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★★★ 発売年月 2001.11/標準価格 \3.3000 目立つスペック・目立たぬ実力 |
特に重要なのはAEの機能。C-100が実質的に絞り固定(通常=F4/マクロ=F8)で、速度と感度のみで露出を調整していたのに対して、DSC-R1は絞りも自動的に変化する(F2.8/F5.6)。シャッター半押し状態で絞り制御をしているのがわかる。いかにCCDの小さなコンデジとは言え、F2.8開放固定で遠景を撮るのは厳しいが、晴天屋外なら自動的にF5.6まで絞られるので、そこそこの描写になる(はず)。
もう一つ重要なのがマクロ。C-100のマクロは単に絞って深度を稼いでいるだけで、「マクロ」と呼べるようなシロモノではなかったのに対して、このDCS-R1はレンズが前方に繰り出す本当のマクロ機能を持っている。無論、実写結果もDSC-R1の圧勝。ただし、レンズが繰り出すのと同時に絞りも絞るようで、マクロ時には実質的にストロボ必須となる。また、AWBがアテにならないので、室内ノンストロボだと真っ暗で強烈な緑カブリになる。
そのほか、液晶モニタ(DSC-R1は低ポリ)やスライドバリアの開閉の感触など、基本的な部分でのクオリティもDSC-R1の方が相当に上。ストロボ設定も保持できるし、強制無駄チャージもしないので、速写性も抜群。兄弟機とは言え、デキの良し悪しで言えば、ワンランク乃至それ以上の違いを感じる。
ただし、操作系だけはC-100の方が優れている。DSC-R1はDSC-X100などと同じくタイプで、ストロボ設定一つでも、モニタ撮影モードに入ってメニューを表示しないとできない。さらに、液晶オフモードでは設定の変更も確認もできない。慣れの問題も大きいとは思うが、かなり面倒に感じた。
【付記】このDSC-R1を考える際に、もう一つ頭に入れておいた方が良いと思われるのがDSC-X200。ひょっとすると、DSC-X200の単三4本版がDSC-R1なのではないか−−と勘繰りたくなるほど、雰囲気が似ている。DSC-X200自体、DSC-X100/X110とほとんど同じ物のようだが。あるいは、X100がヒットしたので、パーツを作りすぎて、在庫処分のために開発されたモデルがX200やこのR1なのではないだろうか? そんな邪推をするのは、2001年発売のモデルにしては、UIが貧弱すぎるから。まあ、三洋の場合、上位機種(DSC-MZ1)でも似たようなものだったから、本当に邪推に過ぎないのかも知れないが。しかし、DSC-X1やDSC-SX1Zはけっこう使いやすかったのに、なぜ完全メニュー方式にしちゃったのかね? 個人的にはX100の系譜は評価できない。評価できるのは、X100以前のモデルか、Xacti S1以降のモデル。
しかし、なぜわざわざF2.8などという明るいレンズを使ったのだろうか? 理由は二つあると思う。一つは、感度が低いので、レンズを明るくせざるをえないという、実用的な要請。もし、ISO 20でF4やF5.6という固定焦点機の相場の明るさにしたら、それこそ手ぶれ頻発で使い物にならないだろう。感度不足を補うために、F2.8のレンズは必須なのである。なにも、スペックを誇るために大口径にしたのではないと思う。
もう一つは、最初の理由と矛盾するかも知れないが、「伝統」というか「惰性」。なぜか三洋はDSC-X100から固定焦点機でもF2.8のレンズを使用し続けている。X100/X110/X200は、感度がISO 100前後(90/130)あるにも拘らず、F2.8のレンズを搭載している。無論、通常の日中屋外撮影ではF8まで絞り込むことになる。室内ノンストロボ撮影には便利とは言え、正直無駄なスペックだと思う。そして、このDSC-R1も、その無駄スペックを踏襲しただけなのかも知れない。それが今回はたまたま実用的な要請と合致しただけなのかも知れない。
まあ、理由なんてどっちでもいいのかも知れないが、なんか「パンフォーカスは絞って深度を稼ぐ」というセオリーとは別の基準でスペックを決めているような気がして、何とも腑に落ちないので、変に考え込んでしまった。
上手にやれば、手持ちの1/4"でも手ぶれなしで撮影できないことはない。が、素直にストロボを使う方が賢明だろう。特にこのDSC-R1の場合、室内ノンストロボ撮影は現実的ではない(後述)。ストロボ必須ということであれば、感度の高い低いはあまり問題にならないかも知れない。
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| なお、暗ければ最高感度まで上がるというのは、実は感度オート専用機では珍しいのではないだろうか? オリンパス製品などは、ストロボ光量不足でもない限り、最高感度まで上がらないことが多い。
