†貧乏カメラ館†

Autoboy A ★★★☆ 発売年月 1992.09/標準価格 ¥4.5000 (XL:1993.03/¥4.7000)
凡庸であることに誇りを持ちたいが…


Autoboyシリーズの標準ズームコンパクト機。SSCレンズの描写力と静音設計に定評がある。サイズや機能もほどよくまとまっているが、操作性には若干難。特にシャッターボタンの感触の悪さが全体のイメージを下げている。各種設定ボタンも小さくてやや操作しにくい。実用性は低くはないが、レンズの描写力を除くと、ライバル機のμ zoom panoramaやESPIOに及ばない印象。
(2001.09.14/2002.10.05)

機能的には特別不満のない標準ズーム機。レンズ描写は突出した印象を持つが、その他の部分に関しては時期相応の凡庸なコンパクト。レンズ以外の特長は静音動作と45cmマクロモードくらい。逆に欠点は操作性の悪さ。レリーズの感触はゴムボタンの電卓みたい。シャッター押した実感が稀薄でかなり不愉快。反応が鈍くストロークが浅いので不要な力がいる感じ。気にしない人は気にしないとも思うが。他にアピールする部分が余りないので、こういう細かいところで評価を下げると、全体の印象が悪くなる。

●スペック・チェック

レンズの38-76mm/F3.8-7.2はリーズナブル。しかし、せっかくシャープなSSCレンズを使い7群7枚という奢った構成なら、望遠側をもう一絞り明るくして欲しかったなあ。何とももったいない。シャッターは1/2秒まで切れ低輝度側は3〜5EVまでいける。夜景OK。マクロもf76mmで45cmまで寄れる。これは特筆すべきだろう。もっとも、これは固定焦点で絞っているだけかも。ストロボ必須だし。通常モードでは60cm〜。AFは三点測距で161ステップ。ストロボはGN8.5〜11の可変で、赤目軽減モードがデフォルト。手動制御可能。多分割測光、逆光自動補正。

ざっと見た感じではよく練られている。でも、この時期になると、各社ともこのクラスはほぼ同スペックで来ているから、妥当な落し所という感じ。むしろ、突出したスペック――例えばμ z.p.の生活防水とスポット測光――がないために没個性的に見える。

●レンズ性能

さて、そのシャープなSSCレンズであるが……実は評判ほど驚かなかった。確かに悪くはない。広角側を比べるとμ z.p.などよりははっきりと優れているのが判る。一眼レフ並みと言われればそうかも知れない。でも、Autoboy BF80の描写力に驚いたときほどのインパクトはないな。あのときは、安物と見くびっていたところに、おそろしくシャープな描写を見せ付けられて、いわば不意打ちを喰らったから過大評価をしてしまうのかも知れないが。でも、シャープネスだけならやっぱりBF80の方が上なんじゃないかなあ…。

●三点測距AiAF/一点測距

三点測距もウリの1つには違いないのだが、率直な感想を言わせてもらえば役立たず。実写結果を見る限り、一点測距に比べて中抜けが少ないとはとても言えない。中抜けは否かは別としても、ピンぼけは相当多発する(シャッターの感触の悪さから来る手ぶれもかなり含まれているとは思うが…)。広角側の実写結果を見る限り、パンフォーカスの方がマシだと思われるものがかなりあった。

これならば、一点測距でフォーカスロックを使う方がずっと良いと思う。で、一応一点測距も可能なんだが、これはほとんど隠し機能にも等しい。一点測距モードにするには、裏蓋のタイマー/リモコンボタンを押し続ける。ファインダー横の緑のLEDがゆっくり点滅し始めればOK。ただし、一度シャッターを切ると三点測距に戻ってしまう。とても使い勝手が悪く、実用的とは言いにくい。

●操作性は…?

次に操作性。各種のボタンが背面にむき出しで配置されているのはよい。後継の上位機に当たるAutoboy SやLunaがボタンにカバーを付けたことにより、操作性を大きく落としているのと比較して高く評価できる。もっとも、むき出しになってはいてもボタン自体が小さくて操作し難い。他社製品と比べればまだ悪い。静音化は大いにお気に入り。グレードが高い印象を与える。

