ファンスキー(スキーボード)の安全性を求めて 

 

 

 今回の話は、以前に書いたお話を読んでいるという前提で書いていますので、雪の危険な体験談「ファンスキーの危険性」 前書き 前編 後編 続編 続々編などをお読みになっていない方は、下をクリックして、まずはそちらからお読みください。

 読み進めば、ここまでたどりつけるようになっています。

    ● 雪の危険な体験談 「ファンスキーの危険性 前書き」 ●  

 


 

 これまで7つファンスキー(スキーボード)に関するページを作り、ファンスキーの危険性と安全に滑るためのことに、たくさんの言葉を重ねてきました。

 自分的には、ファンスキーについて、この3年間で書き尽くした感もありましたが、いまだに反響が大きくあります。

 最近は、僕のこのHPだけでなく、ネットでもいろいろと固定式ビンディングの危険性に関して議論されたりしているようで、さまざまな問題点も浮き彫りになってきたと思います。

 ですので、ここではあらためて同じ問題を取り上げるのではなく、今後のことを考えて、一般的なところから一歩進んだことを考えてみたいと思います。

 

 

 ここで、まずいろいろとある名称を整理しておきたいと思います。(表はkatarinさんからの情報を元に作成しました。ありがとうございました)

ファンスキー
日本での呼び名
日本ファンスキー協会での規定で、130cm以下の長さのスキー板のことを指す。
スキーボード
海外での呼び名
DIN規格で、100cm以下の長さの板を指す (DIN:Deutsches Institüt für Normung.)

DIN規格(ドイツ規格協会.)では、100cm以下のスキー板には解放機能(セーフティビンディング)は必要ではないとされています。これに準じ、国内でも固定式簡易ビンディングでの販売になっています

おまけ スノーブレード サロモン社のスキーボードの商標 ソニーのウォークマンみたいなもんですね。

 

 すこしややこしいですが、ファンスキーの中にスキーボードが入ります。そして、ファンスキーでも、解放機能の持つビンディングがある板もあります。

 ところで、僕のHPでこれまで取り上げ続けてきたのは、解放機能(セーフティビンディング)のないファンスキー、すなわちスキーボードの危険性となります。

 ですので、今後はファンスキー(スキーボード)と時々併記してゆこうと思います。併記がなくても、基本的に解放機能のないファンスキーはスキーボードのことだと思っていただければと思います。

 

 

 

 

ちょっとデータは古いのですが、僕が「ファンスキーの危険性」をHP上で取り上げてすぐの2000年2月だけのファンスキー(スキーボード)での事故のデータがあります。

 このデータによれば、たった一ヶ月(4週間)で269名の方がファンスキーで怪我をし、そのうち70人以上の方が骨折をしています。

 「解放機能のないビンディングが原因なのか」という具体的ことはわからないのですが、怪我の部位はやはり下肢が最も多いようです。さらに、解放機能のないファンスキーの”事故全体に占める骨折率”は、一般的なスキーとくらべると2倍以上になっています

 もちろん一概に解放機能に由来するとは言えませんし、そのほかの様々な要因が重なっていることとは思いますが、データを見る限り、これはやはり解放機能の有無が骨折につながりやすいものだということが浮き彫りになっていると思います。
 

 

 

 今シーズン(2001-2002)も怪我のレポートは結構来ました。大きな怪我や小さな怪我など、いろいろと報告を受けています。また、大足教というファンスキーの愛好会では、2名の方が骨折されているそうです。具体的な状況がわからないのですが、ちょっと気になります。

 そうやってこれまで僕がHPを通して把握した情報だけでも、骨折者は軽く10名以上の方がおられ、数十名の方たちが怪我をしています。レポートでいただいているそれらのほとんどの怪我の原因は、ファンスキーの解放機能がないことに由来しているようです。

 これだけ怪我が多発しやすい状況からして、ファンスキー(スキーボード)の解放機能はやはり必要ではないかと考えるのは、ごく自然なことです。そこで、今まで取り上げてきたファンスキー(スキーボード)の解放機能について、さらに考えてみたいと思います。

 まず、ファンスキー(スキーボード)に解放機能(セーフティビンディング)が必要であるかどうかという問題は、状況をきちんと整理して考えてみるべきだと思います。

 

 