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もう少し定量的に考察してみたところ、F2.8-ISO20でも薄曇り〜晴天くらいの明るさがあれば、概ね1/100"程度でシャッターが切れることがわかった。ただし、7月の炎天下で実際に撮影したところ、F5.6-ISO20-1/70"だった。手ぶれ対策よりも絞りを絞る方が優先されるようだ。また、日陰の撮影ではF2.8-ISO40-1/27"だった。これはちょっと不安の残る速度だ。雑に撮ると手ぶれが出る可能性がある。ストロボオフ設定で使用したが、オートであれば発光したかもしれない。
また、室内ノンストロボ撮影はF2.8-ISO100-1/4"(露出限界)で光量不足だった。これはちょっと意外で、標準的な室内(Lv6程度)と比較して、1段程度オーバー目に出てもおかしくはない数字なのだが、実際には逆に1段程度アンダー目に出た。確かに、全体にややアンダー目に出る傾向にあるのだが、ちょっと極端な気がする。また、蛍光灯の緑かぶりも顕著だし、増感によるノイズもかなり激しい。ISO 100と言っても、2段以上増感していることに変わりはない。たとえ三脚撮影でも、露出不足、緑カブリ、ノイズがレタッチの限界を超えていて、ちょっと使い物にならない感じだ。
まとめ:
…まあ、と言うのがFT CCDの一般的な説明だと思う。んが、このDSC-R1は廉価機であり、高級機ではない。そのためかどうか、この説明とDSC-R1を比べると首を傾げてしまうことも少なくない。特に感度に関しては、受光面積が増えた筈なのに、ISO 20って何よ? 一般的な機種(ISO 100)よりも2段半も低い。ISO 50〜の機種と比較しても1段以上低い。そもそも、1/2.8" CCDでFTがどーのとか言っても始まらない。仮に倍の面積が使えるようになったとしても、フツーに1/1.8"のIT CCDを使ったミドルクラス機と比較して、上なわけがない。てか、この価格帯で画質を追求する意味はない。
早い話が、FT CCDの特長は特長として、この機種で採用する意味がまったく不明なのである。必要性はないけど、できるからやってみた的な技術的なデモンストレーションか、さもなければ、当時の廉価機用の小型CCDの性能があまりに酷く、多少なりともマシなFT CCDを使わなければ想定している画質がキープできなかったのかもしれない。実際、兄弟機のC-100の1/3.2" CCDと同レベルのCCDを搭載したら、AE機構や筐体の質感などに使った配慮を、すべて台無しにしていたかもしれない。つまり、製品コンセプトを維持するために、必要な選択だったのかもしれない。いずれにしろ推測の域を出ず、あれこれ言っても始まらないが、少なくとも取り立てて高画質を狙ったものでないことだけは確か。
C-2Zなどに使用されていた1/3.2" 200万画素CCDは、そんなに悪い印象はなかった。あのクラスのCCDを使うと言う選択肢はなかったのかなぁ?C-100なんか特に。…あっと、それがC-120か。 |
じゃあ、FT CCDは意味がないのかと言われると、そんなことはない。C-100と比較すると、確かに画質は上。しかも、かなり上である。特にC-100で顕著だった白飛びはほとんど見られない。黒も潰れもない。ただし、コントラストが高く、影になる部分は真っ黒になりやすい。その場合も、ガンマを上げてみると、階調がしっかり残っていて、決して潰れていない。ダイナミックレンジの広さはそれなりに実感できる。
もっとも、原色系にしては彩度は抑え目、パンフォーカスも予想以上に解像感に乏しい。画質全体の評価となると、正直見栄えがしない。確かにC-100と比較すれば良いとは思うが、比較のレベルが低すぎる。DSC-R1単体で見れば、まあ、普通の廉価機というレベルだと思う。やはり、FT CCDの採用意義はよくわからない。ISO 20なんて無茶をしないで済む別の選択肢もあったろうに。FT CCDを前面に打ち出すこと自体が目的だったのかねぇ…
【追記】当時のカタログを見ると、強調されているのは「階調表現」だった。曰く、「豊かな階調表現を実現。そのヒミツはフレームトランスファーCCD」「同サイズならインターライン方式CCDの約2倍の電荷出力を誇るので、スキー場や浜辺などで豊かな階調表現を実現」。これだけ読むと、なんか思いっきりナロゥなターゲットを狙った感じがするが、確かにこの当時の小型CCDは白飛びが激しかった。C-100はもちろん、C-2もかなり酷い有り様だった。この不可解なFT採用は、それに対する一つの回答という解釈が可能かも知れない。