やはり問題はシャッターの感触。ストロークが浅くて重い感じ。これは、合焦しない時にシャッターがロックされるために、余計にそうした印象を持つのだが、かなり不自然な力が必要だ。Autoboy SとLunaはXLにモデルチェンジした時にシャッターボタンを金属製に変更したが、このAの場合はそれもなし。う〜ん。「パシャン」とか「カシャン」とか、せめて「パチッ」ていう感触が手に伝わらないと、欲求不満になるよ。シャッターが切れたことを確認できるのは、「ウィーン」っていう給送音だけだもんね。かなりイヤ。

また、ストロボのデフォルトが赤目軽減モードというのもかなり欝陶しい(オートストロボは赤目軽減のみ)。ま、そもそもデフォルトでオートストロボというのが欝陶しいのだから今更という気もするが。それを言っちゃあおしまいか。なお、ストロボ制御ボタンが押し難いので二倍欝陶しく感じる。

●偽パノラマ時代

さて、このカメラが発売されたのは92年9月。世は偽パノラマの全盛期で、各メーカーとも大々的にセールスポイントにしていた。ところが、このAutoboy Aは偽パノラマ撮影機能こそあるものの、ファインダーは切り替わらないしデートの写し込みもできないしで、実にお座なりな扱いだった。それが売れ行きに災いしたのか、僅か半年でAutoboy A XLにモデルチェンジ。外装の変更と共に、ファインダー内に偽パノラマのインジケータを申し訳程度に付けた。今思うとバカみたいな話だが、当時はそれが死活問題だったんだ。でも、基本設計の再検討は難しく、この程度でお茶を濁すに終わった。結果として、それほど売れたと言う記憶はない。私も同時期に新品のコンパクトを買ったが、結局OLYMPUSのμ zoom panoramaにした。偽パノラマは兎も角、デザイン面での訴求力が圧倒的に大きかったからだ。

ところが、このカメラの中古の流通量は意外なほど多い。中古市場やオークションではかなり頻繁に見掛ける。良く売れたはずのμ z.p.やESPIO Pよりもずっと多い。そして、なぜかほとんどがモデルチェンジ前のAutoboy Aなのだ。販売期間がわずか半年だったのに、その後数年間売られていたXLよりも流通量が多いのはなぜだろうか? もちろん、在庫が廉価で販売され続けたというのは想像に難くないが、では、最初に無茶苦茶な量を生産したのだろうか? 何となく腑に落ちない。

主要諸元
レンズ 38〜76mm/F3.8〜7.2 、7群7枚 、SSCレンズ
ピント調節 アクティブ、マルチAiAF(3点、1点)
ピント確認 不可
AFロック シャッター半押し(AEロック兼用)
最短距離 通常60cm/マクロ45cm 近接警告あり
測光連動 EV3(2秒、F3.8)〜17(1/300秒、F21)
露出制御 3分割プログラムAE
露出補正 AEロック、逆光時自動発光あり
フラッシュ GN8.5〜11、手動制御可、赤目防止、スローシンクロ可
ファインダー x0.45〜x0.75/84%
外観 128×69×56mm/310g(電池含む)
その他 リモコン付き


Long-run reports ...

焦点距離的に魅力はないが、意外に気に入ってしまっている。現在3台所有。一台目はジャンク詰め合わせの中にあったもので、機能はほぼ完動のようだが、圧板と裏蓋ストッパーが破損している。二台目と三台目は別のジャンク詰め合わせの中にあったもの。二台目はほぼ完動品みたい。三台目は完全不動品のようだ。一台目と三台目を合わせれば完動品がもう一台できるだろう。ま、そのうち…。

2001.10.08/ビッグカメラのジャンクワゴンでさらに4台目をゲット。500円。これは完全ジャンクのようなので部品取り用。これで、完動品1台、要修理品1台、ジャンク2台となる。

2001.10.13/【Aceboy登場】オークションで5台目をゲット。いやあ、別に5台も欲しいもんじゃないんだけどねえ、こいつは何とAceboy。確か、Autoboy Aの輸出バージョンだと思ったが、キヤノンの資料にはないなあ。ちなみに、ボディにも箱にもAceboyと明記されているが、箱は日本語、取扱説明書はAutoboy A XLのものというチグハグな組み合わせ。正体不明。

2001.12.14/Aの試写の準備に入っている。まだいじくり回している段階だが。光学系、電子系ともに問題はなさそう。電池ブタに小欠けあり。これは部品取用と交換しようと思っているが、その部品取機が行方不明に(^_^; いやあ、増えすぎたからなあ。100台どころではなくなっているし。

