行 動 計 画


1 渡航と交通
 ネパール首都カトマンズには、新千歳空港から出国し、ソウル(韓国)、 バンコク(タイ)を経由して入る。隊員2名が一週間前に先発し、 カトマンズで諸許可の取得、食料・装備の買い出し、ネパールスタッフの 雇用などを行う。

 カトマンズから我々の登山の拠点となる町、ルクラへは陸路をとる。車道の 通うジリまでは定期バスが出ているが、我々はチャーターバスを利用する。


2 キャラバンI
 ジリからは山間の農村をつなぎながら標高2000〜3000mを東へと向かう 所要5〜6日のトレッキングとなる。トレッカーは比較的少なく、 いろいろなネパールを楽しめる。ロッジ泊まりのこのトレッキングは空路を とればわずか30分の旅に短縮できるが、陸路は天候にも左右されず、 通称エベレスト・ビューではヒマラヤの主軸とともにメラピークを 眺めることができる。

 ルクラはエベレスト方面へのトレッカー、エクスペディション隊の 出発地点であり、活気の溢れる標高2800mの町である。


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3 キャラバンII
 ルクラからベースキャンプへは標高4600mのザトルワラを越え、 標高3600mまで高度を落とした後、ヒンクコーラを遡り、標高4900mの ベースキャンプに入ることになる。

 今山行の難所と考えるザトルワラはルクラから一気に高度を上げる。 ここを順応不完全のままで越えてしまうとヘリコプターによる退路以外は 閉ざされる。また、北海道大学探検部(1987)が雪崩事故に遭遇した場所 でもあり、その高度と積雪を持つザトルワラはキャラバンルートでありながら この登山での難所となるのである。我々はキャラバンを始める前に、 高所順応活動を置きターナ付近の高度に相当する標高4600mに順応した後、 ベースキャンプへのキャラバンを始める。

 ターナでキャラバンを終え、ベースキャンプ高度の順応と兼ねて荷上げを 行いベースキャンプに入る。ヒンクコーラに沿っては無雪期にだけ、 ヤクの放牧と小規模の農耕のために人が入っている。


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4 登山とスキー
 メラピークには西峰、東峰があるが我々は西峰をその目的地とした。 周囲をU字谷により深く切り落とされた独立峰であるが、稜線から メラ氷河が標高5400mのメララを経由し、標高5200mまでゆったりと 流れている。我々の取るルートは、この広大な雪原をなすメラ氷河をたどり ピークに至る、スキー登山に適したルートである。スキーの利用は日本隊、 欧米隊ともに見られるが、我々は北海道大学山スキー部の持つ「スキー」を 最大限に駆使し西峰登頂とピーク直下からの滑降を狙う。

 ネパールスタッフのサポートはベースキャンプまでとするので、 ここからは我々6人だけでの行動となる。辿る雪原は、ホワイトアウトに なることが多くデポ旗を打って進む。標高5400mのメララ、5800mの アタックキャンプと荷上げを繰り返す中でスキールートを広げていく。 アタックキャンプまでの2カ所のクレバス帯の通過と、アタックキャンプから 頂稜までのルート取りが、この登山のポイントとなり得るほか、天候、 積雪状態が登頂とスキー滑降の成否を左右する。