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が、それに続けて、「低ISO感度でノイズの少ない鮮やかな画像が撮れます」は理解不能。まず、前文との関連性が不明確だし(FT=低感度ではないはず)、「鮮やかな画像」というのも明らかに事実に反する。実際は、同社の従来機に比べても、かなりおとなしい画像である。また、低感度だから高画質だというロジックもおかしい。実感として、R1のISO 100画質は、他機種のISO 400画質と同レベルだ。ベース感度から2段上がっていることに変わりはない。逆に言うと、R1のISO 20は他機種のISO 100と同程度であり、「低感度=高画質」とはなっていない。要するに、高感度のFT CCDを安価に製造することができなかっただけ、のように思える。
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したがって、まずはこのDSC-R1の絞りがどちらのタイプか確認する必要がある。確認方法は簡単で、室内で撮影モードにして、シャッターを半押ししてみればよい。「カチカチ」という音と共に、レンズ内の穴の大きさが二段階に変化しているのが見える。円形の穴の開いた絞り板を差し替えるタイプのようだ。これによって、絞りがきちんと変化する、しかも自動で変化する、まともなAE機構が付いていることがわかる。この点でも、C-100のような実質絞り固定機(厳密に言えば手動2段切替ではあるが)とは異なるのである。
尤も、通常、固定焦点機にこんな機能は必要ではない。F4ないしF5.6あたりで固定しておけば、特に問題はないのである。NDフィルター式の絞りでもかまわない。しかし、このDSC-R1は感度が低く、好むと好まざるとに拘らず、レンズを大口径にする必要があった。それによる被写界深度の不足を補うために、こんなまともなAE機構が必要になったのである。したがって、まともなAE機構があることを褒めるのは本末転倒的な気もする。 |
では、絞りがきちんと変化することは間違いないとして、それが描写に与える影響はどの程度のものだろう? これを検証するのはけっこう難しい。プログラムシフトができないので、同じ風景を絞りを変えて撮影することができない。強いて言えば、NDフィルターを使うと言う方法があるが、それも些か面倒だ。あとは、露出補正を掛けて撮影しPC上で適正露出に戻すとか、同じ風景を昼と夕方で撮り比べるとかいう方法があるが、いずれも比較方法としては正確さに欠ける。
NDフィルターを使って絞りを変化させるときには、注意しなければならない点がある。それは、TTL測光か外部測光かという点。TTL測光ならばNDフィルターを装着するだけでよいが、外部測光の場合は減光分に応じて露出補正を掛けなければならない(-1EVののNDならば+1EV補正)。そう思って、DSC-R1を眺めてみたら測光窓がない。どうやらTTL測光のようだ。これまたなかなか偉そうである。尤も、測光に関してはC-100もTTL測光のようだが。 |
そうした考察は面倒くさいので、今回はパスして、とりあえず、日中晴天屋外(F5.6)での遠景描写がどんなものか、実際に撮影してみた。また、C-100、C-120、DSC-X100、Finepix A101、DC215と言った代表的な固定焦点機との比較も行った。さて、その結果は……
マクロ時の最短撮影距離は20cm。38mmで20cmなので、倍率的には少々物足りないが、VGAモードでデジタルズームを併用すれば、ガチャポン人形の全身像くらいは撮影可能。撮影結果は、C-100よりは相当に上(というか、C-100が酷すぎる)、FinePix A101と比べると解像感と彩度でやや劣る程度。少なくとも十分実用レベルであることは間違いない。
また、設定メニューは液晶モニタをオンにしないと操作できない。ストロボ設定のような使用頻度の高い機能も、VFモードでは変更も確認もできない。私のような光学ファインダー絶対派にとっては、地獄のような使い心地である。流石に後のモデルになると、VFモードでも設定を変更したり、一時的に液晶モニタをオンにしたりできるようになるが、このDSC-R1にはそうした機能は一切ないようだ。もっとも、こうした操作系は、DSC-X100以来、長い間ほとんど変更されなかった。つまり、ユーザーもそれを受け入れていたわけで、一般的にはそれほど大きなマイナスポイントと見做されていないのかも知れない。
