応そういうときのために、こいつもスポットAF機能があるのだが、これがボタン押しっぱなしでシャッター切らなければならず、非常に使いにくい。スポットAFモードに固定させないと言うのは意図的な仕様だと思うが、その意図そのものにユーザーを愚弄する姿勢が見える(モード変更をしたら元に戻すのを忘れると思ってるだろ!)。

もう一つ気になったのが、ファインダーに視度補正が入っていないこと。まあ、正常な視力を持っていることが大前提だと言われればそれまでだし、視度補正レンズを買えばよいのかもしれないが、ハナから-1dpt程度は入れておいてもよいのではないか? ファインダー像以外にピントを確認する方法がないのだから。

●使用感

まず、第一にストロボが良くない。基本的にオートストロボで、勝手にポップアップして非常に欝陶しい。もちろんオフにもできるが、ボタンを4回も押さなくてならず極めて面倒。しかも、αSweetULとは違い設定が保持されないから、電源スイッチを入れる度に同じ事をしなくてはならない。まず、これだけで私のカメラとしては失格。その他の部分は殆どいじりようがないから、使用感も何もあったもんじゃない。逆光補正すらカメラ任せにするしかない。

ホールディングは男性向きではない。標準的な男性の手のサイズでは小さすぎてホールドしにくく、実重量ほどの軽さを実感できなかった。しかし、移動の際にはとてつもなく有り難かった。以下に実重量を示すが、この軽さはちょっと異様ですよ(いずれも電池・フード込みの実測値)。

構 成重量(電池込み)
Dynax 3L + α35-80/4-5.6U 495g
Dynax 3L + Tamron 100-300/5-6.3 775g
ボディ+レンズ2本(キャップ含む)975g

標準ズームを付けても、EOS 1000のボディ重量とほとんど変わらない。ただし、公称値で計算した重量よりは若干重い。特にTamronの望遠ズーム装着時には700gを切るはずだったのだが、フードの重さとαマウントの重さが響いた。Tamron 100-300は公称値354g(Nikonマウント)に対して、αマウント版の実測値は400g近くあった。

しかし、それでも世界最軽量には違いないく、標準ズーム込みでも少し前の上級コンパクト並み(Autoboy ZOOM 105は490g、Pentax ZOOM 105は480g)。ボディ+ズームレンズ2本の総重量でもCanon FTb + FD 50/1.8と同程度。重量の点ではこれ以上は望めないだろう。

●実写結果

春の日中(晴天)に、近くの神社のお祭りを写してきたが、正直言って悪くない。これだけ悪口を書いている手前、俄に褒めるのも傍ら痛いのだが、確かに一眼レフレベルの描写。まあ、一眼レフのレンズを使っているのだから当たり前だし、ネガでプリントしてるんだから露出レベルがどうこういう言えるわけじゃないけど、ぱっと見で、明らかにコンパクトよりも上なのは確か。ママさんがこのカメラで300mmズームを使ったら、けっこう喜ぶんじゃないかな? コンパクトとは違う世界を味わえることは保証する。好き嫌いは別として、優れた結果が得られたことは素直に認める。

主要諸元
型式 [AF一眼レフ][廉価機]
AFTTL位相差検出方式、中央クロス3点4ライン(スポットAF可)
シャッター 電子制御 縦走金属 30"〜1/2000" X接点1/90"
測光方式 TTL 14分割ハニカムパターン測光
露出モード プログラム/シーンセレクト5種
露出補正 なし(スポットAF時にAEロックされるらしい)
ファインダー90% x0.75
ストロボ内蔵オートポップアップ GN12/専用シュー
外 観127×87×60.5mm/310g(電池別)
電 池CR2×2
仕様出典取扱説明書
その他おそらくαSweetULの廉価版。設定の保持が不能なため、オートポップアップの禁止は電源入れ直す度に設定する必要がある。
独断評価
AF性能 C 精度は良いが、最後のギギッが嫌、3点測距も減点
操作感 E ストロボオートポップアップの評価、台無し…
耐久性 C 実際に耐久性をチェックしたわけではないが、ちゃちい…
ファインダー B このクラスとしては普通かな?見えは悪くない
測光系 A 廉価機としてはかなり奢ってんじゃない?
携帯性 A+ 抜群に良い、このカメラの最大の魅力
用 途 ×仕事 ×趣味 ○スナップ ◎軽旅行 △海外旅行


Longrun reports ...

2004.04.28/嫁さんに結婚記念のお祝いとして買ってもらう。純正35-80付きで1万4800円、23%ポイントバックだから、実質1.2万円以下。恐らく、最も安い一眼レフだろう。

2004.04.29/根津神社つつじ祭りで試写。レンズは純正の35-80とTamronの100-300。想像以上に実重量の軽さはありがたがったが、やはり操作性の悪さが気に掛かった。特にストロボのオートポップアップはどうしても我慢できない。写りは良好。ただし、私はMinoltaのレンズの描写はどうも好きになれない。Tamronの方が好ましかった。

2005.06.18/フェスタジュニーナに行ってくる。でも、35-80UをαSweetULにくっつけて実家に置いてきてしまったので、今回のレンズはα35-70/4Bとα100-200/4.5。別段操作に問題はなかったが、やはり異和感を感じた(特に重量バランスで)。

で、相変わらず酷い機種だと言うのを再確認した。露出情報ゼロではどうしようもない。多点測距も非常に使いにくい。ちょっと構図に凝ると、意図したところに全然ピントがこない。スポットAF機能もあるにはあるが、シャッターを切るまでスポットAFボタンを押し続けなければならず、これまた使いにくい。あと、ファインダー、-1dptくらい入れておけよ!


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