OLYMPUS CAMEDIA C-990ZS
★★★★ 発売年月 2001.03/店頭価格 \4.5万〜
カメラらしさにこだわったデジカメ

単三4本の3倍ズーム機。200万画素1/2.7"CCD。C-990Zの液晶を低温ポリシリコンに変更したマイナーチェンジ機。Pオートのみのコンシュー マモデルだが、機能と風格は高いレベルにあり、決して安直な廉価機ではない。光学系も優秀で、画像処理もナチュラル、処理速度もそれほど遅くない。仕様や操作系 に不完全な部分を残しているものの、総じて完成度は高く、使っていて安心感がある。「カメラらしさ」へのこだわりと、光学ファインダーメインの設計思想に 共感する。C-900シリーズの完成形。 (2009.12.02)

C-900Zに始まるシリーズの五代目。五代ものあいだ外装の変更がなかった、超定番カメラ。発売当時はそれを揶揄する声も多かったが、現在から見ればそ うした批判に意味はない。他機種のような小型化や高画素数化は、すぐに別の機種に追い抜かれてしまい、その機種固有の意義を失っている。しかし、この些か どん臭い定番機は、まさにその個性故に現在も存在感を示し続けている。それに、一般ユーザーは1台買えば数年間はそれで済ますわけで、3年間に4回のモデ ルチェンジに新味があろうとなかろうと、ほとんど意味はない。気にするのは新製品が出る度にチェックをしなくてはならないライターくらい。

ただし、それでは五代の間に進歩や変化がなかったかと言うと、そんなことは全くなく、実は機種ごとにかなり大きく機能が変更されている(別項参照)。その中で、最も完成度が高いのがこのC-990ZS。逆に、最もお薦めできないのが、最も数が出たであろうC-960Z。

●主要スペック

2001年3月発売。ただし、2000年6月発売のC-990Zの液晶変更版なので、発売当時からやや時代遅れのスペックであったことは否定できない。 200万画素、1/2.7"CCD(たぶん補色フィルター)。レンズは35-105mm/F2.8-4.4相当の光学3倍ズーム。デジタルズームもある が、非シームレス(嬉しい)で、マクロと排他的(悲しい)。最短撮影距離80cm、マクロモードは20cm。露出はプログラムのみ。WBはオートと固定。 ISOはオートと100/200/400の固定、AUTOは100〜200ではないかと思われる。画質は5段階だが、画素数はUXGA(1600× 1200)とVGA(640×480)の二種類のみ。XGAサイズがない(T_T) ファイルサイズはHQ(UXGA)で約500KB、SQ(VGA)で60〜70KB。ストロボは手動ポップアップ式(偉い!)。PCのI/Fはシリアル(RS-232C)。流石にこの時期に、これはなかろう…。重量270g、撮影重量約380g、キツイ…。両吊りストラップが欲しい。

  ただし、個人的にはシリアル転送はありがたい。なにせ、数少ないUSBポートを塞がないから(^_^; USBハブを置くスペースもないからね〜。RS-232Cなんて今日び他に使い途ないから、ケーブルも接続しっぱなしでいいし、Web用のVGA画像を数枚吸い上げる程度なら速度も気にならないし、案外便利なのであった。

●操作性(T)

操作性の中で特徴的なのは、@液晶オフでの起動、Aストロボ手動ポップアップ、Bレックビューなし、の三点だろう。この三点には批判が多いのだが、個人的 に非常にポジティブに評価している。このカメラはあくまでも銀塩の撮影スタイルをベースにしているので、光学ファインダーの使用が大前提である。手ぶれし やす い液晶撮影は原則禁止。例外的に、ビューファインダーのパララックスが問題になるマクロ撮影や、原理的に液晶が必須になるデジタルズームのときだけ 液晶撮影を許す−−とい う意志表示なのだ。もちろん、無駄に液晶を点ければ電池がすぐになくなってしまう、というのも理由の一つだろう。

ストロボも同じく。使いもしないストロボのチャージはすべきではない。デジカメは電圧降下に弱く、僅かの無駄遣いがけっこう大きな影響を与える。無 駄チャージ厳禁。そもそもストロボ撮影なんてのは、ユーザーが明確な意志を持って行うべきもので、オートで勝手に光られては迷惑千万。それに、開放F値が F2.8で、感度が400まであるんだから、光学ファインダーを覗いてきちんと構えれば、室内ノンストロボ撮影だって、けっこう手ぶれはしないものだ。蛍 光灯二本の和室でも1/25"〜1/50"くらいで切れる。

【訂正】その後のロードテストで、ストロボオフでも起動時に強制無駄チャージをしていることを確認した。案の定、電池寿命に大きな悪影響が出た。チャージ不能に(もちろんストロボ使用不能に)改造することも考えた方が良さそうだ。