光学ファインダー自体もあまり感心しない。見えはそれほど悪くないし、視野率も実感として90%くらいあるマトモなものだが、位置が悪くて鼻がボディの角にぶつかる。KodakのDC210Aなども光学ファインダーが中央部にあって覗きにくいのだが、液晶面が一段低くなっていて、鼻への圧迫を軽減するように工夫してある。それに比べると、このDSC-R1は何の工夫もない。要するに、VFモードでの使用をまったくと言っていいほど考慮していない。幸いなことに、単三4本機で電池の持ちが比較的よいので、常時液晶モニタ撮影でも実用に耐るのかも知れないが、光学ファインダー派にはそれは無意味。
兄弟機のC-120と並べて比べていたら、ちょっと面白いことに気が付いた。このC-120の筐体はDSC-R1とほとんど同じ構造をしていて、やはり光学ファインダーがボディの中央付近にある。したがって、そのまま構えるとやはり鼻がボディの角にぶつかるのだが、C-120はDSC-R1に比べると圧迫感が少ない。不思議に思って角の断面を比較したら、DSC-R1がただのラウンドになっているのに対して、C-120は角の部分が段差になって、えぐれているような構造になっていた。やはり、まともな設計者はこういう点にきちんと気を使うものだ。 |
前述のように、基本的な操作系はDSC-X100系統と同じ。[モード]で液晶モニタにメニューを表示して、十字キーと[セット]ボタンで機能を選択する。この方式に慣れているユーザーには苦にならないかも知れないが、私には非常に苦痛。ストロボ設定の変更にも画像一枚削除にもかなり手間が掛かる。例外は前述のマクロと、露出補正およびデジタルズーム(VGAモード時)。露出補正やデジタルズームは、十字キーで直接呼び出すことができて便利。しかし、十字キーに機能を割り付けるなら、露出補正やデジタルズームよりも、ストロボ設定や削除の方が優先度が高いと思うのだが…。
その他の設定項目としては、操作音およびシャッター音がデフォルトでオフになっている点に注意。設定メニューのビープ音の項目で変更可能。シャッター音のみ([シャッターのみ])と、シャッター音+操作音([すべて])が選べる。
また、画質モードは、[サイズ(1280/640)×圧縮率(FINE/NORM)]の合計4モードがある。ファイルサイズは、VGAのNormalで60〜70KBくらい、フルサイズのFineで350〜400KBくらい。ホワイトバランスはオートのみだが、蛍光灯下では大幅に外す。感度も20〜100のオートのみ。コントラストや彩度の変更も不可。
しかし、ちょっと不思議に感じたのは、なぜこの機種で単三4本を選んだのか、という点。三洋は前述のDSC-X100やDSC-MZ1の不評を歯牙にも掛けず、頑なに単三2本路線で押し通してきたのに、ここに来てなぜ4本に転ぶ? ビギナーや若い女性をターゲットにするなら、絶対に単三2本だと思うのだが…。撮影重量280gは十分避けられる理由になりうる。このあたりもけっこう謎なのだが、示唆的なのが、オリンパスC-100の発売が2001年6月で、このDSC-R1の発売が同年11月だという点。C-100の企画が先にあって、DSC-R1はその便乗モデルだったのかも知れない。
USBはストレージクラスで、本体側のコネクタは一般的なmini-Bタイプ。汎用性は高い。OS/2でも認識に成功。ただし、USBからの給電はないようで、電池なしでは使えない。
主要諸元 | |
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発売年月 | 2001年11月/定価3万3000円 |
型式/クラス | [固定焦点][単焦点][単三4本] |
撮像素子 | 130万画素、1/2.8" フレームトランスファーCCD、原色フィルター |
画像サイズ | 1280×960/640×480 |
レンズ | 38mm/F2.8(5群5枚) |
シャッター | 1/4"〜1/500"、ストロボ使用時は1/30"〜1/500" |
ピント調節 | 固定焦点、マクロモードあり |
最短撮影距離 | 通常時 50cm/マクロ時 20cm |
露出制御 | プログラムAE |
露出補正 | ±1.5EV(0.5ev)※取説に明記なし |
ISO感度 | ISO 20〜100、オートのみ |
測光連動範囲 | 1/4"・F2.8・ISO 100 〜 1/500"・F5.6・ISO 20 |
ホワイトバランス | オートのみ |
液晶モニタ | 1.5"低温ポリシリコンTFT、11万画素 |
ファインダー | 光学実像式ファインダー (倍率/視野率不明) ※0.5倍/90%くらいかな? |
フラッシュ | オート/強制/赤目/禁止 |
外観 | 121×65×38mm/180g(電池別) |
電池 | 単三4本 |
仕様出典 | 取扱説明書 |
その他 | USBストレージクラス(mini-B) |