気 象

田村  整


<事前の情報>

 ネパールの季節は大きく雨期と乾期に分けられ、年間降水量の80%は 6月中旬から9月中旬まで続く雨期(モンスーン期)の降水でもたら される。そのため登山に適したシーズンは、天候の安定したプレ・ モンスーン、ポスト・モンスーンに分けられる。今回登山活動を行った プレ・モンスーンは、ネパール観光省によって、3月1日〜5月31日と 登山期間が定められている。通常、4月下旬になると積雲の発達が盛んに なり、にわか雨が降るようになる。5月にはいるとその頻度が増し、 6月初旬の大雨でモンスーンに入る。

 メラピークにおけるこの時期の気象状況は、各報告書と気象資料から 推定した。それにより気温は大気の気温減率から、6500mで−10度前後で あることが推定された。また、朝は快晴で昼前からガスがかかり、夕方 また晴れるという気象パターンがつかめた。

 気象観測は、天気、気温の他に海面補正気圧を測定し、グラフ化して 現場の判断材料のひとつとする事にした。

<実際の気象>

 全体を通して問題となったのは、ザトルワラ越えである。キャラバンII 開始から天気が悪化し、ルクラでも雪が降った。カルカテンに入った日 からはさらに悪くなった。まる2日も雪が降り続け、はじめに降った 粒の大きなあられの上に、さらに新雪が降り積り、大変危険な状態に なった。その後の2日間は、雪崩が何度も目の前で起こった。気温は 0度前後、海面補正気圧は雪が降り続けた2日間は大きく下がった。 結局、カルカテンで5日間停滞させられた。

 登山活動に入ってからは毎日10時ぐらいまでは晴れており、その後 ガスがかかり始めるというパターンで気象が安定しだした。BCでの気温は 朝6時で−5℃前後であり、メララ、ACでも同様であった。日中は 日差しがとても強くて暖かく、吹雪くような事はなかった。海面補正 気圧には、大きな変化は見られなかった。朝5時には明るくなるので、 氷河が硬いうちに早めに行動するのがよいだろう。

 海面補正気圧は、高度計と地図とで標高の違いがかなり生じたため、 測定地点での目安にしかならなかった。