 まず、100cm以下のファンスキー(スキーボード)に解放機能(セーフティビンディング)があるとします。

 ファンスキーの楽しさは、その自由な動きができることです。飛んだり跳ねたり、くるくると回って見せたり、普通のスキー板ではできない動きができ、その楽しさはほんとうにファンスキーならではのものだと思います。そういった、飛んだりはねたりといった、アクロバット的な動きをする目的に使用するのに、解放機能はおそらくあまり必要でははないと思います。

 ファンスキーに、もし解放機能がついているとすれば、たとえばジャンプ台で大きくジャンプしてエアーを決め、そのあと着地した瞬間に、板にものすごい衝撃が加わり、その瞬間にビンディングがはずれてしまうという「誤解放」をするおそれがあります。その場合、一瞬のうちにファンスキーヤーは不意をつかれて、おそらく勢いのついたまま、なすすべがなく転倒してしまうことになると思います。

 また、バランスを崩して外れた板に上から体がかぶされば、かえって大きな怪我につながることにもなりかねません。

 ですので、ジャンプの着地などのものすごい衝撃にでも耐えられるように、ファンスキーとブーツを固定しているほうが安心できると思います。

 ファンスキーの使用目的が、そういったアクロバット的な動きであるとすれば、このように、解放機能はかえって危険になると思われます。

 

 

 しかし、一般のレジャーファンスキーヤーにとって、ファンスキー(スキーボード)に、解放機能は不要なのでしょうか?

 こうなってくると話は変わってきます。これまでこのHPで取り上げ続けてきているように、あっけなく骨折につながる固定式ビンディングは、危険と隣り合わせと言えるかもしれません。

 これまで書いてきた話と同じ話になりますが、ファンスキーにもやっぱり普通のスキー板と同様、安全性を最優先に考え、一般のレジャーファンスキーヤーたちのために、解放機能のあるビンディングの装着は必要だろうと言えると思います。

 雪上スポーツの初心者の人達が、いきなり解放機能のないファンスキーを履いて滑ることはよくあることです。雪の滑る感触にも慣れず、ファンスキーにはどんな危険があるのかもまったく知らない状態で滑れば、危険性を知る人なら「ちょっと危ないのではないか」と感じると思います。

 そういった初心者の人達が、何でもない緩斜面やちょっとしたデコボコで足を引っかけて転倒するということは、よくあることだと思います。そういったときにあっけなく怪我をしてしまったり、運が悪ければ骨折などの事故につながってくると思います。またこれは、これまでにも書いてきたように、初心者ではない方でも当てはまることです。

 ほとんどの一般的なファンスキーヤーは、さほど飛んだり跳ねたりといったアクロバット的な運動を主にするわけでもなく、手軽に自由な動きができることを魅力に感じていると思います。 そういった人達が購入者の大半を占めているのを考えれば、やっぱり一般のレジャーファンスキーヤーの安全のために、ファンスキー(スキーボード)に解放機能が必要ではないかと思うのは僕だけじゃないと思います。

 

 

 こういったことから考えてゆくと、ファンスキーの解放機能の有無は、使う人の目的によって必要であるか必要でないかという基準に変わってくると思います。(いわゆる、使う人によって必要であるかどうかの意見が分かれるという、相対的な問題ですね) 

 ですので、このファンスキーの固定式簡易ビンディングの危険性の問題は、一概には固定式簡易ビンディングは危険だと言えないけれども、一般のレジャーで使用する場合はやはり危険が伴うのではないかということになります。

 できれば初心者の人が解放機能のない板を使用するときは、以前「ファンスキーの事故報告2」で書いたことですが、はじめのうちはストック持って、いざというときの転倒に備え、転倒を防いだり、転倒時にはストックをついてダメージを軽減するといった自衛策も大切ではないかと思います。

ストックは、1000円程度でも売っているようですし、安全のことを考えれば、さほど大きな出費にもなりません。また、あると傾斜のあるリフト乗り場などでは大変便利だと思います。初心者の人には、安全のためにぜひともすすめたいものです。

 実際の現状では、ファンスキー(スキーボード)に関しては、使用目的に関係なく、安価に手に入り手軽に楽しめることから、危険性も選択基準も何も知らない状態で、ファンスキー(スキーボード)を選択している人が大半のようです。

 最近は、かなりファンスキー人口の増加が増えてきています。ですので、怪我をする人はこれからも増えてゆくことになると思います。できれば、この危険性に関する認識がもっと広く一般的に広まってゆくことが出来ればと、こころから願うものです。