レックビューがないのも高評価(液晶オンでの撮影の時はあり)。確かに、ビギナーのうちはレックビューがないと不安になるが、慣れてくるとむしろ煩 わしく感じる。1カット撮る度にチェックしていては、撮影に集中できなくなるのだ。無論、オン/オフを選択できれば言うことはないが、なくても全然困らな い。撮影結果の確認は、集中して何枚か撮った後に、まとめて行えば良い。もちろん|□|のダブルクリックで再生可能。バリアを閉じる必要はない。まあ、デジカメの操作にダブルクリックは少々問題だと以前から思ってはいるが。

●操作性(U)

操作系はC-920Zまでと比べるとかなり改善されている(十字キーの採用は960Zから)。また、設定可能項目が少ないせいもあるが、現在の複雑 なメニュー構成よりもシンプルで、むしろ好感が持てる。ただし、画質の設定メニューはへんなツリー構造になっていて、高画質の設定にするには△長押し(2 秒)なんだそうだ。これはいただけませんな。上部液晶の設定マークの点滅も含めて、マイナスポイント。

もうひとつ大きな欠点は、撮影した画像の撮影情報が表示されない点。露出も感度も全然わからない。これはクラス不相応の手抜きだな。尤も、オリンパ スのエントリーモデルは、撮影情報が表示される機種でも表示項目が非常に少ない。感度を確認するにもPC上に吸い上げてExifデータを表示する必要があ る。そんなレベルの撮影情報なら、むしろ不要か。カメラ上で撮影情報の確認が必要なユーザーは、C4桁機を買えということか。


  実はこのC-900シリーズのポジションって、けっこう微妙。モデルによっては10万近い店頭価格 だったものもあるようだが、990ZSの店頭価格は4.5万くらいからスタート。しかも、その年の内に特売で1.5万で売られていたそうだ。C- 100より安い店もあったそうな(u_u;) モデルごとに グレードの差があるわけでもないので、実際は「新モデル=値下げ」ということになる。基本は中級機のままで、値段だけ廉価機帯に下がっていってしまったた め に、性格付けがすごく曖昧になっている。

設定保持機能はあるが、液晶オン設定は保持されない。バッファメモリを備えているため、書き込みはそこそこ高速。HQ(500KB弱)のデータの書 き込みも、それほどイラ付かない。むしろ、表示速度に難がある。低温ポリシリコン液晶は非常に綺麗。C-2020Zの低ポリよりもずっと鮮やか(…でもないかな?)。つ〜か、 実際の撮影結果よりも奇麗に写るのは反則だろう(^^;また、露出がアンダーめのようだ。PCで見るには、+0.5evくらい補正した方がよい。

●マクロと最短撮影距離

最短撮影距離は「通常80cm/マクロ20cm」。通常モードの80cmはちょっと遠い。短所のひとつと言ってよいだろう。ただし、実際には、広角端だと 「通常20cm/マクロ10cm」くらいまで寄れる。室内でテーブルの向かいに座っている人を写したり、自分の目の前にある料理を写したりす るのに不便はない。しかし、デジタルズームとマクロが排他的なので、画質を犠牲にしても高倍率の撮影はできない。マクロモードで撮影しても、望遠端で 80cmから デジタルズームで撮るのと変わらない感じだ(無論、パースは別問題だが)。マクロを使おうとデジタルズームを使おうと、画面縦いっぱいが5cm強といった ところ。やはり少々物足りな い。デジタルズーム併用なら10円玉クラスでないと…いや、デジタルズームがインチキなのは置いておいて。

ちなみに、このC-990ZSにもマクロの裏技(?)が存在する。まあ、「裏技」と言うほど凄いものではないが、望遠端から少し広角側に戻ったところに、 近接撮影のスイートスポットがあるのだ。これはどうやら、オリンパスのデジカメに共通の特徴らしい。ここをうまく見つけ出せば、被写体に10センチ程度のところまで寄れて、画面縦いっぱいが4cmくらいになる。目安としては、望遠端から小刻みに4〜5回戻したあたりかな。

ワイド端最近接 スイートスポット最近接 テレ端最近接

なお、このころのオリンパスのデジカメは、実際にはシームレスマクロ機能を持っている ような気がする。ノーマルモードのままでもマクロモードと同じ距離まで近接できることがある。ただし、かなり慎重にピントを探る必要があり、合焦の速度や精度ではマクロモードに及ばない。おそらく、この「マクロモード」は合焦範囲を限定しているだけで、光学系自体が変化する−−たとえば、マクロレンズが入るとか、レンズが前に繰り出すとか−−のではないと思う。

●設定のクリアとホールド

C-900Zシリーズは960Zから設定保持(ホールド)機能が付いた。と言っても、そもそもC-900Zシリーズのストロボは完全手動なので、設定保持機能は必要としない。また、設定保持をホールドにしても、マクロモードは電源オフで強制クリアされる。この二つは、個人的には極めてありがたいことなのだが、逆に言うと、じゃあ設定保持機能って何のためにあるの?−−と言うことになる。

