(2010.02.17)

PowerShot A30/A40

ファミリー用途としては無敵と言ってもよいくらい優秀な機種。過不足も無理もない、理想的なカメラ。オーソドックスなデザイン、ホールディングの良いスタイル、手抜きのない基本性能、カメラを熟知している仕様、そして安心して使える電池の持ち。デジカメは無理な小型化・高倍率化で道具として不安定というイメージが強いが、こいつにはそうしたデジカメ特有の「びくびく感」がない。突出した部分はないし、こなれ具合もあと一歩という感はあるのだが、それでもこの安心感は特筆すべきだろう。

欠点は、撮影重量350gはやや重い、マクロが望遠端で26cmはやや物足りない、モードダイヤルがけっこう固い、メニュー操作がやや判りにくい。こう書くとけっこう欠点が多い気もするが、実際に使ってみると、あまり気にならない。何か、設計者がターゲットを適確に把握している感じがする。ファミリー用途はかくあるべし、みたいなのが確立してるんだよね。私は企業としてのキャノンは嫌いだが、製品の優秀さは認めないわけにはいかないな。

【注意】メディアはCFだが、アイ・オー・データのCFSシリーズは使用不可。書き込んだデータが読めなくなるそうだ。この現象はキャノンの他機種やNikon Coolpix 885でも発生したらしい。問題はCF側にあり、当時は対処済品と無償交換してくれたようだ。

●ホールディングとボタン電池

このPowerShot A40/A30には、地味ながら非常に優れた点が二つある。一つは、ホールディングの良さ。このホールド感はPowerShot Aシリーズの中でも突出していると思う。オリンパスのC四桁機よりも少し劣る程度だ。だが、残念なことに後継機では小型化のためにホールド感が犠牲になってしまった。私がA60やA80、さらには性能的には文句なしのA600系を好まないのは、このホールド感の低下が原因。A40はそのくらい手にフィットする。

そして、もう一つが日付や設定を保持するためにボタン電池を使用している点。年に数度しか使わないような機種の場合には、これが極めてありがたい。と言うのは、長期間使わないデジカメは、メインの電池(この場合は単三電池)を抜いておかなければならないからだ。アルカリ電池を入れっぱなしにしておくと液漏れが恐い。ニッ水は液漏れのリスクは低いが、かなり早く自然放電してしまうため、内部キャパシタ式では設定が長期間保持できない。したがって、普通は使う度に設定のし直しが必要になる。しかし、ボタン電池方式だと、盆と正月にしか帰省しない実家に置いておいてもすぐに使える。もちろん、一部の機種で頻発したキャパシタのパンクに悩まされることもない。

●画質と感度

私は画質にはついては殆ど気にしないが、それでもISO 400時のノイズはかなり厳しい。室内/望遠端/ISO 400で撮影したことがあるが、流石にザラザラでちょっと使えないレベル。室内でフラッシュが使えないシチュエーションでは割り切りが必要。もちろん、十分な明るさがあって感度を低くしても問題ない場合や、高感度でも比較的光量が豊富な場合には、かなり良い描写をしてくれる。彩度は高めで、やや人工的な感じのする発色だが、そんなに嫌みではない。けっこうバランス感覚が良い。

●液晶モニタとファインダー

液晶モニタは1.5"の低温ポリシリコン液晶。オリンパスなどで採用されている低ポリ液晶と比べると、若干鮮明さに欠けるような気もする(供給元は同じだろうが、バックライトが違うのか?)。1.5"というサイズもどうなんだろう? 私は光学ファインダー派なので、ほとんど気にならないが。なお、当然のことながら日向ではほとんど見えない。

光学ファインダーは真面目な作りで好感が持てるが、視度補正が付いていないのは、個人的にはけっこう辛い。また、先日私が使った機体は、光学ファインダーが傷だらけで、ファインダー像が曇るほどだった。明らかに現場で酷使されたような機体だった。程度の良い機体と比較すると、ファインダー像の鮮明さにかなりの違いがある。中古品を入手する際は、このあたりのチェックも忘れずに。

●望遠側のAF性能

こいつのAF性能にはやや問題があり、条件によってはかなり頻繁に合焦に失敗する。この現象が起きるのは、比較的近い被写体を、望遠側で撮影する場合。私の機体固有の問題かと思ったら、ネットに同症状の報告がいくつも上がっていた。で、メーカーもこりゃ拙いと思ったのか、望遠時のAF精度を改善する「調整プログラム」を配布してる。ファームウエアのバージョンアップではなく、あくまでも「調整プログラム」らしい。