 

 過去に書いてきた繰り返しになりますが、ファンスキー(スキーボード)だけが危険というわけでもなく、スキーでもスノーボードでもさまざまな危険性は存在します。また、ファンスキー(スキーボード)の解放機能があれば、まったく安全というわけではありません。危険な側面を具体的に知ることでファンスキー(スキーボード)で安全に楽しんでもらえれば。。。と思っています。

 

 

 少し話題は変わりますが、ここで大足教というファンスキー愛好会のメンバーの方から、ファンスキー初心者に教えるときの参考になるメールを頂きましたので、ここで紹介したいと思います。

 

ゲレンデでのファンスキーヤの増加を見て、多いのはやはり女性の初心者。
すぐに上達もしますが、怪我も多いようですね。
一緒に連れて行ったり、教える方にも責任がありますね。

私も友人に勧めたりして、最初教えるときには、こけ方から教えてました。
自分がこけて、板を上げる! とやり始めたころに教えてもらったのをそのまま受け売りだったんですが、ちょっと、安心しました。

それに、転がる楽しさ、こける楽しさもファンスキーの醍醐味と思ってますので。
このHPをファンスキー仲間に教えます。

そして、まだまだ初心者の友達には、

派手に転べ! 大きく!足上げろ! 昼ご飯に酒呑むな! ストレッチ!

をしっかり言って、なおかつ、最初こける練習させようと思います。
こけて、足上げる練習。

 以上、引用させていただいた文章でした。「転がる楽しさ、こける楽しさもファンスキーの醍醐味」という文章はいい文章ですねー。僕個人的にこういう文章は大好きです^^

 初心者の人に、いちばんはじめに、きちんとこういった安全に滑るため、安全に転ぶ方法を教えるというのは、ほんとうにいいことだと思います。また。お酒を飲まないというのは、大切なことですし。ついでに、個人的に経験のある睡眠不足は身体の動きや感覚が鈍くなり、大変危険ということも書いておきます。

 初心者の方を教えるときには、ほんとうにはじめが肝心だと思います。ですので、HPに来てくださった方が初心者の方に教えるときの参考になればと思い、メールを頂いた方に承諾をいただいてメールの一部を掲載させていただきました。ご快諾、ありがとうございました

 

 

 最後になりましたが、今回のこのページを作成するに当たって、たくさんのファンスキーヤーの方たちの情報を元に作成しています。ほんとうにありがとうございました。

 特に、katarinさんとマリさん、そしてにしださんより、具体的な情報をいただき、作成しました。たいへんありがとうございました。

 

 katarinさんからは、 1、ファンスキーとスキーボードの由来の違い 2、開放機能付きの板もあること 3、メーカーも開放機能付きのビンディングを開発、そして改良していって安全性等を追求していくべきではないか この3点が広く皆様に伝わっていくのであればボクとしては雪男さんにメールを送ってよかったと心からおもえるでしょう。  というコメントをいただいています。その想いが実現できていればなによりです。また、今回のページは、katarinさんの情報無しではできなかったものです。ほんとうにありがとうございました

 マリさんは、僕のHPを見て解放ビンディングの板にされたそうですが、アップに当たってマリさんからは、解放ビンディングをおすすめするメールを頂いています。 安心感が違う とのコメントをいただいています。

 

 

 また、第3者からの伝聞で、裏付けや確証が取りにくいためHPにアップにはいたっていませんが、子供さんの怪我の話では、一生後遺症に残ってまっすぐ歩けなくなるような怪我をされたという話も何度か報告をいただいています。

 子供は、基本的に冒険好きで、やんちゃな子供は平気で無茶をしますし、ファンスキー(スキーボード)の自由な動きの楽しさを知れば、いくらでもアクロバット的なことをはじめることもあります。その点、大変危険があると思います。子供は一般的に 「関節がやわらかくて柔軟性が高い」 といわれていますが、どうも固定式ビンディングはそのやわらかい関節をも容赦なく砕いてしまうことがあるようです。。。

 初回にアップした「ファンスキーの危険性」の宮越さんのように、ファンスキーでちょっとしたくぼみで転倒しただけで、レントゲンではっきり五カ所の骨折がわかるほどの大怪我をしてしまうこともあるくらいですから、子供さんが使用することには、大変気をつけたいものです