2001.12.19/@を修理。Cが最も重症のようなので、これをドナーとして裏蓋を移植。難易度Bくらいで割合スムーズにできた。これで完動かと思いきや、給送系トラブル。原因は給送感知コロの固着と判明。けっこう酷い。で、前カバーを開けて修理したのだが、見事に感電(^_^; 二度感電し、二度とも床に落っことす。で、コロの方は直ったんだが、ストロボ管が切れたみたい。いやはや。今度はCからストロボ管を移植する予定だが、自然放電が済むまでお休み。

2001.12.21/Aの試写開始。シャッターボタンの切れの悪さが思いの他気に掛かる。特に、他機種を触ったあとだと接触不良だと思えるくらい。でも、他のAutoboy Aでも同じだから故障ではない。ここは不幸だな。あと、縦位置撮影がとてもやりにくい。この機種に限らず、左手側にストロボのあるほとんどの機種は同じようなもんだが、特にこいつはファインダーが見にくい印象を受けた。ファインダーの位置と大きさ、だろうなあやっぱり。

2001.12.31/試写終了。女房の室内ポートレート、花のマクロ撮影、遠景、本駒込・田端の散策など。田端の赤紙仁王は拾い物。外で写すときは、シャッターの感触は思ったほど気にならなかった。大きな樹を写そうとしたが、38mmではどうにもならない。やはり広角側は28mmほしいなあ。もっとも、今回に限れば24mmか21mmくらい必要かもしれないが。

2002.01.14/年末の試写結果上がる。ラボがタコ。発色が全部くすんでいる。やっぱ安いとこはダメだなあ。古い現像液でも使ったか…?

2002.01.15/同じネガをまともなラボでプリントしてもらった。仕上がりが全然違う。色の深みも立体感も遥かに上。う〜ん、これなら一眼レフ画質と呼んでも恥ずかしくないだろう。しかし、ネガを描写チェックに使うのが根本的に間違ってんだろうな(^_^;

2002.08.31/【浅草サンバカーニバル撮影】EOS 620のサブ機として持って行った。Autoboy A XL。やっぱ、使用感はよくないわ、今さらながら。しかし、これ、何台目のAutoboy Aなのかなあ…。このあいだ落札したジャンクセットに入っていたもの。これとは別に初代Aも入っていたし。つ〜ことは、少なくとも7台あるってことか。

肝腎の動作チェックだが、特に問題なし。完動品と言ってよいでしょう。ただし、ストロボやデート/メッセージ写し込みは実写テストしていない。ピンボケがけっこうあったけれど、これは撮影の状況を考えるとやむなし言うところ。ちゃんとピンが来ている写真に限れば、やはり写りは良い。

状態機種シリアル備 考
要修理@A4859570圧板と裏蓋のストッパーの破損、給送コロ固着。Cをドナーとして修理。ただしストロボ発光せず。
実動品AA 4585145試写済、ジャンク詰め合わせ(確認箱に保管)
要修理BA 4569065ジャンク詰め合わせ。背面のスイッチが機能していない。シャッター自体は切れる。修理できるかも。
部品取CA 4685156電源入らず、ビックのジャンク500円、部品取に使用。
完動品DAceboy  Aceboy、箱・取扱説明書付き(試写はしていない)
実動品EA 5069987Autoboyジャンク9台詰め合わせ、実動品
実動品FA XL 9702932Autoboyジャンク9台詰め合わせ、実動(確認箱に保管)

動作品4台、修理次第で使えるもの2台、あきらめた方が賢明なもの1台。手許に2台あれば良いから4台は手放そうかとも思っている。とりあえず、動作確認のできた3台はフリマに出す予定

2002.09.07〜29/【白山まつり、根津・白山神社祭礼、ふくろ祭り】六番機試写。基本的に問題なく撮れたけどね、相変わらず使い心地良くない。それに、例のごとく必ず曇るので、ASA 400でも問題あった。で、使ってみて思ったんだが、三点測距って、やっぱり良くないね。エラソーなこと言っても中抜けピンボケ頻発だもん。中央一点でAFロック使う方が遥かに便利。確かに、同時に使ったPentax SVの300mmでもピンぼけや手ぶれは頻発したけど、いくら曇天でも135mm以下ならまず大丈夫だったからね。まして38mmでピンボケはありえませんよ。いや、多点/一点の問題とAF/MFの問題を混同してはいかんが。シビアなピンが要求されるときは、最良の条件でAFを使用するべきかもしれないが(特に私の視力では)、スナップ中心ならMFの方がずっと失敗が少ない、というのが実感。


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