(2011.11.09)

SANYO Xacti DSC-S5

単三2本で動く小型の3倍クラスズーム機。 500万画素の廉価モデル。 2005年2月発売、定価3万6750円。 ざっといじったカンジでは、機能的にはDSC-S4とほぼ同じ。 違いは画素数と電池寿命。 対S4比1.8倍の長寿命と、補間1000万画素出力(いらん!)がセールスポイントらしい。

●電池寿命

何より長寿命がウリなんだが… 確かにS4あたりと比べると、かなりはっきり上。 しかし、同シリーズのS1と比べるとCIPA枚数は半分、再生時間は少し長い程度。 数字だけ見ると、PentaxのOptio 30とどっちが?というレベル。

  ちなみに、Optio 30もSANYO製だと思われるが、 メーカー公表値ほど長寿命の印象はない。 実用レベルはクリアしているが、 実感としては旧型のOLYMPUS C-2Z(やはりSANYO製?)よりも持たない。

もちろん、実際の電池寿命はCIPAの数字では判らないし、 電池寿命の実感は再生時間に比例することを考えると(C-2Zは例外)、 S5はCIPA枚数から推測される以上に長寿命なのかも知れない。 が、逆に数字通りOptio 30と同レベルとなれば、長寿命は看板倒れの可能性もある。

■DSC-Sシリーズの電池寿命(CIPA枚数/再生時間)
機種名アルカリNi-MH CR-V3
DSC-S1 220枚/260分480枚/???分750枚/???分
DSC-S4 _61枚/210分310枚/350分490枚/550分
DSC-S5110枚/300分400枚/470分600枚/680分
Optio 30(参考) 140枚/240分420枚/340分600枚/520分
C-2Z(参考) 100枚/120分---300枚/360分
PowerShot A430(参考) _90枚/600分360枚/720分---

●ISO感度

感度は50〜200のオートのみ。 Sシリーズは基本的に感度オート専用機で、しかも上限がISO 200。 室内ノンストロボで試写してみたところ、 1/8"程度でもISO 100より上がらない。 スロー限界まで増感しない極悪プログラムラインのようだ。 実質的にはISO 100固定と考えた方がよいようだ。

ただし、スポーツモードではISO 400まで増感可能なことを確認。 しかも、スロー限界よりもかなり早い段階で増感している。 手ブレ限界(増感閾値)を1/15"あたりに設定しているような気がする。 なお、増感による画質劣化はかなり顕著。 感度を上げたがらないプログラムラインには、それなりの理由がある。

●増感とマクロ併用

スポーツモード(=高感度モード)とマクロの併用も可能だが、 ピント合わせはMFとなる。 先に距離を指定して、カメラを前後させてピントを合わせる。 最短は2cm、その次が5cm。倍率はけっこう高い。 ただし、通常のオートモード(=実質ISO100固定)で、 「マクロ(AF)+2"タイマー」を使う方が結果は良い。

●画質と色調

画質は比較的良好だが、彩度はかなり高めで不自然。 所謂「色が濃い・きれいな」画像だが、個人的にはこの手の人工着色にはウンザリ。 完全にシロウト向けチューニング. まあ、実際シロウト向け機種だけど。 また、前述の通り、増感による画質劣化はかなり顕著。

●操作系

操作系は基本的にDSC-S4と全く同じで、一般的なUIと比較するとやや特殊。 液晶モニタボタン(スイッチ)がない点、オートプレビューがない点などが特徴。

  この点についてはDSC-S4やDSC-S1の項で詳しく述べた。 結論だけ再述すると、やや特殊ではあるが、慣れればむしろ使いやすい。 正攻法ではないが、それなりに良く練られた操作系。

なお、プレビュー(レックビュー)は手動のみだが画像の拡大チェックが可能。 ただし、拡大可能なのは直近の1枚のみ。

液晶モニタのオン/オフ設定はOPTIONメニューで行う。 オフ設定にすると、原則的に液晶モニタ撮影はできない (S4同様、ちょいとした裏技はあるのだが)。 ストロボモードは保持。前回の設定を引き継ぐようだ。 自動的に初期化する設定はない。

液晶オフ撮影では、露出補正が不可能になる点はやや不満。 仕様として判らないではないが、 フィルムコンパクトにも露出補正可能な機種は多かったわけで、 確認できないから使わせない、というのはどうかとも思う。

●USB接続と内蔵メモリ

USBはマスストレージクラスだが、コネクタの形状が特殊。 USBとAV出力の統合タイプで、汎用的なmini-Bではない。 Xacti J1やS4と同タイプで、J1のUSBコードが流用可能だった。

なお、内蔵メモリは16MBあり、VGA/NORMALなら150枚(!)ほど撮影可能。 ただし、ざっとメニューを見た限りでは、 「内蔵メモリ→SDカード」の転送機能はないようだ。 内蔵メモリを使用する場合はUSBケーブルが必須になると思う(未確認)。

●光学ファインダー

比較的見やすいが、視野率が異様に小さい。 広角端では60%くらいしかない。 いくらなんでも…というレベル。 望遠端では80%近くあるようだが。

●まとめ

私に取っては、良くも悪くもDSC-S4の省電力版にすぎない。 背面ボタンの機能割り付けを含めて、外観はS4と完全に同じである。 S4で感じた不満な点はそのまま残ってしまっている。 UI系の改良が全くなかったのは意外ですらあった。 だが、ターゲットを考えれば、十分煮詰まったUIかとも思う。 木に寄りて魚を求むるべからず。

と言っても、このS5に対して消極的な評価しかしないわけではない。 不満を残しつつも、実は非常にポジティブな印象を持っている。 実際、いじっていると妙に嬉しい気分になる。 自分のニーズに合うかどうかは別として、作り手の意思が感じられるのだ。 カメラでも小説でも料理でも同じことで、 受け手に媚びるのではなく、作り手の価値観を受け手に問う態度が好ましい。 善哉。

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