(2003.10.24)

万能ズーム

万能ズームの定義は、「広角・標準・望遠を一本でカバーするレンズ」。代表的なスペックは35-105mm/F3.5-4.5または35-135mm/F3.5-4.5。最近の28-200や28-300も当然“万能"だが、それらは通常「万能ズーム」ではなく「高倍率ズーム」と呼ばれるようだ。

  35〜100程度であれば、実際にはズームの両端、つまり広角と望遠しか使わないことが多い。

で、問題は、35-105mmクラスのズームレンズに適当な用途が思いつかない、ということ。自分の好む被写体や撮影シチュエーションのいずれにも適さないように思う。旅行には重すぎるし、イベントやお祭りには望遠不足、F変動だからストロボ向きでもない、最短が長いからパーティーでも不便。システムを構築する上で、この種のレンズをどこに位置付けるか、かなり迷っている。

  ライカのターレットファインダーは28/35/50/85/135。28から始まっている点と、100ではなく85である点に注目。

いずれにしろ、望遠端の用途はポートレートにほぼ限定される。高々135mmでは被写体に気付かれずに表情を撮ることは困難。もし用途がポートレートに限定されるなら、70mmも望遠の仲間に入れて良いように思う。35-70mmの標準ズームも、用途から言えば万能ズームと大差はない。100mmならOKで70mmじゃダメという被写体はちょっと思い付かない。

  実は135mmはポートレートには微妙。焦点距離がやや長すぎて、撮影時にモデルとスムースに会話できない。

もちろん、単純に望遠端のみを考えれば、70mmまでより105mmや135mまでの方が便利。しかし、万能ズームは標準ズームに比べて《重い、寄れない》というデメリットがある。特にMF時代の万能ズームに顕著。私には、望遠端が多少長いよりも、軽くて寄れる方が価値が高い。ゆえに、万能ズームの出番はほとんどなく、大いに持て余している。

  標準ズームは重量200g台で最短0.6mくらい、万能ズームは重量500g前後で最短1.5mが相場。

万能ズームは用途から出て来たものではなく、数字先行でスペックが決定された感がある。つまり、35-70が2倍ズームだから、3倍にして35-105、4倍にして35-135、と言った具合。特定の被写体を前提にして決めた数字じゃないから、他にしわ寄せか来てもしらんぷりで、只々望遠端を伸ばしたい、ってことだったんじゃないかな?

  35mmの4倍は140mmだが、それが135mmという半端な数字になったのは、レンジファインダー時代の名残りではないか?恐らく、135mmが連動距離計の精度限界だと思われる。

ただし、非典型的な万能ズームであれば用途はいろいろと思い浮かぶ。たとえば、Tamron 38-100mm/F3.5は非常に重いレンズだが、明るくてF通しなのでストロボを使う室内パーティーには便利。通常最短は1.5mだが、全域マクロで最短二十数センチまで寄れる。スナップ、風景、花、嫁さんと、ほとんどの被写体を一本でカバーできる。

  もっとも、35mm/F2.8と90mm/F2.5を持って行っても同じで、結果も使い勝手も単焦点二本の方が良いだろう。明るいし、撮影重量も軽い。

近年、軽量の標準ズームがズーム域を広げてきており、また万能ズームも《重い、寄れない》という欠点を克服しつつある。両者の区別は非常に曖昧になっている。もっとも、標準ズームと万能ズームの分類という行為自体に意味があるのではない。

重量や最短撮影距離、描写性能などを総合的に勘案して、明確な用途を思い付けば有用なレンズで、漫然としたイメージが浮かぶだけなら不要なレンズ、ということ。システム構築の上では有用性の判断こそ重要。システム上での位置付けは万能ズームと言うカテゴリではなく、個別のレンズで行うべきだろう。

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