 なお、子供さんがファンスキーをする件に関連するのかどうかわからないのですが、サロモンがHP上にあるスキーボードのリンク先の「Japan Hot information スキーボードに関するニュース」の中で「注意と警告。」を出していますので、ここでリンクを貼っておきます。内容の転載は、著作権の問題がありできませんので、リンク先を参照してください。

http://www.salomon.co.jp/news/f_top.php3?pid=3

 文章は短くそっけないものの、かなり意味深な文章かもしれないですね。けれど、この文章の存在を知っている人、なかでも特に、「150cm以下の子供には適していない」ということを知っている人は、ファンスキー(スキーボード)を使用している人たちの中で、いったいどのくらいいるのでしょうか。。。?

 2002/10/16 追加
以前、このリンク先には、「スノーブレードのビンディングは、解放機能の持たないビンディングであること。そして身長150cm以下、特に150cm以下のお子様には適していない」といった文章がありました。現在は、HPの更新でなくなっているようです。

 

 手前ミソで申し訳ないのですが、僕個人の意見としては、各メーカーはこのHPにある「注意と警告。」と同じような文章を、宣伝や広告をするときには、かならずどこか目に付くところに記載すべきではないかと思います。

 また、雑誌などでも、特集で飛んだり跳ねたりする楽しさだけを伝えるのではなく、本当の基本的なことである「危険性や安全に滑るためのこと」についても取り組むべきではないかと思っています。

 これは、ウケないだとかブームに水をさすといった近視眼的な発想ではわからないと思いますが、きっと、将来的にはファンスキー(スキーボード)の発展のためになることだと思っています。

 極論になるかもしれませんが、それぞれのメーカー側が固定式簡易ビンディングの危険性を明確にユーザーに伝えることなく、大人だけでなく、子供の将来をも変えてしまうことにつながりかねない状態でいることが販売戦略上かまわないということであれば、たいへん悲しいことです

 

 

 また、ファンスキーヤーの方からたくさんのメールを頂いているのですが、ほんとうにファンスキーが好きだという方も多く、「足をひねったけれど、これからもがんばる」といったメールや「先週ファンスキー(スキーボード)で怪我をしました。今、なぜか横には、新しく買った新品のファンスキー板がある」という方もおられます。「スポーツである以上、怪我もあるし、事故もある。その危険性を認識し、楽しむ!」「危険性を十分認識した上で、安全にじっくりとうまくなっていきます」というような内容のメールも結構たくさん届きます。

 僕としても同じ雪運動愛好家として、エールを送りたい気持ちで一杯ですので、こういったメールをいただくことはほんとうにうれしいことです。これまでに何度も何度も書いてきているので、今回はあまり書かなかったのですが、ファンスキーだけが危険なのではなく、スキーもスノーボードも、危険性は存在します。

 どうか安全に楽しむことを心がけて、ファンスキーでめいっぱい楽しんでいただければと思っています。スキーでも、ファンスキーでも、スノーボードででも、楽しみ方は違っても、同じ雪の上で楽しさ分かち合えることができればと思うものです。

 

 最後に、doranosuke(どらのすけ)さんというファンスキーヤーの方からメールを頂きましたのですが、メールの最後の一文がファンスキーへの想いのふかい文章でしたので、その一文を最後に紹介して終わりたいと思います。

私は昭和56年豪雪、昭和58年と豪雪を体験し、雪が大嫌いでした。
社会人になって、スキーをしていてアイスバーンで路肩落ちして、スキー場も嫌いでした。
雪を楽しみに変えてくれた、ファンスキーに感謝!

 これまで雪やスキーが嫌いだったけれど、ファンスキーがはじめて雪の楽しさを教えてくれたのですね。雪にはいろいろな楽しみ方があって、雪はすべての楽しみ方を受け入れてくれます。スキーだけでなく、スノーボードだけでなく、ファンスキーも、なにひとつ分けへだてなく楽しませてくれます。それが雪の世界のすばらしさですね。

 

 どうか、雪を楽しむ人たちすべてが、真っ白な光のあふれる雪の世界で、事故や怪我をすることなく、素晴らしいシーズンを過ごすことを願っています。また、すべての人たちが雪のやさしさを感じ、自然のあたたかさに包まれ、こころいっぱいのステキな想い出ができることを願っています。

Snowman-Yukio

 

 

2002/3/26