今回の保険は、
1.遭難にかかる費用をカバーできること
2.隊員個人の怪我・疾病の治療費をある程度カバーすること
以上を目的として契約上2つの保険を強制加入とした。幸い、これらの 保険を使うことはなかった。
1. 運動割り増し付き海外旅行保険
登山という危険行為に対しても適用される、掛け捨ての、一般的な 保険である。
遭難者が少ないほど一人当りの捜索・救助費がかかると考え、最も 起こりそうで比較的経費のかかりそうな遭難として北大探検部(1983)の 雪崩遭難事故(表1) を参考にして捜索費を算定した(表2)。
これに従い被保険者一人の遭難で300万程度の保険金が下りるという 条件を保険額のベースラインとした。
業者見積による適用率(運動割増し)などと、契約内容は (表3)の 通りである。一人の遭難死で最大300万円がおりる。遭難救助費用をカバー するにはまだ十分とは言えないが、この辺が妥当な線と判断した。
疾病治療保険は主に高山病を考慮して加入した。疾病による救助活動は 捜索費用がかからないこと、保険料が高いことから保険額を50万とした。
先発隊の出国から帰国は2カ月を越えるが、保険の開始を後発の出発に 揃え(1つのサービス。登山期間の1カ月だけというわけにはいかない そうだ。)、全員2カ月間とした。
受取人は、保険加入の目的より徳田部長。 適用率の算定は会社により、また担当者により若干変わるのでここでの 値は参考にしかならないと思う。担当者はヒマラヤ=登攀と結び付けて しまうようだ。内部にコネがあれば、登攀要素の無い今回の場合、まだ少しは 安くなったかも知れない。三井海上火災代理店の富士産業(株)を利用した。
2. 通常の海外旅行保険
1.と併せて登山前後の疾病・怪我を念頭に通常の海外旅行保険に加入 した。これは登山期間以外のトレッキングまでの適用となる。ルクラ以降の 行動を除く期間について、安価である程度の保障を期待できる。各自の 出国に合わせて、3カ月間を強制加入とした。
受取人は、保険加入の目的より法定相続人。
借用した雪結晶の接写装置一式、無線機3台は隊員一人の持ち物として 30万の携行品損害保険(登山期間も適用)に掛けた。