†貧乏カメラ館†

Autoboyの操作系

(2004.08.18/2005.12.13upd)

旅行などに手軽に持って行ける可搬性の高い標準ズーム機を探している。ごくありふれたスペックなので、より取りみどりと思いきや、そこは偏屈な私のこと、細かい所にこだわりがあって、なかなか思い通りの機種が見つからない。

●主力機の操作性が悪い

ことの起こりは、Autoboy Aの操作性の悪さ。最初はこれを常用機にするつもりだったのだが、使いにくくて実用にならない。仕方ないのでEPOを使ってみたのだが、これまたAに輪を掛けて操作性が悪い。そこで、常用機にふさわしい標準ズーム機を探し始めたのだが、調べて見ると、可搬性、描写力、操作性を兼ね備えた機種が意外に少ないのにショックを受けた。

中でも、中古流通量と価格のこなれ具合でピカイチのAutoboyシリーズが、意外なほど大きな欠点を抱えていることに気が付いた。総じて操作性が悪い−−と言うよりも、そもそもユーザーに操作させまいとするメーカーの意図が露骨に出ている。エントリーモデルならともかく、上級機や主力機でこれをやるからたまらない。A/S/Luna/EPOなどの主流機の操作性はすべて最低ランクである。ボタンを隠したり、一つのボタンに多数の機能を割り付けたり、わざと押し難いボタンにしたり……なまじレンズ性能が高いだけに、余計に腹立たしい。

しかし、Autoboyシリーズのすべてが同じ操作系を採用しているわけではない。標準ズーム機だけでも複数の操作系が存在するが、廉価機や旧機種には意外に優れた操作性のものがある。皮肉なことに、多くの機能を詰め込むことも、新式のパーツを使うこともできなかった機種の方が使いやすいのだ。

●BF80系統の操作ダイヤル

中でも傑作はAutoboy BF80。メーカーとしては思い切り手を抜いた低価格モデルのつもりだろうが、あにはからんや、使い勝手は最高である。技術力がかなり成熟していた時期(1995年)の機種だが、コストのために必要機能以外を省いたのが良い結果を生んだ。必要な機能がパッと出てくるというか、一つのダイヤルに収まる数しか機能がない(^_^;

このBF80と同系統の操作系を採用しているのがJunoおよびJuno76。初代Junoは38-60mmという中途半端なスペックだが、Juno 76は38-76mmでまずまず。完全にBF80の兄弟機種らしく、ビッグファインダーも搭載している(発売順はJuno, BF80, Juno76)。

また、Luna 105、Luna 85も似た操作系のようだ(Luna 105Sは別系統)。ただし、操作ダイヤルは背面ではなく左肩に付いている。しかも、かなり小さい。実際に使ったことがないので何とも言えないが、あまり使いやすそうには見えない。

●旧機種の機械式ストロボスイッチ

旧機種のTELEやmini Tも使い勝手はなかなか良い。両機種ともストロボ制御が機械スイッチなのが素晴らしい。ただ、何といっても旧機種なので、測光連動範囲とか、重量とか、静音性とか、AF性能とか、基本的な部分で不満は出て来る。

TELEは楽しいが、デカイし、広角が苦手、最短が0.96m、スローシャッターが弱い、といろいろな部分に弱点を抱えている。mini Tはサイズが小型になり、最短も0.65mと改善されたが、他の部分はTELEと似たような欠点を抱えている。また、レンズも暗くなったし、遊び心に欠けて楽しさがない。

結局、用途との兼合いだが、とりあえず何でもこなせる小型汎用機、というのにはどちらも適さない。かと言って不適格の烙印を押すにはあまりに惜しい……何と言いましょうか…あははは。優柔不断です。

●PERSONAL機能

Autoboyは「ユーザーに設定をいじらせない」という基本スタンスを取っている。だから、私から見れば「操作性が悪い」という欠点も、メーカーに言わせれば「馬鹿でも使える」という長所なのだろう。しかし、キヤノンも操作性とフェイルセーフとを両立させる方法を摸索していたのは事実である。その結果がAutoboy 120やAutoboy EPOに搭載されているパーソナル機能だ。

