不眠症と鍼灸治療

はじめに
不眠は、多くの方が経験する症状であり、国内では、5人に1人が睡眠に関する悩みがあるとデータで明らかににされている。睡眠障害は6つのカテゴリーに分かれる。不眠症、睡眠関連呼吸障害、中枢性過眠症、概日リズム睡眠覚醒障害、睡眠時随伴症である。不眠症は、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟睡障害のタイプに分かて、考える。
また、睡眠時関連運動障害の代表的な症状には、レストレスレッグ症候群、睡眠時ブラキシズム(歯ぎしり)、がある。レストレスレッグは、足がむずむずして落ち着かず動かしたくなる衝動と不快感があり足の運動により症状が軽くなる。現在ではEkbom(エクボム)病と呼ばれる。鉄欠乏貧血が原因の一つに挙げられているが、他の因子の影響も大きいことから、すべてが解明されてはいない。
また、睡眠時ブラキシズム(歯ぎしり)はストレスや遺伝等の様々な因子が関係している。睡眠時ブラキシズムは犬歯、臼歯の歯の摩耗につながるので、マウスピースの装着を検討する。
睡眠時随伴症の夜尿症も鍼灸治療の対象になる症状である。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)については、脳卒中、高血圧、冠動脈疾患との関連性から、本題にはなじまないと判断し、除外した。
睡眠は健康のバロメーター
東洋医学では、睡眠は、人の大切な生理現象であり、健康のバロメーターとして捉えているので、睡眠の質と量を問診時に、十分確認するのである。
東洋医学では、人の活動は、気血のエネルギーによると考える。その気血の運行には消長があり、日内変動、季節の年内変動がある。日内変動は、朝、太陽が上り、沈むまでの間に、太陽の高度に合わせるように気血を全身に循環させる。太陽の高度が最も高くなる頃に人の陽気も最大になる。そして、陰気は最小になる。逆に、太陽が沈み夜になると、体内に戻り、血は肝に蔵される。真夜中に陽気は最小になる。そして陰気は最大になる。 
季節の変動は、夏が陽気が最も盛んで、活動的であり、冬は陰気が多くなるので消極的である。その最大と最小は二十四節気でいうと夏至と冬至のにあたる。人の陰陽は天の陰陽と完璧にシンクロリズムを繰り返している。このことを東洋医学では、「天人合一」と表現されている(陰陽応象大論)人は自然のリズムと同調して、活動するのが理想であり、健康維持には最も重要であると教えている。
不眠症の鍼灸治療
東洋医学では、不眠は、夜になると本来なら、肝に帰り蔵される血が、ストレス、興奮、飲酒などが原因で、頭部に残っていると、目が閉じず寝付けないと入眠障害と考える。
また、本来、肝に蔵されいるはずの陽気が深夜や明け方近くに体をめぐり始めて、頭部に多くなると目覚めて、途中覚醒や早期覚醒となる。 これは、陽気を体内深くににとどめておく力(陰気)が弱い為に、陽気が循環を始めると考えられている。高齢者の途中覚醒、早期覚醒に多いタイプである。
また、血そのものが不足している場合、例えば、出産直後、怪我による大量出血、過度の肉体労働も不眠症の原因になる。
不眠症のツボ
入眠障害・・・百会 絲竹空 天衝 各井穴 
途中覚醒 早期覚醒・・・太白 涌泉 関元 足三里 膈兪 肝兪 腎兪 次髎
安眠の工夫
朝は屋外に出て朝日を浴びる。
日中は、軽い運動をする。
寝る前には、神経を興奮させない。
寝る前に、アルコールは飲まない。
レストレスレッグはストレッチでよくなることもある。
歯ぎしりは、適度な自己マッサージ、ストレッチで軽減することもある。    
作成日:2015/12/24


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