端的に言って、この設定ホールドは、《露出補正とISO感度》を保持するためのもののようだ。実際には、それ以外にもホールドされる項目はあるが、そして画質やホワイトバランスのようにクリア設定でも保持される項目もあるが、要するに露出補正とISO感度の保持が、ホールドの存在意義のような気がする。しかし、これは多少微妙だろう。個人的には、感度はホールドして欲しいが、露出補正はクリアして欲しい。C-3030Zあたりからは項目別のホールドが可能になったが、クラスを考えると、納得せざるをえないか。

●電池と撮影可能枚数

メーカーの公称では、アルカリ電池で100枚以上(ストロボ50%)。基本的に液晶が点灯しない仕様なので、液晶オフでの枚数と思われる。4本機で液晶オ フにしては100枚は少ないな、というのが実感。しかし、電池のヘタリには意外に強いかも知れない。C-300Zで赤マークの電池が、このC-990ZS は満タンマーク で撮影も可能だった。消費電力は大きいが、電池の容量をかなりの部分まで有効に使ってくれるタイプかもしれない。とすれば、電池が自然放電で多少へたって も、何枚かは撮影できるだろう。連続撮影可能枚数だけ無闇に多くても、自然放電でちょっと電圧が下がるとすぐに使えなくるカメラよりは、こういう「大喰ら いでも粘り腰」タイプの方がずっと実用的。

ちなみに、現時点でアルカリ電池(Maxell Dynamic;20本800円)を二箇月間入れっぱなしにしているが、未だにグリーンマーク。その間の撮影枚数は20枚ほど。何でもないことのように思えるかもしれないが、実はこれはかなり凄いこと。自然放電や設定保持電流の消費程度ではビクともしていない。果たして何箇月持つのか、興味津々。

…で、結局、九箇月で電池切れになった。現実的にはアルカリで半年、数十枚といったところか。終端電圧は1.2vで、これはPowerShot A460やXacti S5のような長寿命機でもダメ。つまり、デジカメとしてはきっちり使い切っている。しかし、長寿命4本機のC-120ならば、赤マークながら撮影可能だった。このあたりがミソかな。もちろん、1.2vあればラジオや懐中電灯は十分使用可能。う〜む。ちなみに、一番電力を消費したのは、起動時のストロボ強制無駄チャージと思われる。…内蔵ストロボなんて、この世の中からなくなればいいのに。

個人的にはかなり気に入っている機種だ。「カメラ」へのこだわりには強く共感する。しかし、価格と機能と大きさのバランスがものすごく悪い。初代のC-900Zはミドルクラス機だったので、この大きさでも何ら問題はなかった。しかし、C-990ZSのころには価格的にエントリークラスになってしまっている。ビギナーターゲットのエントリーモデルとしてはどう考えても大きすぎる。せめて、もう二周りは小さくないと受け入れられないだろう。機能的にもエントリーモデルとしては豊富過ぎる。真のエントリー機は、むしろ細かい設定ができてはいけないのである。

無論、そんなことはオリンパスも百も承知で、C-990ZSと同時期に単三2本の小型エントリー機C-1を出している。ズーム付きのC-1Zは三箇月後だが、ほぼ同時期と見て良いだろう。C-1の系譜は名機C-2、μ廉価版X-200、ローエンド機FE-110につながっていく、エントリーモデルのメインストリームとなる。結果論ではなく、この時期既に単三モデルは2本機が主流になることは明らかだった。そういう時代状況の中で、あえてC-990ZSを世に問うたのはなぜなのだろう?

一つは、電池寿命の問題があったように思う。当時既に各社から三洋のDSC-X100/SX150系の単三2本機が発売されていたが、その電池寿命は悲惨なレベルで、とうてい実用的とは言いかねた。メーカーの良識として単三4本機はなくせなかったのかも知れない。実際、C-1Zと同時期に、単三4本の新シリーズC-200Zも出ている。しかし、三箇月後にC-200Zが出るのなら、やはりC-990ZSを出す必然性が理解できない。

まあ、販売戦略と言うのは理詰めのスペック議論とは別次元の話ではあるが−−たとえば、旧モデルの化粧直しでもよいので時期的にどうしても新モデルが必要だったとか、パーツの在庫を掃き出すためとか、実際のところは、そんなところなのかも知れないが、何となく作り手の愛着のようなものも感じてしまう。つまり、名作C-900シリーズを、低ポリなしのC-990Zで終らせたくない、どうしても完成形態のモデルを作って終えたい、と。まあ、些か感傷的に過ぎるが(^^;少なくともユーザー側から見ると、C-990Zで終るかC-990ZSで終るかで、シリーズ全体の印象がかなり異なる。

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