パーソナル機能は、ユーザー設定を記憶しておくもので、たとえば「ストロボオフ+スポットAF」という設定を記憶させておけば、ダイヤル一つでAUTO(オートストロボ+マルチAF)とPERSONAL(ストロボオフ+スポットAF)を切り替えられる。特に、Autoboy 120では、ダイヤルのオフ位置の両脇にAUTOとPERSONALがあるため、切り替えが非常に容易だ。個々の機能の設定スイッチはカバーの下に隠れてはいるが、これは撮影時に操作するものではなく、パーソナル機能の設定用と考えれば納得できる。

Autoboy 120は基本的にAutoboy S系統の操作系を採用しているが、このパーソナル機能のおかげで操作性が格段によくなっている。良くはなっているが、やっぱ、意固地なんじゃないかねえ…。スタート地点が間違っているのを、無理矢理ねじ伏せてここまで持って来た感じがする。いや、まあ、結果的にここまでくれば、私としても文句は付けないが、もっとオーソドックスな発想から始めれば、遥かに簡単に、遥かに安く、遥かに早く実現できたと思うのだが…技術力に溺れてんじゃないのかなあ。

なお、パーソナル機能はEPOにもあるが、EPOはダイヤルの配置にやや難がある上、各種設定が階層メニュー形式になっているため、120に比べると操作性は大きく劣る。EPOの方が120よりも後の機種だが、こちらは明らかに技術に溺れている印象を受ける。

●最後のダイヤル機?155の操作系

EPOの後に出た、恐らく「まとも」なAutoboyとしては最終機になると思われるのが155(実際には180が出たが…)。こいつは従来のベストショットダイヤルとボタンを組み合わせた操作系を採用している。基本的にSと同系統だが、ボタン部にカバーはなく、かなり押しやすくなっているように見える(実際に操作したことはない)。EPOの階層メニュー形式の不評を受けて改良したものと思われるが、ボタンで独立して操作できるのはストロボ制御だけ。露出補正やスポットAFはやっぱりメニューを降りていかないといけないようだ。

●Nシリーズは…

現在のAutoboyの主力はNシリーズだが、こいつの操作系はゴムボタンと上部液晶のコンビネーションに変更された。ダイヤルはない。何のことはない、他社が従来採用していた標準的な操作系と同じである。下手なダイヤル操作よりも、こちらの方がシンプルで使いやすそうだ。

もちろん、ダイヤル操作はダイヤル操作で非常に優れた特長を持っている。だが、ダイヤルだけですべての操作ができるものではない。Sのようにボタンを隠したり、EPOのようにボタンとレバー一つずつで済まそうとすれば、当然全体の操作性は大きく落ちる。ダイヤル=シーンセレクトをメインに置いて、ストロボ制御や露出補正、測光方式などの個々の機能をお座なりにしたことに問題があるわけだ。ダイヤルが悪いのではなく、ダイヤルの使い方が悪いのだ。

ただ、Nの変節はそうした屁理屈ではなく、純粋にコスト的な問題から発生したように思えてならない。どう考えても、ダイヤルよりゴムボタンの方が安く済む。そう考えると、Nの操作性をどうこう批評するのは実に虚しい。コスト競争のために個性を捨て、長所も短所も他社製品と同じになった…ただそれだけのことだ。

●他社製品は?

と、まあAutoboyシリーズを見てきたわけだが、他社製品はどうなんだろう?と思って、現行機種のカタログを集めてみた。そしたら、ストロボ、露出補正、AFモードがすべて独立したボタンになっているような機種もあるんだよね。使い勝手で言えばそちらの方が圧倒的に上でしょう。試行錯誤の時代はとっくに終って結論は出てる(ミノルタのXiシリーズとか、Nikon F70とか、OLYMPUSのOZ280とか…累々しとた屍の山があるわけだ)。Canonが主流にしている操作系は明確に劣っている。にも拘らず……良く言っても意固地、悪く言えば「ユーザーを馬鹿にしている」としか思えないんだよね。


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