で、まあ、私も当ててはみたんだが……結論から言うと目に見える効果はなし。ただし、テスト中に気付いたのは、液晶モニタをオンにするとこの症状は大幅に改善されること。当初から、光学ファインダーのパララックスのせいで、ファインダー中央とAFスポットがずれて、合焦しにくくなっているのではないかと思い、この症状が出る被写体に関しては液晶モニタ撮影をしていた。確かに、AFスポットが被写体を正確に捉えれば、合焦する確率はずっと高くなった。ゆえに、原因はパララックスによるAFスポットのズレにあると思っていた。

が、そうではないらしい。今回試してみて判ったのは、液晶モニタをオンにした状態ならば、ファインダー撮影でも合焦の確率はずっと上がるということ。当然この場合、AFスポットは中央からずれている。ずれていても合焦する。つまり、パララックスが主要な原因ではない。どうも、液晶モニタは単なるモニタではなく、合焦プロセスに一枚噛んでいる感じだ。ということで、光学ファインダー派も、合焦しにくいと思ったら、液晶モニタをオンにしてみるとよい。なお、AiAFやAF補助光に関しては、オンにしようがオフにしようが顕著な違いは感じられなかった。


Longrun Reports

▼2010年01月06日 PowerShot A40 入手

オークションで600円。一応動作品だが、程度はかなり悪い。レリーズボタンが接触不良ぎみ。工事現場で酷使された機体という印象。が、予想以上に使い勝手が良い。これは……

▼2010年02月02日 PowerShot A30 入手

う〜む、やっぱり、地味にいい機種だよなあ…。ちなみに、A40との違いは、画素数と動画の音声の有無、デジタルズームの倍率、それに連写性能くらい(画素数の少ないA30の方が優秀)。音声以外は、画素数の違いからくる必然だから、ほとんど同じ物と言ってもいい。発売はA40/A30ともに2002年3月。A40が4万9800円、A30が3万7800円。1万ちょいの差、比率で言うと25%くらいか。

露出モードはPとMのみ。絞り優先AE/速度優先AEモードはない。つか、そもそもがPのみで、Mは露出補正機能の一種みたいなポジション。MはPと対等の露出モードの一つというわけではないようだ。なので、オリンパスのC4桁機とはクラスが根本的に異なる。こちらは、あくまでもエントリーモデル。

しかし、こんな地味な仕様の製品がよく出せたねえ。たぶん、国内オンリーならば、ありえない製品でしょう。でかくて、重くて、古臭いイメージの方が良く売れる海外市場があったればこそってカンジだけど、まあ、それが功を奏しているねえ。極めて良心的なモデル。実用性から言ったら、ほとんど無敵だと思う。

▼2010年10月02日 2台目のA40を入手

オークションで3台500円のジャンクセットで入手(他はC-920ZとC-300Z)。程度はあまり良くない。が、レリーズボタンの感触は一台目よりは良好。まずまず満足。

▼2011年09月24日 3台目のA40を入手

オークションで400円だったが、今まで入手した機体の中では一番程度がよい。電池蓋の真ん中のツメも折れていない(今までの2台は折れていた)。

▼2011年10月01日〜02日 実家に戻って地元の祭りを撮影

手筒花火(夕方〜夜)と神社本殿の中の舞い(午前中)を撮影。どちらも難しい被写体で、しかも撮影場所が悪く、芳しい結果は得られなかった。−−舞の撮影のときなんか、ベストポジションを取ったど〜〜と思っていたら、何人ものおばはんがひょいひょい前に出てきて、たちまち林立するうしろどたまの間からの撮影になってしまったorz まあねえ、たぶん、舞姫のお嬢ちゃんたちの母親だろうから、文句を言うわけにもいかないしねぇ。縁もゆかりもないおっさんの試写よりも大切だからねぇ。

いずれにしろ、うしろどたまの間からの撮影だと、望遠で画角を絞らざるをえず、それに応じて開放F値も暗くなるから、ピンボケ&手ぶれ頻発。性能的な限界でしょう。が、使い勝手自体は非常に良かった。また、日中屋外でも撮影したが、こちらはかなり良い結果となった(と言っても、写真のデキが良い訳ではない(^^;)。

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